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人種戦争-レイス・ウォー 太平洋戦争もう一つの真実
 [歴史・地理・民俗]

人種戦争――レイス・ウォー――太平洋戦争 もう一つの真実

ジェラルド・ホーン/著 藤田裕行/訳 加瀬英明/監修
出版社名 : 祥伝社
出版年月 : 2015年7月
ISBNコード : 978-4-396-65054-4
税込価格 : 2,160円
頁数・縦 : 438p・19cm


 大東亜戦争の本質が、白人対非白人の「人種戦争」であったということを、さまざまな資料からの引用によって立証する。それは、アジア人だけでなく、黒人の間にも拡がっていた。

【目次】
第1章 「純血の白人」以外は人にあらず
第2章 アジアの黒人
第3章 一九四一年・香港
第4章 白人収容所
第5章 アメリカの黒人から見た日本人
第6章 人種関係の逆転、性の逆転
第7章 真白い太平洋
第8章 「白人の優越」と戦うアジア諸民族
第9章 戦争で変わる人種の構図
第10章 アジアがつくる新しい人種の世界
終章 「白人の優越」からの覚醒

【著者】
ホーン,ジェラルド (Horne, Gerald)
 ヒューストン大学教授。専門はアフリカ系アメリカ人の歴史。著書に『The Counter-Revolution of 1776』(NY Univ. Pr. 2014)、『Black Revolutionary』(UNiv. of Illinois Pr. 2013)他多数。

藤田 裕行 (フジタ ヒロユキ)
 1961年、東京生まれ。翻訳家。

加瀬 英明 (カセ ヒデアキ)
 1936年東京生まれ。外交評論家。慶應義塾大学、エール大学、コロンビア大学に学ぶ。外交評論家として執筆、講演に幅広く活躍。「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長。福田・中曽根内閣で首相特別顧問を務めたほか、日本ペンクラブ理事、松下政経塾相談役などを歴任。

【抜書】
●日本人の罪(p26)
〔 アメリカにとって日本人が犯した最大の罪は、アジア主義の旗を掲げて、有色民族に誇りをいだかせることによって、白人の誇りを貶めたことだった。
 極東国際軍事裁判は、なによりも日本が白人上位の秩序によって安定していた、世界の現状を壊した「驕慢な民族主義」を大罪として、裁いた。〕

●黒竜会(p34、p68)
 黒竜会……日本の超国粋主義団体。満州を流れる黒竜江からとった名称。1930年代、超愛国的、極右の日本人で構成される。白人至上主義の打倒が信条。
 孫文も黒竜会と深く繋がっていた。

●ラッセル社(p43)
 1824年設立された、アメリカ人の会社。茶と阿片を扱う中国貿易で、濡れ手に粟のように儲ける。東インド会社と同じくらい影響力を持っていた。
 フランクリン・D・ルーズベルト大統領の母の父だったワーレン・デラノは、ラッセル社のパートナーだった。

●大隈重信(p66)
 1919年、東京のアメリカ大使館で、人種差別について話し合う会合が持たれた。大隈重信候は、「人種問題の解決こそが、将来の国家間の紛争を避けるために不可欠だ」と述べた。

(2016/11/30)KG

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世界のエリートが学んでいる教養としての日本哲学
 [哲学・心理・宗教]

世界のエリートが学んでいる教養としての日本哲学

小川仁志/著
出版社: PHP研究所
発売日: 2016/04/08
ファイル容量: 4.9MB
税込価格: 1,200円
ISBN:978-4-569-82983-8


 グローバルに活躍できる日本人となるために、知っておくべき「日本の哲学」。
 日本哲学の要諦と、大雑把な思想史をつかむことができるような内容となっている。

【目次】
第1章 日本哲学の歴史―時間の流れの中で整理せよ
 神道 / 仏教 / 武士道 / 儒学 / 国学 / 幕末の思想 / 啓蒙思想 / ナショナリズム / 京都学派 / 戦後民主主義 / 現代日本思想(ニューアカからゼロ年代まで)

第2章 日本哲学の思考法―ユニークに考えよ
 なる / 従う / 結ぶ / 無になる / 清める / 型をつくる / 一体化する / 信じる / 唱える / 一心不乱になる / 感じる / 間をとる / 頼る / 発散する / うつろう / 小さくする / みやびやかにする / 簡素化する / 凝る / 筋を通す

第3章 日本哲学の名著―古典を語れるようになれ
 『古事記』 /  『日本書紀』 / 『万葉集』 / 空海『十住心論』 / 紫式部『源氏物語』 / 吉田兼好『徒然草』 / 山本常朝『葉隠』 / 本居宣長『古事記伝』 / 新渡戸稲造『武士道』 / 福沢諭吉『学問のすゝめ』 / 西周『百一新論』 / 西田幾多郎『善の研究』 / 九鬼周造『偶然性の問題』 / 三木清『構想力の論理』 / 和辻哲郎『風土』 / 丸山眞男『日本の思想』 / 土居健郎『「甘え」の構造』 / 吉本隆明『共同幻想論』 / 柄谷行人『日本近代文学の起源』 / 東浩紀『動物化するポストモダン』

第4章 日本哲学の必須人物―生き様を手本にせよ
 聖徳太子 /  空海 / 親鸞 / 道元 / 世阿弥 / 千利休 / 山本常朝 / 新渡戸稲造 / 二宮尊徳 / 本居宣長 / 佐久間象山 / 吉田松陰 / 内村鑑三 / 柳田國男 / 福沢諭吉 / 西周 / 西田幾多郎 / 田辺元 / 丸山眞男 / 吉本隆明
 
第5章 日本哲学の必須用語―言葉を思考のツールにせよ
 本地垂迹(神道) /  絶対他力(親鸞) / 只管打坐(道元) / 花(世阿弥) / 理気二元論(朱子学) / 先王の道(荻生徂徠) / 万人直耕(安藤昌益) / 石門心学(石田梅岩) / 報徳思想(二宮尊徳) / もののあはれ(本居宣長) / 和魂洋才(佐久間象山) / 草莽崛起(吉田松陰) / 天地公共の実理(横井小楠) / 二つのJ(内村鑑三) / 常民(柳田國男) / まれびと(折口信夫) / 絶対無(西田幾多郎) / 間柄(和辻哲郎) / いき(九鬼周造)  / 執拗低音(丸山眞男)

おわりに―西洋哲学+日本哲学=グローバル人材の思考力

【著者】
小川 仁志 (オガワ ヒトシ)
 1970年、京都府生まれ。哲学者・山口大学国際総合科学部准教授。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。米プリンストン大学客員研究員(2011年度)。商店街で「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。専門は公共哲学・政治哲学。最近は主に海外で日本哲学の研究発表を行っている。

【抜書】
●敬神崇儒
 敬神崇儒(けいしんすうじゅ)……江戸時代、水戸学が掲げた、神道と儒教を結合した理念。
 日本を神州とし、アマテラスを起源とする皇統の連続性を強調すると同時に、国学と儒学の理念との一致を説く。
 藩士が藩主に従うことが幕府への忠誠を意味し、それはひいては天皇に対する忠誠につながる。「尊王敬幕」。

●小さな物語
 1970年代と80年代とを分つもの……モダンの終わりとポストモダンの始まり。
 モダン……「大きな物語」を紡ぐこと。敗戦後の日本は、国家としての自立と経済発展を最大の目標にして突き進んできた。国家の大枠を作ることが最大の目標だった。
 「大きな物語」の追求は、政治的には安保の改定と全共闘の挫折で終焉。
 ポストモダン……「小さな物語」の追求。個々人がそれぞれ、自分の世界観を追求する状況。個々人がばらばらの目標を勝手に追い求める。ニューアカデミズム。

(2016/11/30)EB

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天下と天朝の中国史
 [歴史・地理・民俗]

天下と天朝の中国史 (岩波新書)

檀上寛/著
出版社名 : 岩波書店(岩波新書 新赤版 1615)
出版年月 : 2016年8月
ISBNコード : 978-4-00-431615-2
税込価格 : 972円
頁数・縦 : 283, 6p・18cm


 天下と華夷思想を元に読み解く中国王朝史。現代にも通じる、中国人の根底にあるものの考え方がよく分かる。

【目次】
溥天の下、王土に非ざる莫し―春秋・戦国時代
天朝体制の仕組み―秦・漢
北の天下、南の天下―漢・魏晋南北朝1
天下と天下秩序―漢・魏晋南北朝2
中国の大天下と倭国の小天下―南朝・隋・唐
東アジアの天下システム―唐
天朝の行方―五代十国・宋・遼・金
天下一家の完成―元
天下一家から華夷一家へ―明
華夷変態と中外一家―清
中華民族の大家庭―近・現代

【著者】
檀上 寛 (ダンジョウ ヒロシ)
 1950年生まれ。京都女子大学名誉教授。京都大学大学院博士課程修了。文学博士。専攻、中国近世史。

【抜書】
●華夏族(p7)
 中国のことを、一般に中華(中夏)、華夏、諸華(諸夏)、華(夏)という。もっとも古いのが夏と中国。西周時代(BC11~BC8世紀)から存在する。周人も自ら「夏」と称した。
 中国の中心部=文化的先進地=中原=華(夏)という観念が、春秋時代の頃に生まれた。
 この地の住人が、のちに「華夏族」と命名される中国起源の種族。黄河中・上流域を中心に周辺の諸民族と接触・融合しながら、後世の漢族へと成長・発展していく。

●漢人(p12)
 「中華(中夏)」という語は、一番遅く現れた。2、3世紀の後漢時代から三国時代にかけての造語。中国と諸華との組み合わせ。
 中華の住民を普通、「漢人」と呼ぶ。三国時代は晋によって統一されるが、五胡の侵入によって華北地域は五胡の諸国家が次々と誕生した。五胡十六国。胡人は、漢人のことを「漢狗(かんく)」とか「一銭漢」などと呼んで蔑んだ。のちに、悪漢、卑劣漢、痴漢など、人を痛罵する時に用いる「漢」の語源。
 五胡……匈奴(きょうど)、羯(けつ)(匈奴の別種)、氐(てい)(チベット種)、羌(きょう)(チベット種)、鮮卑(せんぴ)(トルコ種説が強い)をさす(『日本百科全書』より)。
 後漢が滅びた後も、中華の住人を「漢人」と呼んでいた。
 王朝の実効支配領域=郡県制施行地域=中国=中華(中夏)=華(夏)=漢人地域=狭義の天下=九州

●五服図(p16)
 中華の天子の威徳の及ぶ地域=天下を、天子の徳化の程度に応じて同心方形状に5段階に描いたもの。
 中心の「王都」から、甸服(でんぷく)-候服-綏服(すいふく)-要服-荒服。
 甸服……方千里(約400km)、天子の直轄地。
 候服、綏服……甸服の外側、方二千里、方三千里。諸侯の領地。ここまでが中国方三千里。
 要服……南蛮と東夷が住む。
 荒服……西戎と北狄が住む。天下方五千里。
 荒服の外延は、「東は海に入り、西は砂漠にまで広がり、北も南も天子の声教を及ぼして、四海に達する」(『尚書』禹貢)。

●郊祀と宗廟祀(p21)
 天朝の礼治体系の根幹をなすのは、祭天儀礼(郊祀)と祖先祭祀(宗廟祀)。後漢以降、郊廟と総称される。この二つを遂行することで、君主は自己の正当性を保障した。天の観念が生まれたのは、西周時代。

●天子と皇帝(p28)
 天子の璽……諸外国ないし天地の祀りに使用。
 皇帝の璽……国内の諸事や対諸侯用に使用。

●天弟、天子(p98)
 西暦600年、隋の文帝(581‐604)のときに倭国が久しぶりに入貢。第一次遣隋使。使節に倭国の風俗を訪ねる。
 「倭王は天を兄とし、日を弟としております。天がまだ明け切らぬうちに出座して、胡坐をかいて政務をとり、日が出てくると政務を止めて次のようにいいます。我が弟の日に任せよう、と。」(『隋書』倭国伝)
 文帝は、倭王が「天弟」を称したことを不快に思い、訓令を出して改めさせる。中国皇帝は天の子なので、倭王より下の世代になってしまうため。
 607年、小野妹子の遣隋使が国書事件を起こす。その時の文書は、「日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す。」となり、「天弟」から「天子」に自ら格下げしたが、対等ということが煬帝には気に入らなかった。

●宗法秩序(p120)
 中国は、力関係が対等な国(敵国:匹敵する国)との関係を、家族内の上下秩序で表現した。宗族(男系親族)の規則(宗法)にちなんで、宗法秩序という。
 唐は、吐蕃(7世紀前半~9世紀中葉。チベットに初めて成立した統一国家)の国王に公主(皇帝の娘)を降嫁し、舅と甥の関係とした。

●澶淵の盟(p144)
 1004年、宋と遼が、宋都開封に近い黄河畔の澶州(せんしゅう)で対峙。「澶淵の盟」を結ぶ。
  1. 毎年、宋から遼に対して絹二十万匹、銀十万両を与える。
  2. 辺境の州軍は境界を遵守し、両地の人戸は互いに侵犯してはならない。
  3. 盗賊が境界を越えて逃れてきたときには、隠匿せずにただちに引き渡す。
  4. 耕地と農作物とを互いに荒らさない。
  5. 従来から存在するものを除き、新たに築城したり河道を開鑿したりしてはならない。
 両国の国境を画定させた。
 ほかに、①宋皇帝と遼皇帝との名分関係を兄と弟とする。②両国で取り交わす国書は対等な致書文書とする。
 宋は、実を捨てて名をとった。

●王朝名の由来(p181)
 秦、漢……初めて興った土地の名前。
 隋、唐……封ぜられた爵邑の名に基づく命名。楊堅は隋国公、李淵の父親は唐国公だった。
 元、明、清……抽象的、理念的な国名。いずれも、多民族の複合国家である。また、大元、大明、大清が正式な国名であり、「大」の字を戴く。

●朱元璋(p189)
 朱元璋は、濠州の貧農出身だった。紅巾軍(白蓮教徒)が、元の首都大都を目指したのに反して、南下して江南を陥れた。1356年、南京(当時の集慶路)を攻略、12年後に大明を創設。
 江南は、もともと中原から見れば未開の辺境であったが、宋代、とりわけ南宋時代には経済力で華北を凌駕していた。江南の圧倒的な経済力と膨大な人口のおかげで、南宋は金や元に対抗できた。
 朱元璋のブレインの儒者たちは、戦闘の合間を縫って無学の朱元璋に儒学教育を施し、伝統的な中華帝国の天使に仕立て上げていく。

●朝貢一元体制(p219)
 明は、海禁によって民間貿易を禁止した。周辺諸国は、朝貢体制に参加し、王朝と朝貢貿易を行う。内陸諸国も同様だった。
 朝貢制度が完全に体制化したのは、明代だけ。
 永楽帝は、朝貢一元体制を、華夷一家の観念で補強。すべての藩王が冊封され、冠服を授与され、明の皇帝との家族秩序も設定できた。

●乾隆帝(p242)
 康熙帝・雍正帝によって清朝の支配は盤石のものとなった。その後を継いだ乾隆帝の時、清朝の領土は最大となる。
 十全老人……乾隆帝は、十回遠征軍を派遣し、十回とも勝利した。そのため、自己の「十全武功」を誇り、自ら「十全老人」と称した。
 五族共存……満、漢、蒙、回、蔵に代表される多様な民族が、独自の文化を保持しつつ平等に存在する世界。
 皇清の中夏……皇清の大一統。乾隆帝が、五族の地に与えた特別の概念。統一王朝であることを表現。

●小中華(p247)
 朝鮮は、明を中心とした大天下のもとで、明への事大を貫いてきた。明から清への「華夷変態」は、朝鮮に多大な影響を及ぼした。
 朝鮮の小中華思想では、中華たる朝鮮の周囲に、野人(女真)、日本、三島(対馬・壱岐・松浦)、琉球の四夷が配置され、その中でも女真は最も野蛮だとして、野人と称された。その女真の国王ホンタイジに三跪九叩頭しなければならない屈辱を味わった。
 両班たちの屈辱感は明への慕華へと転化し、明滅亡後も最後の崇禎年号を使い続けた。
 
(2016/11/26)KG

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喰い尽くされるアフリカ 欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日
 [社会・政治・時事]

喰い尽くされるアフリカ 欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日

トム・バージェス/著 山田美明/訳
出版社名 : 集英社
出版年月 : 2016年7月
ISBNコード : 978-4-08-781613-6
税込価格 : 2,052円
頁数・縦 : 383p・20cm


 タイトルには「中国」と出ているが、全体の内容は中国を前面に出したものではない。徐京華率いる「クイーンズウェイ・グループ」は、本書の主役の一人ではあるが。
 むしろ本書のテーマは、第8章の最後の段落に記された以下の言葉に集約される。
 「植民地時代のヨーロッパの帝国や冷戦時代の超大国は姿を消し、資源の宝庫であるアフリカ大陸に新たな支配の形が生まれている。アフリカに生まれた新たな帝国を支配するのは、もはや国家ではない。何ら国民に責任を負わず、影の政府を通じて国土を支配するアフリカの政治家、彼らを世界の資源経済と結びつける仲介者、企業秘密を盾に汚職を行う東西の多国籍企業、この三者の連合勢力が、アフリカを支配している。」
 中国にフォーカスしたものではなく、「資源の呪い」に蹂躙されるアフリカの現状をあぶりだしたルポルタージュである。

【目次】
序章 富の呪い
第1章 フトゥンゴ
第2章 貧困の温床
第3章 “関係”
第4章 ゾウが喧嘩をすると草地が荒れる
第5章 北京への懸け橋
第6章 融資とシアン化物
第7章 信仰は関係ない
第8章 新たな富裕層
エピローグ 共犯

【著者】
バージェス,トム (Burgis, Tom)
 『フィナンシャル・タイムズ』の調査報道特派員。2006年より南アフリカのヨハネスブルグとナイジェリアのラゴスを拠点に特派員として取材活動を続けてきた。2013年、鉱物資源国、アンゴラとギニアの汚職の実態を暴いた報道でフィナンシャル・タイムズ・ジョーンズ・モースナー記念賞を受賞。同年、王立文学協会のジャーウッド賞ノンフィクション部門も受賞し、『喰い尽くされるアフリカ―欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日』の取材のための資金を得る。

山田 美明 (ヤマダ ヨシアキ)
 翻訳家。東京外国語大学英米語学科中退。

【抜書】
●デュー・ディリジェンス(p39)
 対象企業に対する調査活動。
 外国の資源企業は、海外への投資を行う際には、事前に「デュー・ディリジェンス」を行う。現地のパートナー企業の実質的な所有者が誰かを調べる。
 実際のところ、汚職リスクに関して集めたデュー・ディリジェンスの情報は、決定的な証拠に欠ける場合が多い。

●キランバ(p48)
 アンゴラの都市キランバ。何もなかったところに、中国の企業が35億ドルをかけて造成した街。中国の資本と中国の労働力で造られている。街の入り口に門衛が立つ。
 こうした援助と引き換えに、中国は天然資源(この場合はアンゴラの石油)を入手する権利を確保する。
 「裕福なホワイトカラーの犬小屋」と誌的に揶揄されることもある、ゲートとフェンスに囲まれた街。
 5階から10階建ての、パステルカラーのアパート、手入れの行き届いた緑地と電柱、絹のように滑らかな道路。
 2万戸が、1戸12万~30万ドルで販売される。まだ、入居はまばら?

●オランダ病(p76)
 1959年、ロイヤル・ダッチ・シェルは、アメリカのエクソンと共同でオランダ北部のスロフテレンという村で掘削を行い、ヨーロッパ最大級のガス田を発見した。その後もいくつか発見。
 採掘が進むと、この近辺で、エネルギー産業以外の労働者が職を失い始めた。他の産業部門が衰えてしまった。
 1977年、エコノミスト誌がこの現象を「オランダ病」と呼んだ。
 輸出された資源にドルが払われると、自国通貨の価値が上がる。→ 国内製品に比べて輸入品のほうが安くなる。→ 自国の企業が弱くなる。→ 工業化が進まない。
 天然資源を加工すれば、その価値を400倍にできるかもしれない。しかし、アフリカの資源国家では、原油や鉱石がそのままの形で流出していく。工業化、産業が育たない。

●資源の呪い(p81)
 資源国家の支配者は、資源から得られる利益があるので、国民に税金を払ってもらっていない。
 アフリカ全体で、直接税の税収と、資源の掘削や輸出に関わる税収の比は、3対5。
 マリ……金などの鉱物資源収入は、政府収入の20%。
 チャド……天然資源(石油など)の収入が総収入の半分以上。
 ナイジェリア……原油と天然ガスの売り上げが政府収入の約70%。南スーダンでは98%。
 支配者は、国民の税金に頼る必要がないので、国民の同意を得なくても国を統治できる。
 スタンフォード大学教授ポール・コリアー「資源の呪いでいちばん恐ろしいのは、民主主義がうまく機能しなくなることだ」。資源レントがGDPのおよそ8%を超えると、公正な選挙を行っている国のほうが、独裁政治を行っている国よりも経済成長率が3%低くなる。天然資源に頼っている国では、選挙の意義が損なわれてしまう。

●徐京華(p99)
 アメリカ財務省は、2014年、徐京華を制裁リストに追加した。彼の名前として、七つの姓名が記載されている。1958年2月28日生まれとされる。
 信頼できる情報はないが、一説によると、広東省の港町、汕頭(しゃんとう)で生まれ、幼いころ、家族で香港に引っ越した。英語、ロシア語が話せる。
 中国の情報機関で働いていた、スパイ。スパイ活動は、中国の武器取引と絡み合っていた。アフリカで、解放運動のさなかにたくさんのコネを作った。
 2003年7月9日、羅方紅とともに、創輝国際発展という会社を香港に設立。クイーンズウェイ88番地に登記住所があるので、「クイーンズウェイ・グループ」と呼ばれる。以後、毎月のようにその企業ネットワークに各企業を組み込み、数千社規模に広げる。(p112)

●諜報活動(p103)
 アフリカにおけるスパイの活動内容も変わった。「現在の諜報活動の目的は、戦争を始めるためじゃない。天然資源を手に入れるためなんだ」(情報提供者アリエル)。

●アンゴラ方式(p105)
 中国は、貿易を通じてアフリカ経済を作り変えつつあるが、直接投資も行っている。
 一般的には、10億ドル単位の資金を低利で貸し付け、中国の企業に現地のインフラを整備させ、石油や鉱物資源で支払いをさせる。
 プロトタイプとなったのが、アンゴラでの事業。そのため、「アンゴラ方式」と呼ばれる。 2004年、アンゴラに20億ドルを貸与して公共事業を行い、石油でその返済を受ける契約に署名。それから数年の間に、融資枠はおよそ100億ドルにまで膨らんだ。アンゴラは、サウジアラビアに次ぎ、中国に対する第二の石油供給国となった。

●フランサフリック(p198)
 Françafrique。フランスによるアフリカ支配システム。ド・ゴールは、アルジェリアや西アフリカの植民地に独立を認めたが、独立後もフランスの保護を受けられる代償として、フランスの経済基盤を従来通り維持し、フランスの指示に従った外交政策や国防政策を実施するよう、取り決めを行った。
 このシステムが、資源取引や裏金、汚職のネットワークへと発展していった。
 France à fric=フランスのATM。fricは「現金」の意味がある。

●中国の気前良さ(p200)
 ニジェールなどの資源国家に対する中国の強みは、気前が良いこと。フランスは欲深で、仲間意識などもたず、ただ利権だけに目を向けている。
 しかし、中国も旧勢力同様の面がある。アフリカの発展を口にしながらも、仲介者を通じて有力者と個人的な絆を育むことに熱心である。石油や鉱物資源の採掘権を管理している支配者との絆。

●ダイヤモンドの発見(p331)
 1860年代、後に南アフリカとなる地域の中心部でダイヤモンドが発見された。ダイヤモンド採掘産業の始まり。
 1930年代まで、世界に流通しているダイヤモンド原石はすべて、南アフリカが独占的に供給していた。
 その後、アフリカ南部の他の地域(ナミビアやアンゴラ、コンゴ)、西アフリカでもダイヤモンドの鉱床が発見された。
 過去数十年の間に、ロシヤやカナダ、オーストラリアでも鉱床が見つかり、ダイヤモンドの取引の世界は拡大したが、いまだにアフリカが世界のダイヤモンド原石供給量の半分以上を占めている。

●セシル・ローズ(p344)
 天然資源を征服して政治権力を強めていく(あるいは政治権力を強めて天然資源を征服していく)というシステムは、セシル・ローズが原型を作った。
 セシル・ローズ……1870年代のダイヤモンド・ブームの際に、現在の南アフリカのキンバリーにやってきて鉱山労働者として働き始める。その後、デビアスを設立。
 ダイヤモンド産地の北で金が発見されると、ゴールド・フィールズという鉱業企業を設立。
 1890~1896年、ケープ植民地の首相を務め、私設軍を従えて北へと進出し、イギリスの植民地統治と自身の企業利益の拡大を図った。
 ローズの支配する最大の企業、イギリス南アフリカ会社は、国王から政府に匹敵する権限を与えられていた。

(2016/11/25)KG

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中国の論理 歴史から解き明かす
 [歴史・地理・民俗]

中国の論理 - 歴史から解き明かす (中公新書)
 
岡本隆司/著
出版社名 : 中央公論新社(中公新書 2392)
出版年月 : 2016年8月
ISBNコード : 978-4-12-102392-6
税込価格 : 886円
頁数・縦 : 232p・18cm


 「中国・中国人が好きか、嫌いか、と聞かれれば、嫌いだ、と答える」著者による中国論。
 しかし、近代アジア史を専攻する学者らしく、「嫌中」感丸出しの中国批判本ではない。中国人の考え方の根底にある論理、いわゆる「華夷思想」を歴史的に叙述していく。
 古代から現代まで、各王朝・体制の成り立ちに潜む原理や社会情勢もわかりやすく解説、複雑な中国史を理解するうえでも役に立つ1冊である。

【目次】
1 史学
2 社会と政治
3 世界観と世界秩序
4 近代の到来
5 「革命」の世紀
むすび―現代の日中関係

【著者】
岡本 隆司 (オカモト タカシ)
 1965年(昭和40年)、京都市に生まれる。京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、京都府立大学文学部教授。博士(文学)。専攻、近代アジア史。著書『近代中国と海関』(名古屋大学出版会、1999年、大平正芳記念賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、2004年、サントリー学芸賞)など。

【抜書】
●四部(p5、p15)
 中国伝統の学問分類。旧中国のあらゆる書籍あるいは学術は、「経」「史」「子」「集」の4つに大別される。
この4つには、上下の序列がある。
 経……経学。儒教。孔子が嚆矢。
 史……史学・歴史。過去の事実を通して、自らの正義・理想を明らかにする。司馬遷が嚆矢。
 子……儒教以外の諸子百家。
 集……上記以外の寄せ集め。医学、工学などの理論・技能に関わるもの、実地の作業マニュアルなどもすべて集部となる。

●経書と史書(p25)
 経書が説くべきは、抽象的な理論・教義・イデオロギー。
 史書は、経書にのっとって、記すに値する歴史事実・人間行為だけを選び、叙述する。抽象的理論的な教義を考究、実践する経学の具象バージョン。

●『資治通鑑』(p28)
 戦国時代の紀元前403年から、北宋建国の直前980年までの、およそ1300年間の編年史・通史。
 厳密な作業をへて編まれた、中国屈指の史書。
 〔膨大な資料・記録を集め、その内容を比較対照、批判検証して、最も確かなものを採用し、ほかは捨てて顧みない。疑義・異論の残りそうなものは「考異」として、なぜしかじかの史料を採用して、そのような叙述にしたのか、その検討判断のプロセスを論じる。〕

●紀事本末体(p44)
 歴史の書き方を、中国では伝統的に三つに大別する。編年体、紀伝体、紀事本末体。
 紀事本末体……事の本末を記したもの。トピック、テーマごとに分けて歴史を書く方法。現在、もっともなじみのある方法。
 『通鑑紀事本末』(南宋の袁枢、12世紀)が嚆矢。

●北周(p71)
 北周、隋、唐は同じ系列・体質の政権。
 6世紀の半ば、北魏が東西に分裂した後を受けて成立。華北の西半分、現在の陝西省、甘粛省あたり。当時、中国でもっとも後進的で貧しい地であった。しかし、華北の東半分を支配した北斉政権を滅ぼし併合。
 北周なりの理想・理念があった。本拠地が、古代中国の黄金時代とされる周王朝発祥の地。復古主義で、漢王朝よりも前、1000年以上前の周の時代に立ち戻ろうとした。否定しようとした現状の一つが、門閥主義、「琉品」。
 北周の理念・方針は、隋・唐も同じ。官吏登用は門地ではなく個人の才徳を基準とする賢才主義。それを測定するための「科挙」。

●唐宋変革(p74)
 唐宋変革……唐と宋の間、10世紀前後の時期に、中国を中心とする東アジアで一大転換があった。
 宋代以降の体制……君主独裁制・官僚制。門閥貴族が政治・社会に最も大きな勢力を有する貴族制の対概念。科挙が大きく作用した。天子・皇帝をしのぐ存在がいなくなり、その地位も安全なものとなった。三国六朝時代に比べ、宋・明・清と、王朝政権が長命となった。
 官僚が、貴族に代わって新興のエリート層となった。「士大夫」、「読書人」。経学(儒教)を重んじた。
 賢才主義……唐一代を通じて、社会全体が門地の高下より個々の人材を重んじる観念に変換した。

●科挙による地域結束(p90)
 郷紳(きょうしん)……16世紀の明代、無能で権力をふるうだけの「官」に背を向け、庶民に近づき、親しもうとする士大夫も現れた。地域に根を張り、在地に勢力をもつ。地域社会の勢力が増大。
 在地のリーダーであり、官界政権と連絡を取れる士大夫は、地域社会にとっても重要な存在だった。そんな「士」を生み出す科挙の受験教育は、地域のコミュニティぐるみで組織化され、地域結束の紐帯となった。
 16世紀の大航海時代には、「士」と「官」が乖離、「士」が分化した。

●漢族膨張(p102)
 古代(上世、殷周)は「漢族膨張」、中世(中古、秦漢六朝唐)は「漢族優勢」、近世(近古、五代宋明)は「蒙古最盛」、近代は「欧人東漸」。桑原隲蔵(じつぞう、1870-1931)の説。

●武帝(p106)
 「中華」の理想がそれなりに達成できたのは、前漢の武帝代(BC141-87)。漢は匈奴を軍事的に圧倒し、南方も併合して版図が最大となった。
 同じ時期、華夷思想を中核とする儒教が優位を占めた。
 〔行動と思想・現実と理念とがあいまって、「中華」「華夷」の観念にもとづく秩序が、東アジアではじめて成立をみるにいたった。〕

●冊封体制(p113)
 冊封……皇帝が冊書をもって、諸王や諸侯などを任命する、ごく普通の政治儀礼行為。
 冊封体制……夷狄の首長に対する王爵授与にも、冊封が適用された。自立した諸勢力の存在を認めながら、同時にみずからの優位を認めさせて安定した関係を作り出す制度。

●モンゴル帝国(p118)
 モンゴル帝国……モンゴル・トルコ系の遊牧軍事力と、イラン・イスラム系の商業経済力が、中央アジアの草原オアシス地帯で提携・合体した政権。軍事力・機動力に優越して、南隣の農耕世界に波状攻撃を仕掛け、統治下に組み込んでいき、ユーラシア全体を統合した。
 〔唐の解体以来、分立を続けてきた「華」「夷」・南北はモンゴル帝国、より限定していえばクビライ(一二六〇~九四)大元国(ウルス)に至って、ようやく「混一」されたのである。〕

●朝貢一元体制(p121)
 朝貢一元体制……朱子学的な「華夷」概念にともなう「朝貢」儀礼を、貿易・交流の統制と組み合わせて、世界秩序を構築する方法。
 明朝は、現実にあらゆる「攘夷」を断行できるほど軍事力政治力が優越していたわけではなかった。明代に最大となった万里の長城で南北を遮断、そして厳重な「海禁」が布かれる。その内外のあらゆる交流・関係を制限・統制し、「朝貢」儀礼とそれに付随する活動だけに絞った。
 生産の技術・物量に優越する明朝が、それを利用して相手に「朝貢」、臣属を余儀なくさせる。周辺国としては、絹や陶磁器などを得るために、明朝に「朝貢」として臣礼をとる。
 横並びの外交ではない。
 華夷一家……永楽帝(1402‐24)が標榜。「華」「夷」を差別し、その上下の結びつきで「一家」になぞらえた世界秩序を構築しようとした。鄭和の遠征、モンゴル親征を敢行。

●新民体(p162)
 新民体……康有為の高足の弟子、梁啓超(1873-1929)の用いた新しい文体。20世紀初めに梁が主宰した『新民叢報』というジャーナルにちなんだ命名。
 梁啓超……「変法」派の康有為とともに、1898年、日本に亡命。「和文漢読」により、西洋思想を摂取。西洋語を訳した日本漢語と漢文もどきの訓読文体を積極的に駆使した文章を発表。

●中国の歴史認識(p207) 
〔 「人民解放」から「改革開放」へ。中華人民講和国の歩みは、艱難をきわめた。犠牲になった人もおびただしい。「革命」に彩られ、内戦と戦争に明け暮れた建国以前と合わせてみれば、二十世紀の中国は、いよい激動艱苦の道を歩んでいた、といえるだろう。
そんな百年、中国の思想・発言・行動は、目まぐるしい変転をくりかえした。けれどもその経過を貫いていたのは、中国の言動を根柢で枠づける社会構造、理論枠組みの本質が、いかに変わらなかったか、という事実ではなかろうか。
 イデオロギー・体制は君主独裁制から立憲共和制、三民主義からマルクス主義、計画経済から市場経済へ移り変わっていった。しかしその前提に存在していたのは、「士」「庶」が隔絶し、上下が乖離した社会構成であった。
 これは歴史のなかでできあがった構造原理なのであって、中国は従うにせよ抗うにせよ、その原理に応じざるをえない。そんな論理が現代中国の言動パターンを形づくっていて、たとえば、わが日本と関わりの深い世界観、時間と空間の観念も、同じことがいえよう。〕

(2016/11/20)KG

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だから日本は世界から尊敬される
 [社会・政治・時事]

だから日本は世界から尊敬される (小学館新書)

マンリオ・カデロ/著
出版社名 : 小学館(小学館新書 211)
出版年月 : 2014年6月
ISBNコード : 978-4-09-825211-4
税込価格 : 778円
頁数・縦 : 205p・18cm


 駐日外交団長を務め、日本をこよなく愛するサンマリノ共和国特命全権大使による日本へのオマージュ。

【目次】
序章 なぜ日本人は日本の魅力を知らないのか
第1章 神道の教えが世界を感動させる
第2章 心から尊敬申し上げる天皇皇后両陛下の大御心
第3章 世界中が憧れる日本の文化
第4章 日本人が知っておくべき偉大な日本の少年大使たち
終章 平和を守るために日本がとるべき「道」

【著者】
カデロ,マンリオ (Cadelo, Manlio)
 イタリアのシエナにて出生。イタリアで高等学校卒業後、フランス・パリのソルボンヌ大学に留学。フランス文学、諸外国語、語源学を習得。1975年に来日、東京に移住し、ジャーナリストとしても活躍。1989年に駐日サンマリノ共和国の領事として任命される。2002年、駐日サンマリノ共和国特命全権大使を任命され、2011年5月、駐日大使全体の代表となる「駐日外交団長」に就任。現在、講演活動など幅広い活躍をしている。イタリア共和国騎士勲章など多くの勲章を受賞している。

【抜書】
●サンマリノ神社(p28)
 2014年6月建立。ヨーロッパ初、神社本庁が認めた本格的な神社。
 神社本庁……伊勢神宮を本宗とし、約8万社の神社を包括する総本山。
 神社の建材や灯篭などはすべて三重県伊勢市で作られ、一度組み立てて確認してから分解し、輸送した。
 サンマリノでは、日本から派遣された宮大工と当地の職人が力を合わせて組み立てた。

●香取神社(p42)
 サイパンに、香取神社がある。日本の領土だったころに建てられた。
 現在でも、サイパンには昔の日本の鉄道の線路や刑務所、病院などの建物が残っている。
 現在はアメリカの自治領だが、むしろ日本人になりたかったという人が多い。

●サンマリノ(p108)
 西暦301年、カトリック教徒であったダルマチア人の石工「マリノ」が、ローマ皇帝ディオクレティアヌスの迫害を逃れてティターノ山に登り、ここで伝道を続けた。彼のもとに集まった人々により形成された集団がサンマリノ共和国の起源。現存する最古の共和国。
 軍隊をもたない。
 面積は約62平方km(世田谷区ほど。世界で5番目に小さい)、人口は約3万6000人。
 はじめ、アレンゴ(家長の集会)のメンバーから選出された代表が指揮を執り、統治していた。
 1243年、アレンゴによって選出された2名の執政(大統領に匹敵)が統治を行うシステムができる。4月10月の6か月ごとに選出される。執政は、それぞれ拒否権を持っている。
 アレンゴは、60名の評議員で構成される「大評議会」に移行。任期5年、報酬なし。

●軍事費増大レース(p175)
〔 日本も最近、近隣諸国がこんなに武器を持っているから我々も持とうなどといって、高性能な武器をアメリカから購入して配備しています。日本がそうした行動をとることで、近隣諸国を緊張させたり、疑念をいだかせる結果になっています。第二次世界大戦で一番辛い思いをしたのは日本だと思います。戦争の悲惨さを一番知っている日本は、戦後の平和を強く望んできた国です。日本が戦争を望んでいないことを、私は知っています。しかし、日本が軍事費増大レースに参加してしまえば、他国は日本が戦争の準備をしていると、勘違いしてしまうかもしれません。
 現代社会において、好んで戦争をしたい国などありません。〕

●王者の風格(p193)
 中国、韓国に対して、日本はどのような態度をとるべきか?
〔 一言でいえば「王者の風格」を見せればいいのです。
 そもそも韓国は1965年に日本と日韓基本条約を結び、日本から無償で3億ドル(当時約1080億円)、有償で2億ドル(同約720億円)を提供されました。これだけで当時の韓国国家予算の約1.5倍です。さらに民間借款で3億ドルが払われました。これで両国の間の請求権に関する問題は解決されています。
 日本からの資金で韓国は社会インフレを整えて、工業化を果たし、後の「漢江の軌跡」と呼ばれるまでに発展したことはご存じのとおりです。前述したように技術供与もされています。
 韓国は「現在まで遺族補償がされていない」などと言っていますが、投資優先という選択をしたのは当時の朴正熙大統領。現在の朴槿恵大統領の父親です。残念なのは、毛沢東時代の中国と同様に、当時の韓国では正しい情報が国民に知らされていなかったことです。〕

(2016/11/15)KG

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誰がこの国を動かしているのか 一握りの人による、一握りの人のための政治を変える
 [社会・政治・時事]

誰がこの国を動かしているのか (詩想社新書)

鳩山友紀夫/著 白井聡/著 木村朗/著
出版社名 : 詩想社(詩想社新書 12)
出版年月 : 2016年6月
ISBNコード : 978-4-434-21630-5
税込価格 : 994円
頁数・縦 : 313p・18cm


 元首相が、自らの失敗と、今の日本および現政権の問題点を語る。

【目次】
第1章 安倍政治、対米隷属レジームの正体
第2章 この国を動かしているのは誰なのか
第3章 日本人にとっての原爆、原発、核開発
第4章 沖縄から見えてくる日米関係の核心
第5章 いま求められている日本外交とは
第6章 拉致、慰安婦問題に垣間見える戦後日本人の被害者意識
第7章 「永続敗戦レジーム」から脱却するために

【著者】
鳩山 友紀夫 (ハトヤマ ユキオ)
 元内閣総理大臣、東アジア共同体研究所理事長。1947年生まれ。東京大学工学部計数工学科卒業、スタンフォード大学工学部博士課程修了。東京工業大学経営工学科助手、専修大学経営学部助教授を務める。86年、総選挙で旧北海道4区(現9区)から出馬、初当選。93年、自民党離党、新党さきがけ結党に参加。細川内閣で官房副長官を務める。96年、民主党結党、代表に就任。98年、旧民主党、民政党、新党友愛、民主改革連合の4党により(新)民主党結党。2005年、民主党幹事長に就任し、前原・岡田・小沢と3人の代表を支える。09年、民主党代表就任、第93代内閣総理大臣に就任。10年、総理大臣を就任。12年、政界を引退。13年、一般財団法人東アジア共同体研究所設立、理事長就任、氏名表記を鳩山由紀夫から鳩山友紀夫に改名。

白井 聡 (シライ サトシ)
 1977年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。専門は社会思想、政治学。日本学術振興会特別研究員、文化学園大学助教等を経て、京都精華大学人文学部専任教員。

木村 朗 (キムラ アキラ)
 1954年生まれ、北九州市小倉出身。鹿児島大学教員。日本平和学会理事。平和問題ゼミナールを主催。

【抜書】
●日本の原子力発電(p117、白井)
 〔原子力の平和利用、つまり原発をやる場合でも、原子力技術には、発電そのもののほかにフロントエンド事業と、バックエンド事業がありますが、フロントエンド事業で核燃料を準備し、軽水炉でもって発電をする。そして、出てきたものを再処理するのがバックエンド事業ですが、このフロントエンド事業とバックエンド事業というのは核兵器をつくる技術と非常に共通していて、基幹技術は同じなわけです。
 いわゆる公然たる核武装をやっている国々というのは当然、原子力発電もやりながらフロントエンド事業、バックエンド事業もやっていますが、日本という国が世界で唯一、特殊だという点は、核武装しない、核兵器を持たないという体制をとっていながら、フロントエンド事業とバックエンド事業をやっているという点です。もちろん原子力発電をやっている国はたくさんありますが、核武装をしていない国の場合は、どこもフロントエンド事業、バックエンド事業には手を出していません。
 これは経済的に見て非常に効率の悪い話で、早い話が電気だけほしいのであればウラン燃料を外国から買ってきて燃やし、そこから出てきたものは買ったところへ返すという形で行うことが、エコノミーの観点からすれば一番いいはずなのです。にもかかわらず、わざわざこれをやってきたということは、これはどこかに核兵器としての核の開発への欲望というものがあったこと、そしてあり続けたことは間違いないのです。
 おそらくは日本が原子力事業に乗り出したときの最初の動機は、あの戦争に負けた理由を考えて、石油を獲得しようとして泥沼に陥っていき負けたというトラウマがありますので、何とかしてエネルギーをもっと自給したいという欲望があった。そして、もう一つが間違いなく核兵器開発への欲望だったと思うのです。〕

●海兵隊とディズニーランド(p151、白井)
 海兵隊……戦後の日本にとって、アメリカの暴力性の象徴。
 ディズニーランド……アメリカの文化の象徴。明るいポップカルチャー、豊かで夢のような生活。
 日本本土では、米軍基地が縮小する一方、ディズニーランドが隆盛。
 沖縄に米軍基地が集中。「普天間の跡地にディズニーランド」という幻想が生まれた。

●沖縄の海兵隊(p181、木村)
 アメリカにとって、沖縄の海兵隊の任務として考えられるのは、朝鮮半島が有事のとき、韓国にいるアメリカ関係者を救出・脱出させること。紛争時に最初に殴り込むとか、上陸するといった役割ではない。
 そのためには、2,000~3,000人のユニットを残せば済む。
 揚陸艦は佐世保にあるので、佐世保の近くに海兵隊がないと、緊急時に間に合わない。長崎の大村航空基地(海上自衛隊)と相浦駐屯地(陸上自衛隊)などに分散移転し、あとは全部国外に移転することがアメリカにとってもベスト。

●不戦共同体(p195、鳩山)
 〔ヨーロッパにおいては、事実上の不戦共同体というものができています。これは私流の言い方をすれば、自由と平等と同時に、自由と平等の懸け橋としての友愛という理念が必要だと説いた(リヒャルド・)クーデンホーフ=カレルギーが、第二次世界大戦のあと、汎ヨーロッパ主義を唱えたことに始まっています。友愛の理念で汎ヨーロッパ主義を唱え、それがヨーロッパ共同体、さらにはEUに結実し、ヨーロッパが現在は不戦共同体として存在しています。〕
〔 私はその友愛の理念が、東アジアにおいていまこそ必要なのではないかと考えています。東アジア全体を本当の意味で、不戦の運命共同体として構築することはたいへん意義のあることだと思うのです。〕
 東アジア共同構想も、不戦共同体とする。

●朝鮮統一(p204、白井)
 朝鮮の統合は、日本と戦争することで達成できる?
 彼らにとっては、日本からの独立戦争をやりそこなったことがある種、民族としてのトラウマとなっている。
 韓国と北朝鮮がともに日本と戦争をするという体験を持てば、両国の軋轢の過去は全部水に流すことができる。
 安倍政権が今のような方針で突っ走っていけば、アジア諸国の多くの国が連合して、日本を攻撃するという戦争も、起こり得る。

●オフショアバランシング戦略(p217、木村)
 アメリカの戦略。日本と中国を軍事的に部分的に衝突させて、アメリカが漁夫の利を得る、という戦略。

(2016/11/12)KG

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50歳からの起業術 シニア起業と独立を成功に導く実践的ノウハウ61
 [経済・ビジネス]

50歳からの起業術 ~シニア起業と独立を成功に導く実践的ノウハウ61~

中野裕哲/著
出版社名 : 大和書房
出版年月 : 2016年5月
ISBNコード : 978-4-479-79518-6
税込価格 : 1,620円
頁数・縦 : 254p・19cm


 いまの50代にとっては、年金の支給年齢は上がるし、もらえるようになっても額はたかが知れているし、60歳定年後には厳しい現実が待っている。平均寿命が延びているから、20年以上ある定年後の過ごし方も問題だ。元気な老後も先立つものがなければ……。
 というシニア世代にとって、残りの人生をどう過ごすかは大きな問題である。経験豊富でまだ元気な50歳代から起業して、物心ともに豊かな終盤の人生を送ることも、一つの選択肢かもしれない。

【目次】
第1章 シニア起業にはこれだけのメリットがある
第2章 押さえておきたいシニア起業の落とし穴
第3章 シニア起業で成功するテーマの選び方・絞り方
第4章 起業にはどのくらいの資金が必要なのか?―大切なお金の話・その1
第5章 起業直前、「これだけは」行なうべき最終チェック
第6章 シニアの強みを活かす営業戦略
第7章 事業を持続させるための資金繰りと税金の話―大切なお金の話・その2
第8章 最悪のシナリオに陥らないための防衛術

【著者】
中野 裕哲 (ナカノ ヒロアキ)
 起業コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー。起業コンサルV-Spiritsグループ(税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・株式会社V-Spirits会計コンシェル・給与コンシェル・FPマネーコンシェル・経営戦略研究所株式会社)代表。日本最大の起業支援ポータルサイト「ドリームゲート」にて5年連続相談件数日本一。最優秀賞受賞他8部門受賞実績。

(2016/11/8)KG

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日本人が知らないアジア人の本質 旅行記・滞在記500冊から学ぶ
 [歴史・地理・民俗]

旅行記・滞在記500冊から学ぶ 日本人が知らないアジア人の本質

麻生川静男/著
出版社名 : ウェッジ
出版年月 : 2016年6月
ISBNコード : 978-4-86310-165-4
税込価格 : 1,728円
頁数・縦 : 353p・19cm


 リベラル・アーツとは、文化のコアをつかむことであると著者は言う。さらに、文化のコアをつかむとは、それぞれの文化圏の中核となっている考えを自分の言葉で表現できることであるという(p2)。
 旅行記・滞在記500冊を読破した結果として得られた、アジアの文化のコアを明らかにする。

【目次】
序論
第1章 良くも悪くもアナログ的な日本
第2章 人間不信の中国
第3章 差別を是とする朝鮮(韓国)
第4章 強者の論理中東・イスラム・中央アジア遊牧民
第5章 今も階級社会のインド・東南アジア
終章 文化差を知る重要性

【著者】
麻生川 静男 (アソガワ シズオ)
 リベラルアーツ研究家、博士(工学)。1955年大阪府生まれ。京都大学工学部卒業、同大学大学院工学研究科修了、徳島大学工学研究科後期博士課程修了。独・米に留学。1980年に住友重機械工業に入社し、主にソフトウェア開発に従事。カーネギーメロン大学日本校プログラムディレクター、京都大学准教授を経て、現在は「リベラルアーツ教育によるグローバルリーダー育成フォーラム」を設立し運営している。

【抜書】
●1割に満たない特権階級(p76)
 〔中国の社会システムというのは、人口の1割に満たない特権階級が残り9割の大衆を搾取することで成り立っている社会であり――突拍子もないと思われるかもしれないが――バクチを好む気風と同じということだ。〕
 バクチを好む……1割未満の特権階級を目指し、一か八かに賭ける。

●捨て子(p108)
 中国の貧民の間では、捨て子は普通に行われていた。警察は、毎朝早く荷車を1台出して町を回り、捨て子を拾い上げて埋葬するための穴(墓地)へ運ぶ。
 18世紀末、北京在住の宣教師ロー師から聞いた話。マカートニー『中国訪問使節日記』(坂野正高訳、平凡社東洋文庫)p62。
 フランス革命前のフランス(1772年)でも捨て子が新生児の三分の一以上いたようだが(『十八世紀パリ生活誌(上)』岩波文庫、p450)、すぐに墓地に送るのではなく、「捨て児養育院」で育てられた。

●日韓併合(p125)
〔 日韓併合を朝鮮ではいまだに「日帝36年の支配」と日本が極悪非道なことだけをしたように言いふらすが、このバードの書を読むと、実情は異なることが分かる。つまり、日韓併合の一つの側面として、一足先に文明開化を完了した日本が、朝鮮の民衆の悲惨な生活実態を見るに見かねて、わざわざ日本の国費を投入して朝鮮の近代化の改革に着手したのだ。その結果、両班ではなく庶民の権利や生活がかなり改善された。〕
 バード……イザベラ・バード。李朝末期(1894-1897年)に朝鮮を一人で旅行した。『朝鮮紀行――英国夫人の見た李朝末期』(時岡敬子訳、講談社学術文庫)。

●朝鮮の姓(p126)
 韓国(朝鮮)では、姓が300弱しかない。しかも、ほとんどが一字姓。
 新羅の時代に儒教を受け入れる前は、新羅や百済の古代人は日本と同じように長い名前だった。
 新羅人の姓……汗禮斯伐(うれしほつ)、毛麻利叱智(もまりしち)
 百済人の姓……前部奈率眞牟貴文(ぜんほうなそつしむくいもん)、護徳己州己婁(ことくこつこる)、物部施徳麻奇牟(もののべのせとくまがむ)
 いずれも、『日本書紀』による。

●両班(p128)
 朝鮮の上流階級は、古代から高麗の初期までは貴族だった。血統がものをいう世界。
 958年 、高麗の第4代王の光宗(コジョン)が中国から科挙の制度を導入、両班(文班と武班)が貴族を押しのけて上流階級の地位を占めるようになった。
 両班……元来は、自分の父系の先祖3代に遡り、一族に科挙に合格した人がいることが条件だった。
 実力主義的、流動的な社会身分だった。しかし、次第に両班の定義が崩れ、門閥的、固定化された社会身分となった。
 文官の科挙(大科)の合格者の定員は、3年ごとに33人、武科は28人。正式な試験(式年試)以外に必要に応じて臨時の試験が催された。それでも、年平均して高麗で約15人、李氏朝鮮で約30人しか合格できない。
 両班といえども、官職を得ない限り俸給と職田はもらえなかった。しかし、両班の身分であると、田税や軍役の免除のほか、一般庶民から富を搾取する悪行が因襲的に認められていた。李氏朝鮮の末期ともなると、資金難の政府が積極的に売官したため両班の割合が増えた。ある統計調査によると、1860年代には人口の半分にまで膨らんだ。
 両班は、自分たちの既得特権を侵されないよう、庶民に受験資格を与えなかった。中国との違い。

●技術の断絶(p163)
 古代朝鮮の工芸技術のレベルは高かった。飛鳥時代・奈良時代に日本に伝えられた大仏や法隆寺を作る技術や、高麗時代の青磁、青瓦、朝鮮紙、木版印刷など。
 しかし、高麗の技術は李氏朝鮮に入ってから全く継承されなくなり、途絶した。政府や文人(両班)たちの技術者蔑視、民生無関心がもたらした結果である。
 青磁瓦職人……高麗時代の世界に誇るべき技術を後代に教えなかったゆえに、伝統が引き継がれなかったという意味で使われる。

●信頼(p178)
〔 人を信じることが、下手をすれば文字通り命取りになるような社会に住む韓国人と、人を疑うことは卑しい品性の持ち主だと考える日本人の差は大きい。〕

●日本蔑視(p185)
 朝鮮の日本蔑視は、中国文化依存に遠因がある。
 朝鮮では、中国の文章(詩文・経書・史書)を絶対的に素晴らしいものだと考える。文化水準の基準が、中国の詩文であった。そのため、漢詩の下手な日本の文人を見下した。
 しかし、実務に関わる庶民教育は行われなかった。日本では、寺子屋で読み書きそろばんを教えた。

●激論保身(p193)
 〔朝鮮では、事の是非曲直を問わず、強硬な意見を言うほうが賛同を得やすい。その証拠に、朝鮮では「激論保身」(過激な発言をすることで身の安全が保障される)とか、「硬論阿世」(世間に阿って心にもない強硬意見を述べる)いう熟語すらあるのだという。〕

●グハズ(p246)
 グハズ……略奪あるいは襲撃。
 アラブの民にとって、グハズは犯罪でなはく、ゲームであり、スポーツ。やられっぱなしではなく、時機を見て報復する。
 「実はグハズとは砂漠が知る唯一の産業、唯一のゲームなのだ。」G.L.ベル『シリア縦断紀行(1)』(田隅恒生訳、平凡社東洋文庫)pp.114‐115。

●バラモン(p288)
 インドのバラモン階級は、観念的・思弁的な思考に深沈することを好み、手足を使った肉体労働、つまり汗をかくことを嫌った。
 汗をかかずに頭だけを使うソフトウェア・エンジニアに人気が集まっていることも、インドの知的伝統の現れ。

●浄・不浄(p189)
 インドの浄・不浄は、日本の浄・不浄と異なる。
 浄の例……牛の糞を床や柱に塗り込んで新築の家を清める。牛の尿を飲む。
 不浄の例……死体だけでなく、血・膿・唾など体から出るものすべて。
 必然的に不浄なものに触れる医者は、伝統的には尊敬されず、下賤の者と扱われた。

●東南アジアの戦争(p311)
 東南アジアにおいては、敵方の兵士や住民を捕らえ、奴隷にするのが戦争の主目的だった。
 「また間接的には、敵国を荒廃させ、住民がもう一方の国に移動せざるをえなくすることによって、支配者の権力を増すことが、基本的な戦争の目的なのである。であるから、人々は戦争では死なない。」アンソニー・リード『大航海時代の東南アジア(1)』(平野秀秋/田中優子訳、法政大学出版局)p24。

●奴隷(p314)
 東南アジアの奴隷は、自由を奪われ隷属する存在ではない。 主人に保護される代わりに労働力を提供する存在である。庇護者・被庇護者の主従関係が社会のベースにある。

●イギリスのインド統治(p341)
〔 イギリスのインド統治はお世辞にも温情あふれるものであったとは言い難いが、それでも今なおインド人から憎しみの対象となっていないのは、異民族を統治する際には「文化のコアを破壊してはならない」という当地の基本原則を知っていたからに他ならない。〕

(2016/11/8)KG

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つながる脳
 [自然科学]

つながる脳

藤井直敬/著
出版社名 : NTT出版
出版年月 : 2009年5月
ISBNコード : 978-4-7571-6042-2
税込価格 : 2,376円
頁数・縦 : 275p・20cm


 社会脳を研究テーマにする脳科学者が、自身の研究テーマと、それを選ぶに至った理由を開陳する。

【目次】
序章 脳と社会と私たち
第1章 脳科学の四つの壁
第2章 二頭のサルで壁に挑む
第3章 壁はきっと壊せる―適応知性の解明に向けて
第4章 仮想空間とヒト
第5章 ブレイン‐マシン・インターフェイス
第6章 つながる脳

【著者】
藤井 直敬 (フジイ ナオタカ)
 1965年広島生まれ。東北大学医学部卒業。同大医学部眼科学教室にて初期研修後、同大大学院に入学、1997年、博士号取得。1998年よりマサチューセッツ工科大学にて上級研究員として勤務。2004年帰国。現在は、理化学研究所脳科学総合研究センターにて適応知性研究チーム・チームリーダー、BTCC双方向性BMI連携ユニット・ユニットリーダーを務める。

【抜書】
●IT(p4)
〔 どうしてITは他の科学技術と異なって、私たちの世界を劇的に変えることができたのでしょうか。僕は、それはITがコミュニケーションの根幹に影響を与えるものであったからだと思います。
 みなさんは、僕たちヒトが、社会性の高い生き物だというのは聞いたことがあるでしょう。社会性が高いということを別な言葉で言うなら、全体の中で自分の相対的な立ち位置、つまり社会集団の中での「関係性」という要素に強く影響を受ける生き物ということです。
 だとすると、この関係性を操作できる科学技術は、私たちの生活に大きく影響を与えるに違いありません。実際に社会を見回してみましょう、どのような業種がヒトを動かす力をもっているのでしょうか。力をもっている業種は、マスコミ、通信業者、広告代理店など、そのほとんどが情報の流通に関わる業種であり、多かれ少なかれ私たちはその影響力の下に生活していることに気づかされます。〕

●賢さ(p27)
 賢い生き物……適応能力の高い生き物を、賢い生き物だと感じる。
 「賢さ」=「生命維持のための特定の適応能力の高さ」。
 クマムシのほうが、金魚より賢いと感じる。

●LFP(p140)
 ローカル・フィールド・ポテンシャル(LFP)……ECoG電極で採集される神経活動。電極の周辺にある神経細胞群の、集団としての挙動。
 スパイク活動……神経細胞一つ一つの活動。

●マキャベリ的知性(p247)
 社会的知性。ヒトの社会集団の中で、自分の意思を実現するために必要とされる知性。
 国のような単位の社会集団では、家庭の(父の)ように個人の意思を国家の意思に反映させることは困難になる。意思決定者と意思実行者が分業されているからである。それぞれの職務に最適化した専門家集団がうまれ、それらの多様な職務の人々の働きの統合によって、人々の暮らしが成立するようになった。
 専門家集団は、それぞれに異なる事物に関しての決定の権利、つまり利権を持ち、その各集団が果たす機能の統合として国の機能が実現される。
 目的を達成するために、同盟と裏切りなど、手段を選ばず複雑な社会操作を行うには非常に高い知性が必要とされる。権謀術数を駆使するには、社会構造を一つ高いメタな視点から理解して、その構造の中でシンボル操作することで目的を達成することが必要される。

●共同注視(p251)
 コミュニケーションには、相手の言外の意図をきちんと理解する必要がある。他者の意図を理解するという意味で最も重要だと言われている機能が、「共同注視」。
 共同注視……相手の目の動きを見て、その相手の注意がどこに向かっているのかを理解するという認知機能。上側頭溝(Superior Temporal Sulcus: STS)と呼ばれる部分が重要な働きをしている。

●実験終了(p261)
 〔九・一一以降のアメリカでは、もはや自己の尊厳を保つには、カネ以外になくなってしまいました。僕は、その後の金融工学の暴走と、それによって引き起こされた現在の経済危機は、合理性を極端まで追求した実験国家アメリカの、実験終了を意味しているのではないかと思うのです。〕
 アメリカ人は、それまで、自分たちのヒューマニズムがあまねく世界を照らし、それは世界中で共有されていると純粋に信じていたのではないだろうか。それが、アメリカ人の尊厳だった。

●リスペクト(p267)
 合理的な経済人をモデルとした国家像は破綻した。
 カネと同様に必要なものは、「ホメ」=社会的報酬。
 脳では、金銭的な報酬に反応する脳の部位(基底核の一部である線条体)が、社会的評価にも同様に反応する。ヒトは、経済的欲求と同様に、社会関係欲求を持っている。
 社会性の発現には、「余裕」が必要。余裕がないとき、我慢して他者に譲るという行動は起きない。現在の先進国であればすべてその余裕を持っている。
 不合理なヒトを認めるためには、個人をとりあえず無条件で尊重(リスペクト)することから始めるのが良い。
 〔まずは身近なヒトたちへ自分からそういう気持ちをもって接することから始めるというのはどうでしょうか。リスペクトには多少の積極的なエネルギーが必要とされますが、「独裁者ゲーム」の結果からみると、僕たちは自分の取り分の二割程度はそのために使えるのです。リスペクトは、それを受け取る相手に嫌な思いを引き起こすことはないでしょう。それに、自分をリスペクトしてくれるヒトがいるとすれば、それに対してリスペクトを返そうとする気持ちに自然になるのではないでしょうか。つまり、いったん自分からリスペクトを発信すると、それは循環を始めるのです。
 リスペクトが循環する社会はどのようなものになるでしょうか。おそらく過去にその余裕をもつ社会はほとんど存在しなかったのではないかと思います。リスペクトはおそらくヒトとヒトの関係を安定したものにしてくれるでしょう。たとえ議論に負けても、自分の存在が否定されるのでなければあまり苦痛を感じません。むしろ、議論に勝っても、自分が社会から否定されるのであれば全く意味のないことです。つまり、物事の価値が、勝ち負けだけでなく社会的評価軸を含んだものへ移行するのではないかと思います。
 そこには神も仏もいりません。あくまで他者をリスペクトする気持ちだけでいいのです。リスペクトをもって他者と接することは、コストはあまりかかりません。しかも支払ったコストはリスペクトとしてきっと返ってきます。なんとなく試してもいいような気がしませんか。僕たちの幸せはたいてい身近な人たちからのポジティブな評価があるだけで十分なのです。ということは、身近な人々が、みなさんが変わることで変わってくれることを実感できれば、少なくとも自分自身が満たされた気持ちになるでしょう。
 そのような社会でヒトの満足は、おそらく今のカネ中心の社会よりも深いものが得られるのではないかと思います。ただ、間違えてはいけないのは、カネとリスペクトの二つを軸とした社会でなければならないということです。現代の社会はカネなしでは回りません。〕

(2016/11/5)KG

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