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在日二世の記憶
 [社会・政治・時事]

在日二世の記憶 (集英社新書)

小熊英二/編 高賛侑/編 高秀美/編
出版社名 :集英社(集英社新書 0857)
出版年月 : 2016年11月
ISBNコード : 978-4-08-720857-3
税込価格 : 1,728円
頁数・縦 : 761p・18cm


 『在日一世の記憶』(集英社新書、2008年)の続編。6年に及ぶ取材をもとに、50人の在日韓国・朝鮮人のライフストーリを編む。
 2014年4月8日~2016年10月31日、集英社新書HPにて掲載。

【目次】
共生のこの地に「コリア文化博物館」の実現を
宝塚で外国人市民の共生目指して
担任の机に入ったままだった「就職希望書」
元アートネイチャー会長にして俳人の身世打鈴
天才打者の壮絶な被爆体験
親父はどうして、あんな生き方しかできなかったのか
関東大震災の直前、日本にやって来たアボジ
囲碁で結ばれた同砲との絆
「東九条マダン」は、僕らの目指す社会像やねんね
川崎・桜本に生きる
〔ほか〕

【著者】
小熊 英二 (オグマ エイジ)
 1962年生まれ。歴史社会学者。慶應義塾大学教授。

髙 賛侑 (コウ チャニュウ)
 1947年生まれ。ノンフィクション作家。

高 秀美 (コウ スミ)
 1954年生まれ。ライター・編集者。在日朝鮮人の記録を残す仕事に携わる。「海峡」同人。

【抜書】
●獄中生活(p260)
 李哲(イ・チョル)……1948年10月7日生まれ。1975年、高麗大学大学院留学中に、ねつ造された「学園浸透スパイ団事件」(11・23事件)で北朝鮮のスパイとされ、投獄される。死刑判決を受けるが、81年に特赦で懲役20年に減刑、88年に仮釈放。90年に在日韓国良心囚同友会を結成。
〔 獄中でいろんな民主化運動の闘士とか政治犯に出会いました。青年や学生たちだけでなく、金芝河氏、朴炯圭(パク・ヒョンギュ)牧師、李泳禧(イ・ヨンヒ)教授、文益煥(ムン・イクファン)牧師や咸世雄(ハム・セウン)神父など、実に多くの方々が入ってこられました。そういう人たちに会うと本当に力をもらいます。なんで自分もこの先生たちのように何かをやって入れなかったのかって悔やまれましたね。やっぱり民主化、統一に対する思いがありますから。そういう活動を外でできず、スパイにでっち上げられたまま悶々と過ごしているわけじゃないですか。まさに軍事独裁時代がひっくり返る曲がり角に来た歴史的な時期に、本当はそういうところに参加したかったのに、自分は一体何をしているのだと思ったら悔しかったですね。〕

●クラシック音楽(p299)
 丁讃宇(ジョン・チャヌ)……1950年8月11日生まれ。桐朋学園大学、パリ国立高等音楽院で学ぶ。ヴァイオリニスト。
 クラシック音楽家は、運と才能と財力がないと職業として成り立っていかない。

●両方の良さ(p307、丁讃宇)
〔 これまで日韓両国の文化を、音楽を通して経験しました。それぞれの文化の良い面を学んだのです。これは在日の文化人、アーティストにとって特徴的ないい素質でもある。在日の文学者もそうですね。
 在日韓国人の若い人たちは韓国人にはない、日本人にもない、プラスアルファ―の良さを持って生まれてきている。それを活かすようなことを考えてもいいんじゃないかと思います。〕

●客(p495)
 金洪才(キム・ホンジェ)……1954年10月10日生まれ。桐朋学園大学音楽学部にて指揮を学ぶ。東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、京都市交響楽団、大阪市音楽団、広島交響楽団を経て、2007年より韓国・蔚山市立交響楽団の音楽監督兼常任指揮者。
〔 朝比奈隆(あさひなたかし)やカラヤンのように同じ指揮者が同じオーケストラで何十年も振るというような時代は、もうありえない。大体が二、三年ごとの契約制です。同じところでずっとやりたいというのは指揮者のわがままで、指揮者とソリストはオーケストラにとっては「客」です。〕

●長生き(p502、金洪才)
〔 朝比奈さんが僕にいったのは「指揮者に大切なことは、長生きすることだ」ということでした。ヒヨコから入ってきて五〇年やって、ようやくマエストロ、巨匠と呼ばれるような仕事です。特に経験からくるものが大変に大きい。〕

●倍達(p662)
 河明生(かわ・めいせい)……1963年9月15日生まれ。テコンドーのパイオニアにして経済学者。法政大学、高崎経済大学などで兼任講師。日本テコンドー協会会長。
 極真空手創始者の大山倍達も朝鮮人。
 朝鮮民族は、別名「倍達(ペダル)民族」という。古代の朝鮮の称。

●中流(p668、河明生)
〔 しかし、彼ら成功者はほんの一つまみのエリートで誰でも真似できるものではありません。在日社会は、生まれ育った日本という地に足をつけたまじめな中流を育てるべきです。中流は安定した国家社会の革新的存在ですし、日本なら誰でもなれます。マイノリティの中流が増加すれば犯罪は確実に減ります。「日本に生まれてよかった」と思える若者も増加し、かつての渡来人のように永住の地と定めた日本のため新たな感性を発揮することも期待できます。母語ができない、変な発音をする人間を韓国や北朝鮮の大衆は同胞と見なしません。「言葉は民族である」と考えているからです。中途半端な韓国人・朝鮮人としていつまで残りたいのかを考えるべきではないでしょうか。孫や曾孫の代まで代まで非建設的な思いを残すのはエゴ以外の何物でもありません。米国の日系人や韓国系人のように居住国の一員として頑張る方が本国のためになります。普段、日本名を名乗っていても犯罪を犯せば韓国・朝鮮人として出自を公表され「またあいつらか」と思われてしまいます。〕

●日本人妻(p698)
 兪哲完(ユ・チョルワン)……1965年5月12日生まれ。1996年に社会人入試にて立命館大学経済学部入学。現在、MK西日本グループ代表取締役社長。通明は青木義明。
〔 今の嫁は、友達の紹介で知り合った日本人でした。「この人と結婚します」と報告すると、親からは日本人だからと反対されました。それでわたしがいったのは、「そんなもん、韓国人、韓国人って。僕も韓国人と結婚しようとした。でも今、出会う人はほとんどが日本人だ。何があかんね。見合いも数十回やって、結婚しかけて、ダメになって。それなのに日本人だからダメかよ」と覚悟を決めていいました。そしたら親父に「出て行け」といわれまして、「わかった。会社もやめるわ。日本で子どもを生んで、育てて、日本人相手にビジネスやってて、日本人に感謝せなあかんじゃないか。韓国人、日本といってる場合違うでしょ。そりゃ戦前、戦中、親父とお袋は酷い目に遭ったかもしれない。でも僕は申し訳ないけど知らんわ。それが結婚するなという理由にはならんで。それに、息子である僕が信用できないんですか」と言いました。結局結婚して、今は皆ハッピーです。実家にも頻繁に子どもを連れて遊びに行きます。〕

(2017/1/28)KG

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本当はブラックな江戸時代
 [歴史・地理・民俗]

本当はブラックな江戸時代

永井義男/著
出版社名 : 辰巳出版
出版年月 : 2016年11月
ISBNコード : 978-4-7778-1780-1
税込価格 : 1,512円
頁数・縦 : 239p・19cm


 最近は理想化されて語られることの多い江戸時代の生活の実情を、当時の戯作や日記などの資料を基に赤裸々に描く。
 本書に描かれていることは極端な感じもするが、行き過ぎた理想化への反動ということだろう。 要は、江戸時代の生活は、封建制の厳格な身分社会として語られるほどにはひどくなく、かと言って今とは異なる時代背景もあり、現代ほど住みやすい社会でもなかった、ということか。

【目次】
第1章 江戸はブラック企業だらけ
 休日は年に二日しかなかった
 休暇がもらえるのは九年目
  ほか
第2章 安全ではなかった江戸の町
 危険な警察業務は庶民がになう
 町奉行所に市民を守る意識は希薄
  ほか
第3章 食の安全・安心などはなかった
 江戸の水を飲むと下痢
 旬の食材はそれしかなかったから
  ほか
第4章 きたなくて残酷だった江戸の町
 江戸はリサイクル都市だったのか
 異臭が鼻をついた裏長屋
  ほか
第5章 高い識字率のまやかし
 識字率世界一は本当か
 お寒い武士の教養、文武両道はウソ
  ほか

【著者】
永井 義男 (ナガイ ヨシオ)
 1949年福岡生まれ。東京外国語大学卒業。1997年『算学奇人伝』で第六回開高健賞を受賞し、本格的な作家活動に入る。

【抜書】
●江戸煩い(p134)
 脚気のこと。江戸の白米偏愛が脚気をもたらした。しかも、おかずが貧弱だったため。
 江戸勤番の武士や、農村から江戸に出て商家などで奉公している者が、脚気になることが多かった。農村や国元に戻ると治った。

(2017/1/28)KG

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スノーデン・ショック 民主主義にひそむ監視の脅威
 [社会・政治・時事]

スノーデン・ショック――民主主義にひそむ監視の脅威

デイヴィッド・ライアン/〔著〕 田島泰彦/訳 大塚一美/訳 新津久美子/訳
出版社名 : 岩波書店
出版年月 : 2016年4月
ISBNコード : 978-4-00-001084-9
税込価格 : 2,052円
頁数・縦 : 159、35p・19cm


 ″Surveillance after Snowden"(Polity Press, 2015)の翻訳である。
 エドワード・スノーデンが暴露したNSA(アメリカ国家安全保障局)による大量監視の実態。その手法と危険性、そして、今後われわれ一般市民がどのように対処すべきかを論じる。

【目次】
序章 CITIZENFOURの警告
第1章 スノーデンの嵐
第2章 世界中の監視
第3章 脅威のメタデータ
第4章 ぐらつくプライバシー
第5章 将来の再構築

【著者】
ライアン, デイヴィッド (Lyon, David)
 カナダ・クイーンズ大学監視研究センター所長。邦訳書に、『監視社会』『膨張する監視社会』(青土社)、『9.11以後の監視』(明石書店)など。

田島泰彦 (タジマ ヤスヒコ)
 上智大学文学部新聞学科教授。専門は憲法、メディア法。

【抜書】
●90%(p79)
〔 覚えておいてほしい、多くのことがメタデータから突き止められうることを。マサチューセッツ工科大学(MIT)のイヴス・アレキサンダー・デモントジョイは、名前を伏せたとある国の、一一〇万人分の会員番号と名前を消した三カ月分のクレジットカード記録をチェックする調査をした。すると、そのうち九〇%の人々についてはそのカード保持者の身元を、たった四つの断片情報――ツイート、インスタグラムの写真およびそれに準ずるもの――から割り出すことができた。なお、先立つ二〇一三年に行われた携帯電話の通話記録を対象にした同様の研究では、通話記録からなんと九五%の人々の身元を割り出すことができた。〕

●インターネット民主主義(p131)
 〔開かれた意思疎通と民主主義を促すという希望とともに生まれたインターネットに関して言えば、デジタル世界の大部分の潮流は初期の開発者が望んだこととは正反対になっているように思える。権力関係機関の秘密主義と消費者の「フィルターバブル」は、彼らには思いもよらなかったことだ。〕
 インターネットの自由な世界が、国家の監視を強化するための情報源になっているという皮肉。
 監視研究センターが最初のウェブサイトを開設し、監視に興味を持つ世界中の学術団体と関係を築こうとした。その結果、カナダ安全情報局(CSIS)、王立カナダ騎馬警察の警官、カナダ通信安全保障部(CSES)も常連の訪問者となった。

(2017/1/21)KG

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謎のアジア納豆 そして帰ってきた〈日本納豆〉
 [歴史・地理・民俗]

謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉

高野秀行/著
出版社名 : 新潮社
出版年月 : 2016年4月
ISBNコード : 978-4-10-340071-4
税込価格 : 1,944円
頁数・縦 : 350p・20cm


 納豆のルーツを求めてアジアをめぐる納豆探検ルポルタージュ。
 納豆といえば、藁にひそむ納豆菌によって発酵させられると思い込んでいたが、イチジク、シダ、笹、ビワ、桐、蕗、トチノキ……などなど、どんな葉でも納豆が作れるらしい。アジアの山岳地帯の納豆民族は、稲藁なんか使わないのだ。稲そのものがない。アジアの辺境へ取材と現地での納豆作り体験だけでは飽き足らず、武村先輩と手近な葉っぱで納豆を作る「納豆合宿」を敢行する「実験」精神がまた面白い。ちなみに元祖水戸納豆が包まれていた藁束のことを藁苞(わらづと)と言う。

【目次】
納豆は外国のソウルフードだった!? チェンマイ/タイ
納豆とは何か
山のニューヨークの味噌納豆 チェントゥン/ミャンマー
火花を散らす納豆ナショナリズム タウンジー/ミャンマー
幻の竹納豆を追え! ミッチーナ/ミャンマー
アジア納豆は日本の納豆と同じなのか、ちがうのか
日本で『アジア納豆』はできるのか 長野県飯田市
女王陛下の納豆護衛隊 パッタリ/ネパール
日本納豆の起源を探る 秋田県南部
元・首狩り族の納豆汁 ナガ山地/ミャンマー
味噌民族vs.納豆民族 中国湖南省
謎の雪納豆 岩手県西和賀町
納豆の起源

【著者】
高野 秀行 (タカノ ヒデユキ)
 ノンフィクション作家。1966(昭和41)年、東京都八王子市生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科卒。1989(平成元)年、同大探検部の活動を記した『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。2006年『ワセダ三畳青春記』で第1回酒飲み書店員大賞を受賞。2013年『謎の独立国家ソマリランドそして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』で第35回講談社ノンフィクション賞、第3回梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞。

【抜書】
●ランナー王国(p16)
 13世紀から20世紀初頭まで、800年近くも続いた王国。タイ北部のチェンマイは、ランナー王国の都だった。
 ランナー文字という、ビルマ文字に似た文字を持つ。
 チェンマイは、バンコクよりもタイ民族オリジナルに近い文化が残っている。中国色が薄い。

●トナオ(p18)
 シャン語、タイ語で納豆のことを「トナオ」という。ト=豆(とう)、ナオ=腐った。
 シャン族……ミャンマー最大の少数民族。約500万人、人口の約1割。自称は「タイ(Tai)」。タイ王国のタイ族(Thai)と近い民族。タイ族は、シャン族のことを「タイ・ヤイ(大タイ)」、自らを「タイ・イーノ(小タイ)」と呼ぶ。もともと、シャン族がタイ族よりも「先に生まれて偉大だ」という意味で使われていたが、今は「山のタイ人」という蔑視のニュアンスを含む? タイ語とシャン語は、日本の標準語と沖縄語くらいの違いがある。「シャン」は、「シャム」が訛ったビルマ語、英語。
 《トナオの種類》
 ①トナオ・ケップ……せんべい状。
 ②トナオ・サ……糸引き納豆。トナオ・メッ(粒納豆)とも呼ばれる。
 ③トナオ・ウ……ブロック状。

●山の調味料(p53)
 ビルマ族の主要な旨味調味料はンガピ。タイ族はナンプラー。どちらも海の魚介を使った発酵調味料。
 山の民シャン族は、納豆を旨味調味料として利用している。魚介類が届きにくい内陸の高地。
 納豆=山の調味料。

●『精進魚類物語』(p220)
 「納豆」の初出は藤原明衡(あきひら)『新猿楽記』、平安後期。しかし、塩辛納豆(煮豆に塩を加え、麹菌で発酵させる)、糸引き納豆(納豆菌の作用で発酵させる)か区別がつかない。
 明らかに糸引き納豆が文献に現れるのは、室町時代の『精進魚類物語』。〔「鮭の大介鰭長(ひれなが)」率いる魚と肉の連合軍が「納豆太郎種成(たねなり)」を大将とする山菜や豆腐などの精進料理同盟と宴会の上席をめぐって合戦を行うという突拍子もないバトルファンタジー小説〕。平家物語のパロディ。

●南方長城(p275)
 2000年4月に認定された、中国南部にある「長城」。湖南省から貴州省にかけて190kmほど続いている。
 明代に、苗(みゃお)族は漢族に圧迫されて山に逃げ込んだが、何度も叛乱を起こして町を襲撃した。それを防ぐために漢族が長城を築いた。

(2017/1/21)KG

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神都物語 伊勢神宮の近現代史
 [歴史・地理・民俗]

神都物語: 伊勢神宮の近現代史 (歴史文化ライブラリー)

ジョン・ブリーン/著
出版社名 : 吉川弘文館(歴史文化ライブラリー 405)
出版年月 : 2015年7月
ISBNコード : 978-4-642-05805-6
税込価格 : 1,836円
頁数・縦 : 181p・19cm


 明治以降の伊勢神宮とその周辺地域の歴史を様々な観点からたどる。
 ちなみに、伊勢神宮、正式には、単に「神宮」というらしい。内宮は「皇大(こうたい)神宮」、外宮は「豊受大神宮」。

【目次】
伊勢神宮というパラドックス―プロローグ
「神都」の形成過程―明治期の伊勢神宮
 近代の神宮と天皇の「大廟」
 近代の宇治山田と地域社会
 神苑会と「神都」の形成
大正・昭和期の国民と伊勢神宮
 一九二九年の式年遷宮
 大正・昭和の伊勢神宮を語る
 伊勢神宮の広報
 伊勢の参拝空間
戦後日本と伊勢神宮
 終戦の危機と式年遷宮―一九五三年
 伊勢神宮の「脱法人化」と式年遷宮―一九七三年
 聖地と俗地の伊勢―一九九三年の式年遷宮
伊勢神宮の現在―エピローグ

【著者】
ブリーン,ジョン (Breen, John)
 1956年、ロンドンに生まれる。1979年、ケンブリッジ大学卒業。1993年、ケンブリッジ大学博士号取得。現在、国際日本文化研究センター、総合研究大学院大学教授。

【抜書】
●明治天皇(p15)
 1869年(明治2年)4月23日、伊勢神宮の外宮、内宮を参拝した。1868年には、京都を後にして東京に向かう途中、鈴鹿の関で伊勢神宮を遥拝した。
 伊勢神宮が7世紀に創立されてから、19世紀に至るまで、天皇は一度も参拝したことがなかった。
 天皇は、伊勢まで参拝する必要がなかった。①内侍所(ないしどころ)に天照大神を祀る神鏡があった、②未婚の皇女である斎王が戦国時代まで伊勢で天照大神に仕えていた、などの理由による。

●御師(p20)
 御師(おんし)……非重代の権禰宜身分。内宮に所属する荒木田271家。外宮に所属する渡会479家。全国9割の世帯にまで伊勢の大麻(お札)や暦を配っていた?(p31)
 檀家は、太々講(だいだいこう)をつくり、お金を貯め、毎年代表を宇治(内宮)と山田(外宮)に参拝させた。
 1871年、御師を廃止、免職。

●神宮教院(p34)
 1872年、宇治の浦田町に神宮教院設立。地域の神宮教会(かつての太々講をまとめる)を通して大麻頒布を実施。
 同年、政府は教部省を設置。全国の神職と僧侶を「教導職」(一種の宣教師)となし、「大教(だいきょう)」を全国に宣布させる。広まりつつあるキリスト教の社会的影響を防ごうとした。
 大教……教部省のもとで創出された新たな「教え」。

●非宗教化(p36)
 浦田長民『大道本義(だいどうほんぎ)』3巻、1876年。「神道の宝典」ともいわれ、天照大神を中心に据えた神道論。
 一方、出雲の大国主命を中枢とする神道論も当時は流行していた。
 1882年、政府は、伊勢神宮などの神職がこれまで行ってきた神道論の展開と宣布活動を一切禁止した。天皇の存在を権威づける天照大神まで巻き込んだ論争が起きないようにするため。神宮をはじめとする全国の神社が「非宗教」と位置づけられる発端となった。

(2017/1/17)KG

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誰もがその顛末を話したくなる日本史のネタ全書
 [歴史・地理・民俗]

誰もがその顚末を話したくなる 日本史のネタ全書 (できる大人の大全シリーズ)

歴史の謎研究会/編
出版社名 : 青春出版社
出版年月 : 2016年8月
ISBNコード : 978-4-413-11185-0
税込価格 : 1,080円
頁数・縦 : 380p・19cm


 日本史の裏話をまとめた雑学本。

【目次】
1 核心―信長、秀吉はなぜ「将軍」にならなかった?
2 真相―江戸時代、「お家断絶」を招いた最大の原因は?
3 対決―日露戦争で敗れたバルチック艦隊提督の「その後」は?
4 刻印―どうして無人島にも古墳があるの?
5 運命―なぜ高橋是清はアメリカで「奴隷生活」を味わった?
6 実相―出島から出られないオランダ人向けの“出張サービス”とは?
7 事情―律令時代の役人の「勤務時間」はどうなっていた?
付章 60分でつかめる日本史の「見取り図」

【著者】


【抜書】
●加藤清正(p45)
 関ケ原の戦いの際、加藤清正は領国の肥後にいた。肥後には、西軍に味方した小西行長の宇土城や八代城があり、これらを攻め落とした。さらに、立花宗成の柳河(やながわ)城も落とし、薩摩の島津領に侵入する用意もあった。
 家康が清正を関ケ原に呼び寄せなかったのは、万が一、豊臣秀頼が出陣した場合、清正は寝返る可能性があると考えたから。

●享保の改革(p52)
 吉宗は、享保の改革で、年貢率を「定免法」に変えた。豊作凶作に関わらず、一定額を徴収する。それまでは、コメの作柄によって決定されていた。幕府財政は安定したが、農民には凶作の際、大きな負担となった。
 新田開発も盛んに行われたが、その土地の大半はもともと農民たちの共有地だった。農民たちはそこから草肥えや薪、山の幸などを調達していた。
 さらに、畑の租税を重くし、税が免除されていた河川敷の土地にも課税した。
 家宣・家継時代には平均で収穫の27.6%だった年貢が、吉宗時代には5割になった。
 農民一揆が増加。凶作になると、飢えた親による子殺しなどが相次ぎ、享保の改革以降、日本の人口はほとんど増えなくなった。

●350年(p64)
 平安時代、ほとんど死刑は行われなかった。
 810年(弘仁元年)の藤原薬子の変で、首謀者の一人藤原仲成が禁錮のうえ死刑になって以降、1156年(保元元年)に保元の乱の始末で約70人の武士が斬首刑になるまで、都では死刑が行われなかった。その間、約350年間。

●鶴字法度(p70)
 元禄時代、 「鶴」という字が一切使えなくなった。
 自分の娘「鶴姫」を溺愛するあまり、綱吉が発布。「鶴」の付く名前は強制的に改名させられた。
 井原西鶴→井原西鵬、鶴屋→駿河屋(京菓子の老舗)。また、「亀」の付く地名が各地に急増した。
 1709年(宝永6年)、綱吉の死で廃止。

●山田浅右衛門(p84)
 江戸時代の首切り役、処刑者。初代山田浅右衛門貞武から、八代目吉亮まで。
 初代の本来の務めは、将軍家の御佩刀御試御用役だった。彼が試し斬りに使っていたのは、処刑後の死体。
 大名、旗本も入手した刀の試し斬りを依頼。礼金の相場は100両、最高額は200両。
 腕を見込まれ、処刑の首切り役に。町同心の腕では、一撃で首を落とすことができなかった。

●一日二食(p204)
 律令制時代、天皇の食事は一日二食だった。午前10時頃と午後4時頃。清涼殿の部屋に、内膳司(ないぜんし)という役所が料理したものが運ばれた。器は銀製、料理は五つ。銀製の箸とスプーンで食べた。当時の中国風。
 平安遷都から100年、三食に。朝食は正午になり、朝には、清涼殿の奥の小部屋で「朝干飯」と呼ばれる軽食を食べた。銀製から土器に、スプーンは姿を消し、木の箸に。

●徳川将軍は三食(p212)
 将軍の食事は意外と質素。
 朝食……二の膳まで。一の膳は、飯、汁、刺身と酢の物などの向こう付け、平(ひら:煮物)。二の膳は吸い物と焼き物。焼き物は、キスの塩焼きに付け焼きの二種と決まっていた。キス(鱚)は、「喜ばしい魚」と書き、縁起がいいから。毎月1日、15日、28日には、キスの代わりにタイやヒラメの尾頭付き。
 昼食……二の膳付き。タイやヒラメ、カレイ、カツオなどがつく。将軍の所望する献立も。
 夕食……二の膳はつかなかったが、大きな膳を使って品数は多い。雁や鶴、鴨などの鳥料理が出ることもあり、酒も付いた。

●土倉(p246)
 土倉(どそう)……戦国時代、商人のなかで最も大きな財を成した人たち。質屋とサラ金を合体させたような存在。貨幣経済の浸透。寺院の境内や街角に市が立つようになった。京の都だけでも300~400軒が営業していた。

●川越(p249)
 江戸と川越は舟(舟運)で結ばれていた。
 江戸初期、家康を祀った川越東照宮が焼失、再建資材を江戸から運んだことで水運が開通。川越周辺の年貢米を江戸へ運び、帰りに畑作用の肥灰や糠を積むようになった。
 その後、川越が物資の集散地に発展。

●三一侍(p251)
 一番身分の低い武士の給金は、1年で三両一分ほど。
 貧乏侍のことを「三一(さんぴん)侍」とよんだ。

●21回(p269)
 江戸時代、公設売春の吉原は21回も火事に見舞われ、ほぼ丸焼けになった。
 吉原が丸焼けになってもだれも損をしなかった。
 楼主……新たに建物ができるまで、幕府は代替地を用意した。小屋程度の仮営業なのでコストがかからない。しかも、代替地での営業は無税だった。
 商人……木材や調度品など、復興資材で儲かった。
 町火消……形ばかりの消火活動をした火消には、楼主から礼金が払われた。消火活動中、燃え広がるような行動をとる火消もいた?

(2017/1/13)KG

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井伊直虎と謎の超名門「井伊家」
 [歴史・地理・民俗]

井伊直虎と謎の超名門「井伊家」 (講談社+α文庫)

八幡和郎/〔著〕 八幡衣代/〔著〕
出版社名 : 講談社(講談社+α文庫 E35-7)
出版年月 : 2016年11月
ICBNコード : 978-4-06-281701-1
税込価格 : 842円
頁数・縦 : 269p・15cm


 2017年NHK大河ドラマの主人公井伊直虎および井伊家の当主に関する評伝。幕末の大老直弼に関する章が最もおもしろかった。

【目次】
第1章 井伊直虎は信長・秀吉と同世代人
第2章 井伊家は徳川家より名門か
第3章 次郎法師直虎と井伊直政の時代―青春篇
第4章 次郎法師直虎と桶狭間の戦い
第5章 築山殿は井伊家出身で直虎実父の従姉妹か?
第6章 井伊直政とその養母としての直虎
第7章 血脈を守り通した歴代藩主
第8章 「小さな政府」でまずまずの善政
第9章 幕府に井伊大老の仕事を否定され新政府側に
第10章 日本一の城下町彦根と彦根藩領だった世田谷区

【著者】
八幡 和郎 (ヤワタ カズオ)
 評論家、歴史作家、徳島文理大学教授。1951年、滋賀県大津市生まれ。東京大学法学部を経て1975年通商産業省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。パリ産業調査員、通商産業省北西アジア課長、官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、1997年退官。2004年より徳島文理大学大学院教授。2016年より国士舘大学大学院客員教授併任。

八幡 衣代 (ヤワタ キヌヨ)
 1961年、東京都生まれ。日本女子大学住居学科卒業、東京大学大学院修士(建築学)修了後、東京都都市計画局勤務で都市計画、耐震診断(防災)に関わる。90~93年、夫・和郎氏の赴任に伴いパリに居住。大津市、滋賀県男女共同参画審議会委員を歴任し、男女共同参画に関する活動に関わる。

【抜書】
●城下町(p209)
〔 一般に小さな城下町では旅行客を入れて城下を繁栄させたいとか監視もしたいという意向が強く、膳所、桑名、岡崎、浜松、加納などはそうした例です。ですが、大きな藩では、城下の秩序を守るために街道を城下町からバイパスさせる例もあったのです。〕

●朝鮮通信使(p209)
 琵琶湖岸よりの脇街道である朝鮮人街道は、彦根城下を通っている。
 朝鮮人街道……朝鮮通信使が通った。譜代の井伊家が、城下で通信使を接待した。大事な賓客を泊めるための大寺院などの近くを通すため、曲がりくねっている。
 朝鮮通信使……秀吉の朝鮮遠征の後、ほとんど鎖国状態だった日本と朝鮮が、最低限のパイプを維持するために考案した仕組み。〔日本側から見れば朝鮮による一種の朝貢であり、朝鮮からすればそうともいいきれないという、難しい理屈は回避した呉越同舟の奇妙な関係です。〕
 朝鮮の官僚は、科挙があるために、日本の武士などよりはるかに高い教育水準を誇っていた。藩士たちは、朱子学や詩作に関して、熱心に教えを受けた。松平定信は、「教えを請うて馬鹿にされるなどみっともない」として、朝鮮通信使を対馬までしか来させないようにしたので、変則的な外交に終止符がうたれた。

●井伊直弼(p229)
〔 直弼のしかけた勝負が正しい判断だったかどうかは人それぞれで評価は違うでしょう。しかし、①朝廷への大政奉還尊王攘夷、②公武融合から合体、③幕府再強化という3つのシナリオのうち、最後の可能性を試みて失敗したことは、選択肢をひとつ試してみたうえで減らしたという意味で、歴史を一歩前に進めたと肯定的に評価して良いのではないでしょうか。外科手術をするなら早めに思い切ってやらないと意味がないのと同じです。その意味で、直弼は歴史を転換させるための殉教者として、一命を捧げたといえるのではないでしょうか。〕

(2017/1/9)KG

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マンガとイラストでよくわかる一度は考えていただきたい相続対策
 [経済・ビジネス]

マンガとイラストでよくわかる 一度は考えていただきたい相続対策

松岡敏行/著
出版社名 : 清文社
出版年月 : 2016年11月
ISBNコード : 978-4-433-62336-4
税込価格 : 1,728円
頁数・縦 : 160p・21cm


【目次】
第1章 マイナンバーがやってきた!これからどうなる私の生活!?
第2章 実家が空くと何が問題?どうすればいいの?
第3章 最もシンプルな相続税節税法
第4章 相続税節税の王道!現預金のかんたん贈与法
第5章 相続税を劇的に下げる不動産を使った“超”節税法
第6章 所得税も相続税も節税できる不動産管理会社を作ろう
第7章 国税庁がメス これからどうなる?タワーマンション節税
第8章 相続税の現場から本当にあった税務調査のリアル
第9章 円満な相続を実現する家族のための信託と遺言
第10章 自分に合った相続対策で実現する上手な財産の遺し方

【著者】
松岡 敏行 (マツオカ トシユキ)
 税理士。日本で初めて税理士自らマンガを描いた『マンガ 突然の相続』(清文社)を出版。相続対策の重要性を早期に訴え、独自の対策を提案することで定評がある。

【抜書】
●家族型信託(p133)
 所有権……管理、運用、処分する権限。
 受益権……運用、処分で利益を得る権利。
 家族型信託なら、所有権が息子に移っても、受益権を母親に残すことができる。贈与税は、受益権が移った時に課税される。

(2017/1/7)KG

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地図と愉しむ東京歴史散歩 カラー版 地下の秘密篇
 [歴史・地理・民俗]

カラー版 - 地図と愉しむ東京歴史散歩 地下の秘密篇 (中公新書)

竹内正浩/著
出版社名 : 中央公論新社(中公新書 2403)
出版年月 : 2016年10月
ISBNコード : 978-4-12-102403-9
税込価格 : 1,015円
頁数・縦 : 157p・18cm


 東京の地下鉄に関する雑学や、東京の地下に潜む地下壕の存在や、団地の来歴などを集めた、東京の歴史散歩。

【目次】
第1章 深すぎる地下鉄、浅すぎる地下鉄
 銀座線と丸ノ内線
 日比谷線と都営浅草線
 東西線、千代田線、都営三田線
 深すぎる地下鉄、複雑化する乗り継ぎ
第2章 都心の地下壕の話
第3章 怨霊神の系譜
第4章 団地の土地を読み解く
 東京に団地が根づいた理由
 団地の土地の来歴を探る

【著者】
竹内 正浩 (タケウチ マサヒロ)
 1963年、愛知県生まれ。1985年、北海道大学卒業。文筆家。地図や近現代史研究をライフワークとする。

(2017/1/4)KG

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株式会社の終焉
 [経済・ビジネス]

株式会社の終焉

水野和夫/〔著〕
出版社名 : ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版年月 : 2016年9月
ISBNコード : 978-4-7993-1964-2
税込価格 : 1,188円
頁数・縦 : 239p・18cm


 近代の創出した株式会社という仕組みは21世紀に終焉を迎える。グローバル化の進展により「無限の空間」がなくなり、それに代わる「電子・金融空間」での利潤は、社会の発展に貢献しないからだ。
 これからは、ゼロ成長に見合った新たな社会を目指していかなければならない。

【目次】
第1章 株高、マイナス利子率は何を意味しているのか―「資本帝国」の株高vs.「国民国家」のマイナス金利
 国家と国民の離婚
 政府のROE8%超要請
 人件費削減に正当性はあるのか
  ほか
第2章 株式会社とは何か―「無限空間」の株式会社vs.「有限空間」のパートナーシップ
 「世界で最も重要な組織は会社だ」
 古くて新しい法人vs.中世イタリアのパートナーシップ
 最初の株式会社モスクワ会社と国王の事情
  ほか
第3章 21世紀に株式会社の未来はあるのか―より多くの現金配当vs.より充実したサービス配当
 成長、それ自体が収縮を生む
 バブルが多発する「電子・金融空間」
 ショック・ドクトリンと無産階級の増大
  ほか

【著者】
水野 和夫 (ミズノ カズオ)
 1953年生まれ。法政大学教授。77年、早稲田大学政治経済学部卒業。80年、同大学大学院経済学研究科修士課程修了後、八千代証券(国際証券、三菱証券を経て、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社。三菱UFJ証券チーフエコノミストを経て、2010年退社。同年、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)。11年、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)。12年、退官。

【抜書】
●ブレクテアーテ(p59)
 1150~1350年ごろは、中世ヨーロッパのビジネスの黄金時代。カテドラル(大聖堂)が各地につくられ、巡礼者が数多く訪れた。
 封建領主たちは、日常的な取引や売買に使う目的で独自の通貨をつくり、領内に流通させていた。銀の板に刻印をした貨幣。6~8か月ほど流通したら回収され、新しい貨幣を再流通。その際の価値は、旧貨幣100円に対して新貨幣97~98円。1年に換算すると3~6%のマイナス金利。あるいは、地方所得税? 見えない税金。
 こうして集めた金で作られたのが、各地のカテドラル。

●徴税権(p62)
 近代国家である日本は、「租税法律主義」という考え方のもと、徴税権は議会にある。
 しかし、日銀は、国会の議決を経ずに、マイナス金利という実質的な税金を取り始めた。日銀には徴税権はないので、越権行為である。

●国民国家vs.資本帝国(p67)
 20世紀までの金利と株価は、国民国家の「景気」を反映して動いていた。
 しかし、21世紀になると、株価がみているのは「資本」である。20世紀末に誕生した「電子・金融空間」をホームグラウンドとする資本帝国。
 利子率が見ているのは、近代の「地理的・物的空間」に立脚する国民国家の経済。
 金利と株価の乖離。
 円高・株高政策を採用するアベノミクスは、「資本帝国」の政策である。

●モスクワ会社(p83)
 1555年、イギリスの国王メアリーⅠ世によって、モスクワ会社という株式会社が設立された。モスクワ大公国との貿易の独占権を得る「特許会社」。
 モスクワ会社は、「株式共同資本で交易した最初の法人」。
 特許会社……特許状に加え、中世から引き継いだ二つの概念に基づいている。①自由市場で売買可能な株式。②有限責任。二つの概念は、いまの株式会社の概念となっていく。
 モスクワ会社と東インド会社(1600年設立)は、永続資本だった。

●ザ・セイホ(p108)
 1985年のプラザ合意で、円とマルクを切り上げた。
 日本のザ・セイホは、米国債を購入することで、米国の赤字国債をファイナンスしていた。日本の貯蓄は、生命保険会社を通じて、米ウォール街と米財務省へ、そして最終的に米軍需産業へ、流れていた。
 しかし、プラザ合意でドル安になることでザ・セイホが巨額の為替差損をこうむっては、米国債を購入することができなくなる。そこで日本政府が国策として、土地・株式バブルでザ・セイホの株式含み益をかさ上げする必要があった。それが、アメリカの要請による日本の官製バブルの真相。

●オリーヴィ(p116)
 ピエール・ド・ジャン・オリーヴィ、1248-1298。現代の資本の概念に近い考え方をした。
 資本を「所有者がなんらかの可能的利益を生み出すために用いようと固く決意しているもの」と定義。そして、この定義のもと、「『決意』や『目的』によって『資本』と化した貨幣が、あたかも『種子のごとく』生む利益であれば、たとえそれが現時点では存在せず、将来において見込まれているものであっても、それを売買することは正当な行為であり、したがってコンメンダ(=投資貸借)による利益取得も正当である」と主張。
 教会が利子を認める際、正当化する理論となった。

●中世(p120)
〔 今起きているのは、近代の拠って立つ前提、すなわち「無限の空間」を21世紀のグローバリゼーションで前に進んできた結果、これ以上広がらないところまで到達してしまったということです。
 したがって、わたしたちが対話すべき過去とは、アジアにまだフロンティアがあった1930年代の「世界大恐慌」ではなく、「閉じた空間」だった中世なのです。オリーヴィが中世から800年を経て、現在の舞台に呼び戻されたのは、中世と対話しろというメッセージだと考えるべきです。〕

●電子・金融空間(p132)
 貨幣と企業は、「不確実性とその源泉」である。貨幣が安定していなければ、企業は、「地理的・物的空間」の膨張、すなわち市場の拡大に専念できない。ドルが金の裏打ちを喪失した1971年から、「地理的・物的空間」において付加価値を増加させることが難しくなった。
 明日の貨幣価値が分からなくなったために、資本主義は市場の拡大以外のことを考えなければならなくなった。そのため、金融の自由化の元に「電子・金融空間」が創出された。

●近代の3つの原理(p133)
 より速く……1820年以降、蒸気の力を得て「鉄道と運河の時代」がスタートした。
 より遠く……大航海時代に端を発する。
 より合理的に……科学革命が推進。

●立ち止まる(p158)
 〔過去の歴史的経緯をたどっていくと、20世紀の「技術の時代」は17世紀の「科学の時代」からの累積によって築かれたことがわかります。シュミットが16世紀から20世紀のそれぞれの世紀を特徴づけたように、今なすべきことは、21世紀はどんな時代かをまずは立ち止まって考えることです。走りながら考えると、過去4世紀の慣性、すなわち、「より速く、より遠く、より合理的に」が働いて、ITを切り札にした第4次産業革命にすがることになります。
 21世紀は「より速く、より遠く、より合理的に」を追求する「技術の時代」ではありません。21世紀が引き続き「技術の時代」だと信ずるのであれば、少なくとも「よりゆっくり、より近く、より寛容に」を目指す技術でなければなりません。
 マイナス金利とは、立ち止まって冷静に考えなさいというメッセージなのです。〕

●債務国家(p169)
 債務国家……「現実にはまだ存在していない金融資源の投入によって社会的紛争を平和的に解決することを可能にする」国家。金融資源とは、日本の場合、966.8兆円の国債。米国の場合、サブプライムローン、学生ローン。
 「租税国家」から「債務国家」への意向は、1980年以降、先進国共通の現象。1970年代に近代システムが機能不全に陥ったにもかかわらず、歳出・歳入構造が時代の変化に適応しきれていない。
 米国は、1980年以降、「債務国家」となった。国家債務の負担が大きくなると、債務は家計に移し替えられていった。「新自由主義」、「ショック・ドクトリン」(惨事便乗型資本主義)。

●ゼロ成長(p174)
〔 今の日本は、資本係数は世界最大、自然利子率はゼロです。資本が過剰に積み上がって、コンビニエンスな社会、すなわち、いつでもどこでもほしいモノ・サービスが手に入る社会を築いたわけですから、成長を目標にすればその反動のほうが大きくなるはずです。
 ゼロ成長が長期化すれば、国債は利息を生まなくなります。預金者は事実上、ゼロ金利永久国債保持者、もっと極端に言えば、国家に対する出資者となります。
 出資者へのリターンは国家の行う社会保障関連サービスや教育です。日本国家は現金配当をやめて優良なサービス給付国家に変わっていくことを求められているのです。〕

●資本の帝国(p182)
 「資本の帝国」とは、一級市民の株主と二級市民の預金者から成る階級社会。
 国民は平等であるという近代の理念に反するという点で、「反近代」であり、反動勢力。

●エラスムス(p215)
 「より寛容に」は、「より合理的に」の反対概念。
 16世紀は、寛容主義者エラスムス(1466‐1536)の時代と言われていた。カトリックからもプロテスタントからも尊敬を集めていた。しかし、彼をしても三十年戦争を避けられなかった。
 近代合理主義も限界に達した今、私たちがよりどころとすべきは、エラスムス。
 合理性とは、少ないインプットと多くのアウトプットを求めること。それが、人口減とイノベーションの低下を招来している。

(2017/1/4)KG

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