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遺伝子の社会
 [自然科学]

遺伝子の社会  
イタイ・ヤナイ/著 マルティン・レルヒャー/著 野中香方子/訳
出版社名:NTT出版
出版年月:2016年10月
ISBNコード:978-4-7571-6069-9
税込価格:3,024円
頁数・縦:285p・20cm
 
 
 生き残りをかけて闘いを繰り広げる「遺伝子の社会」を描く。生物の進化を、遺伝子をキーとしてわかりやすく解説してくれる。
 
【目次】
第1章 八つの簡単なステップを経て進化するがん
第2章 敵はあなたをどう見ているか
第3章 セックスの目的は何か?
第4章 クリントン・パラドックス
第5章 複雑な社会に暮らす放埒な遺伝子たち
第6章 チューマン・ショー
第7章 要は、どう使うかだ。
第8章 窃盗、模倣、イノベーションの根
第9章 物陰の知られざる生命
第10章 フリーローダーとの勝ち目のない戦い
 
【著者】
ヤナイ,イタイ (Yanai, Itai)
 ニューヨーク大学医学部教授(生化学・分子薬理学)・計算医学研究所所長。ハーバード大学、ワイツマン科学研究所(イスラエル)、イスラエル工科大学(テクニオン)准教授(生物学)・テクニオンゲノムセンター所長を経て現職。
 
レルヒャー,マルティン (Lercher, Martin)
 デュッセルドルフのハインリッヒ・ハイネ大学教授(生物情報学)。ケンブリッジ大学でPhD(理論物理学)取得後、バース大学(イギリス)とハイデルベルクのヨーロッパ生物学研究センターでゲノムを研究。
 
野中 香方子 (ノナカ キョウコ)
 翻訳家。お茶の水女子大学卒業。
 
【抜書】
●テロメラーゼ(p25)
 テロメアの再生を専門とする酵素。複数のたんぱく質(サブユニット)で構成され、異なる染色体上の遺伝子座にコードされている。TERT遺伝子が、テロメラーゼの作成にかかわる。
 テロメラーゼが存在する理由……卵子や精子を作る過程で、次世代が完全なテロメアを備えるために必要になる。このような、「不死」細胞という選ばれたグループのみで使われ、一般の細胞では働かないようになっている。
 テロメア……染色体の両端についている。細胞分裂の回数をおおまかに記録する「カウンター」。決まった文字列(哺乳類ではTTAGGG)が数千回も繰り返される。染色体が複製されると、テロメアの端が切り離され、短くなる。
 
●癌のホールマーク(p29)
 癌の発生には、以下の八つのホールマーク(証明)すべてを経なければならい。
 (1)増殖シグナルを自給する。
 (2)増殖抑制シグナルを無視する。
 (3)不死になる。
 (4)細胞の自殺を避ける。
 (5)免疫システムによる破壊を避ける。
 (6)貪欲にエネルギーを消費する。
 (7)新しい血管を引き寄せる。
 (8)遠くの部位をに侵入する。
 
●自然選択が働く条件(p36)
 (1)個体差があり、(2)遺伝性で、(3)適応度に影響するときに、自然選択が働く。ダーウィンによる。
 
●ハダカデバネズミ(p41)
 東アフリカに棲む。寿命が30年。一般にネズミの寿命は2~3年。
 ハダカデバネズミは癌にかからない? 八つの防御プログラムの一つを強化したか、九つ目の防御メカニズムを備えている。この仕組みが分かれば、癌の新薬開発に貢献する可能性あり。
 
●アレル(p44)
 アレル=対立遺伝子。たとえば、ヒトの半分は、ある遺伝子の4番目にCがあり、残り半分はGがあるといった具合。
 
●トゲネズミ(p82)
 日本のオキナワトゲネズミには、Y染色体がない。X染色体が一つしかないのが、オスのしるし。
 
●精子の生成(p91)
 精子の生成は思春期に始まり、男性が死ぬまで続く。しかし、細胞分裂のたびにより多くの変異が蓄積されていく。そのため、多くの遺伝的疾患は、父親の年齢とともに増えていく。
 マルファン症候群は、父親の精巣で発生した変異が原因となる場合が多い。50歳以上の父親は、20歳代前半の父親より、10倍可能性が高い。
 マルファン症候群……異常に背が高く、指が細長く、しばしば、肺、目、主幹動脈の病気を抱えている。結合組織を組み立てるのに必要なたんぱく質の形成を担っているフィブリリン1遺伝子の欠損が原因。
 
●アフリカ(p123)
 アフリカの外より中のほうが遺伝的多様性が豊か。
 非アフリカ人よりアフリカ人のほうが変異の種類が多いので、どんなことでも、最高に優れた遺伝的要因を持つ人は、アフリカ大陸のどこかに住んでいる可能性が高い。
 〔いつの日か、アフリカのどこかで子どもたちがチェスをするようになり、数世代経てば、チェスの国際大会でアフリカ人が優勝する、というのも、まったくの絵空事ではない。〕
 
●エピスタシス(p136)
 アレル間の相互作用。
 たとえばパーキンソン病は、原因はエピスタシス、すなわち三つのアレルの相互作用がうまくいかないことに起因する。
 
●セントロメア(p150)
 ヒトの染色体は23対、チンパンジーの染色体は24対。ヒトの第二染色体は、チンパンジーの二つの短い染色体がくっついたもの。
 セントロメア……すべての染色体にある、特別な領域。細胞が分裂するとき、分子の「ロープ」がこの領域に付着し、対になっている染色体を引き離す。
 ヒトの第二染色体には、現在のセントロメアの他に古いセントロメアの名残がある。祖先の二つの染色体が融合した時の名残。
 
●チンパンジー(p159)
 チンパンジーとヒトのX染色体の違いは、他の染色体の違いより約20%も少ない。ヒトとゴリラのゲノムでは、変異はすべての染色体に均等に散らばっている。
 初期のチンパンジーと初期のヒトが分岐し、それぞれのゲノムがかなり変異を蓄積した後、再び交配した。その際、チンパンジーの雌とヒトの雄との交配に偏っていた。
 混血の子ども(娘XXと息子XY)のX染色体の三分の二は、チンパンジー由来となる。
 
●ネアンデルタール人(p162)
 アフリカ人のゲノムは、非アフリカ系に比べて、ネアンデルタール人との違いが少し多い。30万年以上前に分岐した現生人類(初期のヨーロッパ人)とネアンデルタール人が、のちにアフリカの外で再び性的な交渉を持った証拠。
 
●デニソワ人(p164)
 アジア北部に暮らしていた人類。ネアンデルタール人の遠い親戚。
 東南アジアに到達した現生人類と性交した。現代の東南アジア人のゲノムにその痕跡が残されている。
 
●HLA遺伝子(p168)
 現生人類より20万年も前からヨーロッパで暮らしていたネアンデルタール人は、この地域の気候と病原体に適応していた。交配によって、その遺伝子が現生人類に受け継がれ、自然選択で普及した。
 ヒト白血球型抗原HLA-AとHLA-Cは、細胞内部から細胞の表面へたんぱく質断片を運ぶ役割を担うたんぱく質をコードする遺伝子。免疫系の機能にとって重要な遺伝子。どの病原体が認識できるかに影響する。
 現代アジア人のHLA遺伝子は、デニソワ人のゲノムに見られるものによく似ている。全体的にみて、現代アジア人の70~80%は、ネアンデルタール人とデニソワ人のいずれかに由来するHLA-Aアレルをそのゲノムに含んでいる。
 現代ヨーロッパ人では、ネアンデルタール人のアレルを持つ可能性はおよそ50%。
 アフリカ人は、これら古代型のHLA-Aタイプの一つを持つ可能性は6%。おそらく、その人の祖先がユーラシアからアフリカに戻った結果。
 
●選択浄化(p174)
 重要な変異の周辺では多様性が失われること。
 通常、二つのヒトゲノムを比べると、1,000文字に一つ違いがある(欠損や挿入を除く)。
 FOXP2遺伝子は、発話にとって重要な遺伝子。FOXP2周辺の領域は、みんな似ている。その違いは、通常の0.5%以下。言語が、ある家族が繁栄するうえでいかに重要だったかということの表れ。
 
●GADD45G(p177)
 GADD45Gは、マネージャー・タイプの遺伝子で、どの細胞の成長を止めるかというタスクを管理する。腫瘍抑制遺伝子とも呼ばれる。
 チンパンジーとヒトのゲノムの違いの一つは、GADD45G遺伝子のスイッチを含む領域にある。ヒトでは、3,200文字からなるかなり長い配列が欠けている。この欠損により、胚成長のある段階で、脳領域の成長を止める能力を失った。つまり、ヒトが大きな脳を持つことになった。
 
●HOX遺伝子(p190)
 胎生のある時期、動物は非常によく似ている。
 ほとんどの動物が、非常によく似た文字配列のホメオティック遺伝子群=HOX遺伝子群(形質転換遺伝子)を持っている。ハエ、センチュウ、マウス、……etc。例外は、クシクラゲ類など。
 HOX遺伝子は、交換可能。ハエのHOX遺伝子をセンチュウやマウスに導入しても胎の正常な成長を導くことができる。
 
●クリスタリン(p199)
 水晶体は、クリスタリンと呼ばれる透明なたんぱく質によって形成されれる。
 クリスタリン遺伝子は、代謝にかかわる遺伝子が重複し、進化したもの。クリスタリンの元々の仕事は、アルコールの分解だった。
 
●真正細菌、古細菌(p228)
 およそ20億年前、古細菌が小さな真正細菌(ミトコンドリアの祖先)を飲み込み、それをエネルギー源にした。そして、真核生物が誕生した。
 細胞内にミトコンドリアを取り込んだ結果、核ができた。核の壁は、家主のゲノムを取り囲み、死んだ間借り人(ミトコンドリア)のDNAの絶え間ない流入から自らのゲノムを守っている。
 
●LINE1(p237)
 60億文字からなるヒトのゲノムでは、管理に必要なスイッチも含め、実際に機能しているDNAは全体の三分の一に満たない。2万個のたんぱく質コード遺伝子や、健康に貢献すると思われる他のゲノム領域など。残りの40憶文字は、人の生存に何の貢献もしていない。
 LINE1(Long Interspersed Elements type 1) ……ゲノムのフリーローダー。ゲノムのうち15%以上は、ある特定の配列となっており、それがLINE1。50万コピー以上存在する。ニューヨーク公立図書館の蔵書1,200万冊のうち、180万冊がまったく同じ本(!?)。
 50万コピーは、完全に一致するわけではなく、多少の変異もある。数百年前に1匹の霊長類の遺伝子に入り込んだ配列にさかのぼる。
 完全なLINE1は、6,000文字の長さがある。マネージャー、コンバーター(RNAからDNAへの変換)、プレーカー(DNAの切断)の機能を持つ領域で成り立っている。ゲノムの他の部分に、自らのコピーをペーストしている。 ⇒ セルフ・コピー&ペースター
 
●Alu(p243)
 Aluファミリーは、ヒトのゲノムのなかに100万コピー存在し、10%を占めている。100~400文字の短いフリーローダー。LINE1と異なり、コンバーターとブレーカーを持たない。LINE1が切断したDNAの切り口に入り込む。
 
(2017/7/28)KG
 
〈この本の詳細〉


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