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キリスト教成立の謎を解く 改竄された新約聖書
 [哲学・心理・宗教]

キリスト教成立の謎を解く―改竄された新約聖書

バート・D・アーマン/著 津守京子/訳
出版社名:柏書房
出版年月:2010年10月
ISBNコード:978-4-7601-3872-2
税込価格:2,592円
頁数・縦:350p・20cm


 キリスト教の正典集『聖書』の「本文批評」研究の「常識」を開陳する書。
 〔本書で私が提示する見解は、学者の間ではごくごく標準的なものである。本書を読んで、一つでも新しい発見をする聖書学者がいるとは思えない。〕(p.32)
 異教徒にとって(と同時に一般のキリスト教徒にとっても)、目から鱗が落ちるような内容である。
 自らの宗教の聖典を批判的に論じる西洋人の精神とはいかなるものなのであろうか。キリスト教が民族固有の自然宗教ではないだけに、心の奥底に客観的な視点を残しているということなのだろうか。

【目次】
第1章 信仰に突きつけられた歴史的挑戦
第2章 矛盾に満ちた世界
第3章 山積する様々な見解
第4章 誰が聖書を書いたのか?
第5章 嘘つき、狂人あるいは主?歴史的なイエスを求めて
第6章 いかにして私たちは聖書を手に入れたのか
第7章 誰がキリスト教を発明したのか?
第8章 それでも信仰は可能か?

【著者】
アーマン,バート・D. (Ehrman, Bart D.)
 ノース・カロライナ大学教授。新約聖書・原始キリスト教史・イエス伝等の研究の第一人者。

津守 京子 (ツモリ キョウコ)
上智大学外国語学部英語学科、東京大学文学部歴史文化学科(西洋史学専修)卒業。

【抜書】
●共観福音書(p56)
 『マルコによる福音書』『マタイによる福音書』『ルカによる福音書』。これらは同じような内容を含む。
 『ヨハネによる福音書』は含まない。

●偽書(p138)
 新約聖書として編纂されている27の書のうち、作者名と実際の作者が一致することがほぼ確実なのは、以下の8つ。
 ・パウロ作『ローマの信徒への手紙』『コリントの信徒への手紙1』『同2』『ガラテヤの信徒への手紙』『フィリピの信徒への手紙』『テサロニケの信徒への手紙1』『フィレモンへの手紙』
 ・『ヨハネの黙示録』(ただし、ヨハネが何者なのかよく分かっていない)
 間違った作者名を与えられた書……『マタイによる福音書』、『ヨハネによる福音書』、『ヘブライ人への手紙』(ヨハネ)。
 同名異人(ホモニマス)の書……『ヤコブの手紙』。イエスの兄弟ヤコブの作ではない。
 偽典……他人の名を騙って書かれたもの。スーデピグラフィー。

●非類似性の基準(p184)
 ありそうもない話のほうが信憑性が高い。
 聖書では、自分たちの見解に沿うように伝承に手を加えたため、正典間で矛盾を抱えるようになった。初期キリスト教徒が好んだと思われるイエス像と一致しないイエスの口碑のほうが、信憑性が高い。
 たとえば、イエスはベツレヘムで生まれ、ナザレで育ったことになっている。ベツレヘムはダビデの子が生まれることになっているので、イエスの出生地として都合がよい。しかし、おそらくナザレ出身。ガリラヤ地方のナザレという貧しい町に生まれたとしても、キリスト教の教義の発展には寄与しない。そうであるからこそ、たぶん、この誕生譚は歴史的に正しい。

●トリエント公会議(p224)
 27の書から成る正典は、16世紀に宗教改革に対抗して開かれたトリエント公会議において、初めて公会議において承認された。
 それまで〔正典は、ある時点ではっきりと採択されることなく、誰が決を採ったわけでもないのに、出現したのだ。〕

●アタナシウス(p257)
 初期キリスト教史において、初めて、現在の聖書を構成する27の書だけが記載された正典のリストがつくられたのは、367年。エジプトのアレクサンドリアの司教だったアタナシウス。39通目の「祝祭日に関する書簡」の中で、教会で読まれるべき書のリストを挙げた。
 5世紀以降、アタナシウスの正典は、大方の正統派教会の正典として定着する。
 ニケア公会議……アタナシウスは、その数十年前に開かれたニケア公会議(325年)の立役者。ローマ皇帝コンスタンティヌスにより招集された、最初の公会議。

●苦悩するメシア(p276)
 イエスが苦悩するメシアだという考えは、初期キリスト教徒が発明したものである。ユダヤ教にはない概念。
 パウロは、この発想が、ユダヤ人にとって最大の「つまずかせるもの」だったと指摘(『コリントの信徒への手紙1』1章23節)。しかし、このようなメシア像があまりに馬鹿げているからこそ、正当だとみなした。(『同』1章18-25節)。

●反ユダヤ思想(p285)
 反ユダヤ思想は、キリスト教が誕生するまで、ローマやギリシャや他のいかなる地域にも存在しなかった。ローマやギリシャの作家が、男児のペニスを傷つけたり、豚肉を食べなかったり、1週間のうち1日は怠けて仕事をしなかったり(安息日)といった慣習を、揶揄することはあったが、彼らはすべての異民族を馬鹿にしていた。

●垂直的二元論(p310)
 水平的二元論……もうじき終末が訪れ、神の国が実現するという、時間的な二元論。
 垂直的二元論……天上に神の国が存在するという空間的な二元論。
〔 キリスト教思想家は、終末が、待てど暮らせど来ないので、この時間軸を再定義し、軸を回転させ、水平的二元論にすることで、「終わり」を垂直線上に置きかえた。そうすることで、この世とあの世という、二つの領域が、今の時代とこれから訪れる時代という、二つの時代に取って代わった。もはや、肉体的復活は、議論されることも、信じられることもなくなった。いまや、重要なのは、この世における苦しみと、天国における歓喜なのだ。〕

(2017/2/28)KG

〈この本の詳細〉


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