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アンドロイドは人間になれるか
 [コンピュータ・情報科学]

アンドロイドは人間になれるか (文春新書)

石黒浩/著
出版社名 : 文藝春秋(文春新書 1057)
出版年月 : 2015年12月
ISBNコード : 978-4-16-661057-0
税込価格 : 788円
頁数・縦 : 223p・18cm


 石黒浩の人間論、ロボット論。「プロローグ」によれば、ライターの飯田一史の「代筆」であるという。石黒がこれまでに書いた文章と、新たに語った話を飯田が書き起こした。
 自らが製作にかかわったロボットやアンドロイドの機能と役割を紹介しながら、ロボット(およびアンドロイド)がもたらす未来像と、ロボット(およびアンドロイド)を生み出した心理学を語る。後者は、アンドロイドをいかに人間らしく見せるか、いかに自然な対話を成立させるか、そして、いかにすれば人間がロボットを承認するか、という問題の解である。
 しかし、アンドロイドが人間に取って代わる将来像に、私は疑問がある。人間の代わりにアンドロイドが仕事をしてくれるとして、人間は何をすればいいのか? 石黒は、そのときヒトは哲学者になるという。体を動かさなくなった人間は、考える時間が増え、貨幣に換えがたい知識を生み出すというのだ。果たしてそうだろうか?
 確かに、氏の言うとおり、これまでの技術は人間の仕事を肩代わりしてきた。アンドロイドもその延長線上にあるという。しかし、これまでの技術が肩代わりしてきたのは、人間の機能の一部である。自動車が足の替わりを、コンピュータが頭脳の一部の替わりを、という具合だ。ところがアンドロイドは、人間の機能すべてを肩代わりできる(完璧な進化を遂げれば、だが)。そうなると、人間という存在は必要なくなる。それでも人間は、人間にしかできないことを考え出す、と言うのだが……。そんな社会に、人間は存在する幸福を感じることができるのだろうか。

【目次】
第1章 不気味なのに愛されるロボット―テレノイド
第2章 アンドロイド演劇
第3章 対話できるロボット―コミューとソータ
第4章 美人すぎるロボット―ジェミノイドF
第5章 名人芸を永久保存する―米朝アンドロイド
第6章 人間より優秀な接客アンドロイド―ミナミ
第7章 マツコロイドが教えてくれたこと
第8章 人はアンドロイドと生活できるか
第9章 アンドロイド的人生論

【著者】
石黒 浩 (イシグロ ヒロシ)
 1963年、滋賀県生まれ。山梨大学工学部卒業、同大学院修士課程修了。大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。工学博士。現在、大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻教授(特別教授)。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。JST ERATO石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクト研究総括。

【抜書】
●ディープラーニング(p69)
 コンピュータ上で走る学習アルゴリズム。人間の神経回路を模倣したもの。従来の模倣ではせいぜい3層くらいのネットワークだったが、現在では、6層から8層といった複雑な計算ができるようになっている。

●音声認識しない対話ロボット(p74)
 ロボットと人間との対話を実現。相手の人間が何を言っても、3体いるロボット(コミュー、ソータ)同士の会話が続くように設計されている。ときどき人間に質問を投げかけるが、人間が言ったことを認識していない。人間の答えに対して、すべて「そっか」で返し、その後、またロボット同士の会話に戻る。それでも、人に「対話している感」を与えることができる。
 3体のうち2体以上がお互いに対話していれば、そこに参加している人間は、自分が直接話していなくても、対話しているような感覚になってしまう。

●怒る(p95)
〔 僕はかつて「怒る」ことができなかった。怒ることに何のメリットも感じなかったからだ。怒ったところで事態が解決することは少ない。関係がこじれたり、時間を浪費するだけで、デメリットのほうが大きい。そう思ってきた。だから「怒る」とは、何をどうすることなのか、どうすべきかがわからなかった。大学に入り、教師として振る舞わざるをえなくなってから、怒る練習をした。
 きっかけはこうだった。大教室で講義をしているのに、学生があまりにざわついている。静かに注意しても、まったく止む気配がない。学生たちは、完全に僕をナメていた。これは恐怖を与え、教師と学生という上下関係のヒエラルキーをはっきりさせなければ、この場を統制することはできない。そう判断した僕は、しかたなく教壇を思い切り蹴飛ばし、ついに教壇が大きな音を立てて倒れたのを確認したあと、無言で教室から出ていき、その日は授業に戻らなかったのだ。
 それ以降、誰ひとり僕の授業でささやく学生はいなくなった。「石黒は怒ると死ぬほど怖い」と思われるようになったようだ。
 教壇を倒れるほど激しく蹴り飛ばす――あのとき身体を動かして生じた高揚感、身体がカッカと熱くなる感じを認識することで、僕は初めて「なるほど。これが怒りか」とわかったのだ。それからはあのとき蹴り飛ばした感覚を想像するだけで、気分をたかぶらせ、「怒る」ことができるようになった。〕

●最適なコミュニケーション(p104)
〔 ロボットにかぎらず、今後テクノロジーは、多様な個々人に最適なコミュニケーション方法をつくりだし、そのひとごとに調整できるように進化していくだろう。対面コミュニケーションがあまりにも重視されてきた時代には、たとえば家にこもってプログラミングに熱中しているような人間は、変人扱いされていた。しかし、本人が自宅にいても遠隔操作型ロボットを職場に置き、他者とコミュニケーションを取れるようにすれば、これからの時代には特に問題は生じなくなる。たとえこもりがちでも、本人がしやすい手段で誰かと通信し、健全に仕事をしていれば、社会は受け入れるようになっていく。〕

●「ワカマル」死体遺棄事件(p134)
 平田オリザが演出したロボット演劇『働く私』に出演したロボット「ワカマル」を大学のゴミ捨て場に大量廃棄した。
 捨てられたワカマルを見た学生が、写真付きで「どうしてこんなことになったんですか?」という呟きをTwitter上に投稿。1時間の間に日本中の人がリツイート。研究室に「かわいそうだ」という大量の「苦情」が来てパニックに。
 ワカマルを研究室に 引き上げ、何体かは博物館に寄付。
 ワカマルのように活動するヒト型ロボットは、すでに「社会的な人格」を持っている。「廃棄」するときには、葬式が必要?

●接客ロボット「ミナミ」(p142)
 大阪タカシマヤで、接客ロボット「ミナミ」が服を売っている。
 高齢者や男性に対しては、人間よりもいい成績を出している。
 来客者は、ミナミとタブレット・コンピュータを使って会話。ディスプレイに示される選択肢を選んで操作する。ミナミには、想定質問がプログラムされている。選択肢の三つはポジティブ、一つはネガティブ(例:「そんなこと言うて、また買わそうとして」)。
 ミナミに対して一度ネガティブな回答を選択した人間は、負い目を抱くから、次にはポジティブな選択肢を選ぶことが多い。買い物に一歩踏み込む。
 客が人間の店員に話しかけることは、「その服を買わなければいけない」というプレッシャーにつながる。
 アンドロイドに対しては、「ロボットだし、イヤなら無視すればいい」と思う。話しかけることに抵抗がない。逆説的だが、断れると安心しているからこそ、積極的に買い物に臨める。
 また、「アンドロイドは嘘をつかない」という信頼感がある。接客時に、カラーコーディネートのシステムを使って、「お似合いですね」と褒める。人間の店員と違って、客は信じる。
 女性への販売成績は、男性の10分の1以下。しかし、売り場全体の売り上げは1.5倍になった。女性は、カラーコーディネートのシステムを無料で利用している。

●好き嫌い(p213)
 好き嫌いを簡単につけてしまうことは、半分目を閉じているのと同じ。「嫌い」に振り分けた半分の情報を捨てていることになる。
 好き嫌いを簡単に口にし、周りに敵か味方かのレッテルを貼り、二項対立にしてしまう人は、脳のキャパシティ、情報処理能力が乏しい。たくさん情報が入ってくると混乱してしまうので、好き嫌いを先に選ぶしかない。あらかじめ「ここしか見ない」とフィルタリングしないと頭がパンクしてしまう。

●哲学者(p220)
〔 技術開発を通して人の能力を機械に置き換えているのが人間の営みであり、その営みは「人間すべての能力を機械に置き換えた後に、何が残るかを見ようとしている」と言いかえられる。ロボットは「人間を理解したい」という根源的欲求を満たす媒体なのだ。
 ロボットによって物理的な生活はどんどんラクになり、人間は一生懸命からだを動かさなくてもよくなる。あらゆる仕事をアンドロイドが肩代わりしてくれるようになる。
 生活が豊かになれば、人間が考える時間が必然的に増える。お金を稼ぐのはロボットになり、ひとびとはむしろ貨幣に変えがたい知識を生みだし、共有することに価値の重きを置く。そのような人間らしい社会が来るはずだ。ロボット化社会は、貨幣的な価値にそれほど重きを置かない社会になる。ロボットが普及する次の一〇年、二〇年は、ひとびとが哲学者になる時代ではないか。僕はそれに先んじて、すべての人間を哲学者にしたいのだ。〕

(2016/2/27)KG

〈この本の詳細〉


ネアンデルタール人は私たちと交配した
 [自然科学]

ネアンデルタール人は私たちと交配した

スヴァンテ・ペーボ/著 野中香方子/訳
出版社名 : 文藝春秋
出版年月 : 2015年6月
ISBNコード : 978-4-16-390204-3
税込価格 : 1,890円
頁数・縦 : 365p・20cm


 ネアンデルタール人のゲノム解析に成功した研究チームのリーダーが、その苦労と古代遺伝子研究の要諦を語る手記。
 DNA解析には、解析対象以外のDNAが紛れ込む危険が常に付きまとう。何万年も前の化石から取り出したDNAは、特にその可能性が高くなる。対象本来のDNAのほとんどは壊れて失われており、人が触ったり、細菌に汚染されたりして化石に付着したDNAを、解析対象のDNAと誤認してしまうことが多いからだ。いかにしてその可能性を排除し、目的のDNAを取り出すか。それは、古代遺伝子の研究というより、いかに余分なDNAを排除し、いかに対象物のDNAを正確に確定するかの研究であると言ってよい。
 本書では、その苦労と手法を丹念に描いており、真実を求める科学者の真摯な姿勢がにじみ出ている。その真理探究の態度はすがすがしくさえ感じる。

【目次】
第1章 よみがえるネアンデルタール人
第2章  ミイラのDNAからすべてがはじまった
第3章  古代の遺伝子に人生を賭ける
第4章  「恐竜のDNA」なんてありえない!
第5章  そうだ、ネアンデルタール人を調べよう
第6章  二番目の解読で先を越される
第7章  最高の新天地
第8章  アフリカ発祥か、多地域進化か
第9章  立ちはだかる困難「核DNA」
第10章  救世主、現れる
第11章  500万ドルを手に入れろ
第12章  骨が足りない!
第13章  忍び込んでくる「現代」との戦い
第14章  ゲノムの姿を組み立てなおす
第15章  間一髪で大舞台へ
第16章  衝撃的な分析
第17章  交配は本当に起こっていたのか?
第18章  ネアンデルタール人は私たちの中に生きている
第19章  そのDNAはどこで取り込まれたのか
第20章  運命を分けた遺伝子を探る
第21章 革命的な論文を発表
第22章 「デニソワ人」を発見する
第23章 30年の苦闘は報われた

【著者】
ペーボ,スヴァンテ (P¨a¨abo, Svante)
 生物学者。ドイツ・ライプツィヒのマックス・プランク進化人類学研究所の進化遺伝学部門ディレクター。

野中 香方子 (ノナカ キョウコ)
 翻訳家。お茶の水女子大学卒業。

【抜書】
●mtDNA(p88)
 卵子に貫入する精子の頭部には、ミトコンドリアがない。mtDNAが混じっていない核DNAを得るには、精子の頭部を切り取って集める。

●マックス・プランク協会(p114)
 マックス・プランク協会……基礎研究を支援するドイツの団体。
 前身は、1911年に設立されたカイザー・ヴィルヘルム協会。ドイツが科学大国だった時代に、オットー・ハーン、アルベルト・アインシュタイン、マックス・プランク、ヴェルナー・ハイゼンベルクといった科学界の巨匠を中心とする研究機関を創設し、支援した。
 ヒトラーが権力の座に着いた後、ユダヤ人だという理由で多くの優秀な科学者を失脚させた。本来、政府とは無関係の機関だったが、以後、軍事機構の一部と化し、兵器の研究などに注力することになる。
 さらに、人類学、遺伝子、優生学の研究所を通じて、人種差別的な科学に積極的に関与。アウシュビッツ収容所では、被収容者(多くが子ども)に実験を行った。
 1948年、マックス・プランク研究所が設立されると、人類学は最も避けるべきテーマとなった。
 しかし、1997年、旧東ドイツ領内に、進化人類学研究所を設立することになり、ペーボが創設者として迎えられる。ライプツィヒに研究所設立。

●83万年前(p259)
 2009年5月、5人の現代人のゲノムとネアンデルタール人のゲノムとの配列解析。
 50万年前……ヨーロッパ人、パプア人、中国人の共通の祖先。
 70万年前……上記とサン人(ブッシュマン)との共通の祖先。
 83万年前……上記とネアンデルタール人との共通の祖先。
 しかし、現代人とネアンデルタール人の分岐は、44万~27万年前、遅くとも30万年前と推定される。

●ネアンデルタール人由来の遺伝子(p272)
 アフリカ以外の人々のDNAの5%未満が、ネアンデルタール人に由来する。
 モンティ・スラトキンの推計では、ヨーロッパ人とアジア人は1~4%。ライシュとパターソンの推計では、1.3~2.7%。

●人類最初の飛び道具(p276)
 交替した集団(replacement crowd)……5万年前、急速に旧世界に拡散し始めた現生人類集団。オーリニャック文化を発展させた。
 オーリニャック文化……石刃を含む多様なフリント石器を特徴とする。骨でできた槍先や矢尻が出土。考古学者は、人類が発明した最初の飛び道具とみなしている。最初の洞窟壁画や、動物をかたどった小像も生まれた。半神半獣の神秘的な像も。豊かな精神世界を持ち、集団内でのコミュニケーションを重視していたことを示唆。

●猿まね(p286)
 人間の子どもと類人猿の子どもの違い。人間の子どもは、親や他の大人の行動をまねる傾向がはるかに強い。類人猿の子どもは「猿まね」をしない。

●ヒトと類人猿(p302)
 コーリー・マクリーン(スタンフォード大学大学院生)が、類人猿にあってヒトにないDNAの連なり583箇所を確認。そのなかの興味深いもののいくつかは……。
 ピーナイル・スパイン(ペニスの突起)に関係するタンパク質をコード化する遺伝子。このために、類人猿はあっという間に射精する。
 ニューロンの分裂を抑制するタンパク質をコード化する遺伝子。これがないために、人間の脳がより大きくなった。
 上記の例は、ネアンデルタール人も同様だった。

●FOXP2遺伝子(p348)
 人間のFOXP2遺伝子(言語能力と関連する)から作られたタンパク質は、類人猿や他の哺乳類と二つのアミノ酸が異なる。
 マウスのFOXP2は、チンパンジーと似ている。人間のFOXP2にみられる2箇所の変異をマウスに導入すると、通常の子ネズミの声とは微妙にではあるがはっきりと異なる鳴き声を上げた。FOXP2の変異が、声によるコミュニケーションの違いをもたらす。

(2016/2/27)KG

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ムネオの遺言 逆境から立ち上がる37の方策
 [社会・政治・時事]

ムネオの遺言 逆境から立ち上がる37の方策

鈴木宗男/著
出版社名 : 講談社ビーシー
出版年月 : 2015年11月
ISBNコード : 978-4-06-219750-2
税込価格 : 1,000円
頁数・縦 : 215p・18cm


 鈴木宗男の自伝。中川一郎の秘書になり、中川の自殺後、自ら国政選挙に打って出、自民党の要職や大臣を歴任するも国策捜査で塀の中にぶち込まれ、刑期を終えて出所して現在に至る軌跡を綴る。
 2017年4月末に、公民権の停止が解けるとのことで、その日に向けての決意表明か。

【目次】
第1章 足寄に生まれ政治家をめざす
 「子供の頃の苦労は買ってでもすれ」
 ものは言い様と思え
  ほか
第2章 恩師中川一郎の死を乗り越えて
 これもまた人と人との巡り合わせ
 言葉の重みを考えて決断する
  ほか
第3章 順風満帆にして政界でのし上がっていく
 「悪名は無名に勝る」と思え
 目いっぱい、手抜きしないでやれ
  ほか
第4章 暗転「ムネオ疑惑」―検察そしてガンとの闘い
 出る杭は打たれる、出過きだ杭は抜かれる
 一つ言えば百返ってくる
  ほか
第5章 「どん底」刑務所暮らしから政界復帰へ
 とにかく前向きに考えるべし
 猫をかぶってぶつかるな
  ほか

【著者】
鈴木 宗男 (スズキ ムネオ)
 1948年、北海道生まれ。拓殖大学卒業。衆議院議員・中川一郎の秘書としてスタートし、1983年、衆議院議員選挙に初当選。その後、防衛政務次官、外務政務次官、衆議院議院運営委員長、北海道・沖縄開発庁長官、内閣官房副長官、自由民主党副幹事長、同総務局長などを歴任。2002年、外務省をめぐる疑惑事件に巻き込まれて自由民主党を離党。同年、斡旋収賄の容疑で逮捕される。2003年に保釈。2005年9月の衆議院議員選挙に際し、新党大地を旗揚げし、復活を果たす。

(2016/2/24)KG

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メソポタミアとインダスのあいだ 知られざる海洋の古代文明
 [歴史・地理・民俗]

メソポタミアとインダスのあいだ: 知られざる海洋の古代文明 (筑摩選書)

後藤健/著
出版社名 : 筑摩書房(筑摩選書 0124)
出版年月 : 2015年12月
ISBNコード : 978-4-480-01632-4
税込価格 : 1,836円
頁数・縦 : 292p・19cm


 メソポタミア文明は農耕文明であったが、農産物と土器以外の物資をかの地で生産することができなかった。木材も金属も、両河流域では手に入らなかったのだ。そのため、エラム(原エラム文明、トランス・エラム文明)やマガン国(ウンム・ン=ナール文明)、ディルムン国(バールバール文明)などの近隣の非農耕文明との交易によって、メソポタミアの生活は支えられていた。さらに、陸上ネットワーク、海上ネットワークを形成した非農耕文明は、インダス文明の成立にも大きな役割を果たした。
 アラビア湾両岸の都市遺跡が物語る、メソポタミアからインダスにかけて展開した、交易を核とする知られざる古代文明を解き明かす。

【目次】
第1章 メソポタミア文明の最初の隣人たち
 メソポタミア人の最初の足跡
 文明初期のメソポタミアと隣人たち
  ほか
第2章 イラン高原の「ラピスラズリの道」―前三千年紀の交易ネットワーク
 トランス・エラム文明
 国際的ヒット商品、「古式」クロライト製容器
  ほか
第3章 ウンム・ン=ナール文明―湾岸文明の成立
 ウンム・ン=ナール文明の成立から衰退まで
 ウンム・ン=ナール文化の墳墓
  ほか
第4章 バールバール文明―湾岸文明の移転
 バハレーン砦における都市の成立
 ファイラカ島における都市の成立
  ほか
第5章 湾岸文明の衰退
 ファイラカにおける考古学的証拠
 バハレーンにおける考古学的証拠
  ほか

【著者】
後藤 健 (ゴトウ タケシ)
 1950年生まれ。東京教育大学卒業、同大学院修士課程修了、筑波大学大学院博士課程中退。古代オリエント博物館研究員、東京国立博物館研究員、同西アジア・エジプト室長、同上席研究員を務め、2011年定年退職。現在同館特任研究員。西アジア考古学専攻、東海大学博士(文学)。中東各地で考古学調査に従事。

【抜書】
●ウルク・ワールド・システム論(p32)
〔 メソポタミア南部に発したウルク期の文化は、メソポタミア全域とその周辺地域に急速に広がり、南メソポタミア型の都市・集落が広範囲に形成された。これは「ウルク文化の大拡張」として知られる。ギレルモ・アルガゼの「ウルク・ワールド・システム論」は、メソポタミア文明の起源論に刺激的な一石を投じた。同論では、ウルクが遠隔地産物資獲得のための水陸のルートを支配するために、自らの拠点を各地に設置(植民)し、これをネットワーク化したというのだ。ウルク・ワールド・システムは以下の四つの段階を経て完成したとされる。〕
 ① メソポタミアの東に隣接するエラム地方に植民を行い、東方に広がるイラン高原からの物資輸送ルートの確保を図る。
 ② ティグリス、ユーフラテス両河の上流に植民を開始。小規模な拠点を設置。
 ③ 特にユーフラテス河上流の開発を続け、シリア、アナトリアにおいて、ウルク文化をもつ大規模植民都市を設置。
 ④ 北メソポタミアや西南イランに拠点を設置し、そこを経由する輸送ルートの確保を図る。

●ウンム・ン=ナール文明(p114)
 前2500年頃成立したウンム・ン=ナール文明(マガン国)は、遠隔各地との海上交易路を敷設し、メソポタミア文明とインダス文明(メルッハ)との間の有機的な関係を担うこととなった。ウンム・ン=ナール島(オマーン半島)は、そのハブとして機能した。
 同文明は、前2000年紀の末にオマーン半島から姿を消す。

●非農耕文明(p165)
〔 アラビア湾岸における古代文明は本質的に非農耕文明であった。近接する地域で起こった古代文明のうち、メソポタミア文明とインダス文明は人類史を代表する農耕文明であったが、イラン高原最古の文明は非農耕文明であり、その遺伝子を引き継ぐ湾岸の古代文明も非農耕文明であった。農耕文明のみをどのように掘り下げても、得られる結果には限界があり、文明興亡のダイナミズムを描くことは難しい。最古の文明である古代メソポタミア文明は、揺籃の地であり発展の舞台となった現在のイラクに、農産物以外の必要物資がほとんど存在しないという、エジプトやインダス、中国で興った他の古代文明には見られない特異な自然環境を背景としている。この特徴こそ、古代文明の探求者にとっては、非常に有利な手がかりとなる。
 遠隔地にある必要物資の獲得は、メソポタミア文明にとって最重要課題であり、この課題があったからこそ、最古の文明は興り、文明であり続けた。古代エジプト文明の場合は、ほとんどすべての必要物資はナイル河の流域に存在し、そのため自己完結性の高い文明が生まれた。その最重要課題は「上下エジプトの統一」であった。〕
 ウルク期……物資獲得のために「ウルク・ワールド・システム」を構築。しかし、これはメソポタミア域内とその辺縁部に建設されたウルク都市郡であった。遠隔地物資を安定的に獲得するためには、さらに外側のネットワークが必要だった。
 原エラム文明、原ディルムン……前4000年紀末に、原エラム文明が、イラン高原の陸上交易ネットワークを担う。また、原ディルムンが、アラビア湾の海上交易ネットワークを担う。二つのネットワークは、それらの源流に近いところで、早い時期からリンクしていた。ケルマーンのテペ・ヤヒヤがオマーン半島に技術者等を移住させ、鉱山の開発を行った(ハフィート文化)。
 トランス・エラム文明……エラムの首都ソーサが略奪されると、首都をメソポタミアから遠く離れたケルマーンのシャハダードに移し、イラン高原の物資獲得・輸送ネットワークを機能を温存する。
 トランス・エラム文明は、前2600年頃のインダス文明(ハラッパー文明)の成立に大きく関わった。都市設計をトランス・エラム人が指導した。
 テペ・ヤヒヤにあった原エラム文明の都市が播いた種、ハフィート文化の後身、ウンム・ン=ナール文化が前2500年頃に文明期を迎えたことに、トランス・エラム文明とインダス文明が深く関与していた。インダスからメソポタミアを東西の終着駅とする海上交易ネットワークが完成。
 前3000年紀末、ウンム・ン=ナール文明の中枢部がバハレーン砦に移転。メソポタミアが「ディルムン」と呼んでいた地域の一部。バールバール式土器をもつ先住民がいた。地下の水神を祀っていた。バールバール文明が成立。クウェイトのファイラカ島に「海外営業本部」を置いた。
 前18世紀、バールバール文明(ディルムン国)が衰亡。

(2016/2/24)KG

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脳はすごい ある人工知能研究者の脳損傷体験記
 [医学]

脳はすごい -ある人工知能研究者の脳損傷体験記-

クラーク・エリオット/著 高橋洋/訳
出版社名 : 青土社
出版年月 : 2015年10月
ISBNコード : 978-4-7917-6885-1
税込価格 : 2,592円
頁数・縦 : 328p・20cm


 著者クラーク・エリオットは、人工知能を研究する、デポール大学の教授である。本書は、交通事故で脳震盪症になった著者による手記である。
 科学者そして大学教授だけあって、非常に優れた観察と、科学的な知識に基づく記述となっている。それでいて、前半部の事故の経緯とその後の生活について語る部分は、まるで文学作品である。「意識の流れ」小説を読むような味わいがある。

【目次】
第1部 脳震盪
 深夜
 問題の大きさ:偉大なる人間の脳
  ほか
第2部 認知の構成要素
 背景
 壊れた人間機械
  ほか
第3部 戻ってきた私の影
 ドット博士との出会い
 脳メガネ
  ほか
第4部 脳の可塑性の科学
 ドナリー・マーカスと強い心の設計
 デボラ・ゼリンスキーとマインドアイ・コネクション

【著者】
高橋 洋 (タカハシ ヒロシ)
 翻訳家。同志社大学文学部文化学科卒(哲学及び倫理学専攻)。

【抜書】
●非イメージ形成網膜経路(p11)
 中心視覚……対象物を「見る」ことを可能にする。もっとも速度の遅い視覚経路を構成し、最後に活性化。
 周辺視覚……対象物のための文脈を脳に提供する。
 非イメージ形成網膜経路……感覚能力や代謝をコントロールする内部システムを外界に結びつける。識閾下で網膜から身体へと情報を伝達し、バランス、姿勢、ホルモン、神経伝達物質、概日リズムなどに関する重要なシステムに影響を及ぼす。あらゆる非イメージ形成信号経路の作用は、周辺視覚、さらにはそれを通して中心視覚の能率を調整する。

●認知バッテリー(p72)
 著者のたとえ。脳震盪症者は、認知の崩壊→回復を繰り返しているが、それを「認知バッテリー」と表現。
 バッテリーA……ワーキングセット。すぐに利用でき、充電も数時間以内に速やかになされる。
 バッテリーB……第一レベルのバックアップ。Aが使い果たされると利用可能になる。しかし、充電には数日を要する場合もある。
 バッテリーC……深層のバックアップ。Bが枯渇し、緊急にエネルギーが必要になったとき、最終手段として利用できる。充電速度が非常に遅く、最大で2週間かかる。

●感覚フィルター(p198)
 脳と身体は高度に統合され、脳への情報の出入りは、すべて身体という媒体を通して行われる。=感覚フィルター
 感覚フィルターの主要な機能……①目下の文脈に無関係な入力情報をふるい落とす。②残った情報を集めて意味を形成する。
 脳震盪症では、認知的なストレスがかかると、感覚フィルターが変質する。

●認知再構成法(p222)
 認知再構成法……〔違った方法で世界を見、思考することができるように脳を配線し直す治療法〕。
 ドナリー・マーカス博士は、認知再構成法の治療に、思考の低次の構成要素を変える独自の視覚パズルを開発。

●ニューロオプトメトリック・リハビリテーション(p229)
 デボラ・ゼリンスキー博士は、目の不自由な人、自閉症患者、発達障害を持つ人、脳に外傷を受けた人、学習障害を持つ子供などを対象に治療。
 網膜を通る光を調節することで、脳にアクセスする手法を用いる。視覚システムと脳の機能の相互作用、人間を人間たらしめている高次の脳の処理と視空間機能の統合に焦点を置いて治療。
 クラーク・エリオットの治療においては、特殊なメガネ(脳メガネ)をかけることで、脳の認知機能を改善していく。メガネは、段階的に換えていく。

●視覚システム(p262)
 視覚信号は分散され、視放線と呼ばれる多数の経路に沿って、脳の後部の視覚皮質に伝達される。
 まず、周辺視野からの情報に基づいて動き、位置、大きさ、形状(そして一部、色も)が処理される。
 次に、中心視野からの情報に基づいて色や細部が処理される。

(2016/2/20)KG

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文系学部解体
 [社会・政治・時事]

文系学部解体 (角川新書)

室井尚/〔著〕
出版社名 : KADOKAWA(角川新書 K-58)
出版年月 : 2015年12月
ISBNコード : 978-4-04-082051-4
税込価格 : 864円
頁数・縦 : 238p・18cm


 2015年6月8日、文部科学大臣の下村博文名による通達が、全国の国立大学に出された。「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」である。文系学部・学科の統廃合、教員養成系における「新課程」などが盛り込まれていた。
 本書では、この通達の衝撃と歴史的経緯、現代社会における文系学部の必要性について、統廃合の対象となっている課程の大学教授が論じる。

【目次】
第1章 国立大学改革プランの衝撃―文系学部はいらない?
第2章 大学改革はいかに進められてきたのか
第3章 戦前の大学と戦後の大学
第4章 大学が崩壊する
第5章 大学をどうやって守っていくか?
終章 それでも大学は死なない

【著者】
室井 尚 (ムロイ ヒサシ)
 1955年3月24日、山形市生まれ。横浜国立大学教育人間科学部教授。京都大学文学部卒業、同大大学院文学研究科博士後期課程修了。帝塚山学院大学専任講師などを経て、92年から横浜国立大学助教授、2004年から現職。01年には「横浜トリエンナーレ2001」で全長50mの巨大バッタバルーンを含む複合アートを制作、11年にはクシシュトフ・ヴォディチコ氏を招き、学生たちと新作プロジェクション・アートを制作するなど、ジャンルを超越した分野で活躍。

【抜書】
●大綱化(p50)
 1991年施行、「大学設置基準の大綱化」。中曽根内閣。
 1. 各大学・短期大学に開設を義務づけていた授業科目の科目区分(一般教育科目、専門教育科目、外国語科目及び保健体育科目)を廃止する。
 2. 学生の卒業要件として定められていた各科目区分ごとの最低修得単位数(大学の場合、一般教育科目36単位以上、専門教育科目76単位以上、外国語科目8単位以上)を廃止し、総単位数(大学の場合124単位以上)のみ規定するにとどめる。
 3. 必要専任教員数について、科目区分ごとに算定する方式を廃止し、収容定員の規模に応じた総数のみを算定する方式とする。また、大学の兼任の教員の合計数は全教員数の二分の一を超えないとする制限規定を廃止する。
 4. 授業の方法別(講義、演習、実験・実技・実習等)に一律に定められていた単位の計算方法を、各大学・短期大学の判断により定めることができるよう、また、高い教育効果が期待できる演習などの授業が開設しやすくなるよう改める。
 5. 学部内の組織として、学部の種類によって学科を設けることが適当でない場合に限って例外的に設置を認めていた課程を学部の教育目的を達成する上で有益かつ適切である場合は、学部の種類を問わず設けることができることとする。
 6. 医学部、歯学部の進学課程・専門課程を法令上の制度としては廃止する。
 大学の設置基準を「簡略化」してゆるやかにする。
 各大学が質の向上を果たすための自己点検・自己評価のシステムを導入することを提言。
 東大を除くほとんどの大学で教養部が廃止された。
 短期大学の四年生大学化、学部を持たない大学院大学の設置の増加。

●遠山プラン(p58)
 2001年、文部科学大臣の遠山敦子(小泉潤一郎内閣)が「遠山プラン」を提言。構造改革を国立大学にも適用する構想。
 1. 国立大学の再編統合を大胆に進める。
 2. 国立大学に民間的発想の経営手法を導入する。
 3. 大学に第三者評価による競争原理を導入する。
 当時、99校あった国立大学が、現在では86校に減少。60校程度にまで減らそうとしていた? 遠山大臣が2003年内閣改造で辞めさせられて失速。
 以下の大学が統合された。山梨大学と山梨医科大学、筑波大学と図書館情報大学、富山大学と高岡短期大学及び富山医科歯科大学、九州大学と九州芸術工科大学、など。
 2003年、専門職大学院の設置。教職大学院、法科大学院、ビジネススクール、公共政策大学院、会計大学院、など。
 2004年、国立大学の法人化。すべて「国立大学法人」に。当初は「独立行政法人」とされていたが、大学の特性にかんがみ、新たに「国立大学法人」を作る。

●工学部(p88)
 工学部は技術者養成の高等教育課程。ヨーロッパでは、他の専門領域よりも低く見られており、特殊な専門学校として大学の中に置かれないことが多かった。
 世界で初めて大学の中に工学部を置いたのは日本であると言われている。それまで工科とされていた組織が、1919年に東京帝国大学、京都帝国大学、東北帝国大学、九州帝国大学で工学部として設置された。
 昭和に入り軍国主義に突き進み、多くの工学部が作られた。東京帝国大学では、第二工学部まで作られた。

●人文系の知(p188)
〔 歴史を振り返り、文脈を作り上げていく人文系の知の衰退は、したがって我々の社会を知的に貧困化させてきていることは明らかだろう。株価の変動だけに関心をもつ投資家たちのように、グローバル化し、情報の流通が高速化する現在の世界では、人々は「最新の知識」、「最新の技術」だけを追い求めるようになり、短期的に「役に立つ」情報だけを重要だと思いこむようになってきているのだ。〕

●アメリカ式教育方式(p194)
 〔アメリカの大学や大学院では大量の課題が出されることが知られているが、これは絶対によくない教育システムだと私は思う。アメリカで学会や研究会に出ると、日頃はきわめて個性的でユニークなアメリカ人研究者たちが、完全に同じスタイルの非個性的で退屈な研究発表ばかりをするのに驚く。聞けば、彼らは重要文献の引用のアンソロジーである「リーダー」を徹底的に読まされて、「研究方法」はこのうちのどれにして、「研究対象」はどれにするかということを指導教授と相談して決め、あとは自動的にパワーポイントのプレゼンテーションが出来上がるというような指導をされているらしい。理系や、文系でも経営学などの社会科学のように、歴史的なつながりや文脈をあまり必要としない領域のことは知らないが、少なくとも哲学や文化理論といった人文系の領域でアメリカからはほとんど新しい成果が生まれてこないのは、このような教育システムに原因があるとしか思えない。自分の頭で考える訓練をまったくさせていないからである。〕

(2016/2/10)KG

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記憶力の脳科学
 [医学]

記憶力の脳科学

柿木隆介/著
出版社名 : 大和書房
出版年月 : 2015年11月
ISBNコード : 978-4-479-79501-8
税込価格 : 1,512円
頁数・縦 : 230p・19cm


 臨床医と研究職のどちらも経験した医師が、記憶の仕組みや記憶術の原理など、最新の研究成果に基づいた記憶の科学を分かりやすく解説。

【目次】
第1章 記憶力のしくみ
第2章 記憶力を高める方法
第3章 記憶術を科学する
第4章 脳指紋が「うそ」をあばく!
第5章 脳は「顔」に驚く
第6章 なぜ記憶は消えていくのか
第7章 脳科学者に聞く!記憶の疑問

【著者】
柿木 隆介 (カキギ リュウスケ)
 自然科学研究機構生理学研究所教授、順天堂大学医学部客員教授、国立大学法人総合研究大学院大学教授、医学博士。1978年九州大学医学部卒業、1981年佐賀医科大学内科(神経内科)助手。1983-1985年ロンドン大学医学部研究員。1993年岡崎国立共同研究機構生理学研究所教授などを経て2004年より現職。日本内科学会認定医、日本神経学会専門医。専門は神経科学、特に人間を対象とした研究。日本生体磁気学会前会長、国際臨床神経生理学会アジア・オセアニア地区プレジデントなど多くの学会の理事、監事を務める。

【抜書】
●シモニデス(p85)
 「記憶術」は、英語でmnemonics、ニマーニクス。ギリシャ神話の女神ムネーモシュネーが語源。ミューズ(学問や芸術の女神9人)の母親で、記憶を司る女神。
 記憶術に関する最古の記述は、詩人シモニデス(BC5~6世紀)。キケロ(BC1~2世紀)が『弁論家について』で紹介。
 シモニデス、詩人としてある貴族の邸宅の宴会に招待された。宴もたけなわのとき、「二人の男が外で待っている」との伝言を受け、外に出たが誰もいない。その直後、邸宅が突然崩れ、出席者たちはみんな亡くなった。
 瓦礫の下から見つかった遺体が誰なのか全くわからず。シモニデスは、全員の席順を覚えていた。彼の記憶を元に、確認作業を行い、すべての遺体を埋葬することができた。
 シモニデスの記憶術は、「場所(座)の方法」といった表現で呼ばれていた。
 ①その宴会場のいろいろな場所を選び、覚えておく。つまり、各座席のテーブル、椅子、座席の後ろにある柱、調度品、絵画、彫刻といったもの。
 ②記憶したい物事のイメージを描く。別に何でもかまわないが、そのときに各座席に座っていた人たちの記憶が役に立った。
 ③それぞれの場所に関連付けていく。

●脳指紋(p112)
 P300……P=Positive(陽性)、300=300ミリ秒(0.3秒)。特殊な方法を用いて聴覚刺激や視覚刺激、触覚刺激が与えられると、その後、約300ミリ秒後に大きな反応が出現する。この反応がP300。
 P300は、まれに生じる現象や予想外の現象、あるいはめったに経験しない現象が起きたときに出現しやすい。
 たとえば、2秒おきに低音(低周波数音)を聞かせる。まれに高音(高周波数音)を聞かせると、このまれな音(変わり者、オドボール)を聞いたときだけP300が出現する。
 P300は、加齢とともに400ミリ秒後、500ミリ秒後と、出現が遅くなる。
 脳指紋……Brain fingerprinting。P300検査で、犯人を特定する方法。

●相貌失認(p132)
 相貌失認……顔中枢の部分だけが、脳卒中や脳腫瘍で傷害されると、「顔だけがわからない」という症状を示す。失顔症。
 先天性相貌失認という病態がある。「他人の顔を覚えられない」など。ブラッド・ピッドが告白。症状は、後天性のものに比べて軽い。

●見当識(p173)
 見当識……時間、場所などの理解のこと。

●アルツハイマー病(p178)
 アミロイドβタンパク……老人斑を形成。
 タウタンパク……神経原線維変化を形成。
 いずれも、アルツハイマー病患者の大脳皮質に見られる物質。
 
(2016/2/6)KG

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ありえない生きもの 生命の概念をくつがえす生物は存在するか?
 [自然科学]

ありえない生きもの―生命の概念をくつがえす生物は存在するか?

デイヴィッド・トゥーミー/著 越智典子/訳
出版社名 : 白揚社
出版年月 : 2015年12月
ISBNコード : 978-4-8269-0185-7
税込価格 : 2,700円
頁数・縦 :317p・20cm


 「ふつうの生物」ではない、奇想天外生物が存在するとしたら、それはどこに、どのような形で棲息しているのか。
 海底の熱水噴出孔や、死海などを棲みかとする極限環境生物の紹介から始まり、果ては地球外に存在するかもしれない生物の可能性にまで言及する。むしろこちらに多くのページが割かれている。
 地球外で液体の水を保持していない天体では、アンモニアがエネルギー源と反応できる媒体として利用されるかもしれない。また、細胞を構成する物質としては、炭素の代わりにケイ素が候補となる。そのような可能性を探りながら、生命の概念に迫るエッセーである。

【目次】
第1章 極限環境生物
第2章 影の生物圏
第3章 生物を定義する
第4章 ゼロから始める
第5章 奇想天外生物の世界
第6章 彗星からの生物、恒星の生物、そして、はるか未来の生物
第7章 知的な奇想天外生物
第8章 SFにおける奇想天外生物
第9章 多宇宙の奇想天外生物

【著者】
トゥーミー,デイヴィッド (Toomey, David)
 マサチューセッツ州立大学アマースト校准教授。プロフェッショナル・ライティング&テクニカル・コミュニケーション課程のディレクターを務める。

越智 典子 (オチ ノリコ)
 作家、翻訳家。東京大学理学部生物学科卒業。

【抜書】
●LUCA(p54)
 LUCA =全生物の共通祖先。35億~38億年前に代謝をし、増殖した微生物と考えられている。

(2016/2/6)KG

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脳科学は人格を変えられるか?
 [自然科学]

脳科学は人格を変えられるか?

エレーヌ・フォックス/著 森内薫/訳
出版社名 : 文藝春秋
出版年月 : 2014年7月
ISBNコード : 978-4-16-390100-8
税込価格 : 1,728円
頁数・縦 : 326p・20cm


 原題は"Rainy Brain,Sunny Brain"なのだが、タイトルとしてはこちらのほうがしっくりくる内容である。日本語に訳すと、『雨脳と晴脳』ということになるだろうか。「脳天気」だとちょっと違う?
 つまり、人間はポジティブ脳(楽観主義)とネガティブ脳(悲観主義)を持ち合わせ、その仕組みと両者それぞれの利害を解説し、人は、どうすればポジティブ思考になれるのかということまで論じている。実験などを通して明らかになった心理学、脳科学の知見をもとに書かれている。

【目次】
序章 なぜ前向きな性格と後ろ向きな性格があるのだろう
第1章 快楽と不安の二項対立
第2章 修道院の奇妙な実験
第3章 恐怖を感じない女
第4章 遺伝子が性格を決めるのか
第5章 タクシー運転手の海馬は成長する
第6章 抑うつを科学で癒す可能性

【著者】
フォックス,エレーヌ (Fox, Elaine)
 心理学者、神経科学者。なぜ逆境にも強く前向きな人と、後ろ向きで打たれ弱い人がいるのかという疑問を中心に、感情の科学について幅広く研究する。ダブリン大学、ヴィクトリア大学ウェリントン校などを経て、エセックス大学で欧州最大の心理学・脳科学センターを主宰。現在はオックスフォード大学教授として、オックスフォード感情神経科学センターを率いる。認知心理学と神経科学、遺伝学を組み合わせた先端的な研究を行い、セロトニン運搬遺伝子が楽観的な性格を生むという論文はセンセーションを巻き起こした。

森内 薫 (モリウチ カオル)
 翻訳家。

【抜書】
●ノーシーボ効果(p55)
 人間は、自分の具合が悪くなると信じれば、本当に具合が悪くなる。プラシーボ効果の陰の存在。
 ノーシーボ……ラテン語で、I will harm.の意。

●側坐核(p64)
 快楽中枢。快楽の追求に関して中心的な役割を果たす。
 大脳皮質の下、脳のちょうど正面に位置する。
 1950年代、ジェームズ・オールズとピーター・ミルナーが、覚醒と睡眠に関する実験をしていて、マウスに埋め込んだ電極の位置が微妙にずれたことによって発見された。

●ドーパミン、ピオイド(p72)
 ドーパミン、ピオイド……神経伝達物質。どちらかが、側坐核を構成する細胞に含まれている。
 ドーパミン……ドーパミンを抑制しても、コカインがもたらす快楽自体は減少しない。ドーパミンが担うのは、何かを「欲する」こと。何かを「気持ちよく感じる」ことではない。
 ピオイド……ピオイドを含むニューロンが活性化すると、甘いものはより甘く感じられる。

●左脳(p78)
 心地よいものごとに接近するだけで、大脳皮質の左半分が活性化する。快楽には、左脳がかかわっている。
 安静時でも、楽観的な人の脳の左半分は、右半分よりもかなり活発に働いている。悲観的な人の脳の左半分の活動度は、楽観的な人に比べてずっと低い。

●楽観的なリアリスト(p82)
 〔創造的かつ粘り強く行動する姿勢がなければ、楽観は力を発揮できない。わたしは「楽観的なリアリスト」こそが真の楽観主義者だと考えているが、彼らは、ただハッピーな思考をするだけで良いことが起きるなどとは考えていない。楽観的なリアリストは、自分の運命は自分でコントロールできると意識の底で信じているのだ。〕

●局所性ジストニア(p200)
 体性感覚皮質……体の各部の機能が集約されている脳内の細い紐のような部分。唇や腕や手や指など、すべての部分にわずかずつ皮質が割り当てられていて、効率よく機能できるようになっている。
 普通、指には1本1本小さな割り当てがあり、隣の指の割り当てとは明確な区分がある。ところが、ギタリストのように2本の指を始終一緒に使っていると、それぞれの皮質の割り当てが徐々に拡大し、しまいに一つにくっついてしまう。そうなると、体性感覚皮質は2本の指を1個のまとまりとして見るようになり、バラバラに動かすことができなくなる。

●錯誤相関(p225)
 ヘビ、クモ、花、キノコなどの写真を見せ、その後に①軽い電気ショックが起きる、②何か音が聞こえる、③何も起こらないのどれかがランダムで起きる、という実験を行う。
 被験者は、ヘビやクモなど、恐怖を誘う写真の後に電気ショックが起きる確率が高かったと感じていた。
 恐怖を感じさせる事物は、たとえ害を及ぼさなくても、悪い結果と結び付けて捉えがちになる。

●認知バイアス修正(p236)
 それまでと違う思考形式を習慣化し、危機の瞬間にも自然にそうした思考ができるように脳を再教育すること。
 恐怖の回路がもたらす有害なバイアスを打ち消すために開発された。

●暴露療法(p253)
 〔何かの恐怖症の人は、恐怖の対象に絶対に近寄ろうとしない。こうした人を恐怖の対象にあえて何度も対峙させることで、恐怖心を消す。
 恐怖の記憶といかに対峙し、いかにそれを鎮めるかを教える。
 本来結核の治療に用いられるD-サイクロセリンという抗生物質を投薬しながら行うとさらに効果的である。

●記憶の再統合(p256)
 記憶(特に感情にまつわる記憶)は、人がそれを思い出すときに再活性化され、一時的に変化を受けやすい柔軟な状態になる。再活性化の最中には、元の記憶に新しい情報が加わることができる。人が何かの出来事を思い出すたびに記憶はわずかに変化し、オリジナル版とは微妙に異なる新しい版として再び脳にしまわれる。「再統合」と呼ばれるプロセス。
 再統合は、およそ6時間続き、その間は記憶を変化させるチャンスの扉が開かれている。

●鉤状束(p263)
 鉤状束(こうじょうそく)……扁桃体を含む領域と側頭葉、前頭前野を結ぶ神経の繊維。
 不安を感じやすい人ほど、扁桃体と前頭前野を結ぶ鉤状束が細くて弱い。

●マインドフルネス瞑想法(p271)
 マインフルネス、もしくはオープン・モニタリング。
 今この瞬間に経験している物事の一つ一つに注意を向ける瞑想法。
 聞こえてくる音や鼻をくすぐるにおい、頭に浮かぶ感情や思考を、判断したり反応したりすることなく、ともかく心の中を通過させ、心を十分に開かれた自由な状態にし、自己認識力を高める。
 自分の認識に「ラベルづけ」を行う。たとえば、心配事が想起されたとき、「これは苛立たしい考えだ」というようにラベルづけを行い、頭から過ぎ去らせる。
 マインドフルネス瞑想法は、感情的な出来事への反応をつかさどる前頭前野の回路を強める効果もある。

●生きることの意義(p286)
〔 現代の世界において、食べ物や住まいや暖かさなどの基本的な要求はたいてい満たされている。なお満たされていないのは他者との結びつきであり、生きることの意義だ。〕

●3対1(p290)
 心理学者のバーバラ・フレンドリクソン。幸福になるために、日々の生活にポジティブな感情をより多く見出すことを提唱。ポジティブ3:ネガティブ1が、黄金の比率。
 ネガティブな感情を全部排除しようとしてはいけない。
 たいていの人は、ネガティブな感情一つにつき、ポジティブな感情を二つは体験している。これを三つに引き上げられれば、人は真に豊かな人生へと歩みだすことができる。

(2016/2/6)KG

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どうしても“日本離れ”できない韓国 決定版
 [社会・政治・時事]

決定版どうしても“日本離れ”できない韓国 (文春新書)

黒田勝弘/著
出版社名 : 文藝春秋(文春新書 1046)
出版年月 : 2015年10月
ISBNコード : 978-4-16-661046-4
税込価格 : 842円
頁数・縦 : 255p・18cm


 「愛国無罪」とばかりに反日にひた走る韓国。その元凶は、戦後の反日教育である。日本化した韓国人を真の韓国人に立ち戻らせるため、また、占領中に反日活動家たちが作った政権の正統性を主張するため、日本が悪であるという教育を徹底させたのである。それをマスコミがことさらに煽り、司法まで「国民情緒法」を憲法に優先させて反日の肩を持つ国に仕立て上げた。日本が実施した幾多の善行さえも、「日本隠し」によって国民の眼から遠ざけられる。
 しかし、著者は、反日の根本にあるのは、日本に対する「甘え」であると説く。自分たちの解放運動ではなく、日本の敗戦によって「タナぼた」的に手に入れた解放。それがねじれた感情「民族の恨」を生み、執拗な反日へと突き進んだ。そして、これまではゴネることで利益を得てきたわけである。
 しかし、日本人もそろそろ堪忍袋の緒が切れつつある。このへんで、両国ともに歩み寄って、正常な国家関係、国民関係を結ぶべきである。さまざま実例をあげて反日と日本隠しの実態を詳述する著者の願いは、おそらくこの点にある。

【目次】
1 韓国はなぜ日本を許さないのか
 反日パブロフの犬―荒れ狂う反日全体主義
 反日甘やかしと反米テロ―米大使テロ事件の背景
 日本メディアは政治的標的―産経新聞事件を読み解く
2 日本は韓国に何を残したか
 南北格差はなぜ開いたか―カギは対日関係の有無
 金日成と朴正煕の内なる日本―人生を分けた満州体験
 なぜ日本で拉致事件が起きたのか―金大中拉致と日本人拉致のナゾ
 誰も知らなかった「日本隠し」―認めたがらない日本の対韓協力
3 韓国にとって日本とはなにか
 「ドイツに学べ」論は虚構である―日韓関係は他国と比較できない
 韓国が主張する歴史清算の虚実―韓国はなぜ共和国になったのか
 韓国は甘いか辛いか―これからは“用韓論”の時代だ

【著者】
黒田 勝弘 (クロダ カツヒロ)
 1941年、大阪生まれ。1964年、京都大学経済学部を卒業後、共同通信社に入社。1978年、韓国・延世大学留学後、共同通信ソウル支局長に。1989~2011年、産経新聞ソウル支局長兼論説委員。1992年、ボーン・上田記念国際記者賞、2005年には菊池寛賞および日本記者クラブ賞を受賞。現在、産経新聞ソウル駐在客員論説委員。

【抜書】
●韓国人の反日感情(p24)
〔 韓国人の反日感情というのは、日本統治時代の戦前よりもむしろ日本統治が終わった戦後に形成されたというのが、今や定説になっている。というのは解放後の韓国は新生・韓国のスタートにあたって、日本統治時代にほぼ日本人になっていた韓国人を、元の韓国人に戻すというか作りかえる必要があった。この“新韓国人”作りには強力な反日教育が不可欠だったからだ。
 つまり日本統治時代はいかに酷く悪いものであったかということを、教育で叩き込み、日本を否定することで、それまで日本人化していた韓国人に「日本」を捨てさせ、本来の韓国人を育て直そうとしたのだ。そのために過去の日本支配は「これが本当だったのだよ」といって悪ばかりが強調され、過去はことさら否定的に描かれ教えられた。
 その結果、「日本時代はいいこともあった」という体験を持つ旧世代よりも、体験を持たず「日帝の悪」だけを教えられた解放後世代の新世代の方が、反日感情は強くなった。これが反日教育世代の特徴である。
 したがって旧世代の半日は、自分たちが育った日本との過去を否定するという側面があったため「悩める反日」だったが、解放後の反日教育世代の反日は日本には遠慮のいらない「悩みなき反日」ということもできる。〕

●テロリストが民族的英雄(p48)
 姜宇奎(カンウギュ)……テロリスト。1919年、第3代朝鮮総督の斎藤実が韓国に赴任してきた際、一行が到着した京城・南大門駅で爆弾を仕掛けた。総督暗殺には失敗したが、日本側に多数の死傷者が出た。
 姜を記念する銅像が、顕彰団体によって、4年前(2011年?)にソウル駅の旧駅舎前に建てられた。台座を含めて高さ4~5m。右手に手榴弾、まさに投げんかの姿。
〔 爆弾片手の露骨なテロリスト像が、首都のターミナル駅前に堂々と立っているのは世界的にも珍しいだろう。それを誰も何とも思わず、何も言わない。「愛国義士」だからである。
 こう見てくると韓国は明らかにテロリストが「義士」として民族的英雄になっている国ということになる。それを教育で賞賛し、彼らが記憶され続けるようマスコミがその“業績”を絶えず刷り込み続けている国である。こうした“偉人風土”“義士風土”のなかでは、時に自分も民族的な義士になりたいと、外国要人相手にテロを考える人物が出てきてもおかしくない。人口五千万の国なら、そんなことを妄想(?)する者が一人や二人はいるだろう。〕

●国民情緒法(p66)
 韓国では昔から「憲法の上に“国民情緒法”という法律がある」と皮肉られている。
 韓国検察も、法無き法である“国民情緒法” に従う。産経新聞ソウル支局長の名誉毀損裁判事件など。

●対日請求権資金(p157)
 1965年の国交正常化に際し、日本は、韓国政府に対して有償・無償5億ドルの経済援助を約束した。別途、民間融資3億ドルも。
 韓国側では「対日請求権資金」と呼んでいる。過去の支配に関連して、日本に対して補償を要求する権利。つまり日本に対する請求資金という意味。その結果、韓国は過去に関し日本に対する請求はすべて終わった、今後はもう請求しない、請求権は放棄した、ということになった。
 韓国は対日参戦国ではなかったため、戦争にかかわる賠償請求権はなかった。植民地支配にかかわる補償などというのは、国際的に例がなかった。
 結局、独立祝賀金のような経済援助として5億ドルを手に入れた。
 補償問題について日本側はむしろ個人補償案を提案した。南北分断状態で、南側だけに国家補償するのはまずい、という判断。
 韓国はこれを拒否、政府による一括受け取りを主張。国として経済建設に使ったほうが長期的に国家・国民にとってプラスだと判断。
 経済協力資金の使い道として、ビッグスリーは、浦項(ポハン)製鉄(現POSCO)、京釜高速道路、ソウルを水害から守る昭陽江ダム。浦項製鉄は、八幡製鉄所を中心に、鉄鋼各社が技術協力。

●インスタントラーメン(p168)
 日韓国交正常化にともなう民間企業による経済協力のビッグスリーは、インスタントラーメン、ヤクルト、ロッテ百貨店。
 インスタントラーメン……韓国では即席めんのことを「ラーミョン」と呼ぶ。一人当たりの消費量は世界1位。国交正常化前の1963年に、明星食品が三養(サムヤン)食品に無償で技術提供。当時、韓国は食料不足に悩んでいた。

●民族の恨(p205)
 植民地解放は、日本の敗戦によってもたらされた「タナからボタもち」だった。自分たちの力、すなわちあるべき姿で実現できなかった。
 それが「民族の恨」として残り、今に続く執拗な反日の根源になっている。
 〔問題が内なるものに向かわず、お手軽反日で発散している限り「日本離れできない韓国」という切ない物語は今後も続くことになる。〕

(2016/2/4)KG

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