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消えたイングランド王国
 [歴史・地理・民俗]

消えたイングランド王国 (集英社新書)

桜井俊彰/著
出版社名 : 集英社(集英社新書 0814)
出版年月 : 2015年12月
ISBNコード : 978-4-08-720814-6
税込価格 : 821円
頁数・縦 : 237p・18cm


 イングランド王国……。今でもブリテン島に住む人たちにとって、心のふるさとらしい。現在の英国の礎と言ったらいいだろうか。
 10~11世紀に存在したイングランド王国の短い歴史を、王たちの事跡を中心にたどる。

【目次】
プロローグ ある日の国連安全保障理事会
第1章 襲い来るデーン
第2章 勇者たち
第3章 終焉への足音
第4章 最後のアングロサクソン戦士
エピローグ 現代イギリス人のルーツたち

【著者】
桜井 俊彰 (サクライ トシアキ)
 1952年、東京都生まれ。エッセイスト、歴史家。1975年、國學院大學文学部史学科卒業。1997年、ロンドン大学ユニバシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)史学科大学院中世学専攻修士課程(M. A. in Medieval Studies)修了。

【抜書】
●アングロサクソン七王国(p28)
 ブリテン島において、400年以上、アングロサクソンの七王国が分立していた。ケント、エセックス、イーストアングリア、ノーサンブリア、マーシア、ウェセックス、サセックス。
 10世紀の初めに統一王国が出現。924年、ウェセックスのアルフレッド大王の孫のアゼルスタン王が、「イングランド王」と書いた公式文書を出す。
 このイングランド王国は、1066年のノルマン征服によって消滅。1016-1035年には、デーン人を王とする征服王朝が君臨。

(2016/3/28)KG

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イスラーム法とは何か?
 [哲学・心理・宗教]

イスラーム法とは何か?

中田考/著
出版社名 : 作品社
出版年月 : 2015年11月
ISBNコード : 978-4-86182-553-8
税込価格 : 2,592円
頁数・縦 : 269p・20cm

 
【目次】
序――「イスラーム法」などというものは存在しない
第1部 イスラーム法の基礎
 イスラーム法とは何か―これだけは知っておこう、基本的なこと
 オリエンタリストのイスラーム法研究の問題点―私たちの「考える枠組み」を考えなおす
 解釈学としてのイスラーム法学―「法」のみを切り取って理解はできない
第2部 イスラーム神学と法学の交差
 言葉として顕現する神―誰に「責任」を負うのか?
 理性と啓示の虚偽問題を超えて―理性による善・悪(利害)の判断
 イスラーム法の非霊的権威―もしくは、イスラーム法の「非」宗教的性格
第3部 イスラーム法学の要諦(現世と来世を貫く法―あの世が組み込まれた構造
 イスラーム法の主体―誰が法を守り、誰が裁き、誰が裁かれるのか?
 イスラーム法の要としてのカリフ―法と法“外”の問題
 「時間のなかを生きる」人間がなすべきこと

【著者】
中田 考 (ナカタ コウ)
 1960年生まれ。イスラム法学者。同志社大学客員教授。一神教学際研究センター客員フェロー。1983年、イスラーム入信。ムスリム名は「ハサン」。東京大学文学部イスラム学科の一期生。東大大学院人文科学研究科修士課程修了。カイロ大学大学院哲学科博士課程修了(哲学博士)。クルアーン釈義免状取得、ハナフィー派法学修学免状取得。

【抜書】
●イスラーム(p3)
 イスラーム……アッラーから預言者ムハンマドに啓示された教え。アル(al:定冠詞)・シャリーア。

●シャリーア(p18)
 神学(イルム〈学問〉・カラーム、イルム・ウスール・ディーン)……シャリーア、すなわちアッラーの使徒ムハンマドが伝えたクルアーンとハディースの教えに基づき、アッラー、預言者、来世などムスリムが信ずべき事柄を学ぶ。神についての判断を導出する学問。
 法学(イルム・フィクフ〈理解〉)……個別的な典拠から演繹されたシャリーアに基づく行為規範の学。行為の判断を導出する。
 霊学(スーフィズム)……神学と法学を学んだあとで、人格陶冶のための修行論、正しい信仰の心理分析などを行う。

●マドラサ(p19)
 マドラサ(イスラーム学校)……クルアーンとハディースのテキストを学ぶとともに、神学、法学、霊学が必修科目となっている。9世紀ごろに成立し、11世紀にアッバース朝の支配下にニザーミーヤ学院と呼ばれる多くのマドラサが建設され、マドラサ制度が確立した。イスラーム学の完成期。この時代に整備されたマドラサのカリキュラムは、大きな変更を蒙ることなく、今日までイスラーム世界各地で教えられている。

●シーア派、スンナ派(p149)
 ムハンマドは、預言者であるとともに、マディーナのイスラム国家の元首でもあった。瞑想・勤行に励む修道者の模範、祭礼・葬式・巡礼・日々の礼拝を指導する説教師、アッラーの命令を法として布告する立法者、人々の争いを裁く裁判官、浄財や戦利品を徴収し分配する公共事業を行う行政官、戦争を指揮する将軍であった。あらゆる領域の指導者性を一身に兼ね備えた統合的なパーソナリティであり、すべての権威を一身に体現するカリスマ。
 シーア派……政治的実権を欠くイマームがなお理念的には預言者のすべての権威を継承したと考える。
 スンナ派……預言者の権威は、カリフを頂点とするウマラーゥ(王侯、貴族)が政治的権威を、イスラーム学者(ウラマーゥ)が学的権威を、スーフィーが精神的権威をそれぞれ担うかたちで継承された、と考える。

●報償と懲罰(p168)
 フィクフは、行為を次の5つの範疇に分類する。
 ①義務……行うことが報償、行わないことが懲罰。
 ②推奨……行うことが報償、行わなくても懲罰はない。
 ③合法……行うことも、行わないことも、報償にも懲罰にもあたらない。
 ④忌避……行わないことが報償、行っても懲罰はない。
 ⑤禁止……行わないことが報償、行うと懲罰。
 報償は来世での楽園の報奨、懲罰は来世での火獄のこと。

●イスラムの刑罰(p174)
 法定刑(フドゥード)……クルアーンとハディースに罰則が明記されている刑罰。①飲酒(鞭打ち)、②窃盗(手足切断)、③追剥(処払い、手足切断、死刑)、④姦通(未婚男女は鞭打ち、既婚男女は石打ち)、⑤姦通誣告(鞭打ち)、⑥背教(死刑)、⑦内乱(交渉が決裂した場合には鎮圧、投降すれば咎めなし)。
 同害報復刑(キサース)……殺人の場合は遺族、障害の場合は被害者に、①加害者に対する同害報復、②加害者の親族に対して血の賠償の請求、③赦免、からの選択権を授ける。
 行政裁量刑(タァズィール)……量刑はカリフの裁量による。フドゥードと同種の犯罪に関しては、フドゥードの刑を超えてはならない。
 連帯義務……誰かがそれを実行すれば、他のムスリムは免責されるが、誰も行わなければムスリム全体が罪に陥る義務。フドゥード(法定刑)とは、刑罰の対象となる犯罪の禁止ではなく、ムスリムの為政者に対する刑罰の執行の命令。ジハードの執行も、連帯義務。

●ジン(p184)
 人間は、選択の自由を持ち、その結果に責任を負うことを選んだことで、他の被造物と本質的に異なる存在となった。選択の自由を引き受けたことで、悪魔と並んで悪を犯す存在となった。
 ジン……妖霊、幽精と訳されることが多いが、定訳はない。悪魔の太祖イブリースの子孫で、魔物の一種。神を知らない者、信者、不信仰者がいる。
 ジンには、神に帰依してムスリムとなる者もいるが、悪魔に近い存在。
 人間は土から造られたが、ジンは悪魔と同じく火から造られた。
 ジンは、人間と同じように自らの行為を選ぶことができるが、フィクフはジンのために行為規範を定めていない。

(2016/3/27)KG

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パクリ経済 コピーはイノベーションを刺激する
 [経済・ビジネス]

パクリ経済――コピーはイノベーションを刺激する

カル・ラウスティアラ/〔著〕 クリストファー・スプリグマン/〔著〕 山形浩生/訳 森本正史/訳
出版社名 : みすず書房
出版年月 : 2015年11月
ISBNコード : 978-4-622-07940-8
税込価格 : 3,888円
頁数・縦 : 356,28p・20cm

 タイトルの「パクリ」とはくだけた表現ではあるが、内容はいたってマジメ。無断コピーや模倣は創作とイノベーションを阻害することなく、むしろ活性化させるということを、ファッション、食、アメフト、データベース、フォント、音楽などの分野を例に検証する。

【目次】
第1章 コピー商品とファッションの虜たち
第2章 料理、コピー、創造性
第3章 コメディ自警団
第4章 アメフト、フォント、金融、ファイスト裁判
結論 コピーと創造性
エピローグ 音楽の未来

【著者】
ラウスティアラ,カル (Raustiala, Kal)
  リフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)法律学教授。デューク大学を卒業後、ハーヴァード・ロー・スクールで法務博士号(J.D.)を、カリフォルニア大学サンディエゴ校で政治学の博士号(Ph.D.)を取得。専門分野は国際法、国際関係、知的財産。

スプリグマン,クリストファー (Springman, Christopher)
 ニューヨーク大学法学部教授。ペンシルヴェニア大学を卒業後、シカゴ大学ロー・スクールで法務博士号(J.D.)を取得。専門分野はコピーライト、知的財産、法と経済学、特許、商標。

山形 浩生 (ヤマガタ ヒロオ)
 1964年東京生まれ。東京大学都市工学科修士課程およびMIT不動産センター修士課程修了。大手調査会社に勤務、途上国援助業務のかたわら、翻訳および各種の雑文書きに手を染める。

森本 正史 (モリモト マサフミ)
 翻訳家。

【抜書】
●独占理論(p12)
 創作者には、コピーを作る権利の独占権が必要、という考え方。
 イノベーションの多くは、考案は難しいがコピーは簡単である。もしコピーが許されるなら、模倣者が安価にオリジネーターの成果を複製するため、新しいイノベーションと創作への投資は妨げられる。

●実用物(p41)
 ファッション・デザインや料理が著作権で保護されない理由。
 アメリカ人一般の著作権法に関する考え方……実用物なら自由にコピーしてもかまわない。
 実用物……服や家具、照明設備といった、創造性が実用性と密接に混ざり合っているもの。機能性をもつ。

●地位財(p60)
 『エコノミスト』誌による定義。
 〔(地位財)は誰もが買うものだ。ハンマーや洗濯機など、本質的に実用性を求めて買われるものもある。地位表示物は、それを買った人にそれらが何かを言い表すがゆえに買われる。それらは自分のステータスを確立し、それらを持たない人々と比べてステータスを誇示するための手段だ。スポーツカー、おしゃれなリゾートで過ごす休日、流行の最先端のデザイナーの服などがそうだ。〕

●流行のサイクル(p65)
 ファッション・デザインのコピーとは、ファッション・サイクルを加速する燃料である。
 コピーがスタイルの普及を加速させる。
 普及が早ければ早いほど、衰退も早い(ファッションで、普及が進むと飽きられる)。
 衰退が早ければ早いほど、新しいデザインへの欲求も早く、強くなる。

●クリックラップ契約(p106)
 クリックラップ契約……透明フィルムのパッケージを破った時点で使用許諾契約の成立とみなす契約。

●コピーとイノベーション(p133)
 コピー防止の真の目的は、イノベーションの動機を与えること。もし、コピーがイノベーションを減退させないなら、コピーそのものは問題ない。
 ファッションと食の世界を見ると、コピーは必ずしも有害ではない。

●改変屋(p210)
 改変は、パイオニア的なイノベーションを大して抑えたりしない。むしろそれを奨励する。
 スティーブ・ジョブズは、「繰り返し巨大なビジョナリーで発明家だと言われてきた」。だが実は、「ジョブズは改変屋の面のほうがずっと強い」。「あの世代最高の改変屋だった」。(マルコム・グラッドウェル)

●ファイスト裁判(p240)
 ファイスト出版社対ルーラル電話サービス社の裁判。
 電話帳の名前や電話番号は、誰でも自由にコピーできる、という判決。ABC順の配列に関しても、独創性がないので、著作権保護を認めず。
 事実だけしか載っていないデータベースは、著作権を認めない。
 アメリカのデータベース業界は衰退すると思われたが、データベースが保護されるヨーロッパより繁栄している。

●コピーと競争(p252)
 コピーと競争はコインの裏表。競争と創造性がコピーと共存できる場合は、知的財産権で縛らないほうがいい。
 〔驚くほどのイノベーション産業において、競争、コピー、創造性のすべてが混在しており、そしてこうしたすばらしい事例を見れば、知的財産システムは正当にもそこに口をはさもうとしていない。〕

●創造的産業に共通する特徴(p255)
 1. トレンドと流行はいくつかの創造的産業で大きな役割を果たす。
 2. 一部の産業では、法的措置が無力だったり非実用的だったりする場合でも、社会規範がコピーの抑制や方向付けに重要な役割を果たす。
 3. いくつかの産業では、創作者や所有者がその財を、製品ではなくパフォーマンスであると再定義することでコピーの悪影響を鈍らせた――そしてそれにより、コピーによる経済的成功への影響を低減させた。
 4. さらに他の創造的産業では、イノベーションのコストを下げるオープンソース方式の持つ力を重視してる――そしてそれによりイノベーションを増やしている。
 5. 先行者優位性は、たとえ後でコピーされても十分な価値を一部の生産者に与えることで、イノベーションが十分に収益をもたらすものとしている。
 6. 最後に、いくつかの事例ではブランドと商標の力が示されている。ブランドはコピー製品の市場シェアを抑えられるが、コピーはブランドを宣伝する役割も果たす。このような効果は、コピーの費用についてまったく違う見方をもたらす。

●音楽産業(p270)
 1999年から2009年までのあいだにアメリカのレコード会社の収益は激減したが、コンサートのチケットの売り上げは、15億ドルから46億ドルに増えた。
 「120年にわたるレコード・ビジネスの歴史には、パフォーマーがレコードによって大金を稼いだ時期があった」。ジャガーは言う。「しかし、それはとても短い期間――だいたい、1975年から1990年の15年くらいのことでしかない」。(Zoe Heller, "Mick without Moss," New York Times, December 3, 2010)

(2016/3/21)KG

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資本の世界史 資本主義はなぜ危機に陥ってばかりいるのか
 [経済・ビジネス]

資本の世界史 資本主義はなぜ危機に陥ってばかりいるのか (atプラス叢書12)

ウルリケ・ヘルマン/著 猪股和夫/訳
出版社名 : 太田出版(atプラス叢書 12)
出版年月 : 2015年10月
ISBNコード : 978-4-7783-1486-6
税込価格 : 2,700円
頁数・縦 : 338、13p・20cm


 ドイツの経済ジャーナリストによる、資本主義の歴史。現代資本主義の行き詰まりの原因を考察する。
 大きな論点は、「お金=資本」ではないということ、そして、国家は市場経済を阻害する要素ではない、ということ。さらに、「成長」を前提とする資本主義の終焉について言及する。

【目次】
第1部 資本の興隆
 奇跡の成長―富がこの世に生まれたとき
 古代ローマ人もお金は大好き―でも、資本家にはならなかった
 偶然?なぜ中国は成長を体験しなかったのか
 よりによってイングランドで―資本主義はほとんど資本なしで生まれた
 原理の剽窃ードイツの追い上げ
第2部 資本に関する3つの誤り
 資本主義は市場経済ではない
 資本主義は国家と対立するものではない
 グローバリゼーションは新しいものではない
第3部 資本vs.お金
 お金は謎である、資本と同じでもない
 金ですか?いいえ、けっこうです
 借金に利子ですか?ええ、いいですよ
 インフレーション礼賛ーお金の価値の下落はなぜ必要か
 お金がお金を生むー人間は投機がどんなものかわかっていた
第4部 資本の危機
 危機の後は危機の前―近代的資本主義はなぜ危機に陥ってばかりいるのか
 資本主義の終焉は近いように見えた―1929年からの世界恐慌
 新自由主義の見かけの勝利ー1973年以降、何が起こったか?
 2007年からの金融危機ー銀行を破産させたのは名案ではなかった
 前例のない危機ーユーロ危機
 お金は食べられないー資産を守るにはどうすればいいか
展望ー資本の没落

【著者】
ヘルマン,ウルリケ (Herrmann, Ulrike)
 1964年生まれ。ドイツの経済ジャーナリスト。銀行員を経て、日刊紙の経済部記者となる。

猪股 和夫 (イノマタ カズオ)
 1954年生まれ。新潮社校閲部を経て、翻訳者になる。

【抜書】
●古代ギリシャ、ローマの資本(p21)
 古代のギリシャ人、ローマ人には「投資」という概念はなかった。モーゼス・I・フィンリーの指摘。
 古代史の資料に、投資用の貸付について触れられた部分が一つもない。
 貸付契約の記録はたくさん残っている。〔ギリシア人やローマ人はたしかに利益には貪欲でしたが、それを手に入れるやり方は伝統にのっとったものでした。奴隷を搾取するか、儲けの多い遠隔地貿易に関わるかだったのです。〕

●中国の衰退(p30)
 中国では、官僚政治のもと、商人が政治的に独自な生き方を送れなかった。中央政府は、商業や生産にはあまり関心を示さず、農業に重きを置いていた。
 1792~93年、イギリスの外交官ジョージ・マカートニーが、交易を求めて、国王ジョージ3世の贈り物を中国の宮廷に届けた。600個の荷物。プラネタリウム二つ、地球儀、望遠鏡、測量道具、化学器具、鐘形潜水器など。
 ところが、北京の宮廷官吏はこの贈り物を侮辱とみなした。どの贈り物も技術的に優れ、中国にとって脅威となりうるという受け止め方をしなかった。乾隆帝は、「わが天子の国はすべてのものを有り余るほど有し」、イギリス人との交易はまったく必要ない、と返事を送る。
〔 中国の宮廷はよその民族との交易を経済的な事業として優先することはせず、むしろ政治的威信にかかわる問題と理解していました。皇帝にとって輸入品が意味するのは、屈したということです。よそから何かを輸入することは、その国が自分よりもいいものを作っていると認めることになると考えたのです。こんなふうにして中国は、ヨーロッパにおける資本主義の興隆が自国への脅威になるという認識を得る最後の大きなチャンスをつかみ損ねてしまいました。〕
 一方で、中国は、イギリスがインドを一種の商業植民地として扱っていることを知っていた。イギリスに交易を許せば、他のヨーロッパ列強も中国に押し寄せることがわかっていた。

●産業革命(p35)
 資本主義の発端は、イングランドで起こった産業革命。紡績工業において、機械が人間の労働力に取って代わった。1780年から始まり、最後の手織り機が消えたのは1830年。
 工業化は、イングランド北西部の貧しい地域、マンチェスターで始まった。1800年に8万1,000人だった人口が、1850年には40万4,000人になった。リバプール、バーミンガム、リーズ、シェフィールドなどの都市も急速に成長。
 工業化は、科学と関わりなしに生まれた。機械化は大学などではなく、紡績の仕事に携わってきた職人たちが、紡績機に改良を加えていったことによる。
 近代的な資本主義は、当初はほとんど資本を必要としなかった。工場主のお金の調達先は、ロンドンの大手銀行ではなく、親戚や知人。

●農業革命(p37)
 経済全体は、農産物が基本になっていた。18世紀にはいるまで、収入の60%が食料品に充てられていた。リンネルやウールから衣類が作られ、獣皮が革になり、木が家や船に加工された。つまり、食料品や農業関連の素材が安くなり、他のものにお金を回せるようになって初めて、紡績工業のような新しい市場の発生が可能だった。
封建制をかなり早くに乗り越えていたイングランドでは、農業革命(農業資本主義)も始まっていた。中世末には、隷農も農奴もいなくなっていた。
 1534年、ヘンリー8世がローマ教皇と縁を切り、修道院の所有地(全農地の4分の1)が没収され、下級貴族や商人たちに売られた。
 村落共同体の共有地が次第に囲い込まれ、私的所有地に加えられていった。
 土地の私有と分配が進む。約4,000の土地所有者が農業用地の60%を管理し、25万人の小作人に貸したり、125万人の賃金労働者を雇ったりした。
 土地所有者の力が制限された。自分に都合のいい条件で小作に出したり、解約したりできなくなった。固定の率での長期契約が通例になった。
 小作人は、収穫を増やせば収益を上げることができるようになった。 ⇒ 農業資本家
 新しい知見も取り入れるようになる。18世紀に、三圃農法から輪作へ転換。
 三圃農法……冬作物、夏作物、1年間の休耕、というサイクル。
 輪作……休耕の代わりに、クローバかカブを植える。家畜の餌に。
 効率が上がり、労働生産性が上がった。1650年を最後に、凶作がなくなった(死亡数が上昇に転じることがなかった)。

●運河狂時代(p42)
 1761年、ブリッジウォーター公爵が、近代的な運河をはじめて建設。ワースリーにある自分の炭鉱とマンチェスターを結びつけた。おかげで、イングランド有数の富者になる。建設に20万ポンドかかったが、毎年8万ポンドの収入ができた。
 富裕層がこぞって運河に投資して一攫千金を狙うようになった。1790年ごろ、突然始まった。
 しかし、需要を顧慮することなく、計画ばかりが先行し、利益の上がらない運河も少なくなかった。初めての金融危機。

●長子相続権(p42)
 イングランドでは、長子相続権が厳然としてあり、一番年上の息子だけが貴族の称号と財産を相続した。他の子供たちは全員、市民とみなされ、行政機関や軍隊に入ったり、聖職者になったり、企業家になって活動の場を探さなければならなかった。
 明確な階級社会でありながら、貴族と平民の境界が流動的。

●紡績工業の機械化(p45)
 インドから安い木綿やモスリンの布地が入ってくると、イングランドの紡績工業は太刀打ちできなかった。製品を安く作るために、機械化を推進。
 1733年、ジョン・ケイが「飛び杼(ひ)」の特許取得。より広い布地が織れるようになる。
 1764年、「ジェニー紡績機」の発明。生産性が、従来の紡ぎ車の8倍になる。
 1769年、かつら職人のリチャード・アークライトが「水力紡績機」を設計。その後、蒸気機関で駆動するようになる。何百もの紡錘を一人の工員が監視。

●経済的グローバリゼーションの始まり(p113)
 19世紀半ば、本来の意味での経済的グローバリゼーションは、蒸気船と電信という、工業技術の革命によって始まった。
 1851年、初めて海底ケーブルがドーバー海峡に敷設され、1866年にはヨーロッパとアメリカがつながった。
 欧米間の伝達速度が一気に1万倍に高まった。
 汽船の運航やスエズ運河の建設も革命的効果をもたらす。1850年から1913年にかけて世界貿易が実質10倍になった。

●金の量(p143)
 人類史上、これまでに採掘された金の量は16万3,000トンほど。1辺20メートル超ほどのサイコロと同じ。

(2016/3/19)KG

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目の見えない人は世界をどう見ているのか
 [社会・政治・時事]

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

伊藤亜紗/著
出版社名 : 光文社(光文社新書 751)
出版年月 : 2015年4月
ISBNコード : 978-4-334-03854-0
税込価格 : 821円
頁数・縦 : 216p・18cm


 目の見えない人が、空間をどのように把握し、視覚以外の感覚をどのように用いているのかを探る。

【目次】
序章 見えない世界を見る方法
第1章 空間―見える人は二次元、見えない人は三次元?
第2章 感覚―読む手、眺める耳
第3章 運動―見えない人の体の使い方
第4章 言葉―他人の目で見る
第5章 ユーモア―生き抜くための武器

【著者】
伊藤 亜紗 (イトウ アサ)
 1979年東京都生まれ。東京工業大学リベラルアーツセンター准教授。専門は美学、現代アート。もともと生物学者を目指していたが、大学3年次より文系に転向。2010年に東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻美学芸術学専門分野博士課程を単位取得のうえ退学。同年、博士号を取得(文学)。日本学術振興会特別研究員などを経て2013年より現職。研究のかたわら、アート作品の制作にもたずさわる。

【抜書】
●ベン・アンダーウッド(p84)
 黒人の全盲の少年。常に舌打ちをし続け、その反響音で空間を把握。「反響定位」。この方法で、スケボーやバスケを楽しんでいる。
 反響定位……イルカやコウモリが利用している能力。

(2016/3/14)KG

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アメリカの真の支配者コーク一族
 [社会・政治・時事]

アメリカの真の支配者 コーク一族

ダニエル・シュルマン/著 古村治彦/訳
出版社名 : 講談社
出版年月 : 2015年12月
ISBNコード : 978-4-06-219524-9
税込価格 : 3,456円
頁数・縦 :518p・19cm


 非上場企業で全米第2位の規模を誇るコーク産業を率いる家族の物語。父フレッド、母メアリー、そして4人の兄弟たち。フレデリック、チャールズ、デイヴィッド、ビル。経営哲学から、政治への関与まで、アメリカの支配層、セレブ社会の一面を垣間見ることができる。

【目次】
ティーパーティー運動の源流
ウィチタの息子たち
スターリンの石油マン
ジョン・バーチ協会誕生
MITでのメーデー
後継者問題
リバータリアン・コーク大帝国の勃興
兄弟間の泥沼の戦争
万能メアリー
デイヴィッド・コーク
ビル・コークの兵法
「血」を巡る争いの連鎖
コーク一族の闇
表舞台に姿を現す
全面戦争
コーク一族の見果てぬ野望

【著者】
シュルマン,ダニエル (Schulman, Daniel)
 左派系メディア『マザー・ジョーンズ』誌のシニア・エディター。政治および安全保障問題を主に扱い、同誌の調査報道部門の創立メンバー。『マザー・ジョーンズ』誌のほか、『ボストン・グローブ』紙、『ヴィレッジ・ヴォイス』誌などにも寄稿している。

古村 治彦 (フルムラ ハルヒコ)
 1974年、鹿児島市生まれ。愛知大学国際問題研究所客員研究員、副島国家戦略研究所(SNSI)研究員。早稲田大学社会科学部卒業、同大学院社会科学研究科修士課程修了(修士)。南カリフォルニア大学大学院政治学研究科中退(政治学修士)。

(2016/3/13)KG

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「偶然」の統計学
 [自然科学]

「偶然」の統計学

デイヴィッド・J・ハンド/著 松井信彦/訳
出版社名 : 早川書房
出版年月 : 2015年8月
ISBNコード : 978-4-15-209560-2
税込価格 : 1,944円
頁数・縦 : 318p・19cm


 ありえないことがなぜ起こるのか――「ありえなさの原理」を、こむずかしい数式をまったく用いずに、「統計学的」に開設する。
 また、偶然の出来事に対する人々の誤解を解きほぐしてくれる。

【目次】
1章 不可思議なこと
2章 気まぐれな宇宙
3章 偶然とは何か?
4章 不可避の法則
5章 超大数の法則
6章 選択の法則
7章 確率てこの法則
8章 近いは同じの法則
9章 人間の思考
10章 生命、宇宙、その他もろもろ
11章 ありえなさの原理の活かし方

【著者】
ハンド,デイヴィッド・J. (Hand, David J.)
 インペリアル・カレッジ・ロンドン数学科名誉教授であり、ウィントン・キャピタル・マネジメント社の首席科学アドバイザー。王立統計学会前会長。

松井 信彦 (マツイ ノブヒコ)
 翻訳家。1962年生。慶應義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻前期博士課程(修士課程)修了。

【抜書】
●ありえなさの原理(p10)
 〔到底起こりそうもない出来事にも法則があるのだ。「ありえなさの原理」とは偶然に関する法則一式に私が付けた呼び名で、そららは総体として、思わぬ出来事は起こるものであること、そしてそれはなぜなのかを教えてくれる。〕

●ボレルの法則(p19)
 ボレルの法則……「確率が十分に低い事象は決して起こらない。」「または、少なくとも、われわれはいかなる状況でもそうした出来事が起こりえないものとして行動すべきである。」
 エミール・ボレル、1871年生まれ、フランス人数学者。1943年、『確率と生活』(平野次郎訳、白水社)。
 確率の数学的側面(いわゆる「測度論」)を扱ういくつかの分野の先駆者。を他に、ボレル測度、ボレル集合、ボレル=カンテリの補題、ハイネ=ボレルの定理などがある。

●大数の法則(p88)
 大数(たいすう)の法則……与えられた数の集合からランダムに選び出された一連の数の平均は、回数を増やすほどその集合の平均値に近づいていく傾向を示す。「平均の法則」とも言う。
 サイコロの6つの目の平均は3.5である。サイコロを数多く振れば振るほど、平均値は3.5に近づく。

●中心極限定理(p91)
 たとえば、サイコロを5回投げてその平均を計算する。この手続きを繰り返す。平均の分布をグラフに示すと、「正規分布」(ガウス分布)と呼ばれる釣鐘状の形になる。サンプルサイズ(この例では5)が大きくなるほど、正規分布にどんどん近づく。

●不可避の法則(p100)
 何かが必ず起こる。サイコロを転がすと、1、2、3、4、5、6の目のどれかが必ず出る。
 〔起こりうるすべての結果を一覧にしたら、そのうちのどれかが必ず起こる。ただし、一覧に挙がったどれかが必ず起こることはわかるのだが、どれが起こるかはわからない。〕

●超大数の法則(p112)
 十分に大きな数の機会があれば、どれほどとっぴな物事も起こっておかしくない。

●スキャン統計(p128)
 例えば、サイコロを60万回振り、同じ数が6回続く確率を求める(60万桁数から、同じ数が6個続く箇所を探す)。
 長さが6桁分の窓を60万桁の数の先頭から末尾まで少しずつスライドさせながら、同じ数が6個含まれている箇所を探す。 ⇒ スキャン統計

●選択の法則(p151)
 事象が起こったあとに選べば確率はいくらでも高くできる。
 納屋の側面に的がいくつも描かれており、どの的の中心円にも矢が刺さっている。的は、矢が刺さったあとに描かれた!

●平均への回帰(p164)
 ともに背の高い親から生まれた子は、やはり背が高いが、たいてい、親よりは平均に近い。ともに背の低い親から生まれた子は、やはり身長が低いが、親よりは平均に近い。 ⇒ 純粋に統計的な選択現象の結果であり、何らかの生物的メカニズムが世代を平均のほうへ引っ張っているのではない。

●確率てこの法則(p179)
 環境に生じたわずかな変化が確率に途方もなく大きな影響を及ぼしうる。
 株式相場における変動の規模が、正規分布に従うなら、1987年10月19日のS&P500先物取引に見られた規模の下落が起こる確率は10の160乗分の1。しかし、相場の変動の分布は、正規分布ではない。

●近いは同じの法則(p205)
 十分に似ている事象は、同じものとみなされる。
 「正確に間違っているよりは、あいまいに合っているほうがいい。」(ジョン・メイナード・ケインズ)

●尤度の法則(p278)
 〔データが得られたら、競合する説明それぞれについてそのデータが得られる確率を計算する。観測されたデータを得る確率が最大となる説明が、私たちが自信をもてる説明となる。科学者はこのことを「尤度の法則」などと呼ぶ。観測されたデータを得ることが最もありそうな説明を選ぶのである。〕

●求められる確率(p284)
 要求される「確率の低さ」は、状況によって異なる。
 医療や心理学など、多くの分野では、0.05~0.01で、確率が低いとされる。
 高エネルギー物理学では、新しい素粒子を探す場合の低い確率は0.0000003。
 金融において、低い確率は「nシグマ」事象と表現される。

(2016/3/4)KG

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