So-net無料ブログ作成
検索選択

クモの糸でバイオリン
 [自然科学]

クモの糸でバイオリン (岩波科学ライブラリー)  
大崎茂芳/著
出版社名:岩波書店(岩波科学ライブラリー 254)
出版年月:2016年10月
ISBNコード:978-4-00-029654-0
税込価格:1,296円
頁数・縦:114、2p・19cm
 
 
 趣味で(?)クモの糸の研究を始め、バイオリンの弦を作ってしまった研究者のエッセー。この人、なかなかの凝り性で、自分でバイオリンを買って演奏するまでになった。クモは、主にジョロウグモまたはオオジョロウグモの糸を使っているようだ。
 
【目次】
1 クモのことをもっと知りたい
 クモとの出会い
 クモの巣のいろいろ
  ほか
2 クモが繰り出す魔法の糸
 柔らかくて強い
 クモの糸の不思議な構造
  ほか
3 バイオリンに挑戦!賛
 音楽に参戦
 バイオリンを購入
  ほか
4 魔法の糸の音色の秘密
 「よい音」とはなにか
 バイオリンでの音色解析
  ほか
5 音色が世界を駆けめぐる
 学会発表とその反響
 取材対応でヒヤリ
  ほか
 
【著者】
大崎 茂芳 (オオサキ シゲヨシ)
 1946年兵庫県生まれ。大阪大学理学部卒業、大阪大学大学院理学研究科博士課程修了。(株)マイカル商品研究所所長、島根大学教育学部教授、奈良県立医科大学医学部教授を経て、同大学名誉教授。理学博士、農学博士。専門は、生体高分子学。文部科学大臣表彰科学技術賞、日本オーディオ協会顕彰「音の匠」など受賞。
 
【抜書】
●7種類の糸(p7)
 典型的な円網を張るクモは、7種類の腺から別々の糸を出して使い分けている。粘着性の糸は横糸だけ。
 (1)枠糸……巣のフレームとなる。
 (2)繋留糸……巣を木などに固定する。
 (3)縦糸……巣の骨格となる。
 (4)横糸……縦糸のあいだに渡す。粘着性がある。
 (5)こしき……円網の中心にある、クモの生活場所。
 (6)附着盤……牽引糸の尖端を物体に固定するのに使う。
 (7)牽引糸……危険が生じて逃げるときに使う、命綱。
 他に、獲物を取るための捕獲帯や、卵を保護する卵のうもある。
 
●破断応力、弾性率(p23)
 破断応力……糸を引っ張っていき、切れた時の断面積あたりの力の強さ。牽引糸は、ナイロンよりも数倍大きい。
 弾性力……物体を伸ばしたり、圧縮したりする時の変形しにくさを表す指標。ナイロンでは4GPa(ギガパスカル)だが、牽引糸は13GPa。
 つまり、クモの糸は柔らかくて強い。
 
●「2」の安全則(p27)
 牽引糸は、円柱状の細い2本のフィラメントからなっている。
 牽引糸の弾性限界強度は、体重の約2倍。つまり、1本が切れても残りの1本で支えることができる。
 
●250℃(p29)
 牽引糸は250℃以上で分解し始め、300℃で重量が減り、350℃で変色、600℃で完全に分解。
 クモの糸に融点はないが、250℃までは安定な状態。
 合成高分子のポリエチレンの融点は約120℃。
 
●紫外線(p31)
 紫外線のうち、波長の長いUV-Aは、地球の表面に届く紫外線の大部分を占める。波長がもう少し短く、危険なUV-Bは、オゾンホールができると届くようになる。UV-Cは地表には届かない。
 UV-Aを昼行性のジョロウグモの牽引糸に当てると、破断応力は、照射時間が経過するとともに上昇、5時間後に極大、その後、徐々に低下、48時間程度で初期値まで下がる。
 ジョロウグモの糸は、毎晩、半分ずつ張り替えられる。いったん張った糸は、2日後には新しい糸になる。
 夜行性のズグロオニグモの場合、糸の破断応力は照射時間とともに低下するのみ。
 
●バイオリン弦(p66)
 牽引糸によるバイオリン弦の作り方。A線(2番目に高音)の場合。
 (1)多数のオオジョロウグモから巻き取った約100cmの糸3,000本の両端を粘着テープで留め、糸束の状態にして6か月保存。80cmくらいに縮む。
 (2)これを左巻きにねじると73cmの紐ができる。
 (3)同じ紐を3本作り、一緒に右巻きにねじり、65cmの太い紐にする。両端に結びを作り、55cmになる。
 (4)表面を均一にするためにゼラチンに5分間つけ(スキップすることもある )、一晩乾かす。最終的にできた弦の太さは850μm。
 E線は2,000×3本、D線は4,000×3本、G線は5,000×3本。
 
●倍音(p77)
 クモの糸の弦は、スチール弦、ガット弦に比べて、強度の大きい倍音が多数出る。
 スチール弦は、倍音が出るが、強度は小さい。ガット弦は、第2倍音の強度のみが大きい。
 クモの糸では、すべての倍音が比較的大きい。特に第8倍音、第9倍音が大きい。
 
●断面(p81)
 クモの弦の断面は、1本1本の糸の断面が円形から多角形へと大幅に変形。糸と糸の隙間がなくなっている。繊維間の摩擦が大幅にアップし、隙間の多い通常の繊維集合体に比べて弾性率(変形しにくさ)が大幅に上昇。一部の細い繊維が切れても、残りの繊維で支えることができるので、弦そのものが切れにくくなる。
 
(2017/7/22)KG
 
〈この本の詳細〉


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました