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黒田博樹 人を導く言葉 エースの背中を追い続けた15年
 [スポーツ]

黒田博樹 人を導く言葉 - エースの背中を追い続けた15年 - (ヨシモトブックス)
 
森拓磨/著
出版社名:ヨシモトブックス
出版年月:2017年10月
ISBNコード:978-4-8470-9606-8
税込価格:1,296円
頁数・縦:214p・19cm
 
 
 テレビ局のアナウンサーによる「黒田博樹」論。「男気」黒田の人柄がよく伝わってくるエピソード満載である。
 映像と書かれたものを通して触れる黒田は、真面目で一本気な性格を思わせるが、結構、大阪人気質ともいうべき笑いとおちゃめを発揮することもあるらしい。身近に接した者しか知らない、本邦初公開の「黒田さん」を存分に見せてくれる。やっぱり、いい人だったんだな。
 「絶対に打たれない(バットに当たらない)球を投げる」という考えを捨て、「100球で完投する」という思考に切り替えたところが素晴らしいと思う。チームのため、エースとしての誇りのため、「完投」精神は捨てられない。しかし、先発100球という決めがある以上、その中で初志を貫く。そのための打たせて取る省エネ・ピッチングを心がける。
 つまるところ、それが長く現役を続けられた秘訣かもしない。また、魅せる試合の演出方法でもあったかもしれない。
 
【目次】
第1章 黒田さんとの出会い 2002~2003年
第2章 試練に立ち向かう姿 2004年
第3章 黒田さんに聞かれた本気 2005年
第4章 88勝目のウイニングボール 2006年
第5章 海を渡る日 2007年
第6章 メジャーリーグ 2008~2014年
第7章 最高の引き際2015~2016年
 
【著者】
森 拓磨 (モリ タクマ)
 1978年、福岡県生まれ。2002年にアナウンサーとして広島テレビ入社。入社1年目からプロ野球中継に携わり、2007年からは広島テレビのスポーツ番組「進め!スポーツ元気丸」でMCを担当する。2008年度、日本テレビ系列「第30回NNSアナウンス大賞・優秀賞」受賞。2011年からは広島テレビの夕方ワイド情報番組「テレビ派」のMCを務める。
 
(2017/11/17)KG
 
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人類一万年の文明論 環境考古学からの警鐘
 [歴史・地理・民俗]

人類一万年の文明論―環境考古学からの警鐘
 
安田喜憲/著
出版社名:東洋経済新報社
出版年月:2017年10月
ISBNコード:978-4-492-22379-6
税込価格:2,592円
頁数・縦:337, 15p/20cm
 
 
 「電気新聞」ウェーブ欄に2004年から2017年にわたって連載されたエッセーをもとに構成。畑作牧畜民(現代の西欧人)の生み出した物質エネルギー文明の限界と、稲作漁撈民(すなわち日本人)の文明の優位を説く。
 おおむね首肯できる内容ではあるが、畑作牧畜民および一神教に対する嫌悪感丸出しの主張はいかがなものか。「他者」に対する嫌悪が内在するのであれば、結局、稲作漁撈文明が将来の社会を導くことになっても、西欧文明同様、他の民族・宗教を排除する思想が萌芽してしまうのではないだろうか。
 
【目次】
第1章 環境考古学
第2章 環太平洋文明
第3章 災害と文明
第4章 富士山と地球環境史ミュージアム
第5章 生命文明の時代
第6章 未来に向けて
 
【著者】
安田 喜憲 (ヤスダ ヨシノリ)
 1946年三重県生まれ。東北大学大学院理学研究科修了。理学博士。広島大学助手、国際日本文化センター教授、東北大学大学院教授などをへて、現在、ふじのくに地球環境史ミュージアム館長、立命館大学環太平洋文明研究センター長。スウェーデン王立科学アカデミー会員、紫綬褒章受章。
 
【抜書】
●地球温暖化(p15)
 1万5000年前、年平均気温が一気に4~6度も上昇する地球温暖化の時代が訪れた。気候の湿潤化も伴う。
 シベリア北部ではスゲ科や地衣類の湿性ツンドラが拡大し、カバノキ属やヤナギ属の森林が覆う。南部では針葉樹の暗い森が拡大。ケナガマンモスの好物のイネ科やヨモギ類の生息するマンモスステップが姿を消した。
 
●最終氷期最寒冷期(p18)
 3万3000年前、最終氷期最寒冷期(過去10万年で最も寒冷で乾燥)の開始期、ホモ・サピエンスは寒冷乾燥気候に適応して生き残った。ネアンデルタール人は絶滅。
 ホモ・サピエンスの誕生した20万~15万年前は、リス氷期末期の地球環境激動の時代だった。
 
●年縞(p35)
 年縞(ねんこう)……湖の底に積み重なったバーコード状の縞模様。福井県の水月湖、鳥取県の東郷池、秋田県の目潟などの湖底ボーリングによって発見。
 春から夏に珪藻が繁殖して白い層を、秋から冬にかけて粘土鉱物が静かに湖底に堆積して黒い層を形成。地球の遺伝子(ジェオ・ゲノム)と名付ける。
 
●五つの掟(p36)
 稲作漁撈民が守ってきた五つの掟。これにより、持続的にこの地球で生き続ける文明システムを発展させてきた。
 ① 自然を信じ、人間を信じ、森や山そして川や海に祈る心を持つこと。
 ② 命の源の水の循環系を守ること。
 ③ 自然の豊かさを、生命の連鎖を守るためには、時には自らの命を捨てても構わないという気概を持つこと。
 ④ 自然の資源を使い尽くさないで循環的に利用すること。
 ⑤ 自然を守るためには自らの欲望をコントロールすること。
 
●長江文明崩壊(p68)
 4200~4000年前は、著しい気候悪化期。寒冷化した。
 気候悪化により、北方から金属製の武器を持った畑作牧畜民が南下し、長江文明を滅ぼした。現在の漢民族のルーツ。
 石家河文化末期には、北方の黄河文明の要素が顕著に出現するようになる。
 稲作漁撈民は、雲南省や貴州省の山岳地帯、チベット高原、東南アジアへと逃れ、海岸部に暮らした人々は日本列島や台湾に逃れた。
 ミトコンドリアDNAの分析によると、漢民族にだけはM8aハプロタイプという特異な遺伝子が存在するが、周辺の少数民族や日本人にはM8aハプロタイプを持つ人の比率は少ない(篠田謙一『日本人になった祖先たち』NHKブックス、2007年)。
 Y染色体の分析では、漢民族はO3eという特異な系統、雲南省や貴州省、チベット高原、東南アジアの人たちはO2a系統、日本列島はO2b系統(崎谷満『DNAでたどる日本人10万年の旅』昭和堂、2008年)。
 
●文明の歯車(p120)
〔 危機が忍びよっているにもかかわらず、人々は文明がカタストロフに崩壊する直前まで、巨大なモアイをつくり続け、しかもモアイは、文明の末期になればなるほど巨大化していった。
 人々は、森の消滅によってひたひたと押し寄せる危機を、まったく無視するかのように、より大きなモアイ、より巨大なモアイをつくり続けたのである。
 私たち現代人は、このイースター島のモアイの文明の崩壊から、文明の暴走の恐怖を学ばなければならないのである。
 文明の歯車は、いったん回り出したら、後戻りすることはおろか、立ち止まることさえむずかしいのである。文明の暴走は巨大化を生む、という事実を直視しなければならないのである。〕
 
●島国根性(p122)
 森を守る「島国根性」。
 ① 山を崇拝する。島に恵みの雨と水をもたらしてくれる高い山を聖山としてあがめる。
 ② 自然の再生と循環は、魚を食べることによって守られる。
 ③ 女性の力を大切にした。女性が頑張る社会は、自然の豊かさが守られ、持続型文明社会を構築できた。
 
●日本の漂流(p168)
 第一の危機……明治維新。一神教を背景とした近代欧米文明を受け入れやすくするために、神仏習合と修験道を排除しようとした。
 第二の危機……第二次世界大戦敗戦。マッカーサーは、日本を共産主義に対決するキリスト教の理想郷にすべく、神道と仏教から魂を抜いた。神官は自然崇拝の哲学を語ることなく、仏教は葬式仏教に堕落していった。一方で、一神教に基礎を置くマルクス史観に対しては寛容だった。
 第三の危機……現在の危機。グローバル化と市場原理主義によって引き起こされた。
 市場原理主義は美しい完結した経済理論であるが、歴史と伝統文化を無視した個人の欲望を中心にした経済理論である。将来世代への責任を無視した、現在の欲望のみに立脚した個の欲望。
 
●大陸根性(p178)
 大陸型の畑作牧畜民の文明は、環境や自然が悪化すると、その場を捨てて簡単に移動する。〔大陸根性とは、移動し破壊する心でもある。〕
 
●大仏温暖期(p193)
 最澄と空海が生きた時代は、万葉寒冷期から大仏温暖期へと移行する、地球温暖化の時代であった。干ばつや洪水などの気象災害と地震が多発する時代。
 最澄……自己否定の後、「草木(そうもく)国土悉皆成仏」の思想に至る。
 空海……『三教指帰(さんごうしいき)』の仮名乞児(かめいこつじ)は、自己否定に陥った自身の青春時代の姿。
 
●新嘗祭(p294)
 11月23日の勤労感謝の日は、もともと新嘗祭。稲作漁撈民にとって、最も重要な豊穣の儀礼の祝日。
 豊かな収穫に感謝し、新米を神々にささげ、翌年の豊作を祈る。
 
●森林破壊(p324)
 12世紀以降の大開墾によって、アルプス以北のヨーロッパ平原の大森林(ヨーロッパブナやナラ類)は、17世紀までのあいだに完璧に破壊された。
 イギリスやスイスでは90%、ドイツでは70%の森が失われた。
 
(2017/11/17)KG
 
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世界単位日本 列島の文明生態史
 [歴史・地理・民俗]

世界単位 日本: 列島の文明生態史 (学術選書)  
高谷好一/著
出版社名:京都大学学術出版会(学術選書 082)
出版年月:2017年8月
ISBNコード:978-4-8140-0079-1
税込価格:2,376円
頁数・縦:471p・19cm
 
 
 世界単位。著者による命名で、世界がいくつかの「単位」で創られているという主張をもとに、こう呼んでいるらしい。その「世界単位」としての日本列島を、大陸や南の海との関りを通して、歴史を俯瞰しつつ多角的に論じる。
 ところで、本書の読者を高校生以上と想定してるが、それならば難読語や特殊な地名には「よみがな」を振ってほしいものだ。唯一、よみがなが付されていたのは、「野洲川デルタの中の典型的な普通の村」開発(カイホツ)であった(p337)。著者の住んでいるところだとか。
 
【目次】
第1部 アジア概観―生態区と文明区
 第1章 大陸の森
 第2章 海の世界
 第3章 草原、砂漠、中華世界
 
第2部 日本の形成―内世界と外文明
 第4章 列島の森と野と海―縄文文化の生態史
 第5章 米と銅・鉄―弥生文化
 第6章 国連合から王国へ―天孫思想の到来
 第7章 日本国の確立―律令制の導入と在地化
 第8章 中世武家の時代―分裂と進出
 第9章 陸海あげての激動期―近世への胎動
 第10章 近世日本国の成熟―江戸時代
 第11章 脱亜から戦争へ―明治以降
 
終章 日本、「周辺」そして世界の共存
 
【著者】
高谷 好一 (タカヤ ヨシカズ)
 京都大学名誉教授、滋賀県立大学名誉教授。1934(昭和9)年、滋賀県守山市に生まれる。1958年、京都大学理学部卒業。京都大学東南アジア研究センター助手、助教授を経て、1975年から京都大学東南アジア研究センター教授。1995年から2004年まで滋賀県立大学人間文化学部教授。2004年から聖泉大学教授。2016年3月11日、調査旅行中のインド・チャンディーガルで逝去。
 
【抜書】
●照葉樹林文化(p4)
 中尾佐助が命名。「農業起源論」(『今西錦司博士還暦記念論文集Ⅰ 自然――生態学的研究』、森下正明/吉良竜夫 編、中央公論社、1967年)より。
 照葉樹林が広がるネパール、中国南部(長江流域以南)、韓国南部、日本列島の西半分に根付いた文化。
 納豆、味噌、豆腐、麺、ちまき、餅、茶、など、共通の食材を有する。他に、絹や漆なども。
 
●良渚遺跡(p31)
 良渚(りょうしょ)遺跡……BC3300年からBC2200年頃の遺跡。長江文明。稲作が頂点にまで高まった。
 杭州湾の北岸。河姆渡(7000年前の水田遺跡)より低湿性は少ない。
 BC2000年ごろ、大洪水で滅亡。そこから北に逃れた人たちが、夏・殷文明を作ったという説もある。
 
●洞庭湖(p34)
 長江中流域、洞庭湖周辺は、最も早く稲作が確立したところ。彭頭山遺跡には、8000~9000年前の稲作遺跡がある。
 長江文明の五点セット……城壁、水田、祭祀の場、神殿、王宮。安田喜徳の命名。長江文明の原型。稲作と稲作儀礼は6000年ほど前にでき、5300年前に王によって政治と祭祀の場として形が整えられた。
 長江文明では、王は聖別した籾の配分者。稲作儀礼をして、きちんと聖別した稲籾を人々に分け与えた。軍備を司る草原型や、交易によって繁栄するオアシス型の王ではなく、農業がうまくいくように祈る司祭のような人だった。
 
●メソポタミアの収穫率(p41)
 メソポタミアでは、水は灌漑によってもたらされ、貴重なものだったので、きわめて丁寧にムギが作られた。BC2200年頃のウル第三王朝の場合、1粒の種子から70~80粒の収穫があった。産業革命頃のイギリスのムギは4~5粒。
 
●サゴヤシ(p81)
 東南アジア島嶼部の湿地林に生える。直径50~60cm、高さ10m。
 成木になると、幹に澱粉を蓄積する。普通のもので、1本から40kg、大きいものだと60kgくらい取れる。1Haあたり毎年50~60本の木が伐れるので、非常に高収量。
 サゴ・ルンダン……サゴ洗いで取り出した澱粉を、もう一度きれいに洗い、篩でふるうと、球状になる。布の上に広げて左右に振ると、小珠は磨かれ、硬くなる。これを浅い鍋に入れて3時間ほどかけてゆっくり炒る。すると、真珠にそっくりのサゴ・ルンダンが出来上がる。
 サゴ澱粉は、マレー人の主食であった。
 
●船のサイズ(p127)
 15世紀末、アジアにやってきたポルトガルの船は400トン程度。
 15世紀初頭、鄭和が大遠征に使った船は8000トン級だった。
 14世紀頃、南シナ海や東南アジアの海には1000トン・クラスのジャンクが活躍していた。しかし、小回りの利くポルトガルの軍艦が、図体がでかくて防御力を持たないジャンクを襲って略奪したので、アジアの船はその後、どんどん小さくなっていった。
 もともとアジアの海は平和で、大型船が無防備に交易活動を行っていた。
 
●五畜(p135)
 遊牧民は、5種類の家畜を飼育していた。すべて草場が違うので、数家族で組んで分業し、遊牧を行う。モンゴルでは、この組(小集団)を「ホタアイル」と呼ぶ。
 牛……食料として利用。春から秋までは草が多いので、乳をたくさん出すので、牛乳を利用。良い草地が必要。
 馬……騎乗用。移動と、放牧した家畜群の見張りに必要。良い草地が必要。
 羊、山羊……食用にするとともに、毛を利用して布やフェルトを作る。
 ラクダ……荷物運搬のトラック。テントや家具を運ばせる。粗悪な草地でも生きていける。
 
●チンギス・ハン(p141)
 最近の歴史学者たちは、従来のチンギス・ハン(チンギス・カン)の軍隊が猛烈に強く、残忍だったという考え方を改め始めている。
 武力による直接対決よりも、政治的な駆け引きで相手を味方に引き入れることが多かった。人間や分捕り品の分配を餌に、戦わずして味方を増やす。効率的に行うために、商人を多く利用。草原地帯には、商人ネットワークも形成されていた。
 シャーマンも味方をする。「天神はテムジンが皇帝になることを望んでいる」。草原社会では、シャーマンの宣託は大きな力であった。
 チンギス・ハンは、社会の仕組みを変える天才でもあった。部族や氏族の社会単位を解体し、1000戸からなる集団に組み替えた(千戸制の創設)。人々は、部族への帰属心よりも国への帰属心を持つようになった。
 
●ウイグル(p158)
 ウイグル人は、8世紀の中頃、突厥が衰えると、草原の覇者となった。約1世紀、典型的な騎馬民族国家を作った。
 840年頃、キルギス人の急襲を受けて崩壊し、天山山脈の北麓のビシュパリクに新しい国を建てた。天山山脈の南麓のオアシス地帯(タリム盆地)にも広がり出す。そして、オアシス農耕と交易を始めた。草原の民から、オアシスの民へと転身。
 
●中華世界(p163)
 中華世界は、森や草原や砂漠といった生態を基盤にした世界ではない。中華思想というイデオロギーでまとめられた世界。
 〔これはそのはじめは生態の境界に作られたいわば貿易会社のようなものであったと私は思っている。おそらく最初はペルシャかどこかのオアシス出身の商人が砂漠帯の東端に貿易会社をひらいた。有望な会社だったのだろう、すぐに草原出身の騎馬民も加わって共同経営を始めた。この会社経営にはのちには農民や森の民も加わった可能性もある。こうして貿易会社中華商会を育てていった。多民族の加わった会社だから、社是を決め、社内語も決めた。これが儒教と漢語である。この社是は、極めて巧妙にできていたものだから、会社は二〇〇〇年以上に渡って生き続けた。
 中華世界は社是で纏められた範囲だから、生態区のように安定した広がりを持つわけではない。会社が強力になったときには広がり、弱くなると縮む。しかも、本店と支店のような分節もしばしば起こる。現在の中華人民共和国は、本来の中華世界よりもかなり広い範囲を強権で抱え込んでいると見てよい。〕
 〔中華世界は、だから儒教と律令制で国をまとめるのだと決めた為政者の支配した範囲で、すぐれて政治的な範囲なのである。〕(p177)
 
●卵生神話(p186)
 古朝鮮の神話では、天から降りてきた神や霊気が人や動物と交わって最初の王を作る。ツングース系に典型的な始祖神話。熊を親に持つ檀君神話など。
 4世紀の三国時代になると、天孫降臨系の話に加えて、卵という要素がかかわってくる。
 卵生神話は、中国南部から東南アジアにかけて広く分布している。混沌の宇宙に生まれた最初の人間である盤古も、卵から生まれたと書かれている(『三五歴記』。3世紀の呉)。
 韓半島はその大部分がモンゴル・ツングース系の文化でおおわれているが、南端部には江南系、海洋系の文化が入っており、卵生神話が天孫降臨系の話に加わった。
 
●母子交合(p222)
 八丈島の最南端、丹娜婆の墓。八丈島の始祖伝説。
 昔、大津波が襲い、人はみな死んだ。妊婦1人だけが船の艫つかまって助かった。
 その後、女は産み落とした男の子と母子交合して子孫が増えた。
 母子交合から子孫が増えたという話は、オセアニアにはところどころにある。沖永良部にも。
 限界的な環境で生きる人たちの文化?
 
●縄文語(p226)
 崎山理の説。『日本語形成』三省堂、1990年。
 縄文語は、ツングース語とオーストロネシア語を話す人たちが出会ったときに生まれた混成語。5000年ほど前?
 ツングース語の文法の上にきわめて多くのオーストロネシア語の語彙が加わってできた。
 ツングース語の文法は主語、目的語、動詞の順に並び、現在の日本語の語順と同じ。
 ツングース系……もとは亜寒帯針葉樹林に住み、狩猟をした人たち。一部は温帯落葉広葉樹林にもおり、狩猟が中心だが、農耕も少し行った。
 オーストロネシア系……南の海民。東南アジアを中心に、東はイースター島、西はマダガスカルにまで分布。もともとは雲南省のあたりにいたらしい。今から6000年ほど前に移動を開始し、広がった。中心部はスンダ陸棚やウォーレシアや南シナ海。
 
●稲作文化の基本要素(p230)
 稲作文化の基本要素は稲、竹、鵜飼、高床式建物。
 本来、竹は日本列島にはなかった。稲と対をなして列島に導入された。隼人が竹の筏船に竹の根と鵜を乗せて鹿児島あたりに上陸?
 大陸の照葉樹林帯には多い。照葉樹林の斜面脚部に広大な竹藪が広がることが多い。
 
●銅鐸文化圏(p238)
 銅鐸文化圏……淡路島を中心に、播磨灘、大阪湾、紀伊水道の周りと伊勢湾並びに遠州灘の周辺に広がっている。稲作がもっとも充実して広がったところ。稲作適地。江南との深いかかわり。
 銅剣文化圏……出雲、吉備。金属加工が卓越した地域。有名な馬の産地でもある。早くから半島系の人たちが入ってきて、独自の文化圏を作っていた。大陸の草原地帯との深い関り。
 銅矛文化圏……玄海灘、周防灘、豊後水道、土佐海岸。海上交易に中心をおく地域。銅矛は、航海祭祀と境界祭祀に用いられる。東シナ海や南シナ海との深いかかわり。
 
●天孫思想(p271)
 古墳時代になると、大王が現れ、巨大古墳が造られた。草原の騎馬民族の持つ天孫思想が日本に到来したことが影響?
 
●ダミー国家(p351)
 琉球は、福建の海民たちが仕立てた「国」だった?
 明の太祖洪武帝が1371年に海禁令を発布。倭寇や密貿易を抑え、外交交渉による華夷秩序の回復を目指した。チャンパ、ジャワ、高麗、日本、琉球に使者を派遣し、朝貢を促した。
 琉球に対して、特別の優遇策を取った。洪武・永楽年間に、海船30隻を与え、朝貢業務を行う中国人居留地の久米村を作った。久米村は、1392年に明朝から閩人三十六姓を下賜されたのが始まり。
 海禁令により、一般海民の交易活動は一切禁止。閩の海商たちは、朝貢貿易を行うため、「琉球国」をでっち上げた。
 
●隠岐島コミューン伝説(p398)
 松本健一『隠岐島コミューン伝説』河出書房新社、1994年。
 幕末、日本の近海に外国の船が出没するようになった。海防のため、隠岐では、480人の農兵が作られた。
 隠岐の庄屋や神官たちは、武芸を教える「文武館」の設置を藩に嘆願した。しかし、歎願は却下され、「武芸差留め」の布告が出された。郡代が島民を信用せず、これ以上農民たちに武器を持たせると危険だと判断したため。
 怒った農民たちは、「世は天朝御料になったのだから、旧藩の役人たちは早々にこの地を退去してほしい、島は自分たちで守る」と、松江藩の郡代を島から追い出した。慶応4年(明治元年)。
 農民たちは、自治政府、コミューンを作った。農民たち、海民たちの危機意識。
 しかし、新政府からの指示で松江藩が鉄砲隊を島に送り込み、コミューンは81日で終わった。
 
●三種の人(p402)
 日本には、三系統の人が共存している。
 オーストロネシア系の海民、ツングース系の内陸民、水稲耕作民。
 
(2017/11/12)KG
 
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世界一訪れたい日本のつくりかた 新・観光立国論〈実践編〉
 [経済・ビジネス]

世界一訪れたい日本のつくりかた―新・観光立国論【実践編】
 
デービッド・アトキンソン/著
出版社名:東洋経済新報社
出版年月:2017年7月
ISBNコード:978-4-492-50290-7
税込価格:1,620円
頁数・縦:321p・19cm
 
 
 日本在住32年の知日家による、国際観光業振興策。国際データ比較をもとに、かなり具体的な提案を含み、納得の内容。
 
【目次】
第1章 日本の「実力」は、こんなものじゃない―「大観光時代」を迎える世界と日本の現状
第2章 「どの国から来てもらうか」がいちばん大切―国別の戦略を立てよう
第3章 お金を使ってもらう「魅力」のつくりかた―「昭和の常識」を捨てて、質を追究しよう
第4章 自然こそ、日本がもつ「最強の伸び代」―「長く滞在してもらう」ことを考えよう
第5章 「誰に・何を・どう伝えるか」をもっと考えよう―「So What?テスト」でうまくいく
第6章 儲けの9割は「ホテル」で決まる―「高級ホテル」をもっと増やそう
第7章 観光は日本を支える「基幹産業」―あらゆる仕事を「観光業化」しよう
 
【著者】
アトキンソン,デービッド (Atkinson, David)
 小西美術工藝社代表取締役社長。三田証券社外取締役。元ゴールドマン・サックス金融調査室長。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年に同社会長兼社長に就任。
 
【抜書】
●第3の基幹産業(p19)
 観光産業は、全世界のGDPの10%、雇用の11分の1を生み出している。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の試算。
 観光輸出の総計は1.5兆ドル。世界総輸出の7%。国連世界観光機関(UNWTO)の試算。
 世界経済において、「観光産業」はエネルギー、化学製品に次ぐ「第3の基幹産業」。
 
●第4位(p48)
 World Economic Forum(WEF)は、2年に1回、世界の旅行・観光国際競争力の分析結果を発表している。2017年4月のデータでは、日本の国際競争力は世界第4位。
 2年前に比べて世界一改善している国。2009年は、25位、2011年22位、2013年14位、2015年9位だった。
 改善したものは、ICT対応(WiFi利用等)、国際的開放度(観光ビザの取得、観光政策)、文化資源、自然資源、など。
 
●昭和の観光業(p106)
 昭和の観光業……高度経済成長や、一極集中(GW、盆暮れ、など)、人口増加を背景にした、量と画一性を重視。
 平成の観光業……中国人観光客増大のため、「昭和の観光業」を温存。「春節商戦」など。
 将来の観光業……〔満足度を上げてリピーターを獲得する戦略をとることで観光客数という「量」を増やし、それ以上に単価を上げることで収入を増やす。〕トヨタのレクサス戦略と同じ。
 
●森林が完成しない(p139)
 日本の美しい自然を作り出しているのは、「自然災害」。あるパークレンジャーの説明。
 地震、火山、台風、大雨などの自然災害により、日本では「森林が完成しない」。
 自然環境が全く変わらないと、弱肉強食が顕著となり、生物的に強い種が弱い種を駆逐して、勢力を増していく。しかし、定期的に大規模な自然災害に見舞われる日本では、どんなに強い種でもあっという間に駆逐されてしまう。そうなると、隅に追いやられていた別の種が台頭するチャンスが巡ってくる。優越種の入れ替わりが起こる。弱い種も絶滅しない。多様性に富んだ自然ができる。
 
●ハンティング・ツーリズム(p171)
 害獣駆除のために、「ハンティング・ツーリズム」を導入するとよい。自然を武器にした観光戦略の一つ。
 
(2017/11/11)KG
 
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いま知っておきたい天皇と皇室 気になる動向と素朴な疑問に答える本
 [歴史・地理・民俗]

いま知っておきたい天皇と皇室: 気になる動向と素朴な疑問に答える本
 
山下晋司/著
出版社名:河出書房新社
出版年月:2017年5月
ISBNコード:978-4-309-02566-7
税込価格:1,512円
頁数・縦:199p・19cm
 
 
 知られざる天皇と皇室の真の姿を、かつて宮内庁長官官房総務課報道室に勤務していたジャーナリストが語る。
 
【目次】
1 「天皇の退位」をめぐって浮上した重大な課題とは
2 天皇と皇室を支える「しくみ」の基礎知識
3 「天皇のお仕事」はなぜ忙しくなったのか
4 「皇室の国際親善」の本当の役割とは
5 新聞・テレビではわからない「宮内庁と皇居」の内側
6 皇室の知られざる「プライベート」を拝見
7 天皇と日本の未来のために「残された問題」とは
 
【著者】
山下 晋司 (ヤマシタ シンジ)  
 1956年、大阪府生まれ。関西大学卒。皇室ジャーナリスト。23年間にわたり宮内庁に勤務、おもに報道室で、宮内記者会をはじめとする報道機関対応を担当した。2001年に退職した後は『皇室手帖』編集長などを務め、現在はBSジャパン『皇室の窓』の監修ほか、皇室解説の第一人者としてテレビ、新聞ほか各種メディアで活躍中。
 
【抜書】
●泉湧寺(p67)
 泉湧寺(せんにゅうじ)は、皇室の菩提寺。JR奈良線・京阪本線の東福寺駅が最寄り駅。
 歴代天皇の位牌がある。
 「御寺(みてら)泉湧寺」という言い方をする。
 全国には、陵(天皇、皇后、太皇太后、皇太后の墓)が188、墓(その他の皇族の墓)が554、点在している。北は山形県羽黒山、南は鹿児島。神代三陵のうち、ウガヤフキアエズノミコトの吾平山上陵(あひらのやまのえのみささぎ)が大隅半島の鹿屋市にある。
 
●プリンタ(p89)
 今上天皇は、自分で式典のお言葉の原稿を書く。パソコンを使用。プリンタも持っていて、推敲のための印刷には裏紙を使う。
 
●稲作と養蚕(p100)
 田植えと稲刈りを始めたのは、昭和天皇。昭和2年(1927年)、お住いの赤坂離宮に田んぼを作る。「農民と同じ苦労と収穫の喜びを味わいたい」。農業の奨励。
 今上天皇はさらに籾蒔きを追加。
 収穫された米は、神饌として、新嘗祭や神嘗祭のときに宮中や伊勢神宮にお供えされる。
 皇居内の紅葉山御養蚕所では蚕を飼っている。昭憲皇太后が始めた。皇后の活動。産業奨励。
 
●宮内庁御用達(p159)
 明治時代に、国産の品質の高い製品に「お墨付き」を与えるためもあって「宮内庁御用達」の制度が作られたが、昭和24年(1949年)をもって廃止になった。
 最後に出した御用達の有効期限は5年(つまり昭和29年)だったが、現在も「宮内省御用達」の看板を掲げる業者がある。宮内庁は、特に問題のない限り、黙認している。
 
●民主主義(p191)
〔 国民感情というものは、制度云々よりも、天皇や皇族方のご活動を見ることで生まれるものです。
 陛下のご活動に接した国民が陛下を尊敬し、熱烈に歓迎する、その歓迎ぶりが陛下のモチベーションになる。このいい関係で成り立ってこそ、民主主義下の象徴天皇制度は維持されていくのだと思います。〕
 
(2017/11/4)KG
 
〈この本の詳細〉


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