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東アジア和解への道 歴史問題から地域安全保障へ
 [社会・政治・時事]

東アジア 和解への道――歴史問題から地域安全保障へ

天児慧/編 李鍾元/編 フォルカー・シュタンツェル/〔ほか執筆〕
出版社名 : 岩波書店
出版年月 : 2016年9月
ISBNコード : 978-4-00-024528-9
税込価格 : 2,592円
頁数・縦 : 214, 4p・20cm


 「『和解学』への学際的アプローチ――方法論と応用」(「新しい日中関係を考える会」主催、2014年11月30日)および「歴史の対話からどのようなアジアの未来を創造するか」(早稲田大学現代中国研究所/同韓国学研究所/朝日新聞アジアネットワーク主催、2015年7月18日)という二つのシンポジウムでの報告をもとに、1冊にまとめた提言集。
 面白いのは、日中韓の著書がそれぞれ2国間のことを表現するのに自国を頭にするのはいいとして、3国併記の場合、中国「中日韓」、日本「日中韓」、韓国「韓中日」としているところ。それぞれの国の意識がにじみ出ている。

【目次】
第1部 日中韓の歴史和解を求めて
 和解の先例―「ドイツ経験」「台湾経験」
 中国知識人の歴史認識と日中和解論
 韓国知識人が提起する歴史和解
第2部 日中韓の新たな協力・共存枠組みの創造に向けて
 国際社会と安全保障
 環境問題における日中韓協力枠組みの創造

【著者】
天児 慧 (アマコ サトシ)
 1947年生まれ。早稲田大学現代中国研究所所長、同大学院アジア太平洋研究科教授。

李 鍾元 (リー ジョンウォン)
 1953年生まれ。早稲田大学韓国学研究所所長、同大学院アジア太平洋研究科教授。

【抜書】
●チャーチル(p25、冨永格「日本メディアから見た独仏和解の歩み」)
 1946年9月、イギリス首相のウィンストン・チャーチル、チューリッヒでの演説。
 「ドイツは米英と、できればソ連とも仲直りをしてほしい。ここまで合意がなされたら、欧州はうまくいくだろう。その第一歩としてドイツとフランスが握手をして、平和のために協力してほしい。そうなれば、ヨーロッパの他の国も加わる。ヨーロッパ合衆国のようなものをつくって、二度と戦争ができないような仕組みを用意しませんか。ナショナリズムというのはいつでも頭をもたげてくるので、一つの国になるくらいの覚悟でやりましょう。」
 チャーチルが、欧州統合を強く進めた。
 最初、フランスは不満だったが、冷戦構造が欧州統合を後押しした。

●エリゼ条約(p28、冨永格「日本メディアから見た独仏和解の歩み」 )
 1963年、エリゼ宮(フランス大統領府)で、独仏が調印。
 1980年代の後半に、外交官の交換が始まる。国益を背負って交渉や情報収集を行う外交官を交換し、実務につかせる。6か月以上相手の外務省で働いた外交官が、仏46人、独50人。交換制度が他省庁にも波及。
 若い世代の交流も盛ん。過去50年、青年交換制度にのっとって互いの国で暮らした青少年は800万人を超える。
 1992年、独仏共同でARTE(アルテ)というテレビ局を作った。それぞれの言葉で発信しながら、文化教養番組を中心に放送。独仏ジャーナリスト大賞が設けられており、フランスの記者がドイツのことを書き、ドイツのジャーナリストがフランスのことを書き、年1回、優秀作を選んでいる。

●BeSeToオーケストラ(p90、崔相龍「『二十一世紀韓日パートナーシップ共同宣言』に立ち返ろう」)
 日中韓のアーティストによる常設オーケストラを創設してはどうか。
 北京・ソウル・東京の頭文字をとって「BeSeToオーケストラ」。公演を、東京ドーム、天安門広場、ソウルの広場で、1年に1回か2回行う。
 前職の日本の総理も賛成。習近平も「日中韓のアーティストは極めて豊かである」と発言。

●石炭火力発電(p154、明日香壽川「日中韓環境破壊共同体をどう作らないか」)
 日本はこれまで、石炭火力発電を一貫して増加させている。先進国として極めて例外的。
 中国も、国内各地に炭鉱を持ち、石炭火力が電源構成の6割以上を占める。過去30年間、石炭消費が右肩上がりで増えている。
 韓国は、2007‐2014年における各国輸出入銀行による石炭プロジェクトへの公的資金支援で、世界第2位。1位は断トツで日本、3位が中国。
 温暖化対策の一環として、先進国は天然ガス、再生可能エネルギーにシフトしてきている。

(2016/12/31)KG

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第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来
 [経済・ビジネス]

第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来

クラウス・シュワブ/著 世界経済フォーラム/訳
出版社名 : 日本経済新聞出版社
出版年月 : 2016年10月
ISBNコード : 978-4-532-32111-6
税込価格 : 1,620円
頁数・縦 : 232p・19cm


 ダボス会議(世界経済フォーラム)の創設者が、現在進行中の「第四次産業革命」について分析、将来を論じる。
 
【目次】
1章 第四次産業革命とは何か
 歴史的背景
 根底からのシステム変革
  ほか
2章 革命の推進力とメガトレンド
 メガトレンド
 ティッピング・ポイント
3章 経済、ビジネス、国家と世界、社会、個人への影響
 経済への影響
 企業への影響
  ほか
付章 ディープシフト
 体内埋め込み技術
 デジタルプレゼンス
  ほか

【著者】
シュワブ,クラウス (Schwab, Klaus)
 1938年生まれ、ラーベンスブルク(ドイツ)出身。公的機関と民間企業の協力(パートナーシップ)を通して社会課題の解決を推進する国際機関、世界経済フォーラムの創設者であり、会長を務める。フリブール大学にて経済学博士号(summa cum laude)を取得したほか、スイス連邦工科大学にて工学博士号を、ハーバード大学ケネディスクールにて行政学修士号を取得。1972年にジュネーブ大学の最年少教授に就任。研究者として国内外にて数々の表彰を受け、ビジネス界でも数々の大企業の取締役として活躍した。

【抜書】
●第四次産業革命(p18)
 〔第四次産業革命は、今世紀に入ってから始まり、デジタル革命の上に成り立っている。第四次産業革命を特徴づけるのは、これまでとは比較にならないほど偏在化しモバイル化したインターネット、小型化し強力になったセンサーの低価格化、AI、機械学習である。〕
 第一次産業革命……1760年代~1840年代。蒸気機関の発明と鉄道建設。機械による生産の到来。
 第二次産業革命……19世紀後半~20世紀初頭。電気と流れ作業の登場。大量生産が可能になる。
 第三次産業革命……1960年代~1990年代。コンピュータ革命、デジタル革命。
 第四次産業革命では、遺伝子配列解析、ナノテクノロジー、再生可能エネルギー、量子コンピュータなど、様々な分野でブレイクスルーの波が同時に起きている。〔第四次産業革命がこれまでの産業革命と根本から異なるのは、これらのテクノロジーが融合し、物理的、デジタル、生物学的各領域で相互作用が生じたことである。〕
 〔第四次産業革命ではエマージングテクノロジーと幅広いイノベーションが、これまでの産業革命をはるかに凌駕する速度と範囲で普及している。〕

●機械的・反復的職業(p58)
 今後、労働市場はさらに二極化する。高収入の認知的・創造的職業と、低収入の単純労働。
 中所得の機械的・反復的職業は大幅に減少する。

●ヒューマンクラウド(p69)
 ダニエル・ピンク『フリーエージェント社会の到来』2001年。
 〔専門的な仕事が、明確な課題や個別プロジェクトに分解され、意欲的な労働者が世界各地から集まるバーチャルクラウドに託される。新たなオンデマンド経済で、労働提供者はもはや従来の意味での従業員ではなく、特定業務を遂行する個人労働者となる。〕

●貧富の格差(p125)
 クレディ・スイス「グローバル・ウェルス・レポート2015」。
 世界全体の全資産の半分は、世界人口の1%にあたる富裕層が所有。
 世界人口の下位半分の資産を合計しても世界全体の1%未満。

●変化の受容と抵抗(p131)
 現代は、人類に継続的適応を求める根本的なシステム変化の入り口。変化を受容する者と抵抗する者という、世界の二極化が進む。
〔 エンジニアである私は、生粋のテクノロジー信奉者でありアーリーアダプターである。だが、多くの心理学者や社会科学者と同様に私が思うのは、私たちの生活における技術の容赦ない統合がアイデンティティの概念におよぼす影響、そしてそれが内省、共感、思いやりなどの人間が本質的に持つ能力を損ねる可能性である。〕

●必要な知性(p141)
 1. 状況把握の知性(精神)……知識を理解し、応用する能力。
 2. 感情的知性(心)……思考や感情を処理し、統合する能力。あるいは自分自身とそれらを関連付けたり、それら同士を関連づけたりする能力。
 3. 啓示的知性(魂)……公益のために変化をもたらし、行動するための個人および共通の目的意識や信頼感、その他の美徳を活用する能力。
 4. 物理的知性(肉体)……自身の健康や幸福だけでなく、個人およびシステム双方の変革に必要なエネルギーを注ぐ、私たちの周りにいる人々の健康や幸福の追求と維持をする能力。

●スマートダスト(p160)
 それぞれが砂粒より小さいアンテナ付きのコンピュータを並べたもの。体内で必要に応じて複雑な体内プロセス全体に動力を提供するネットワークとなる。
 スマートダストの一群が、早期がんを攻撃したり、傷の痛みを緩和したり、何重にも暗号化されたハッキング不可能な重要な個人情報の保管庫となる。

●取締役会(p194)
 2025年までに、企業の取締役会にAIマシンが初登場すると予測する企業役員は、45%。

(2016/12/30)KG

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世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史
 [自然科学]

世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史

スティーブン・ジョンソン/著 大田直子/訳
出版社名 : 朝日新聞出版
出版年月 : 2016年8月
ISBNコード : 978-4-02-331530-3
税込価格 : 2,052円
頁数・縦 : 339p・19cm


 人間の生活を変えた6つの要素を検証。

【目次】
序章 ロボット歴史学者とハチドリの羽
第1章 ガラス
第2章 冷たさ
第3章 音
第4章 清潔
第5章 時間
第6章 光
終章 タイムトラベラー

【著者】
ジョンソン,スティーブン (Johnson, Steven)
 影響力のあるさまざまなウェブサイトを立ち上げており、PBSとBBCのテレビシリーズ『私たちはどうして現在にいたったか(How We Got Now)』の共同制作者であり、司会も務めている。妻と3人の息子とともに、カリフォルニア州マリン郡とニューヨーク市ブルックリンで暮らしている。

大田 直子 (オオタ ナオコ)
 翻訳家。東京大学文学部社会心理学科卒。

【抜書】
●ハチドリ効果(p13)
 顕花植物と昆虫の共進化が、花蜜の産生を引き起こした。
 ハチドリは、ホバリングによって花蜜を取り出す方法を進化させた。他の鳥にはまねができない。
 昆虫には脊椎動物にはない基本的柔軟性が生体構造にあるので、飛びながらでもじっとしていられる。ハチドリは、骨格構造に制限があるにもかかわらず、羽を回転させ、打ち下ろす時だけでなく引き上げるときにも揚力を得て空中に浮かぶ斬新な方法を進化させた。
 ある分野のイノベーション、またはイノベーション群が、最終的に、まるでちがうように思われる領域に変化を引き起こすことを、「ハチドリ効果」と名付ける。

●二酸化ケイ素(p26)
 二酸化ケイ素化合物すなわちガラスは、H₂Oと同様固体の状態で結晶を作り、熱せられると溶けて液体となる。融点は260度以上。一度溶けると、冷めても秩序ある結晶構造には戻らず、固体でも液体でもない中間状態で存在する新たな物質を形成する。
 1万年ほど前、リビア砂漠で天然にできたガラスのかけらを発見、ツタンカーメンの金の七宝細工の胸当てのカガネムシに使われた。

●ムラーノ(p30)
 1204年、コンスタンティノープル陥落。トルコの小さなガラス職人集落が、船で地中海を渡り、ヴェネチアに住み着いて商売を始めた。
 当時のヴェネチアは木造建築だったので、加熱炉(540度まで上げる必要があった)による火事が多発した。
 1291年、政府は、ガラス職人をムラーノ島に移住させた。ムラーノは、経済学者の言う「情報波及」のある環境が整い、イノベーションの拠点となった。ガラスの島として知られるようになり、凝った花瓶などの優美なガラス製品は、西ヨーロッパ全土のステータスシンボルとなった。
 ガラス職人は今も商売を続けており、その多くが最初にトルコから移住してきた家族の直系子孫である。

●鏡(p48)
 ルネサンス期や初期モダニズムに登場するようになった絵画に、自画像がある。
 鏡は、画家が自分自身を描き、形式上の工夫として遠近法を考え出すのに直接的な役割を演じた。〔そしてそれからまもなく、ヨーロッパ人の意識に新たに自分を中心にすえるという根本的な転換が起こり、さざ波のように世界中に広がることになる(そしていまだに広がっている)〕。
 自己中心の世界は、ヴェネチアやオランダのような場所で栄え始めていた近代資本主義と相性が良かった。

●レコードと電話(p132)
 トーマス・エジソンが1877年に蓄音機を発明した時、郵便で音声の手紙を送る手段として定期的に使われることを思い描いていた。個人がロウを塗った巻物に蓄音機で書状を記録し、ポストに投函し、数日後にそれが再生される。
 ベルは電話の主な用途として、生の音楽を共有する手段を想像していた。電話機の片端にオーケストラか歌手がすわり、反対側にリスナーがすわってスピーカーから聞こえる音楽を楽しむ。
 しかし、レコードと電話の使い方は、発明家が思い描いていたものとあべこべになった。

●独占禁止法(p138)
 1956年、米国司法省は、AT&Tによる電話網の「自然独占」を認めた。その代わり、それまでベル研究所によって生み出された特許発明はどれも、無償でアメリカ企業に提供しなければならず、新たに取得する特許はすべて安価な料金で使用を認めなければならないこととなった。

●睡眠パターン(p256)
 夜間照明が普及する前の人間の睡眠パターンは今と異なっていた。2001年、歴史家のロジャー・イーカーチが、様々な日記や教本を引用して唱えた説。
 第一の眠り……まず、4時間ほど睡眠。目を覚まして軽食を取ったり、用を足したり、セックスをしたり、火のそばでおしゃべりしたり。
 第二の眠り……その後、4時間ほど睡眠。
 8時間の継続的睡眠が理想とする考え方は、19世紀の習慣によって構築された。

(2016/12/28)KG

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科学の発見
 [自然科学]

科学の発見

スティーヴン・ワインバーグ/著 赤根洋子/訳 大栗博司/解説
出版社名 : 文藝春秋
出版年月 : 2016年5月
ISBNコード : 978-4-16-390457-3
税込価格 : 2,106円
頁数・縦 : 428p・20cm


 ノーベル賞学者による、大学での講義ノートをもとに書かれた科学史。

【目次】
第1部 古代ギリシャの物理学
 第1章 まず美しいことが優先された
 第2章 なぜ数学だったのか?
 第3章 アリストテレスは愚か者か?
 第4章 万物理論からの撤退
 第5章 キリスト教のせいだったのか?

第2部 古代ギリシャの天文学
 第6章 実用が天文学を生んだ
 第7章 太陽、月、地球の計測
 第8章 惑星という大問題
 
第3部 中世
 第9章 アラブ世界がギリシャを継承する
 第10章 暗黒の西洋に差し込み始めた光
 
第4部 科学革命
 第11章 ついに太陽系が解明される
 第12章 科学には実験が必要だ
 第13章 最も過大評価された偉人たち
 第14章 革命者ニュートン
 第15章 エピローグ:大いなる統一をめざして

【著者】
ワインバーグ,スティーヴン (Weinberg, Steven)
 1933年、アメリカ生まれ。理論物理学者。カリフォルニア大学バークレー校、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学などを経て、現在はテキサス大学オースティン校の物理学・天文学教授。量子論の統一理論への第一歩となる、「電磁力」と「弱い力」を統合する「ワインバーグ=サラム理論」を1967年に発表し、79年にノーベル物理学賞を受賞する。専門にとどまらない深い教養を備え、一般向けにも多数の著作を発表する、現代で最も尊敬される科学者のひとり。

大栗 博司 (オオグリ ヒロシ)
 理論物理学者。カリフォルニア工科大学教授、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員。素粒子論を専門とする。

赤根 洋子 (アカネ ヨウコ)
 翻訳家。早稲田大学大学院修士課程修了(ドイツ文学)。

【抜書】
●アテネ四大学園(p44)
 アカデメイア……プラトン(~BC437)。AD529年まで存続。
 エピクロスの園
 ストア……柱廊。ストア派。
 リュケイオン……アリストテレス。BC336~BC86?年。アテネがスラ将軍麾下のローマ軍に蹂躙されたときに閉校?

●科学の進歩(p58)
〔 万物を包括する理論を構築しようとする試みからヘレニズム時代の科学者たちが撤退したことは間違ってはいなかった。歴史上何度もその実例を見ることができるように、その時代の知識で解明できる問題とそうでない問題とを見極めることこそ、科学の進歩の本質的な特徴である。たとえば、二十世紀初頭、ヘンドリック・ローレンツやマックス・アブラハムといった一流の物理学者が、当時発見されたばかりの電子の構造を理解しようとして研究に没頭していた。それは絶望的な試みだった。それからおよそ二十年後に量子力学が誕生するまでは、電子の性質の解明は誰にもできるはずがなかったのである。アルバート・アインシュタインの特殊性相対性理論は、彼が「電子とは何か」という問題を放棄したことによって可能となった。「電子とは何か」を解明しようとする代わりに、彼は(電子も含めた)あらゆるものの観測が観測者の運動によってどのように左右されるかを解明しようとした。そのアインシュタインもその後、自然の諸力の統一という問題に取り組んだときには何の成果も上げられなかった。当時は誰も、これらの力について充分に知らなかったからである。〕

●外科医(p70)
〔 近代まで、ヨーロッパの医師たちは、四体液説に加えて占星術の知識も求められていた。占星術は、医学に応用できると考えられていたのである。皮肉なことに、内科医はこうした理論を大学で学んでいたことから、骨折の治療といった本当に有益な技術を知っている外科医よりも数段上の存在と見なされていた。近代まで、外科医の技術は一般的に大学で学ぶものではなかった。〕
 四体液……血液(人間を朗らかにする)、粘液(無気力にする)、黒胆汁(憂鬱にする)、黄胆汁(怒りっぽくする)。

●ローマの宗教(p77)
 キリスト教徒が迫害されたのは、ローマ帝国が異国の神々に対して不寛容だったからではない。〔ローマの神々の祭壇でお香をひとつまみ焚けば放免されるのがふつうだった。〕個人的にどの神を信仰するにせよ、国家に対する忠誠のしるしとして、ローマの公的な宗教にきちんと敬意を払うことが求められただけである。
 ローマ帝国ではどの宗教も、「民衆からはおしなべて本物と見なされ、哲学者からはおしなべて偽物と見なされ、行政官からはおしなべて利用価値ありと見なされていた」(ギボン)。

●政治的権力(p80)
 ローマ帝国時代、キリスト教が科学とぶつかった理由の一つが、政治的権力。
 キリスト教が教会での立身出世の機会を、知的な若者に提供したこと。彼らは、違う道を選んでいれば数学者や科学者になっていたかもしれない。司教や司祭は、通常の司法による支配や納税義務を免れていた。司教は、ムセイオンやアカデメイアの学者よりずっと大きな政治的権力をふるうことができた。
 多神教の世界においては、富と政治権力の持ち主が宗教上の要職を占める。宗教者が富と権力を握るわけではない。

●パリ大学(p174)
 パリにあった大聖堂付属学校が、1200年に特許状を得て大学となったのが大学の始まり。パリ大学。
 イタリアのボローニャ大学のほうがわずかに古いが、法学と医学を専門としていた。

●デカルト座標(p269)
 デカルトの最大の貢献は、曲線上や面上の点を満たす方程式によって曲線や面を表す、解析幾何という新しい数学的方法を考案したこと。
 縦軸と横軸が直角に交わる点を中心点とし、ある点の位置をその点から縦軸と横軸までの距離であらわす座標を「デカルト座標」という。

●近似理論(p318)
 ある科学理論はいずれ、さらにうまく機能する理論の近似理論だったと判明するものである。

(2016/12/23)KG

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なぜ酒豪は北と南に多いのか
 [歴史・地理・民俗]

なぜ酒豪は北と南に多いのか (日経プレミアシリーズ)

小林明/著
出版社名 : 日本経済新聞出版社(日経プレミアシリーズ 320)
出版年月 : 2016年8月
ISBNコード : 978-4-532-26320-1
税込価格 : 918円
頁数・縦 : 227p・18cm


 日経電子版「裏読みWAVE」の書籍化第2弾。「食」にまつわる記事をまとめた。

【目次】
酒豪が多い県、少ない県の不思議な“法則”
ビールの苦みと個人主義
お酒の好みは、10年周期で変わる
ビールのラベルに“当たり”がある!?
買う予定のない「飲み物」を顧客に売る方法
ミネラルウォーターの味の違い、分かりますか
最近、売り場で「濃い味」をよく見かけませんか
プリンにしょうゆをかけるとウニになる?
暑過ぎる夏は、アイスクリームが売れない
鮨か、寿司か、それとも鮓なのか問題
白ねぎか、青ねぎか、謎の東西対決
和風カップめんの関ヶ原
おでんもスナック菓子も、好みは東西で分かれる
えっ、これもカップヌードル!?―世界で変身
中国即席麺の2方面作戦―海鮮から牛肉へ
カップ麺もマックもパスタも、インドでは「マサラ風」
インド人もびっくり、カレーなる変身の歴史
カレーライスかライスカレーか、それが問題だ
「カレーの矛盾」とは何か
海外で日本食が中華、イタリアンと覇権争い

【著者】
小林 明 (コバヤシ アキラ)
 日本経済新聞編集委員。1987年日本経済新聞社入社。長野県出身。慶応義塾大学経済学部卒。流通経済部、政治部、国際部、伊ミラノ支局長、消費産業部次長などを経て現職。伊ボッコーニ大学研究員。2013年伊日財団より「ウンベルト・アニェリ新聞雑誌賞」受賞。

【抜書】
●酒豪型遺伝子(p20)
 酒豪型遺伝子の県別の出現率ランキング。元筑波大学教授 原田勝二の調査。
 1. 秋田 76.7%
 2. 岩手 71.4%
 2. 鹿児島 71.4%
 4. 福島 70.4%
 5. 埼玉 65.4%
 6. 山形 65.1%
 7. 北海道 64.8%
 7. 沖縄 64.8%
 9. 熊本 64.3%
 10. 高知 64.0%
  :
 17. 大分 60.2%
 17. 宮崎 60.2%
 19. 東京 60.0%
  : 
 42. 広島 52.4%
 43. 和歌山 49.7%
 44. 岐阜 47.6%
 45. 石川 45.7%
 46. 愛知 41.4%
 47. 三重 39.7%

●すしの表記(p118)
 「すし」の語源は、酸っぱいという意味の「酸し」に由来。はじめは、魚を塩漬けにして発酵させた保存食「なれずし」を指していた。
 表記は、中国で魚の酢漬けや塩辛を指す「鮓」「鮨」を使用。奈良時代から、正倉院文書、木簡などでも使用。
 江戸時代後期、鮮魚を使う江戸前の「にぎりずし」が登場。
 幕末ごろ、縁起の良い当て字「寿司」が誕生。縁起を担ぎ、長く伸びた「し」を使う「寿し」も誕生。
 国内のすし店出の表記は、「寿司」52.1%、「寿し」26.6%、「鮨」20.5%、「鮓」0.9%。
 西日本では「なれずし」「箱ずし」の「鮓」、東日本では「江戸前ずし」の「鮨」。

●食文化の境界線(p132)
 日清食品の「どん兵衛」では、新潟、長野、岐阜、三重より東を「東日本」、滋賀、京都、奈良、和歌山より西を「西日本」とし、さらに北海道を加え、つゆの味を変えている。関ケ原が境目。三重は、東日本!?
 「東日本」はカツオだしを多くして濃い口しょうゆで仕上げ。「西日本」は昆布だしの割合を多くして薄口しょうゆで仕上げ。「北海道」は利尻昆布のだしを使用。

●純印度式カリー(p192)
 1915年(大正4年)、新宿中村屋の店主相馬愛蔵は、ラス・ビハリー・ボースを新宿のアトリエにかくまう。
 ボースは、故郷のベンガル地方を懐かしんで骨付きチキンと香辛料たっぷりの「純印度式カリー」を作って食べていた。「日本人にも本場インドの上質な味を味わってもらいたい」ということで、1927年(昭和2年)、中村屋本店1Fに開店した喫茶部で「純印度式カリー」を売り出す。80銭と高価だったが(一般的なカレーは10~12銭)、看板メニューとなる。

(2016/12/18)KG

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世界史としての日本史
 [歴史・地理・民俗]

世界史としての日本史 (小学館新書)

半藤一利/著 出口治明/著
出版社名 : 小学館(小学館新書 280)
出版年月 : 2016年8月
ISBNコード : 978-4-09-825280-0
税込価格 : 842円
頁数・縦 : 253p・18cm


 日本を日本史のみの観点で捉えるのではなく、世界史的な観点から捉えることが重要であり、明治維新、昭和史についてその観点から論じる……、という趣旨なのだろうが、対談なので、話はそこに収れんしない。あっちこっちに行き来するのだが、両人の歴史観、深い教養がにじみ出ていて面白い。

【目次】
第1章 日本は特別な国という思い込みを捨てろ
第2章 なぜ戦争の歴史から目を背けるのか
第3章 日本が負けた真の理由
第4章 アメリカを通してしか世界を見ない危険性
第5章 世界のなかの日本を知るためのブックガイド
第6章 日本人はいつから教養を失ったのか

【著者】
半藤 一利 (ハンドウ カズトシ)
 1930年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。文藝春秋に入社し、「週刊文春」「文藝春秋」編集長、専務取締役などを経て作家に。「歴史探偵」を名乗る。

出口 治明 (デグチ ハルアキ)
 1948年、三重県生まれ。京都大学法学部を卒業後、日本生命に入社。現在はライフネット生命保険代表取締役会長兼CEO。

【抜書】
●エチオピア皇帝(p43、出口)
 天皇家には、世界でライバルが二人いた。
 エチオピア皇帝ハイレ・セラシエ1世……エチオピア皇帝二百何代目か。BC10世紀、シバの女王とソロモン王の子であるメネリク1世が祖。1974年、革命が起きて皇室が断絶。
 孔子家……BC500年から系譜が残る。戊戌の変法を主導した康有為には、孔子の一族を天皇のように担ぎ上げる構想があった。
 天皇家は、継体天皇から正確な系図が残っている。世界最古の王家。

●100万円(p51、出口)
 日本に長く住んでいる外国人から聞いた話。「『自分の母国はこんなにひどいけれど、日本はこんなに素晴らしい』という本を書けば、軽く100万円は稼げる」「どこの出版社も飛びついてくる」、という冗談が流行っている。

●経線思考(p100、出口)
〔 イエスノーゲームで、それぞれ右上と右下の矢印線を引っ張っていく図を描いて、イエス、イエスと選んでいくと、どんどん右上のほうに進んでいき、真ん中のバランスの取れた水平線からかけ離れていく〕。後戻りできなくなる。

●留守(p235、半藤)
 幕末、列強が日本を占領しなかった理由。
 アメリカは、南北戦争が勃発。フランスやイギリスは、南アフリカでボーア戦争が起きて艦隊をアフリカへ送らなければならなかった。欧米諸国は、アジアを留守にせざるを得なかった。

(2016/12/14)KG

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ヴァイオリンに生きる
 [芸術]

ヴァイオリンに生きる

石井高/著
出版社名 : 冨山房インターナショナル
出版年月 : 2015年9月
ISBNコード : 978-4-905194-96-5
税込価格 : 1,944円
頁数・縦 : 285p・19cm


 癌に侵されたヴァイオリン職人が、死を覚悟して数年間、書き溜めたエッセー本。自由奔放な筆致で、あっけらかんとした生き方がにじみ出ている。
 2015年9月17日、自宅にて永眠。享年72。合掌。

【目次】
1 すべてヴァイオリンの話
 天才ストラディヴァリという難問
 伝統を受け継ぐ難しさ
 国立ヴァイオリン製作学校
  ほか
2 クレモナ暮らし
 教会近くの居酒屋
 クレモナという町
 天正少年使節への思い
3 千住からクレモナまで
 修業時代
 父のこと母のこと
 親友という宝もの
  ほか

【著者】
石井 高 (イシイ タカシ)
 昭和18(1943)年兵庫県生まれ、東京下町育ち。本籍東京都港区芝。1970年からイタリアに永住。東京理科大応用化学科中退。東大工学部に国家公務員技官として奉職。ヴァイオリン製作家の内弟子を経て渡伊。イタリア国立ヴァイオリン製作学校卒業。1975年マエストロの称号を受ける。1980年クレモナ市民賞(ストラディヴァリ賞)受賞。ヴァイオリンはじめ弦楽器製作、講演会、個展など幅広く活動。ストラディヴァリやグァルネリなど名器の鑑定や修理。イタリア・ヴァイオリン芸術協会会員。

【抜書】
●作文職人(p236)
 『面白半分』の作家たちを評して。
 〔彼らの活動のお陰でぼくたちは、作家たちが普通の人でただ文章技術に長けているだけで、なかには一般社会に適合できない性格を持っている作家もいると知ったことでわれわれは安心した。作家は文章の構成、また作文の上手い職人である。それを先生と呼んでいるにすぎない。〕
 『面白半分』は、吉行淳之介らが「面白くてタメにならない雑誌」として刊行。編集長は、吉行の後、野坂昭如、開高健、五木寛之、藤本義一、金子光晴、井上ひさし、遠藤周作、田辺聖子、筒井康隆、半村良、田村隆一が交代で務めた。

(2016/12/12)

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歴史が教えてくれる日本人の生き方
 [歴史・地理・民俗]

歴史が教えてくれる日本人の生き方

白駒妃登美/著
出版社名 : 育鵬社
出版年月 : 2016年8月
ISBNコード : 978-4-594-07535-4
税込価格 : 1,620円
頁数・縦 : 245p・19cm


 日本各地、土地土地にその地域特有の遺伝子が備わっている。それは、その地域がはぐくんだ文化であり、感性である……。
 そんな各地の偉人を紹介。

【目次】
はじめに―それぞれの土地には歴史の遺伝子がある
千葉―利他の心を尊ぶ生き方
伊勢―限りある命を永遠の命にかえる生き方とは
島根―何も求めずに尽くせば、道は開ける
福岡―自分の成功よりもみんなの繁栄を願う粋な町
和歌山―ゆかりの人々が教えてくれる開運の法則
徳島―外国人を引き付けた日本人の魅力はどうして育まれたのか
岐阜―美意識こそが日本人の生き方を決めてきた
福井―「ザ・日本人」という遺伝子が脈々と生き続ける土地
新潟―戦いに敗れても気概を失わなければ負けではない
仙台―やむにやまれぬ思いを体現するには本当の強さがいる
鹿児島―この国の未来のために何をなすべきかを考えた人たち
山形―周りの人の善意や厚意に気づくことで人生は好転する
岡山―日本の独立を守った道徳心と技術力

【著者】
白駒 妃登美 (シラコマ ヒトミ)
 埼玉県生まれ。慶應義塾大学経済学部に進学。卒業後、大手航空会社に入社し、国際線に約7年間乗務。その後、歴史の講演を始める。日本の歴史や文化の素晴らしさを国内外に発信する「株式会社ことほぎ」代表取締役社長。

【抜書】
●明石元二郎(p64)
 明石元二郎(1864-1919)、福岡出身。日露戦争のときにロシアに潜伏したスパイ。ロシア国内の反政府分子たちのスポンサーとなり、革命に向けての動きを扇動し、ロシアの軍事力をそぐ。全軍事力を対日戦に集中させないため。
 ドイツ皇帝ヴィルヘルム二世「明石元二郎たった一人で満州の日本軍二十万人に匹敵する働きがあった」。
 あるパーティの席で、ドイツの士官が明石に「あなたはドイツ語がしゃべれるか?」と聞いた。「フランス語がやっとわかるくらいで、ドイツ語はわからない」と答えた。ドイツ士官は、明石の前で、ロシアの士官とドイツ語で軍事機密を話し始めた。実は、英語・ドイツ語・フランス語に堪能だった。
 将来の総理大臣候補と言われたが、台湾総督在任中に55歳で没。公務で日本に帰る船上で罹病、福岡で亡くなる。遺体は氷漬けで台湾に送られ、埋葬された。

●月の丸(p208)
 パラオ共和国の国旗……青地に黄色の丸。黄色の丸は月を、地色の青は海を表す。公募で選ばれた。日の丸に似ているから。
 パラオの人々は、日本に感謝している。ペリリュー島での激戦で、日本軍1万人全滅。戦闘の前に島民を半ば強制的に疎開させる。

●工藤俊作(p210)
 工藤俊作(1901-1979)、山形県屋代村出身、帝国海軍の軍人。
 駆逐艦「雷(いかずち)」の艦長だった。1942年3月、インドネシアのスラバヤ沖での海戦で、日本海軍は連合艦隊を撃破。その翌日、その海域を「雷」が航行中、イギリス艦船の乗組員400名以上が海に浮かんでいるのを発見。約170名の日本兵が、イギリス兵422名を救助。
 「日本海軍の名誉あるゲスト」ととして敬意をもって接する。
 ボルネオ島の港で、オランダ病院船に彼らを引き渡す。

(2016/12/10)KG

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欧州複合危機 苦悶するEU、揺れる世界
 [社会・政治・時事]

欧州複合危機 - 苦悶するEU、揺れる世界 (中公新書)

遠藤乾/著
出版社名 : 中央公論新社(中公新書 2405)
出版年月 : 2016年10月
ISBNコード : 978-4-12-102405-3
税込価格 : 929円
頁数・縦 : 294p・18cm


 ユーロ通貨危機、ウクライナ危機、難民危機、テロ事件、イギリスのEU離脱……。複合的な危機に見舞われているヨーロッパの今を、ヨーロッパ統合という視点から読み解く。

【目次】
第1部 危機を生きるEU
 第1章 ユーロ―未完の危機
 第2章 欧州難民危機
 第3章 欧州安全保障危機―ウクライナからパリ・ブリュッセル・ニースへ
 第4章 イギリスのEU離脱

第2部 複合危機の本質
 第5章 統合史のなかの危機―今回の危機は何が異なるのか
 第6章 問題としてのEU
 第7章 なぜEUはしぶとく生き残るのか

第3部 欧州と世界のゆくえ
 第8章 イギリス離脱後の欧州と世界
 第9章 危機の先にあるもの
 終章 危機の先にあるもの

【著者】
遠藤 乾 (エンドウ ケン)
 1966年、東京都に生まれる。北海道大学法学部卒業。カトリック・ルーヴァン大学修士号(ヨーロッパ研究)、オックスフォード大学博士号(政治学)。欧州委員会「未来工房」専門調査員、欧州大学院大学政治社会学部フェルナン・ブローデル上級研究員、パリ政治学院客員教授、台湾政治大学客員教授などを経て、北海道大学大学院法学研究科・公共政策大学院教授。専攻、国際政治、ヨーロッパ政治。著書に『統合の終焉―EUの実像と論理』岩波書店、2013年(第15回読売・吉野作造賞受賞)ほか。

(2016/12/10)KG

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水力発電が日本を救う 今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる
 [社会・政治・時事]

水力発電が日本を救う

竹村公太郎/著
出版社名 :東洋経済新報社
出版年月 : 2016年9月
ISBNコード : 978-4-492-76228-8
税込価格 : 1,512円
頁数・縦 : 190p・19cm


 既存のダムを活用した水力発電を推進していこうという提言の書。そうすれば、日本の総電力量の30%は水力発電でまかなえるという。もう原子力に頼らなくてもいい。
 また、市町村単位で小水力発電所の建設を進めれば、地産地消のエネルギーを確保でき、さらに過疎化対策にもなる。

【目次】
序 一〇〇年後の日本のために
第1章 なぜ、ダムを増やさずに水力発電を二倍にできるのか
第2章 なぜ、日本をエネルギー資源大国と呼べるのか
第3章 なぜ、日本のダムは二〇〇兆円の遺産なのか
第4章 なぜ、地形を見ればエネルギーの将来が分かるのか
第5章 なぜ、水源地域が水力発電事業のオーナーになるべきなのか
第6章 どうすれば、水源地域主体の水力発電は成功できるのか
終章 未来のエネルギーと水力発電

【著者】
竹村 公太郎 (タケムラ コウタロウ)
 1945年生まれ。1970年、東北大学工学部土木工学科修士課程修了。同年、建設省入省。以来、主にダム・河川事業を担当し、近畿地方建設局長、河川局長などを歴任。2002年、国土交通省退官後、リバーフロント研究所代表理事を経て、現在は日本水フォーラム事務局長。

【抜書】
●河川法(p33)
 明治29年(1896年)、河川法が制定される。第1条(その法律の根本的な目的が書かれる)で、河川法の目的は治水と舟運だった。川の氾濫を防ぐこと。
 昭和39年(1964年)の改正で、第1条に「利水」が加わる。治水と利水を両立させる多目的ダムが河川行政の中で大きな位置を占めるようになった。
 平成9年(1997年)、第1条に「環境」という言葉が加えられる。川の環境保全も河川行政の目的になった。
 3度目の目的変更の時期に来ている。水力エネルギー開発を河川行政の目的そのものにすべきである。多目的ダムを発電に利用する。

●油田(p45)
〔 高い山、大量の雨、そして川をせき止めるダム。この三つが揃ったときにだけ、水は石油になる。〕

●コンクリート(p68)
 ダムは半永久的に壊れない。
 ダムのコンクリートは天然の岩盤と同じ。
 セメントは石灰石。石灰石と砂と石とが固まっているのがコンクリート。成分は、凝灰岩という天然の岩と同じ。
 ① 鉄筋を使っていないので、中でさびない。
 ② 基礎が岩盤と一体化している。
 ③ 壁の厚さが数10mから200mくらいある。

●既存のダムを活用する(p92)
 現在、日本の総電力供給量に占める水力発電の割合は9%。
 日本のダムの潜在的な発電能力を引き出せば、30%まで可能。
 ① 多目的ダムの運用を変更し、ダムの空き容量を発電に利用する。昭和32年制定の「多目的ダム法」により、多目的ダムには半分の水量しか貯まっていない。治水のため。
 ② 既存のダムを嵩上げする。新規ダム建設の三分の一以下のコストで、発電能力を倍近くに増やせる。
 ③ 現在発電に使われていないダムに発電させる。砂防ダムなど。

●エネルギーと人口(p123)
 エネルギー供給が増えると人口が増える。
 江戸時代、京都から江戸に行政の中心が移ったとき、関東に大量の木材供給地があったので、エネルギーが確保でき、1200万人から3000万人に人口が増えた。そこで頭打ち。
 明治以降、化石燃料のためにエネルギー供給が増え、1億2000万人までさらに増えた。
 
(2016/12/5)KG

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