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ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた
 [自然科学]

ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた
 
パット・シップマン/著 河合信和/監訳 柴田譲治/訳
出版社名:原書房
出版年月:2015年12月
ISBNコード:978-4-562-05259-2
税込価格:2,592円
頁数・縦:289p・20cm
 
 
 さまざまな分野の研究成果を引用し、犬の家畜化がネアンデルタール人の絶滅に影響したとの仮説を展開する。
 
【目次】
第1章 わたしたちは「侵入」した
第2章 出発
第3章 年代測定を疑え
第4章 侵入の勝利者は誰か
第5章 仮説を検証する
第6章 食物をめぐる競争
第7章 「侵入」とはなにか
第8章 消滅
第9章 捕食者
第10章 競争
第11章 マンモスの骨は語る
第12章 イヌを相棒にする
第13章 なぜイヌなのか?
第14章 オオカミはいつオオカミでなくなったのか?
第15章 なぜ生き残り、なぜ絶滅したか
 
【著者】
シップマン,パット (Shipman, Pat)
 ペンシルヴァニア州立大学名誉教授。古人類学の専門家。著書に『人類進化の空白を探る』(ローヌ・プーラン科学図書賞受賞/アラン・ウォーカーとの共著/河合信和訳/朝日新聞社)ほか多数あり。
 
河合 信和 (カワイ ノブカズ)
 1947年、千葉県生まれ。1971年、北海道大学卒業。同年、朝日新聞社入社。2007年、定年退職。進化人類学を主な専門とする科学ジャーナリスト。旧石器考古学や民族学、生物学全般にも関心を持つ。
 
柴田 譲治 (シバタ ジョウジ)
 1957年生まれ、神奈川県出身。翻訳業。
 
【抜書】
●最小存続可能個体数(p20)
 哺乳類の最も小さな個体群(最小存続可能個体数:MVP)は1,000個体と考えられている。
 1,000個体以下になると、近親交配のせいで遺伝的多様性が消失し、有害な突然変異が高頻度で生じるようになる。
 また、小規模集団は大きな集団よりもハリケーンや伝染病、干ばついった偶発的な事象に対しても脆弱になる。
 MVPは、約100年後に95%の確率で生存していることを条件に定義されている。
 
●K戦略種(p81)
 生物の繁殖に関する戦略。「K」は、環境収容力を示す数式記号Kにちなんでいる。
 出産間隔が長くゆっくりと繁殖し、一度に生まれる子の数も少なく、未熟なまま生まれるため、親による手厚い世話が欠かせない。
 誕生時から「学習」が重要になる。
 肉食動物や類人猿にしばしばK戦略種が存在し、資源に制約がある場合、K戦略種は強力な競争相手となる。
 
●r戦略種(p82)
 個体数の成長速度の記号rにちなんだ名称。
 多くの子を産み、急速に繁殖し、子どもは大人と同じように動き、食べ、コミュニケーションをとり、行動する。ヌーは、誕生後数分で走り出し、乳を飲むようになる。
 
●グレイザー、ブラウザ―(p83)
 草食動物の3分類。
 (1)グレイザー……草を食べる種。
 (2)ブラウザー……木の葉を食べる種。
 (3)果実食種。
 
●ギルド(p84)
 〔生態学者はよく「同じギルドに属するふたつの種は競争する」といった言い回しをする。〕
 大型捕食者のギルド、グレイザーのギルド、ブラウザーのギルド、etc。
 
●ネアンデルタール人の食事(p87)
 マックスプランク進化人類学研究所のマイケル・リチャーズと、ワシントン大学のエリク・トリンカウスの研究。13件のネアンデルタール人の同位体分析。約12万年前~3万7000年前(未較正)の骨。
 成人ネアンデルタール人の食事に含まれるたんぱく質は、すべて、主に大型陸上哺乳類のものだった。遺跡付近に生息していたノウマ、アメリカアカシカ、トナカイ、オーロックスなど。
 同地域の頂点捕食者ホラアナライオン、オオカミ、ハイエナと非常によく似ていた。
 長い生存期間中、非常に安定した食習慣を維持し、自らが位置する栄養段階に適応していた。
 ネアンデルタール人が海洋性の食物を多く食べていた証拠は見つかっていない。
 現生人類も大型陸上動物を食べていたが、食物の内容はネアンデルタール人よりずっと多彩だった。
 
●体重と獲物(p148)
 捕食者の体重と獲物の動物の大きさの関係は、哺乳類では一定している。
 ・体重21.5kg以下の肉食動物は、主に自分の体重の45%以下の獲物を主食とする。
 ・体重21.5kg以上の肉食動物は、主に自分の体重の45%以上の獲物を食べる。概ね50kgの哺乳類捕食動物は、約59kgの獲物に狙いを定める。
 この体重による分類は、139種の肉食動物の92.1%にあてはまる。
 ・小型肉食動物の四分の三は雑食で、脊椎動物の肉だけでなく昆虫や植物も食べる。大型肉食動物の半数以上は、脊椎動物しか食べない。例外は、雑食のクマとその近縁種。
 
●毛皮(p170)
 グラヴェット期のマンモス骨が大量に出土する遺跡から、大量のオオカミの骨、ホッキョクギツネやノウサギなどの骨も見つかる。これらは厚い毛皮を持つ動物で、このころ現生人類の祖先は毛皮を利用していた。骨製の針に穴を空けて毛皮の縫い合わせをしていた。衣服を作り、敷物を作って暖かく寝ていた。
 
●家畜化(p256)
〔 5万年前から今日に至るまで、現生人類が圧倒的な侵入者となり得たのは、家畜化という前例のない他種との連帯形成能力が要因のひとつだったと私は考えている。私たちはオオカミを家畜化してイヌを生み出し、ずっとあとには野生ムフロンをヤギにし、オーロックスをウシに、リビアネコをイエネコに、さらにウマを高速輸送システムに変えた。わたしたちは他の種の形質を借り受ける能力を独自で生み出し、それらを利用して地球上のどんな生息地でも生き残れる能力を身に着けた。〕
 
●ネアンデルタール人の絶滅(p257)
〔 気候変動と新たな能力を身につけた現生人類の到着が重なりその影響が同時に作用したこと、それがネアンデルタール人絶滅の原因だと私は考えている。〕
〔 ネアンデルタール人の食生活や石器が絶滅前の数十万年間まったく変わっていなかったことを考えれば、ネアンデルタール人は自らの独自世界にこだわり、新たな技術を開発することにも生活様式を変えることにも積極的ではなかったらしい。現生人類と他の頂点捕食者(オオカミイヌ)との他に類を見ない連帯は、ネアンデルタール人と他の多くの捕食者の生存を不可能とする最終戦略となったのかもしれない。気候変動に新たな激しいギルド内競争が組み合わさったことが、ネアンデルタール人らに重大な困難をもたらしたのだ。考古学的また古生物学的記録からみえてくる状況は、頂点捕食者の出現による典型的な栄養カスケードにそっくりだ。この栄養カスケードが起きたからこそ、気候変動によって他のすべての種の間の相互関係が変化することになったのではないだろうか。〕
 
(2017/5/21)KG
 
〈この本の詳細〉


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