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奇妙な孤島の物語 私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島
 [歴史・地理・民俗]

奇妙な孤島の物語:私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島

ユーディット・シャランスキー/著 鈴木仁子/訳
出版社名 : 河出書房新社
出版年月 :2016年2月
ISBNコード : 978-4-309-20701-8
税込価格 : 3,132円
頁数・縦 : 142p・23cm


 著者本人もこれまで行ったことがなく、生涯行くこともないであろう、50の孤島に関するエッセー。書かれたことはすべて事実、というか、おそらく膨大な数の書物を慫慂して見出した記述が元になっているのだろう。「訳者あとがき」によると、著者は、ベルリン州立図書館で本書の構想を得、図書館にこもって本書のネタを仕入れたらしい。〔図書館という船ではみんな忙しい。10年来の同じ顔ぶれが、最上階のデッキ、人の高さほどの地球儀のあるテラスの下、百科事典の陰に通ってくる。それぞれの机がひとつの島だ。誰もが調べ物をしている。はかどればまるまる1頁書けるが、はかどらなければ1行の半分も書けない〕(p68)。これは、著者本人の姿を描写した一節ではないだろうか?

【目次】
北極海
 孤独(ウエジネニア島)
 ベア島
 ルドルフ島
大西洋
 セント・キルダ
 昇天島(アセンション島)
 ブラヴァ島
 アンノボン島
 セント・ヘレナ島
 トリンダージ島
 ブーヴェ島
 トリスタン・ダ・クーニャ島
インド洋
 サン・ポール島
 南キーリング諸島
 ポセシンオン島
 アムステルダム島
 クリスマス島
 トロムラン島
太平洋
 ナプカ島
 ラパ・イティ島
 ロビンソン・クルーソー島
 ハウランド島
 マッコーリー島
 ファンガタウファ環礁
 アトラーソフ島
 タオンギ環礁
 ノーフォーク島
 プカプカ島
 対蹠島(アンティポディーズ島)
 フロレアナ島
 バナバ島
 キャンベル島
 ピンゲラプ環礁
 イースター島
 ピトケンアン島
 セミソポクノイ島
 クリッパートン環礁
 ラウール島
 ソコロ島
 硫黄島
 セント・ジョージ島
 ティコピア島
 パガン島
 ココ島
 タウー島
南極海
 ローリー島
 デセプション島
 フランクリン島
 ピョートルⅠ世島

【著者】
シャランスキー,ユーディット (Schalansky, Judith)
 1980年、旧東ドイツ、グライフスヴァルト生まれ。作家、ブックデザイナー。大学で美術史とコミュニケーション・デザインを専攻。文・地図作製・装幀のすべてが著者自身の手になる『奇妙な孤島の物語―私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島』(2009)で「もっとも美しいドイツの本」賞とドイツデザイン賞銀賞を受賞した。ベルリン在住。

鈴木 仁子 (スズキ ヒトコ)
 1956年、岐阜県生まれ。名古屋大学文学部卒業。椙山女学園大学教員。

【抜書】
●ロビンソン・クルーソー島(p68)
 ロビンソン・クルーソーのモデルになった人物は、海賊のアレクサンダー・セルカーク。スコットランドの靴屋の息子。4年4ヶ月の無人島生活。
 スコットランド国立博物館の考古学者デヴィッド・コールドウェル博士は、1ヶ月間、本島を調査。長さ1.6cmの青銅のかけらを発見。セルカークのディバイダーの一部であると鑑定。
 また、セルカークの日記がプロイセン文化財団ベルリン州立図書館にあると主張。かつてハミルトン公爵のコレクションに収蔵されていたが、のちに子孫が競売にかけて、新生ドイツ帝国の手に渡った。だから、ベルリンの図書館にある。
 2009年2月4日、図書館の広報担当者は、日記は見つからなかったと発表。

●アトラーソフ島(p76)
 千島列島の北部にあるアトラーソフ島には、富士山より美しいアライト山という火山がある。標高2339m。
 むかしむかし、アライト山はカムチャツカ半島の南端にあるクリル湖の真ん中に存在していた。空高く壮麗にそびえていたので、周囲の山々はすっかり日陰になった。そのためアライト山に喧嘩をふっかけた。実は、非の打ち所のない美しさにやっかんでいただけだった。アライト山はひどく胸にこたえ、その場所から出て行き、海の中の隔遠の島として落ち着いた。
 けれど、クリル湖にいたときの思い出と悲痛のしるしに、自分の心臓を元の場所においてきた。それが心岩(こころいわ:現地語でオウチチ)で、いまもクリル湖の真ん中にある。
 アライト山が辿った跡が、いまのオゼルナヤ川となった。

●全色盲(p92)
 ピンゲラプ環礁は人口250人。このうち10%は、色彩をまったく感じることができない1色覚者、すなわち全色盲者である。通常は3万人に一人。
 2世紀以上前に襲ったレンキエキ台風により、島民の多数が死亡。続いて起こった食糧難の後、生き残ったのはわずか20人前後。その中に一人、色覚異常の劣性遺伝子を持った男がいた。近親婚が繰り返されるうち、色覚異常の出現頻度が異常に高くなった。

●長男相続(p110)
 ティコピア島は、面積4.7平米、人口1200人。3000年前から人が暮らしている。
 サイクロンや厳しい旱魃のために作物が壊滅すると、島民の多くはさっさと死ぬことを選ぶ。未婚の女は首をつるか、沖に向って泳いでいく。父親たちは息子を連れ、屋根のないカヌーで海に出て行き、戻らない。
 人口が増えないことが理想。一家族の子供たちすべてが、所有する土地の実りで生きていかなければならない。
 結婚していいのは長男のみ。弟たちは独身を守り、快楽の営みの際には子をなさないように注意する。
 長男が結婚できる年齢に達すると、両親は子作りをやめる。できたときは、窒息死するよう、顔を伏せて寝かされる。葬儀は出さない。この子らは、まだ生の域に入っていないとみなされる。

(2016/5/31)KG

〈この本の詳細〉


潜水服は蝶の夢を見る
 [文芸]

潜水服は蝶の夢を見る

ジャン=ドミニック・ボービー/著 河野万里子/訳
出版社名 : 講談社
出版年月 : 1998年3月
ISBNコード : 978-4-06-208867-1
税込価格 : 1,728円
頁数・縦 : 166p・20cm


 脳出血によって脳幹をやられ、ロックトイン・シンドローム(閉じ込め症候群)に陥ったフランス人の手記。罹患前は、ファッション誌『ELLE』の名編集長だっただけあって、軽妙でユーモアに富んだ筆致は、読む者を惹きつける。閉じ込め症候群はごく稀な難病であるわけだが、この人の手によって一般の人もに認知されるようになったのではないだろうか。

【目次】
プロローグ
祈り
バスタイム
アルファベット
皇妃
チネチッタ
旅行者たち
ソーセージ
守護天使
〔ほか〕

【著者】
ボービー,ジャン=ドミニック ()
 1952年生まれ。ジャーナリストとして数紙を渡り歩いた後、世界的なファッション誌、『ELLE』の編集長に就任。名編集長として名を馳せた。しかし、1995年12月8日、突然脳出血で倒れ、ロックトイン・シンドロームと呼ばれる、身体的自由をすべて奪われた状態に陥ってしまう。当時はまだ働き盛りの43歳だった。病床にありながらも、唯一自由に動かせる左目の瞬きだけで本書を「執筆」した。本書は大きな話題を呼び、フランスで大ベストセラーになっただけでなく、世界28ヵ国で出版される世界的なベストセラーとなった。しかし、1997年の3月9日、突然死去。本書がフランスで出版されたわずか2日後のことだった。

河野 万里子 (コウノ マリコ)
 1959年生まれ。上智大学外国語学部フランス語学科卒業。

【抜書】
●最後の一撃(p33)
 〔ある午後、僕が彼女(注:ナポレオン3世の妃、ウジェニー。海軍病院の命名者)の胸像に苦しみを打ち明けていた時のことだった。いつの間にか、彼女と僕の間には、見知らぬ影が割り込んでいた。ショーケースのガラスに、ダイオキシンの樽にでもつかっていたかのような男の顔が、映っていたのだ。口はゆがみ、鼻はでこぼこ、髪も乱れて、恐怖に凍りついたまなざしの男。おまけに一方の目は縫い閉じられ、もう一方の目は、弟アベルを殺したカインの目さながらに、見開かれている。
 しばらく僕は、その瞳孔の開いた目を、じっと、見据えた。それが自分自身の姿であることに、まったく気づかないまま。
 それからゆっくりと、目がくらみそうなほどの奇妙な絶頂感がやってきた。
 僕は社会から隔離され、麻痺し、口がきけず耳も半ば聞こえず、あらゆる喜びを奪われたクラゲのような存在になり果てたというだけでなく、見るもおぞましい醜い姿に、変わってしまっていたのである。
 僕の中に、引きつるような大笑いがこみ上げてきた。災難に次ぐ災難の、最後の一撃をくらって、もう何もかもが冗談なのだと考えるしかなかった。
 いかにも陽気そうにあえぐ僕を見て、ウジェニーは初め、とまどっていた。が、ほどなく、つられて笑い始めた。僕たちは笑った。笑いに笑った。涙があふれ出すまで。〕

●思い出(p44)
〔 楽しみのためには、匂いや味についての、鮮烈な記憶をよみがえらせてみる。それは決して汲み尽くしてしまうことのない、人間の感覚の貯水池だ。残り物をうまく料理するコツがあるように、僕は今、思い出をじっくり煮込むコツに、磨きをかけている。
 さて、その思い出の世界では、僕は今や、何を遠慮することもなく、何時にでも、食卓につくことができるわけだ。レストランに出かけるにしても、もう予約の必要はない。そして自分で料理をすれば、いつでも大成功。牛肉の赤ワイン煮はほっくりとやわらかいし、ゼリー寄せは透明で目にも美しく、アプリコット・タルトからはさわやかな甘酸っぱさが香り立つ。気分によっては、エスカルゴを十二個と、シュークルートとソーセージ、それにいわゆる遅摘みの、金色がかったアルザス・ワイン「ゲヴュルツトラミネール」を奮発してもいい。
 あるいはごくシンプルに、バターを塗ってこんがり焼いた薄いパンを、半熟卵に添えて味わうのもいい。ああ、なんというごちそう! 色あざやかな黄身が口いっぱいにとろりと広がり、ほのかにあたたかく喉を下りてゆく。消化のことも、ここでは気にする必要はない。〕

●ノワルティエ・ド・ヴィルフォール(p55)
 アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』の登場人物。〔文学に登場した最初の、そしてこれまでのところ唯一の、ロックトイン・シンドローム患者ではあるまいか。〕
 鋭い目をした生ける屍。最も重大な秘密を握っているが、口がきけず、何かを伝えるときは、瞬きだけが言葉の代わり。一度なら「はい」、二度なら「いいえ」。

(2016/5/27)KG

〈この本の詳細〉


世界を威嚇する軍事大国・中国の正体
 [社会・政治・時事]

世界を威嚇する軍事大国・中国の正体

小原凡司/著
出版社名 : 徳間書店
出版年月 : 2016年1月
ISBNコード : 978-4-19-864075-0
税込価格 : 1,836円
頁数・縦 : 268p・20cm


 アメリカに「新型大国関係」を提案し、中国式の新しい国際関係秩序を築き上げようと暗躍する中国。その実態を、軍事の専門家があぶりだす。

【目次】
第1章 中国の軍事力はどこに向けられているのか
第2章 中国軍の実力はどのようなものか
第3章 習近平主席は人民解放軍を掌握しているのか
第4章 中国の軍拡によってもたらされる世界の軍事バランスの変化
第5章 中国の戦略的目標とは何か
第6章 日米同盟は中国の軍事力に対応できるのか
第7章 自衛隊は中国軍に勝てるのか

【著者】
小原 凡司 (オハラ ボンジ)
 東京財団研究員・政策プロデューサー。1985年3月、防衛大学校卒(29期)。筑波大学大学院修士課程修了、修士論文「中国の独立自主外交」。海上自衛隊第101飛行隊長(回転翼)、2003年3月~2006年4月、駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊副長~司令(回転翼)、防衛研究所研究部などを経て退官。2011年3月、IHS Jane's入社。アナリスト兼ビジネス・デベロップメント・マネージャーを務め、2013年から現職。

【抜書】
●統合作戦指揮体制(p42)
 2015年11月24~26日に開かれた中央軍事委員会改革工作会議において、習近平が、軍の大規模改革に着手すると表明。
 「軍の最高指揮権は共産党中央、軍事委員会に集中させる」「統合作戦指揮体制の構築を進め、戦闘力を高めるため部隊の規模・編成を見直し、量から質の重視へ転換する」。
 軍区の再編。現在の七大軍区を、4~5の戦区に再編成、「戦区統合作戦指揮機構を構築する」。

●人民解放軍(p47)
 人民解放軍は、もともと陸軍。
 中国の海軍、空軍、第二砲兵は、陸軍の一部という位置づけだった。海軍、空軍、第二砲兵のトップである司令員(官)は、人民解放軍の七大軍区の司令員と同格だった。また、陸軍司令員という職は存在しなかった。
 2015年12月13日、陸軍指導機構が新設される。いわゆる陸軍司令部。陸軍司令員が任命された。海空軍と同列になる。

●九段線(p61)
 もともとは、1947年、中華民国が11本の線(十一段線)を用いて、南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶと主張したことに始まる。台湾の東から南下し、南沙(スプラトリー)諸島、西沙諸島を囲み、トンキン湾にいたる領域を囲む線。この内側は「中国」の領土であるという主張。台湾では、いまでも「南シナ海全域に主権が及ぶ」と主張している。
 中華人民共和国では、十一段線のうちの2本を消して九段線とした。

●軍需産業(p162)
〔 当然のことながら、武器装備は無料ではない。多くに国には軍需産業があり、自国の軍隊に武器装備を売却している。2012年の世界の武器調達予算は25兆円をはるかに超え、少なくとも2015年まで微増してきている。
 現在、これらの予算の大きな部分を占めるのは欧米諸国、日本、ロシア、中国、韓国などの武器調達であるが、日本を除くこれら国家の軍需産業にとって、自国内の市場は大きく金儲けするには十分ではない。また政府にしても、自国内の軍需産業が海外市場で利益を上げてくれれば、国内において大きな経済効果を上げてくれる上、同種の武器装備を大量に生産してくれれば、自国が購入する武器の単価を抑える効果も期待できることから、一般的に各国政府は自国の軍需産業の商売に協力的である。〕

●東南アジア(p168)
 NATO(経済不振)、中東・北アフリカ(原油安)の国防支出が激減する中、東南アジアが軍需産業にとって注目されてきた。中国の強硬姿勢に対し、軍備増強を急ピッチで進めようとしている。
 2014年国防予算(国際調査機関IHSのまとめ)、日本は546.1億ドル、世界第4位。
 NATO全体では、8696億ドルで世界の54.4%。20年までに8379億ドル(48.5%)にまで減少すると予測。

●一帯一路(p175)
 中国の経済活動拡大を示すスローガン。ヨーロッパ、アフリカなど、西へと経済活動を拡大する。
 陸上のシルクロード経済ベルト(帯)と、21世紀海上シルクロード(路)という二つのシルクロードを建設し、その周辺地域に巨大な経済圏を創出しようとするもの。
 陸上に建設しようとしているのは単なる「路」ではない。陸上の経済ベルトの範囲はロシアまで含まれる。
 21世紀海上シルクロードでは、各国に巨額の直接投資を行い、港湾を整備し、管轄権あるいは運営権の一部を獲得している。ミャンマーのチャウビュー港、パキスタンのダワダル港、ギリシャのピレウス港、など。

(2016/5/27)KG

〈この本の詳細〉


セラピスト
 [医学]

セラピスト
 
 
著作者: 最相葉月/著
出版社: 新潮社
発行年月: 2014年7月
ファイル容量: 2.1MB
税込価格:1,555円
 

 取材とインタビューをとおして、精神科医、臨床心理士(カウンセラー)など「セラピスト」たちの現場と現状をレポート。9割を占める薬物療法や「三分診療」が常態化する現状に対して、一定の理解を示しながらも問題点として指摘する。また、箱庭療法や絵画療法、風景構成法など、現在ではあまり行われなくなった治療法も、一部実際の体験を描写しつつ具体的に紹介する。
 
【目次】
逐語録(上)
第1章 少年と箱庭
第2章 カウンセラーをつくる
第3章 日本人をカウンセリングせよ
第4章 「私」の箱庭
第5章 ボーン・セラピスト
逐語録(中)
第6章 砂と画用紙
第7章 黒船の到来
逐語録(下)
第8章 悩めない病
第9章 回復のかなしみ

【著者】
最相 葉月 (サイショウ ハズキ)
 1963年生まれ。兵庫県神戸市出身。関西学院大学法学部卒業。著書に『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)、『星新一―一〇〇一話をつくった人』(講談社ノンフィクション賞、大佛次郎賞、日本推理作家協会賞、日本SF大賞、星雲賞)などがある。

【抜書】
●精神療法、心理療法
 精神療法……医師の治療計画のものと、医療行為として行われる心理的援助。現在は、認知行動療法のように医科学的なエビデンス(根拠・証拠)が確認されたため、医療保険の対象になっているものもある。
 心理療法……病気とは呼べないため精神科医が治療の対象としない「心の不調」を、心理学を土台とした心理的援助を 行う。主にカウンセラーが扱い、医療行為ではない。人間関係の悩みや不登校など。

●統合失調症
 非妄想型……破瓜型統合失調症。思春期から青年期にかけて発症し、感情表現の欠落が主な症状。
 妄想型……成人してから発症し、幻覚や妄想が主症状。
 統合失調症は、認知機能の低下によるもの。かつて教えられていたような、「人格水準の低下に陥る人格の病」ではない。

●認知行動療法
 2010年前後から広がりを見せている。
 物事の受け取り方や考え方の癖、歪みを自覚、それによって引き起こされた行動を訓練によって修正していく心理療法。
 うつ病やパニック障害のほか、怒りや不安のコントロールにも適応できる。
 今現在の感情に焦点を当てることが特徴。〔あるきっかによって引き起こされる自動思考と呼ばれる反応、たとえば、自分はダメだ、先生は私を愚かだと思っているに違いない、といった捉え方を、本当にそうなのかと意識したり練習したりすることによって修正していく。〕

●発達障害
 発達障害は、昔からあった。現在、目立つようになったのは、サービス産業の多様化や、情報化社会におけるコミュニケーション形態の変化など、社会の第三次産業化に応じて不適応者としてはじき出され、可視化されてきたため。
 河合敏雄の考え。

●双極性障害
 双極性障害Ⅱ型とうまく付き合う方法。「気分屋的生き方をすると気分が安定する」(双極性障害の名医でもある神田橋條治医師の言葉 )。行き当たりばったり生きることを楽しむとよい。

(2016/5/21)EB

〈この本の詳細〉


古代天皇誌
 [歴史・地理・民俗]

古代天皇誌

千田稔/著
出版社名 : 東方出版
出版年月 : 2016年3月
ISBNコード : 978-4-86249-261-6
税込価格 : 2,160円
頁数・縦 : 249p・20cm


 2012年9月から2015年9月まで、産経新聞奈良版に100回にわたって連載された「古代天皇誌」を一部修正して単行本化。『古事記』『日本書紀』『続日本紀』の記事に従って、大和の国に宮をおいた天皇について叙述。

【目次】
神武天皇 / 欠史八代 / 崇神天皇 / 垂仁天皇 / 景行天皇 / 成務天皇 / 仲哀天皇と神功皇后 / 応神天皇/ 仁徳天皇 / 履中天皇 / 反正天皇 / 允恭天皇 / 安康天皇 / 雄略天皇 / 清寧天皇 / 顕宗天皇 / 仁賢天皇 / 武烈天皇 / 継体天皇 / 安閑天皇 / 宣化天皇 / 欽明天皇 / 敏達天皇 / 用明天皇 / 崇峻天皇 / 推古天皇 / 舒明天皇 / 皇極天皇 / 孝徳天皇 / 斉明天皇 / 天智天皇 / 天武天皇 / 持統天皇 / 文武天皇 元明天皇 / 元正天皇 / 聖武天皇 / 孝謙天皇 / 淳仁天皇 / 称徳天皇 / 光仁天皇 / 桓武天皇

【著者】
千田 稔 (センダ ミノル)
 奈良県に生まれる。京都大学大学院文学研究科博士課程を経て追手門学院大学文学部専任講師、同助教授。奈良女子大学文学部助教授、教授を歴任。1995年4月、国際日本文化研究センター教授(2008年定年退任)。現在、国際日本文化研究センター名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授、奈良県立図書情報館館長(2008年~)。濱田青陵賞、日本地理学会優秀賞、奈良新聞文化賞を受賞。奈良県記紀万葉プロジェクト顧問、旅の文化研究所評議員。博士(文学・京都大学)。

【抜書】
●葛城王朝(p13)
 欠史八代の天皇の宮と陵墓は、開花天皇を除いてすべて奈良盆地の南西部、とくに葛城地方と橿原市や田原本町あたりに中心地がある。
 三輪山の麓に王権が成立する以前に、葛城王朝が存在した? 鳥越憲三郎(1914‐2007)が提唱。

●大神神社(p17)
 大神神社……酒の神。崇神天皇がオオタタネコにオオモノヌシを祀らせた。神に捧げる酒を扱う酒人(さかひと)が天皇に酒を献上し、歌を詠んだ。
  此の神酒は 我が神酒ならず 倭(やまと)成す 大物主の 醸(か)みし神酒 幾久(いくひさ) 幾久
 酒宴が終わると、身分の高い参会者たちはご機嫌になって次のように歌う。
  味酒(うまさけ) 三輪の殿の 朝門(あさと)にも出(い)でて行かな 三輪の殿門(とのと)を
  (一晩飲み明かして、三輪のやしろの朝の門を通って出て行こう)
 味酒は、三輪にかかる枕詞。

●畿内(p133)
 畿内とは、王都をおくことのできる地域のこと。首都圏。
 「改新の詔」(646年)では、畿内の規定は4地点(四至:しいし)で定められている。東はな名墾(なばり:三重県名張市)の横河、南は紀伊の兄山(せやま:和歌山県伊都郡かつらぎ町)、西は赤石の櫛淵(神戸市西区の住吉神社の近くを流れる明石川の奇淵〈くしぶち〉)、北は近江の狭狭波(さざなみ)の合坂山(おおさかやま)。
 大宝律令では、大倭(大和)・摂津・河内・山背。のちに和泉国が成立して五畿内となる。

●藤原京(p167)
 天武天皇が構想した藤原京は、大和三山(香具山・耳成山・畝傍山)を意図的に取り込むものであった。
 道教の神仙思想に傾倒していた天武は、三山を三神山に擬した。
 三神山……中国の東の海に浮かぶ架空の島。仙人が住み、不老不死の薬がある。「真人」が最高位の仙人を指す。蓬莱・方丈・瀛州(えいしゅう)。
 藤原京は、正式には新益京(あらましのみやこ)と呼ばれた。(p177)

●恭仁京、難波京(p212)
 藤原広嗣の乱(740年)が沈静したことを見計らい、聖武天皇は東国行幸に出る。最後に帰ったのは平城京ではなく、恭仁宮(くにのみや:木津川市加茂付近)。
 聖武天皇は、恭仁京への遷都を考えていた。京の造営には、行基が関係していた。
 恭仁京はほぼ完成し、大極殿も平城京から移築されていた。しかし、費用が多額になり、造営は中止。744(天平16)年、平城京の副都ともいうべき難波宮を皇都とし、移る。
 しかし、諸司・官人などの要請により、天平17年に平城京に還る。平城還都。

(2016/5/21)KG

〈この本の詳細〉


図書館大戦争
 [文芸]

図書館大戦争

ミハイル・エリザーロフ/著 北川和美/訳
出版社名 : 河出書房新社
出版年月 : 2015年11月
ISBNコード : 978-4-309-20692-9
税込価格 : 3,024円
頁数・縦 : 384p・20cm


 ウクライナ生まれの新進作家による前衛小説(?)。
 原題は「司書」という意味だそうだ。 有川浩『図書館戦争』にあやかったネーミングか。どちらも奇想天外で、本を守る戦いがテーマではある。

【目次】
第1部 本
第2部 シローニン読書室
第3部 祖国の守護者

【著者】
エリザーロフ,ミハイル (Elizarov, Mikhail)
 1973年ウクライナ生まれ。大学卒業後カメラマンなどを経て、2001年、中短篇集『爪』で注目を集める。表題作「爪」でアンドレイ・ベールイ賞候補に。2008年には『図書館大戦争』でロシア・ブッカー賞受賞。暗い想像力と前衛的な文学性をもつ新世代の作家として高く評価される。

北川 和美 (キタガワ カズミ)
 ロシア語通訳・翻訳者。東京大学大学院修了。専攻は現代ロシア文学。

【抜書】
●キーワード
 グロモフ(界)、ネヴェルビノの戦い、ゴルン、モホヴァ、マルガリータ、マクシム叔父、記憶の書、憤怒の書、忍耐の書、権力の書、図書館、シローニン読書室

(2016/5/19)KG

〈この本の詳細〉


世界史の逆襲 ウェストファリア・華夷秩序・ダーイシュ
 [社会・政治・時事]

世界史の逆襲 ウェストファリア・華夷秩序・ダーイシュ

松本太/著
出版社名 : 講談社
出版年月 : 2016年2月
ISBNコード : 978-4-06-219881-3
税込価格 : 1,728円
頁数・縦 : 284p・19cm


 現代の国際社会を読み解く鍵として、ウェストファリア体制、華夷秩序、ダーイシュについて解説し、平和な未来を築くための試論を展開する。
 ウェストファリア体制とは、モダンな主権国家が築く国際システムを表す。華夷秩序は、その体制を乱すおそれのある大国中国の台頭を象徴し、ダーイシュはすでにその体制を否定し、巧妙な戦略で全世界を無秩序へと導こうとするイスラム国を指す。

【目次】
第1部 万人の万人に対する戦い
 かつての戦争の消滅と新たな戦争の始まり
 ハイブリッド戦争の登場
 現実を超えるサイバー戦争
  ほか
第2部 国際秩序の変動と歴史の逆襲
 ウェストファリア秩序―国際秩序の根底にあるもの
 東アジアにおける国際秩序と日本の果たした役割
 オスマン帝国の消滅と中東への国際秩序の移植
  ほか
第3部 国家の羅針盤
 阿修羅のごとく
 地図を描く
 新たなビヒモスとの戦い
  ほか

【著者】
松本 太 (マツモト フトシ)
 1965年生まれ。東京大学教養学部アジア科卒業後、1988年外務省入省。中近東第一課課長補佐、内閣官房安全保障・危機管理室参事官補佐、OECD代表部一等書記官、在エジプト大使館参事官、内閣情報調査室国際部主幹、国際情報統括官組織国際情報官、世界平和研究所主任研究員(出向)などを歴任後、2015年10月から駐シリア臨時代理大使としてヨルダンに赴任する。

【抜書】
●民間軍事会社(p53)
 民間軍事会社は、1990年代にアパルトヘイト後の南アで巨大化。
 21世紀にはいると、対テロ戦争のためのアフガニスタン侵攻、イラク戦争を境に拡大、深化していった。
 〈民間軍事会社が拡大した理由〉
 ①主要国における軍事費削減の必要性。
 ②プレデターなどの無人機の運用に代表されるような軍事技術の高度化。
 ③冷戦終結を境に起きた大量の職業軍人の退任と市場への流入。
 ④途上国や旧ソ連圏での民族対立などが多数発生した。
 Executive Outcomes……民間軍事会社のさきがけ。旧南アフリカ国防軍第32大隊の副司令官だったイーベン・バーロウにより、1989年に設立。主として南アの特殊部隊などから雇用された要員からなる。最盛期には3,500人を擁していた。アンゴラ内戦において、アンゴラ解放人民運動(MPLA)と契約し、その正規軍の訓練を行う。対立相手であったアンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)に対する掃討作戦にも加わった。シエラレオネ内戦にも、300人の部隊を投入し、革命統一戦線(RUF)が占拠していたダイヤモンド鉱山の奪還に成功。

●ランツクネヒト(p55)
 ランツクネヒト(Landsknecht)……15~17世紀にかけて活躍したドイツ人傭兵。槍や銃を担ぐ歩兵部隊。派手な羽飾りのついた帽子に袖をふかふかに膨らませた上着や、男根を強調したズボンの前当てが特徴。30年戦争では、神聖ローマ帝国軍でボヘミアの貴族出身のアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインが、15万人の傭兵を集めた。スウェーデン軍の大部分を占めたのも傭兵だった。
 傭兵は、ヨーロッパの中世に活躍、30年戦争でも多用される。1648年のウェストファリア条約をきっかけに、徐々にその姿を消していくようになる。

●非線形の戦争(p74)
 非線形の戦争(ノン・リニア・ウォー)……これまでの戦争は、二つの国家ないしは二つの同盟の間で行われた。これに対し、新たな戦争は、複数のコアリションが同時に対峙している。2対2ではなく、3対1の闘いでもない。すべての者のすべての者に対する戦い。
 シリアでは、アサド政権がシリア反体制派を攻撃し、その反体制派の中でもイスラム主義者と自由シリア軍が相互に戦い、イスラム主義者の中でもダーイシュ(IS:イスラム国)とヌスラ戦線がイスラムの正統性をめぐって乱闘を演じ、あげくには少数民族のクルド人たちも自らのサバイバルのためにイスラム主義者と戦う。

●プレモダン(p86)
 英国の外交官、ロバート・クーパーが『国家の崩壊――新リベラル帝国主義と世界秩序』(北沢格訳、日本経済新聞社、2008)にて国家類型を三つに区分。
 プレモダン圏……政治・経済的に脆弱なため、有効な統治を行うことができず、内戦等によって主権国家を確立することが困難な国々。中東やアフリカの多くの破綻国家。
 モダン圏……国々の行動原理が国家主権に基づくものとなり、軍事力を通じた勢力均衡などに重点を置く。中国、ロシアなど。
 ポストモダン圏……民主主義や自由主義といった価値が普遍化し、国境の壁が著しく低くなり、国家は相互依存を高め、相互信頼や透明性に基づく多元的な安全保障共同体が確立するようになる。日本や欧米諸国等の先進民主主義国。
 プレモダンとモダンとの間には大きな断絶がある。国家主権に基づく国際社会という近代システムの有無が、この二つの分水嶺。

●宗教的権威の否定(p95)
 30年戦争は宗教戦争であった。ウェストファリア体制では、宗教的権威が一切否定され、主権国家が宗教をその統制下におくようになる。
 ウェストファリア体制が産んだ近代の国家システムとは、「手続き的なものであって、けっして実質的なものであってはならない」ということ。新たな国際システムの基本となるのは、唯一、主権国家であるべきだ。国家を超える宗教的な権威や、国家以外のイデオロギーや都市国家、帝国などが、国際システムを左右することを許容しない。

●中国の台頭(p128)
〔 現在の中国は、むしろ近代ヨーロッパで生まれた基本原理を最大限に活用しつつ、「中華民族の偉大なる復興」というスローガンの下で、中華民族という「国民国家」の創出と、米国と互角に対抗する大国としての台頭という二つの夢を同時に実現しようとしています。
 現在の中国が現代の国際秩序の中で平和的台頭を実現できるか否かは、自らの歴史において「恥辱の一世紀」としている恩讐を越えられるか否かという歴史的課題とも密接に関わっているのです。アジアの未来を考えるためには、この点にこそ、彼我を隔てる歴史認識の「ずれ」が深く横たわっていることを、私たちは改めて認めることからはじめなければならないでしょう。〕

(2016/5/14)KG

〈この本の詳細〉


蘇我氏の古代
 [歴史・地理・民俗]

蘇我氏の古代 (岩波新書)

吉村武彦/著
出版社名 : 岩波書店(岩波新書 新赤版 1576)
出版年月 : 2015年12月
ISBNコード : 978-4-00-431576-6
税込価格 : 864円
頁数・縦 : 260p,16p・18cm


 蘇我氏を中心に、氏族という観点から綴った古代史。

【目次】
1 氏の誕生―氏の名を名のる
 王の名をめぐって―中国の史書から
 「倭の五王」の姓と名
 大伴氏と物部氏―「職能」を名のる氏
2 蘇我氏の登場
 葛城氏と蘇我氏
 蘇我氏の系譜をたどる
 列島の開発と蘇我稲目
 仏教の導入と馬子
3 発展と権勢の時代
 推古女帝の即位
 推古朝における馬子の活躍
 飛鳥の地と蝦夷・入鹿
 蘇我氏と「天皇」
4 大化改新―蘇我氏本宗の滅亡
 東アジアの情勢からみた「乙巳の変」
 大化の改革と蘇我倉山田石川麻呂
 生き延びる蘇我氏傍系―七世紀後半の蘇我氏
 石川氏の活躍
5 蘇我氏から藤原氏へ
 藤原氏の誕生と不比等―名負いの氏からの離脱
 律令法と氏・氏族
 奈良時代と藤原氏

【著者】
吉村 武彦 (ヨシムラ タケヒコ)
 1945年朝鮮大邱生まれ。京都大阪育ち。1968年東京大学文学部国史学科卒業、同大大学院人文科学研究科博士課程国史学専修中退。現在、明治大学文学部教授。専攻、日本古代史。

【抜書】
●名負いの氏(p7)
 「臣」「連」は、政治的・社会的地位を示すものとして王から与えられる「カバネ(姓)」。
 「大臣」「大連」は、それぞれの最高位。
 「臣」のカバネを与えられ、大臣を務めるのは、蘇我氏などの地名を氏の名とする氏族。特定の地域に政治的基盤をもっている。
 「連」のカバネを与えられ、大連を務めるのは、大伴氏や物部氏など、職掌が氏名となる伴造(ばんぞう、とものみやつこ)氏族。「名負いの氏」。
 大伴……ヤマト王権に本人自身の労働力をもって仕え奉る「伴(とも)」の集団を管理する氏族。
 物部……ヤマト王権に「物」を奉る氏族集団の、中央における管理氏族。

●名字(p10)
 名字……一般に名字は、有力氏族が12世紀ころに地名や官職を名乗ることから始まった。
 氏(うじ)は、大伴家持(おおとものやかもち)などのように、個人名との間に「の」を入れて読む慣わしがある。
 名字は、徳川家康(とくがわいえやす)のように、「の」を入れない。
 ただし、今日では氏に由来する場合も「の」は入れない。

●宗族(p14)
 中国では、共通の祖先から出た「男系」の血統集団である同族集団を「宗族(そうぞく)」という。その宗族の名称を「姓(せい)」と呼ぶ。隋の楊氏、唐の李氏など。人類学でいう「氏族(クラン)」に相当する。中国では、同姓不婚。
 姓から分かれ、政治的由来や居住地名等によって成立した血縁集団が「氏(し)」と称される。号(族号:唐、夏)、諡(おくり名:戴、武)、爵(爵位:王、公)、国(国名:曹、魯)、官(職官:司馬、司徒)、字(生まれた順の呼び名:伯、仲)、居(居所:城、郭)、事(従事する職:卜、陶)、職(標識、トーテム:青牛、白馬)など。
 秦漢時代以降、姓と氏は混同されるようになり、ほとんど同義に用いられた。
 日本には、中国と共通する「宗族」は存在しなかった。

●日本最古の寺(p87、p93)
 百済の聖明王から仏教が公式に伝わった折(仏教公伝、538年または552年)、蘇我稲目は受け入れることを主張。物部尾輿と中臣鎌子らは反対。欽明は仏像を稲目に与える。稲目は、向原(むくはら)の家を寺にした。後の豊浦寺(とゆらでら)。

●初の譲位(p169)
 乙巳の変(645年)によって蘇我蝦夷が自尽した次の日、皇極女帝が譲位。同母弟の軽皇子が即位。孝徳天皇。
 史上初の譲位。それまで、ヤマト王権において王位は終身位であった。

●公民制(p174)
 646年、新政権は「改新の詔」を発布。大化の改新。
 主文4項のうちの1に、「子代(こしろ)の民(おおみたから)・屯倉(みやけ)」と「部曲(かき)の民・田荘(たどころ)」を廃止して「食封(へひと)」等を支給、とある。
 部民制を廃止、統一的な公民制支配へと転換。
 蘇我部など、豪族所有部を解体。旧来の豪族から、官僚制的貴族への転換。

●八色の姓(p221)
 天武13年(684年)、「八色の姓」を制定。しかし、現実に機能したのは、上位の4種類のみ。
 真人……継体天皇の近親や継体以降の皇裔氏族。
 朝臣……旧臣姓の氏族が多い。「記・紀」の伝承では、孝元天皇以前の皇別氏族。
 宿禰……旧姓が連である神別氏族。
 忌寸……畿内の国造クラスの氏族や渡来系移住民。
 他の4種は、道師(みちのし)、臣、連、稲置(いなぎ)。

(2016/5/12)KG

〈この本の詳細〉


意識と脳 思考はいかにコード化されるか
 [医学]

意識と脳――思考はいかにコード化されるか

スタニスラス・ドゥアンヌ/〔著〕 高橋洋/訳
出版社名 : 紀伊國屋書店
出版年月 : 2015年9月
ISBNコード : 978-4-314-01131-0
税込価格 : 2,916円
頁数・縦 : 469p・20cm


【目次】
序 思考の材料
第1章 意識の実験
第2章 無意識の深さを測る
第3章 意識は何のためにあるのか?
第4章 意識的思考のしるし
第5章 意識を理論化する
第6章 究極のテスト
第7章 意識の未来

【著者】
ドゥアンヌ,スタニスラス (Dehaene, Stanislas)
 1965年生まれの認知神経科学者。コレージュ・ド・フランス教授。数学、心理学を専攻したのち、脳における言語と数の処理の研究へと進み、若くして認知神経科学の世界的な研究者の一人となる。2011年にフランスの最高勲章であるレジオンドヌール勲章(シュヴァリエ)を受章。2014年度のBrain Prizeほか、脳生理学関係の受賞歴多数。フランス国立保健医学研究機構(INSERM)認知神経画像解析研究ユニットのディレクター、フランス科学アカデミーならびにローマ教皇庁科学アカデミーの会員でもある。

高橋 洋 (タカハシ ヒロシ)
 翻訳家。同志社大学文学部文化学科卒(哲学及び倫理学専攻)。

【抜書】
●意識(p20)
 現代の意識の科学では、最低でも三つの概念を区別する。
 (1)覚醒状態(vigilance)。眠っているときと目覚めているときで変化する覚醒の度合いを示す。
 (2)注意(attention)。心的な資源を特定の情報に集中投下する。
 (3)コンシャスアクセス。注意を向けられた情報のいくつかが、やがて気づかれ、他者に伝達可能になる。
 純粋な意識とみなせるのは、コンシャスアクセスのみ。

●グローバル・ニューロナル・ワークスペース理論(p27)
 〔意識は、皮質内で伝達される広域的(グローバル)な情報であり、脳全体で必要な情報を共有するための神経回路網から生じる〕。

●コンシャスアクセス(p39)
 目覚めた状態、覚醒状態、注意は、コンシャスアクセスを可能にする条件である。ただし、特定の情報に対する気づきの必要条件ではあっても、常に十分条件であるとは限らない。
 例えば、視覚皮質に小規模な卒中を起こし、色盲になった場合、色に関する情報にアクセスする能力を失う。しかし、目覚めており、注意力も十分にある。

●両眼視野闘争(p47)
 左右の目に、建物と顔といった、それぞれ無関係な絵を見せる。2枚の絵は融合せず、視覚は一方から他方へ、数秒おきに切り替わる。
 二つの競合するイメージが、意識的知覚を求めて争っている状態。

●非注意性盲目(p55)
 意識が一つのことに集中すると、他のことに気づかない。
 熱心な読書家、チェスプレイヤー、数学者は、知的作業に没頭することで、環境に対するあらゆる気づきを失った心的隔離の状態を長期にわたって生じる。「見えないゴリラ」も非注意性盲目の好例。

●50ミリ秒(p61)
 多くの実験で、40ミリ秒間しか表示されないイメージはまったく見えず、60ミリ秒になるとラクに見えるようになる。50ミリ秒あたりが、可視と不可視の境界。

●空間無視(p81)
 右半球、特に下頭頂葉のあたりの損傷により、左側の空間に注意を向けられなくなる現象。風景や物体の左側全体を頻繁に見落とす。例えば、食事の量に文句をつけたある患者は、皿の右側の料理だけを食べ、左側にはまったく手をつけていなかった。
 網膜と初期段階の視覚皮質は完全に機能しているが、高次の脳領域の損傷のため、左の視野の情報に注意を向け、それを意識のレベルに伝えることができない。無意識のレベルでは、視野の左側の情報を処理している。
 2軒の家の絵を見せる実験。片方は、左側が燃えている。空間無視の患者は、どちらも同じ家だと主張したが、燃えている家に住みたいとは言わなかった。

●N400(p105)
 At breakfast, I like my coffee with cream and socks.のようなおかしな文を読むと、N400という特殊な脳波を生む。N400は、ある単語がどの程度文脈に適合しているかを評価する。語句がマスキングや非注意性盲目によって不可視化されていても、発生する。
 N400……Nは、頭頂部に出現する陰性電位の脳波。400は、単語出現から約400ミリ秒後を意味する。
 ただし、無意識の処理が行われている間は、脳の活動は、意味を処理する言語ネットワークの主要な場たる左側頭葉に留まる。
 意識される語句は、前頭葉に広がるはるかに大規模な脳のネットワークを占めるようになる。

●衝動買い(p118)
 無意識の行動が、より良い結果を生む?
 最大で12の特徴が異なる4種類の車から、1台を選択する問題。
 被験者の半分には、問題を読んでから4分間の熟考時間が与えられる。残り半分は、4分間、アナグラム問題を解かされ、注意をそらされる。
 ベストの車を選んだ確率は、22%対60%。意識的な熟考は、逆効果となっている。

●睡眠学習(p121)
 動物実験によると、海馬と皮質のニューロンは、睡眠中でも活動している。その際の発火パターンは、睡眠に先立つ覚醒期間に生じた活動と同じシーケンスを「早送りモードで再生」している。時には逆順に活性化されることもある。
 〔睡眠が、記憶の強化とひらめきを促進する無意識の活動が沸騰する期間であることは明らかだ。〕

●スパンドレル(p130)
 スティーブン・ジェイ・グールドの造語。
 生物の構造の必然的な副産物として生じ、のちに別の役割のために徴用された(exapted)と考えられる特徴。例えば、オスの乳首。メスでは有利に機能する乳房を構築するための生物の建築設計の、些末ではあるが必然的な結果として生まれた。

●意識のしるし(p224)
 意識的な知覚表象を経験したか否かを示す生理的な4つの標識。
 (1)意識される刺激は、頭頂葉、および前頭前野の神経回路の突然の点火に至る激しいニューロンの活動を引き起こす。自己増幅する神経活動のなだれ。
 (2)コンシャスアクセスは、刺激が与えられてから三分の一秒が経過してから生じる、P3波と呼ばれる遅い脳波をともなう。
 (3)意識の点火はさらに、高周波振動(ガンマ帯域:30ヘルツ~)の遅れての突発を引き起こす。
 (4)互いに遠く隔たった多数の皮質領域が、双方向の同期したメッセージ交換に参加し、広域的な脳のウェブを形成する。

●オプシン(p225)
 電流ではなく光によってニューロンを刺激する技術、光遺伝学が急速に発展している。
 光に敏感な「オプシン」と呼ばれる分子が、光子を電気信号に変換する。
 オプシン遺伝子をもつウイルスを動物の脳に注入し、その発現を特定のニューロン群に限定する。そこにレーザー光線を当てると、突然、ミリ秒単位の正確さでニューロンのスパイクの洪水を引き起こすことができる。
 視床下部を刺激し、眠っているマウスを目覚めさせる実験に成功している。

●心のルーター(p229)
 意識の存在理由……心のルーター。
 〔特定の情報の断片に気づいていると私たちが報告するとき、それはその情報が特殊な保管領域に蓄積され、それを通じて他の脳領域にも利用可能になったことを意味する。気づかぬところで脳内を恒常的によぎる無数の心的表象のうち、現在の目標に合致したものが選択され、意識はそれを高次の意思決定システムが利用できるよう広域化する。私たちは、適切な情報を抽出し転送する、いわば心のルーターを備えているのだ。〕
 心理学者バーナード・バースは、「グローバル・ワークスペース」と呼ぶ。私的な心のイメージを自由に喚起し、無数の特化した心のプロセッサーに伝達することを可能にする、外界から切り離された内的システム。
 意識は、脳全体の情報共有。〔私たちは、何かを意識するときはつねに、対応する外部刺激が途絶えたあとでも、それを長く心に留めておける。なぜなら、脳は情報をワークスペースに持ち込み、最初に知覚した時間と空間とは無関係に保持できるからだ。その結果、私たちはその情報を好きな方法で利用できる。たとえば、言語プロセッサーに送って、それに名前をつけられる。だから、誰かに何らかの情報を報告する能力は、意識の主要な特徴の一つをなす。また長期記憶に蓄えたり、未来の計画に用いたりすることもできる。情報の柔軟な伝播は、意識の主要な特質の一つなのだ。〕

●前意識(p266)
 前意識……待機中の意識。情報はすでに発火するニューロンの集合によってコード化され、注意の対象になりさえすればいつでも意識され得る。しかし、まだ意識されていない状態。
 意識的な表象は、二番目の刺激が入ってこないよう、周囲に抑制の壁を築く。しかし、低次の感覚野は、通常のレベルで機能する。この壁によって、前意識の状態が生まれる。
 前意識の情報は、グローバル・ワークスペースの外部に存在する、一時的記憶領域に蓄えられる。注意を向けないとゆっくりと朽ちていく。短期間なら、前意識の情報は回復して意識にのぼらせることができる。その場合、私たちは過去の事象を振り返って経験する。

●切り離されたパターン(p270)
 前意識、識閾下の状態に次ぐ、無意識の作用の三番目のカテゴリー。
 たとえば、呼吸をコントロールする発火パターンは脳幹に限定され、前頭前皮質や頭頂皮質のグローバル・ワークスペース・システムからは切り離されている。

●文法(p275)
 言語を理解、生成する文法は、左上側側頭葉と下前頭回を結ぶ接続の束によって実装され、したがって、背外側前頭前皮質にある、心的努力を必要とする意識的な処理のネットワークを動員しない。麻酔下でも、言語を司る側頭皮質の大部分は、気づきの働きなしに自律的に言語を処理し続ける。

●アルファ波(p284)
 昏睡中の患者は、巨大なアルファ波のリズムが皮質をおおっており、意識が生じる可能性が排除されている。
 アルファ波は、ワイパーに例えられる(神経学者アンドレアス・クラインシュミットによる)。音に集中する際に視覚領域を閉鎖するなど、特定の領域を締め出すために用いられている。

●入れ子の進化(p351)
 〔人間の意識は、入れ子になった二つの進化による独自の成果物と見なせる。すべての霊長類において、意識は当初、コミュニケーション装置として進化した。前頭前皮質と、それに関連する長距離神経回路が局所的な回路のモジュール性を破り、脳全体にわたって情報を一斉に伝達するようになったのだ。しかし人類においてのみ、このコミュニケーション装置は、のちに第二の進化によって新たな高みに押し上げられる。すなわち、高度な信念の形成と、他者との共有を可能にする「思考の言語」が出現したのである。〕

(2016/5/8)KG

〈この本の詳細〉