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毛の人類史 なぜ人には毛が必要なのか
 [自然科学]

毛の人類史 なぜ人には毛が必要なのか (ヒストリカル・スタディーズ18)

カート・ステン/著 藤井美佐子/訳
出版社名:太田出版(ヒストリカル・スタディーズ 18)
出版年月:2017年2月
ISBNコード:978-4-7783-1557-3
税込価格:2,592円
頁数・縦:250, 32p・19cm


 「毛」ついて、生理学的、生物学的、動物学的、文化的、産業的、社会史的に、総合的に紹介する、「毛の博物学」。

【目次】
第1部 毛の起源と成長の謎
 哺乳類に生えた最初の毛
 毛はどのように生えるのか
 新しい毛が生まれる仕組み
 音のストレスは毛の成長を妨げる
第2部 毛をめぐる奥深い世界
 毛が伝えるメッセージ
 理容店の登場と発展
 髪の毛の驚異の性質
 毛髪の特徴と色の不思議
 究極の工芸品、かつら
 ひと房一二万ドルの髪
第3部 毛と人間の複雑な関係
 ビーバーの毛皮がもたらしたもの
 帝国の財源となった羊毛
 毛の意外な用途

【著者】
ステン,カート (Stenn, Kurt)
 20年間イェール大学教授として勤務(病理学および皮膚科学)。アデランスの米国研究機関アデランス・リサーチ・インスティテュート(ARI)の研究担当副所長および最高科学責任者として毛髪の最先端研究に携わり、ジョンソン・エンド・ジョンソンでもスキン・バイオロジー研究部門責任者を務める。毛包研究に関する講演や多数の科学論文を発表するなど、長年にわたって毛髪研究に従事している。

藤井 美佐子 (フジイ ミサコ)
 翻訳家。横浜市立大学文理学部卒。

【抜書】
●100万年前(p27)
 ヒトは、ほかの動物には温度に敏感な脳を守るため、被毛を失った、という説が有力。
100万年から300万年前に、霊長類の脳の大型化が進んだのと同時に被毛を失い始め、エクリン腺を獲得するようになった。エクリン腺の機能は、汗(ほとんどが水分の分泌物)の放出によって、体温を調節する。

●つむじ(p43)
 アメリカ国立がん研究所のアマル・クラーの、北アメリカの成人500人を対象にした調査によると、右利きの人の90%以上のつむじが時計回り。左利きと両手利きのヒトはつむじの向きと利き手との関連が見られない。
 ボン大学のベルント・ヴェーバー教授によると、つむじが時計回りの被験者は左脳の言語中枢との強い関連が認められたが、つむじが反時計回りの被験者にはそのような関連はなかった。
 知的発育不全の子供の頭皮には、対象群と比較して2倍の頻度で複数のつむじがある。複数のつむじがある、あるいは複数のつむじが交差している子供は、脳の形成異常が潜んでいる可能性が高い。

●フェルト(p128)
 フェルトは、羊毛の繊維を絡ませ、キューティクル細胞を開かせて結合させたもの。
 フェルトに適した素材は、非常に細くて縮れが多く、キューティクルが目立つメリノヒツジの羊毛。
 【製造工程】
  ①羊毛を洗う。
  ②カードという器具で梳かして繊維の向きをそろえる。
  ③目の粗いシート状にならす(バット)。
  ④希望の厚さになるまでバットの層を上に重ねていく。帽子用なら1層か2層、毛布やラグマットはさらに多く重ねる。
  ⑤重ねたバットを温かい石鹸水に浸してローラーをかけ、揉んでたたく。バットが目の詰まった塊になったらフェルト化完成。

●メディチ家(p196)
 イングランドでは、中世以降、最重要の輸出品は羊毛だった。
 13~14世紀に羊毛交易が拡大したことで、新たな資本調達の技術や手段が必要になった。その過程で商人は、現代の資本主義、銀行家、金融の基礎を築く。その頃の羊毛商人は、教皇の代理人として教会税の徴収にあたるイタリア人たちだった。現金を持たない修道院は、袋に詰めた羊毛で教会税を支払っていた。
 16世紀半ば、イングランドがローマカトリック教会から独立すると、商人たちは徴税人から独立した羊毛取引専門の商人へと変貌した。
 羊毛市場の規模が拡大し、羊毛商人の一部は莫大な利益を得て、商人兼銀行家となり、巨大な資本を支配し、ヨーロッパじゅうに手を広げる。ヨーロッパ初の大規模な銀行制度が生まれる。
 代表的な商人銀行家一族が、メディチ家。1297年には、フィレンツェの毛織物製造業者のギルド「アルテ・デッラ・ラーナ」に加盟しいていた。メディチ銀行が羊毛交易で築いた財産をもとに設立され、フィレンツェがイングランドの羊毛を大量に輸入していた。

●フランドル(p198)
 ヨーロッパの羊毛加工の二大中心地はフランドルとフィレンツェ。
 イングランドは、原料の羊毛が主要な産物で、生産した羊毛をフランドルに輸出し、そこで作られた上質な毛織物を輸入していた。
1258年、ヘンリー3世国王の時代、「オックスフォード議会」(別名“狂気の議会”。国政改革案を王に提示した)において、イングランドは質の高い毛織物産業を自国で育成しなければならないとの判断が下された。主にフランドルに対する、毛織物の輸入と原毛の輸出を規制する法律をつくる。
 その後、フランドルの優秀な織物職人をイングランドに呼び込むことにする。当時、低地地域にに吹き荒れていた政治的、宗教的な過激思想のせいで、多くの職人がフランドルから移住してきた。

●雄の尻尾(p217)
 バイオリンやビオラ、チェロなど弦楽器の弓で最高級品は、シベリア産かモンゴル産の雄の白馬の尻尾の毛。
 寒冷地に生息する動物は毛が丈夫。雄の毛が好まれるのは、その尻尾が日常的に尿にさらされていないから。
 尿は、毛幹を柔らかくし、キューティクル細胞を開かせてしまうため、毛にとって有害。

(2017/3/28)KG

〈この本の詳細〉


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