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なぜペニスはそんな形なのか ヒトについての不謹慎で真面目な科学
 [自然科学]

なぜペニスはそんな形なのか ヒトについての不謹慎で真面目な科学
 
ジェシー・ベリング/著 鈴木光太郎/訳
出版社名:化学同人
出版年月:2017年3月
ISBNコード:978-4-7598-1926-7
税込価格:2,700円
頁数・縦:317, 13p・20cm
 
 
 ゲイの進化心理学者による、性、宗教、自殺など、タブーと見られがちな分野に関する「進化論的」エッセー。学術論文を多く引用し、テーマはきわどいが、内容は極めて科学的である。
 
【目次】
1 どうしてぶら下がっているの?その理由
2 自己フェラチオの道(近づきはしたけど、まだまだ)
3 なぜペニスはそんな形なのか?突起の謎
4 早漏のなにが「早過ぎ」?
5 ヒトの精液の進化の秘密
6 あそこの毛―ヒトの陰毛とゴリラの体毛
7 カニバリズムの自然史
8 なぜにきびができるのか?―裸のサルとにきび
9 脳損傷があなたを極端なほど好色にする
10 脳のなかの性器
11 好色なゾンビ―夜間の性器と夢遊
12 マスターベーションと想像力
13 小児性愛と思春期性愛
14 動物性愛
15 無性愛者の謎
16 足フェチ―ポドフィリア入門
17 ゴム偏愛者の物語
18 女性の射出
19 「ファグ・ハグ」―男が好きな男を好きな女
20 女性のオルガスムの謎
21 意地悪の進化―なぜ女の子どうしは残酷なのか?
22 ゲイに道は聞くな
23 抑圧された欲望としてのホモ恐怖
24 失恋、性的嫉妬とゲイ
25 トップかボトムか、それとも
26 プレ同性愛者―性的指向を予言する
27 (日曜だけは)敬虔な信者
28 埋めよ、増えよ―信者の産む子どもの数
29 亡き母の木
30 自殺は適応的か?
31 自殺者の心のなか
32 ヒトラー問題で考える自由意志
33 笑うネズミ
 
【著者】
ベリング,ジェシー (Bering, Jesse)
 PH.D.。1975年アメリカ生まれ。実験心理学者・コラムニストで、『サイエンティフィック・アメリカン』や『スレート』の常連寄稿者。フロリダ・アトランティック大学大学院修了後、アーカンソー大学准教授、ベルファストのクイーンズ大学認知文化研究所のディレクターを経て、現在、ニュージーランドのオタゴ大学サイエンス・コミュニケーション・センターで准教授を務める。
 
鈴木 光太郎 (スズキ コウタロウ)
 新潟大学人文学部教授。専門は実験心理学。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。
 
【抜書】
●遅漏ー高攻撃性仮説(p37)
 社会学者ローレンス・ホン「早漏者生存――早漏の起源について」(1984年)という論文で展開。
 霊長類では、セックスが短時間で終わる種ほど、配偶に関係した行動では攻撃性が低い。
 より早く射精する男性のほうが、危害が加えられるのを避け、より長生きし、その結果高い地位を占め、最も望ましい雌たちを獲得する機会が多くなる。男性の膣内射精の潜時は遺伝する。
 
●精漿の成分(p45)
 ヒトの精液中、精子の割合は1~5%。残りの液を精漿という。
 精漿の成分は、ホルモン、神経伝達物質、エンドルフィン、免疫抑制物質などを含む。
 コルチゾール……愛情を高める作用がある。
 エストロン……気分を高める。
 オキシトシン……気分を高める。
 プロラクチン……自然の抗鬱薬。
 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン……抗鬱薬。
 セロトニン……抗鬱作用のある神経伝達物質。
 メラトニン……催眠物質。
 卵巣刺激ホルモン(FSH)……女性ホルモンの一種。卵巣内の卵胞の成熟を引き起こす。
 黄体形成ホルモン(LH)……女性ホルモンの一種。排卵を誘導し、その卵を排出する。
 
●ケジラミ(p58)
 ヒトの陰毛のケジラミは、ゴリラのケジラミと近縁関係にある。330万年前に分岐。ゴリラの粗い体毛に適応していたので、ヒトの陰毛にちょうど良い居場所を見つけた。
 太古のヒトが、ゴリラを殺して食べていた。ゴリラの死体との接触が、ケジラミの感染をもたらした。
 
●腋臭(p191)
 ゲイは異性愛者とは異なる腋臭を発し、ほかの人間はその匂いを感じ取れる。
 
●日曜効果(p228)
 ハーバード・ビジネス・スクールのディーパク・マルホトラの研究。
 宗教的な人々はチャリティの求めに非宗教的な人々よりもより強く反応するが、それは教会に行ってきた日に限られる。
 
●シェイカー教(p234)
 ドイツの社会学者ミヒャエル・ブルーメの研究。
 シェイカー教徒は、集団内での結婚を妨げたり禁じたりし、代わりに布教活動、外部者の転向や改宗に重点を置いた。「若者のいなくなり始めた共同体は、ほかの若者たちには共同体のミッションが魅力に欠けたものに見えるようになる。こうしてシェイカー教徒の集団は高齢化し、崩壊した」。
 
●オナイダ共同体(p234)
 ニューヨーク州北部のキリスト教コミューン。
 数世代にわたり、オナイダ共同体の医者は、遺伝的健康の観点から注意深く選ばれた男女を結婚させた。生まれた子供は共同体で育てられ、母子のきずなは弱められた。
 人為淘汰によらない子供が生まれるのを避けるため、10代の少年を閉経後の女性とセックスさせた。両者の個人的関係を築く中で、敬虔な年長の女性が若者に重要な宗教的教育を施した。
 大人の男性は、性交中に射精しないようにするテクニックを訓練した。
 30年後にメンバーは数百人に達したが、1881年にこの宗教共同体は崩壊した。
 〔このメンバーはおそらく遺伝的資質に恵まれていたが、その社会的地位は高くなかった。その後、彼らは銀製食器の交易に携わるようになり、いまは企業オナイダとして大成功している。〕
 
●緑の埋葬(p242)
 遺体は防腐剤で処理されることなく、自然保護区に埋められる。
 通常の埋葬方法は、自然破壊を引き起こしている。墓地を作るための広大な土地、防腐保存液、棺用の木材、金属などなど。火葬も同様。一人分の火葬に必要なエネルギーで、7,700kmをドライブできる。
 
●自殺の数式(p251)
 デニス・デカタンザロが1986年に提案した「自己保存と自己破壊の数学モデル」。
 翻訳すると……〔ヒトは自分の直接の繁殖的見込みが低くなった時に、そして同時に、自分が存在し続けることが自分の遺伝的血縁者の繁殖の妨げになって包括適応度を下げると(正しいかどうかはともかく)感じた時に、自殺する可能性がもっとも高い。重要なのは、デカタンザロが、そして彼とは別個に調査を行っている研究者も、この適応モデルを支持するデータを得てきているという点である。〕
 
(2017/7/24)KG
 
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クモの糸でバイオリン
 [自然科学]

クモの糸でバイオリン (岩波科学ライブラリー)  
大崎茂芳/著
出版社名:岩波書店(岩波科学ライブラリー 254)
出版年月:2016年10月
ISBNコード:978-4-00-029654-0
税込価格:1,296円
頁数・縦:114、2p・19cm
 
 
 趣味で(?)クモの糸の研究を始め、バイオリンの弦を作ってしまった研究者のエッセー。この人、なかなかの凝り性で、自分でバイオリンを買って演奏するまでになった。クモは、主にジョロウグモまたはオオジョロウグモの糸を使っているようだ。
 
【目次】
1 クモのことをもっと知りたい
 クモとの出会い
 クモの巣のいろいろ
  ほか
2 クモが繰り出す魔法の糸
 柔らかくて強い
 クモの糸の不思議な構造
  ほか
3 バイオリンに挑戦!賛
 音楽に参戦
 バイオリンを購入
  ほか
4 魔法の糸の音色の秘密
 「よい音」とはなにか
 バイオリンでの音色解析
  ほか
5 音色が世界を駆けめぐる
 学会発表とその反響
 取材対応でヒヤリ
  ほか
 
【著者】
大崎 茂芳 (オオサキ シゲヨシ)
 1946年兵庫県生まれ。大阪大学理学部卒業、大阪大学大学院理学研究科博士課程修了。(株)マイカル商品研究所所長、島根大学教育学部教授、奈良県立医科大学医学部教授を経て、同大学名誉教授。理学博士、農学博士。専門は、生体高分子学。文部科学大臣表彰科学技術賞、日本オーディオ協会顕彰「音の匠」など受賞。
 
【抜書】
●7種類の糸(p7)
 典型的な円網を張るクモは、7種類の腺から別々の糸を出して使い分けている。粘着性の糸は横糸だけ。
 (1)枠糸……巣のフレームとなる。
 (2)繋留糸……巣を木などに固定する。
 (3)縦糸……巣の骨格となる。
 (4)横糸……縦糸のあいだに渡す。粘着性がある。
 (5)こしき……円網の中心にある、クモの生活場所。
 (6)附着盤……牽引糸の尖端を物体に固定するのに使う。
 (7)牽引糸……危険が生じて逃げるときに使う、命綱。
 他に、獲物を取るための捕獲帯や、卵を保護する卵のうもある。
 
●破断応力、弾性率(p23)
 破断応力……糸を引っ張っていき、切れた時の断面積あたりの力の強さ。牽引糸は、ナイロンよりも数倍大きい。
 弾性力……物体を伸ばしたり、圧縮したりする時の変形しにくさを表す指標。ナイロンでは4GPa(ギガパスカル)だが、牽引糸は13GPa。
 つまり、クモの糸は柔らかくて強い。
 
●「2」の安全則(p27)
 牽引糸は、円柱状の細い2本のフィラメントからなっている。
 牽引糸の弾性限界強度は、体重の約2倍。つまり、1本が切れても残りの1本で支えることができる。
 
●250℃(p29)
 牽引糸は250℃以上で分解し始め、300℃で重量が減り、350℃で変色、600℃で完全に分解。
 クモの糸に融点はないが、250℃までは安定な状態。
 合成高分子のポリエチレンの融点は約120℃。
 
●紫外線(p31)
 紫外線のうち、波長の長いUV-Aは、地球の表面に届く紫外線の大部分を占める。波長がもう少し短く、危険なUV-Bは、オゾンホールができると届くようになる。UV-Cは地表には届かない。
 UV-Aを昼行性のジョロウグモの牽引糸に当てると、破断応力は、照射時間が経過するとともに上昇、5時間後に極大、その後、徐々に低下、48時間程度で初期値まで下がる。
 ジョロウグモの糸は、毎晩、半分ずつ張り替えられる。いったん張った糸は、2日後には新しい糸になる。
 夜行性のズグロオニグモの場合、糸の破断応力は照射時間とともに低下するのみ。
 
●バイオリン弦(p66)
 牽引糸によるバイオリン弦の作り方。A線(2番目に高音)の場合。
 (1)多数のオオジョロウグモから巻き取った約100cmの糸3,000本の両端を粘着テープで留め、糸束の状態にして6か月保存。80cmくらいに縮む。
 (2)これを左巻きにねじると73cmの紐ができる。
 (3)同じ紐を3本作り、一緒に右巻きにねじり、65cmの太い紐にする。両端に結びを作り、55cmになる。
 (4)表面を均一にするためにゼラチンに5分間つけ(スキップすることもある )、一晩乾かす。最終的にできた弦の太さは850μm。
 E線は2,000×3本、D線は4,000×3本、G線は5,000×3本。
 
●倍音(p77)
 クモの糸の弦は、スチール弦、ガット弦に比べて、強度の大きい倍音が多数出る。
 スチール弦は、倍音が出るが、強度は小さい。ガット弦は、第2倍音の強度のみが大きい。
 クモの糸では、すべての倍音が比較的大きい。特に第8倍音、第9倍音が大きい。
 
●断面(p81)
 クモの弦の断面は、1本1本の糸の断面が円形から多角形へと大幅に変形。糸と糸の隙間がなくなっている。繊維間の摩擦が大幅にアップし、隙間の多い通常の繊維集合体に比べて弾性率(変形しにくさ)が大幅に上昇。一部の細い繊維が切れても、残りの繊維で支えることができるので、弦そのものが切れにくくなる。
 
(2017/7/22)KG
 
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父と私
 [社会・政治・時事]

父と私 (B&Tブックス)
 
田中眞紀子/著
出版社名: 日刊工業新聞社(B&Tブックス)
出版年月:2017年3月
ISBNコード:978-4-526-07676-3
税込価格:1,728円
頁数・縦:305p・20cm
 
 
 実娘から見た田中角栄。傍から見ていたのでは分からない、角栄の実像が語られる。本書には、志の高い偉大な政治家が立ち現れる。もちろん、身内の身びいきもあるかもしれないが、私たちは、マスコミによって形作られ、ゆがめられた虚像を見ていた可能性も拭い去れない。
 
【目次】
第1章 マコちゃん――幼少期
第2章 お嬢さん――独身時代
第3章 奥さん――結婚
第4章 先生・大臣――衆議院議員になって
第5章 眞子さん――議員バッジを外して以降
 
【著者】
田中 眞紀子 (タナカ マキコ)
 1944年生まれ。早稲田大学第一商学部卒業。衆議院議員に新潟県旧第3区より無所属で初当選。科学技術庁長官、外務大臣、文部科学大臣を歴任。越後交通株式会社代表取締役会長。
 
(2017/7/18)KG
 
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図書館と情報技術 情報検索能力の向上をもめざして 改訂
 [ 読書・出版・書店]

改訂 図書館と情報技術:情報検索能力の向上をめざして
 
岡紀子/著 田中邦英/著 田窪直規/編集
出版社名:樹村房
出版年月:2017年4月
ISBNコード:978-4-88367-274-5
税込価格:2,160円
頁数・縦:153p・26cm
 
 
 司書課程の必修科目「図書館情報技術論」(2単位)のテキスト。1~6章を田中、7~10章を岡が担当。
 
【目次】
第1章 コンピュータの基礎
第2章 ネットワークの基礎
第3章 情報検索と社会・法律
第4章 データベースの仕組み
第5章 サーチエンジンの仕組み
第6章 コンピュータシステムの管理とセキュリティ
第7章 図書館の業務とIT
第8章 図書館と電子資料
第9章 デジタルアーカイブ
第10章 情報検索の理論と方法
  
【著者】
岡 紀子 (オカ ノリコ)
 1975年、京都薬科大学薬学部卒業。住友化学株式会社入社、文献および特許調査、図書運営管理を担当。2012年、同社を定年退職。一般社団法人情報科学技術協会主催。桃山学院大学、近畿大学、佛教大学等で司書課程非常勤講師。
 
田中 邦英 (タナカ クニヒデ)
 1974年、大阪電気通信大学工学部卒業。京都の計算機メーカーに入社、特許データベース構築等を担当。2011年、同社を定年退職。一般社団法人情報科学技術協会主催。桃山学院大学、大阪樟蔭女子大学、近畿大学等で司書課程非常勤講師。
  
田窪 直規 (タクボ ナオキ)
 大阪府生まれ。図書館情報大学大学院博士課程修了。奈良国立博物館仏教美術資料センター研究官を経て、近畿大学教授(司書課程)。博士(図書館情報学)。
  
【抜書】
●RDF(p73)
 RDF: Resource Description Framework。
 シマンテックウェブにおいて、タグとタグとの関係を認識させるための構文。XMLなどを用いて記述。
 基本構文は、主語+述語+目的語で構成。主語は、ユニークにそのものを特定できるID番号、メールアドレス、URLなど。
 例: ≪主語≫ISBN:xxxxxxx → ≪述語≫書名(title) → ≪目的語≫図書館と情報技術
 
(2017/7/15)KG
 
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日本列島創生論 地方は国家の希望なり
 [社会・政治・時事]

日本列島創生論 地方は国家の希望なり (新潮新書)
 
石破茂/著
出版社名:新潮社(新潮新書 712)
出版年月:2017年4月
ISBNコード:978-4-10-610712-2
税込価格:821円
頁数・縦:218p・18cm
 
 
 元地方創成担当大臣による、地方活性化のための新たな「日本列島改造論」。
 
【目次】
はじめに―革命は地方から起きる
地方創生とは何か
補助金と企業誘致の時代は終わった
PDCAとKPIを考えよ
国は人材とデータで後押しをする
外資アレルギーから脱却を
観光はA級を目指すべし
一次産業に戦略を
創生の基点はどこにでも作れる
「おねだり」に未来は無い
官僚は現場で発想せよ
里帰りにどれだけ魅力を付加するか
「お任せ民主主義」との決別を
 
【著者】
石破 茂 (イシバ シゲル)
 1957(昭和32)年生まれ、鳥取県出身。慶應義塾大学法学部卒。86年衆議院議員に全国最年少で初当選。防衛大臣、農林水産大臣等を歴任し、2014年に初代地方創生・国家戦略特別区域担当大臣に就任。
 
【抜書】
●CLT(p117)
 CLT:Cross Laminated Timber。ひき板を繊維方向が直交するように接着した重厚な木造のパネル。マンションや商業施設の壁や床として使われている。ヨーロッパでは、CLTを使った木造10階建て、20階建ての建物が多く建っている。
 
●土佐の森・救援隊(p119)
 200名ほどの隊員たちが、地元の山林の間伐を引き受けるNPO。
 
●島留学(p128)
 島根県海士町の隠岐島前(おきどうぜん)高等学校。中ノ島の島の島外から生徒を集め、島留学をアピールする。寮も作った。
 廃校寸前の高校が2クラスになった。教職員数の関係上、これ以上は増やせない。
 この地域の島は4つとも国立公園に指定されていて、自然が豊か。
 
●北海道おといねっぷ美術工芸高校(p131)
 北海道音威子府村の村立高校。
 昭和50年代、前身にあたる音威子府高校は存立の危機にあった。
 音威子府村は、北海道で最も小さな村で、人口789人(2016年)。面積の8割が森林という特徴を生かした高校づくりを推進。木材の加工、工芸を教育の中心に据えた。
 2002年、校名を「北海道おといねっぷ美術工芸高等学校」に変更し、工芸コース、美術コースの選択制に。2008年から、家具デザインの世界での「先進国」スウェーデンの高校と姉妹校提携制度を導入。
 村外、道外からの生徒を積極的に受け入れ、寄宿舎も作る。全人口の2割弱が学校関係者。「村民運動会」は高校の体育祭も兼ね、高校生が中心となって開催。
 
●やねだん(p139)
 鹿児島県鹿屋市の柳谷集落、通称「やねだん」。人口300人程度の、過疎化、高齢化の進む集落。
 豊島哲郎……地元の高校を卒業後、東京都民銀行に就職。「学歴の壁」にぶつかり、Uターンして養鰻業を始める。1996年、50代で公民館長となる。
 「行政に頼らないむら興し」を目指す。まず、耕作放棄地を使ったサツマイモの栽培。土着菌を用いた上質のサツマイモ作りに成功。焼酎にすると、高品質のものができ、今では韓国に輸出。これを目玉にした「やねだん」という居酒屋がソウルにできる。
 自主財源ができ、高齢者にボーナスを支給。住民みんなが仕事を分担し、儲けをみんなで分配。90歳を超えても
土壌菌を繁殖させるために土壌をかき回すといった仕事がある。
 地域リーダー養成のための「やねだん故郷創生塾」を開講。
 2007年からは、芸術家に創作場所として空き家を提供する試みを始める。芸術祭も毎年開かれるようになる。
 地元の民家を改造した宿泊施設「迎賓館」をつくる。広い日本間で素泊まり3,000円ほど。
 
●海士町(p143)
 隠岐島前高校のある海士町。山内道雄町長。
 もともとNTTの営業マンだったが、52歳の時、退職して母親の介護のために帰島。当時の町長に声をかけられ、島で立ち上げた観光関連の第三セクターを手伝う。町長の新しい試みに対して議会から横やりが入るので、思い切って町議に立候補して当選。
 2期目に、町長が引退。地元の建設会社の社長に懇願されて町長に立候補、助役を破って当選。社長の言葉「もう公共事業に頼る時代は終わった」。
 島の人たちも、当時の島の財政難に危機を感じていた。当選後、自身の給与30%カットを実施。 役場の課長、一般職員、町議、教育委員らも報酬のカットを申し出る。
 浮いたお金を「未来への投資に」使う。島留学もその一つ。ほかに、5億円を投じてCASの設備を購入。
 CAS(Cells Alive System)……細胞が生きたままの状態で冷凍する技術。
 海士町では、魚介類、隠岐牛を、CASを用いて商品化して全国に出荷している。
 現在、岩ガキの養殖を推進することで、新たな名物を作り出している。
 
●丸亀町商店街(p154)
 香川県高松市の「シャッター商店街」。地元の青年会の人たちが話し合い、商店の2階部分を強制的に賃貸させるように決める。
 とにかく、2階部分を診療所や保育所などに貸し出すことにより、町の機能をなるべく商店街に凝縮するようにした。
 
●中央官庁の地方移転(p166)
 移転の目的は、(1)東京への一極集中を避ける、(2)地方を活性化する。全国の都道府県(首都圏一都三県以外)に、来てほしい中央官庁機関の希望を募る。その希望に国が有効な反証ができなければ移転させる。
 文化庁を全面的に京都府に移転。もっとも文化財が多い土地。
 消費者庁の政策の企画・立案部門を徳島県に移転。消費者行政の先進地であり、ブロードバンド環境も全国屈指。
 総務省統計局の一部を和歌山県に移転。
 
●CCRC構想(p185)
 CCRC:Continuing Care Retirement Community、生涯活躍のまち。
 「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療介護が必要なときには継続的なケアを受けることができるような地域づくり」を目指す。
 楡周平『プラチナタウン』(祥伝社文庫)のイメージ。子育て世代と老人たちが共存する新しいタイプのコミュニティが描かれている。2008年の刊行。
 
●ユーカリが丘(p203)
 千葉県佐倉市のベッドタウン。山万が開発。1970年代末、住民の高齢化も視野に入れ、 「環境にやさしい街づくり」を標榜して宅地開発。交通機関やホテルなども含め、住民にとって有益な設備を整える。
 山万は、建売を買った夫婦が高齢化した際、手広になった戸建て住宅を買い戻し、駅近くのマンションを斡旋。戸建てはリフォームして若い夫婦に販売。
 開発業者が、「売ったらお終い」ではなく、町にずっと関わり続けている。
 
(2017/7/15)KG
 
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国家の矛盾
 [社会・政治・時事]

国家の矛盾 (新潮新書)
 
高村正彦/著 三浦瑠麗/著
出版社名:新潮社(新潮新書 703)
出版年月:2017年2月
ISBNコード:978-4-10-610703-0
税込価格:842円
頁数・縦:236p・18cm
 
 
 2015年秋に成立した平和安全法制を主導した立役者のひとりである高村正彦と、国際政治学者の三浦瑠麗による対談。法政成立の舞台裏や、日本の安全保障、米国との関係などを真摯に語る。
 
【目次】
第1章 安全保障の矛盾
 安全保障は「確率のゲーム
 戦前の「翼賛勢力」に似ているのはどっち?
 「原罪としての敗戦」という考え方
  ほか
第2章 外交の矛盾
 「法理」はキープし、「当てはめ」は柔軟に
 米軍駐留の必要性と国民感情の相克
 対北朝鮮政策に「正解」は存在しない
  ほか
第3章 政治の矛盾
 小選挙区制が生んだ「政治主導」
 「政高党低」か「党高政低」か
 筋金入りの平和主義者・河本敏夫
  ほか
 
【著者】
高村 正彦 (コウムラ マサヒコ)
 1942(昭和17)年生まれ。衆議院議員。自由民主党副総裁。弁護士。外務大臣、防衛大臣、法務大臣などを歴任。
 
三浦 瑠麗 (ミウラ ルリ)
 1980(昭和55)年生まれ。国際政治学者。東京大学政策ビジョン研究センター講師株式会社山猫総合研究所代表。博士(法学)。
 
【抜書】
●武力行使3要件(p27、高村)
 平和安全法案で、武力行使をする際の要件。
 (1)我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること。
 (2)これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと。
 (3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。
 
●サラミスライス(p45、三浦)
 中国は、南シナ海や東シナ海で、サラミを薄く切るように少しずつ勢力を拡張させ、既成事実を積み重ねていく「サラミスライス戦略」をとっている。
 
●芦田修正論(p56、編集部注)
 憲法9条第1項は、武力による威嚇や武力の行使を「国際紛争を解決する手段」としては放棄する、と定めている。第2項では、「前項の目的を達するため」に戦力を保持しない、と定めている(この部分は芦田均が加えた)。
 したがって、我が国が当事国である国際紛争を解決するために武力による威嚇や武力の行使に用いる戦力の保持は禁止されている。しかし、それ以外の目的での戦力の保持は認められている、という考え方。すなわち、個別的または集団的を問わず自衛のための実力の保持や、国際貢献のための実力の保持は禁止されてない、という考え方。
 
●本音(p97、三浦)
〔 ただ、世界全体で人々が本音で話したいというふうに思っていますよね。イギリス、フィリピン、大阪でもそうだった。トランプ現象ももちろんそうです。彼らは何に対して戦ったのか。大阪では大阪自民党であり、そこと結託していた官僚でした。トランプは不法移民問題に対して何もできていないワシントンのエスタブリッシュメント。フィリピンのドゥテルテが衝いたのは、大農場主の保守派が組織犯罪グループとなあなあにやってきたことに対する国民の不満です。現状を何らかの形で変えたいと思いている人々の、変えてこなかった人たちに対する怒りがあちこちで噴出している。2009年に、それまでほとんど経験を蓄積してこなかった政党に政権を与えて大失敗した日本は、その経験から学んで穏健化したのかもしれないですが。〕
 
(2017/7/15)KG
 
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マタギ聞き書き その狩猟民俗と怪異譚
 [歴史・地理・民俗]

マタギ聞き書き: その狩猟民俗と怪異譚
 
武藤鉄城/著
出版社名:河出書房新社
出版年月:2017年4月
ISBNコード:978-4-309-22699-6
税込価格:1,944円
頁数・縦:221p・20cm
 
 
 著者の死から13年後、1969年に慶友社より刊行された『秋田マタギ聞書』(常民文化選書4)の再刊。資料編の大方と索引を割愛してある。
 40人ほどのマタギから聞いた話を採録している。聞いた話をそのまま収録しているようであり、随所にマタギ言葉に重複があったり、同じテーマで異なる伝説を紹介していたりして、整理された内容ではないが、現役のマタギの姿を伝える貴重な資料である。
 
【目次】
秋田県 仙北郡
 鈴木政治郎さん―上桧木内村戸沢 旧二月九日、四ツ前には山を鳴らすな
 門脇寛一郎翁―上桧木内村戸沢 鹿の獅子舞
 門脇竜治郎さん―上桧木内村戸沢 ササラの笠納め
  ほか
秋田県 由利郡・北秋田郡
 小野勘太郎翁―由利郡直根村百宅 スノ祝い
 佐藤正夫氏―北秋田郡大阿仁村根子 売薬行商
 佐藤永太郎翁―北秋田郡大阿仁村根子 南無アブランケン、ソワカ
  ほか
又鬼資料
 菅江真澄翁著書から
 伊藤為憲著書から
 マタギの語源
 
【著者】
武藤 鉄城 (ムトウ テツジョウ)
 1896年、秋田市生まれ。民俗学者、考古学者、郷土史家。慶應義塾大学中退。角館尋常高等小学校代用教員、東北帝国大学奥羽資料調査部嘱託、朝日新聞地方通信員、角館時報主筆などを歴任するかたわら、角館を中心とする民俗調査を進めた。1956年逝去。秋田魁文化章、秋田県体育功労章受章。
 
【抜書】
●マタギの語源(p216)
 著者の考察。
 インドの屠殺業者として卑しめられた賤民マータンガ(男)/マータンギ(女)の名称から出ているのではないか?
 水を乞うた釈迦の弟子の阿難に、自分はマータンギであると卑下したプラクリチの話から考え付いた。
 釈迦も、自分がそのマータンガ/マータンギの属するチェーンドラの種であると言った。日本でも、日蓮が自らを穢民と称した。
 日本語でとなえる呪文の最後に、「アビラウンケン(阿毘羅吽欠)」(胎蔵界大日如来真言にある)「ソワカ(蘇波河)」(その効力を呼ぶ)を唱える。
 《他の語源説》
  (1)獣を殺して食うから、鬼の次に恐ろしい又鬼(またぎ)。
  (2)山の峰を跨いで行くからマタギ。(仙北郡雲沢村)
  (3)木の股から生まれたから。(仙北郡中川村)
 
(2017/7/11)KG
 
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日本と世界がわかる最強の日本史
 [歴史・地理・民俗]

日本と世界がわかる 最強の日本史 (扶桑社新書)
 
八幡和郎/著
出版社名:育鵬社(扶桑社新書 236)
出版年月:2017年3月
ISBNコード:978-4-594-07626-9
税込価格:950円
頁数・縦:326p・18cm
 
 
 著者による日本史解釈の書。独自の視点で書かれていて興味深い。同意できる部分と、疑問に感じる部分とあるが。
 
【目次】
第1章 日本人・日本語・日本神話
第2章 邪馬台国・大和朝廷・神功皇太后
第3章 仏教伝来・聖徳太子・大化の改新
第4章 荘園制・摂関制・武士の登場
第5章 幕府・元寇・禅宗文化
第6章 天下統一・南蛮船・朱子学
第7章 黒船来航・明治維新・大東亜共栄圏
第8章 占領・高度成長・バブル崩壊
 
【著者】
八幡 和郎 (ヤワタ カズオ)
 1951年滋賀県生まれ。東京大学法学部卒業。通商産業省(現経済産業省)入省。フランスの国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任後、現在、徳島文理大学大学院教授を務め、作家、評論家としてテレビなどでも活躍中。
 
【抜書】
●脱解尼師今(p27)
 新羅の建国伝説には、1世紀に活躍した第4代新羅王の脱解尼師今(だっかいにしきん)がタバナ国出身と書いてある(『三国史記』)。タバナ国=但馬か丹波?
 逆に、皇室が新羅から来たという伝承は、日本にも半島にもない。
 新羅が国らしくなるのは3世紀以降。日本の神々の時代には未開地だった。
 
●神武東征(p30)
 神武東征は、中世に生まれた伝説。
 皇国史観の時代の教科書には、神武天皇が大軍勢を率いて日向国の美々津から船出して大和を征服し、日本を建国したと書いてある。しかし、「記紀」にはそんな記述はない。
 『日本書紀』や『古事記』は、大和を統一し、吉備や出雲まで勢力圏に入れた崇神天皇を実質的な大和朝廷の創始者としている。その先祖の磐余彦(神武天皇)は、日向出身で、少人数で故郷を出奔し、吉備など各地を経て現在の橿原市と御所市あたりに小さな領地を得たらしい、と書かれているだけ。
 
●日本国家の成立(p42)
 日本国家の誕生は、3世紀。崇神天皇による大和の統一と吉備・出雲の征服。
 仲哀天皇と神功皇后によって筑紫地方が大和朝廷の支配下に入り、日本統一が達成された。
 
●大友皇子(p59)
 日本人の作として知られる最古の漢詩は、大友皇子(弘文天皇)のもの。『懐風藻』に収められている。
 
●平清盛(p112)
 11世紀中ごろ、日宋貿易において大宰府の裁量が広がり、博多に定住した華僑の力も大きくなった。
 神崎庄の支配人や太宰大弐として 、日宋貿易による莫大な富を握ったのが平忠盛・清盛。平家の天下は、日宋貿易で得た富の賜だった。
 さらに大輪田泊(おおわだとまり:神戸)を整備し、福原を都とすると、南宋の首都である臨安(杭州)と直接に向かい合うことになるはずだった。
 
●江戸時代のエコロジー(p199)
 江戸時代にリサイクルが盛んだったのは、単にモノ不足だったため。薪や柴を大量に使わなければならず、山ははげ山だらけで、洪水が頻発した。
 インフラの整った江戸に住めるということが特権。その住民の生活水準や自由度が高いというのは、現代の平壌そっくり。体制の安定のために、首都の住民を特権階級化するのは賢いやり方
 
東京誕生日(p235)
 東京は、誕生日のない首都。東京遷都はなし崩し的になされた。正式に京都から東京へ遷都するということを宣言しなかった。
 1868年1月、大久保利通「大坂遷都建白書」。車駕親征ということで天皇が大坂に約40日間滞在、陸海軍の閲兵、英国公使パークスの引見。
 東西二都論が有力に。7月17日に「車駕東遷」の詔書。10月13日、江戸城に入城、東京城と改称。
 戊辰戦争が終わっていたので、いったん、京都に戻る。
 1869年3月28日、再び東京入城、太政官を置く。
 その後、京都をどうするかということになり、モスクワで戴冠式を行うロシアの例に倣い、京都で即位礼を行うことで決着。しかし、大正と昭和の即位礼は京都で行われたが、平成では反故にされた。
 
●植民地(p275)
〔 朝鮮や台湾は「植民地」だったのかについては、国際法上の用語ではないのでなんとでもいえますが、イギリスのインド統治のような意味での植民地ではありません。イギリスのアイルランド領有とかロシアのポーランド領有にちかいものです。
 朝鮮統治は、もともとの目的が経済面ではなく国防上の要請に基づいたものだったので、一方的に収奪したようなことはありません。〕
 
(2017/7/7)KG
 
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進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来
 [自然科学]

進化は万能である:人類・テクノロジー・宇宙の未来

マット・リドレー/著 大田直子/訳 鍛原多惠子/訳 柴田裕之/訳 吉田三知世/訳
出版社名:早川書房
出版年月:2016年9月
ISBNコード:978-4-15-209637-1
税込価格:2,916円
頁数・縦:454p・20cm
 
 進化論は、人間の、いや生物の、宇宙のすべての現象を説明することができる原理である、という説の立証。
 
【目次】
プロローグ 一般進化理論
第1章 宇宙の進化
第2章 道徳の進化
第3章 生物の進化
第4章 遺伝子の進化
第5章 文化の進化
第6章 経済の進化
第7章 テクノロジーの進化
第8章 心の進化
第9章 人格の進化
第10章 教育の進化
第11章 人口の進化
第12章 リーダーシップの進化
第13章 政府の進化
第14章 宗教の進化
第15章 通貨の進化
第16章 インターネットの進化
エピローグ 未来の進化
 
【著者】
リドレー,マット (Ridley, Matt)
 サイエンス・ライター。1958年、英国ノーサンバーランド生まれ。オックスフォード大学モードリン・カレッジを首席で卒業後、同大で博士号(動物学)を取得。その後“エコノミスト”誌の科学記者を経て、英国国際生命センター所長、コールド・スプリング・ハーバー研究所客員教授を歴任。英国王立文芸協会フェロー、オックスフォード大学モードリン・カレッジ名誉フェロー。
 
大田 直子 (オオタ ナオコ)
 翻訳家。東京大学文学部社会心理学科卒。
 
鍛原 多惠子 (カジハラ タエコ)
 翻訳家。米国フロリダ州ニューカレッジ卒業(哲学・人類学専攻)。
 
柴田 裕之 (シバタ ヤスシ)
 翻訳家。1959年生。早稲田大学・Earlham College卒業。
 
吉田 三知世 (ヨシダ ミチヨ)
 英日・日英の翻訳業。京都大学理学部物理系卒業。
 
【抜書】
●ソヴィエト=ハーヴァード幻想(p14)
 (訳注)科学的知識を適用できる範囲を過大に見積もる、往々にしてトップダウン的思考法のこと。
 ナシーム・タレブ……この幻想は、鳥に対して飛翔の講義を行い、その講義のおかげで鳥が空を飛ぶ技能を獲得したと考えること。
 
●スカイフック(p19)
 空から物体を吊るしているという、架空の装置。
 第一次世界大戦のさなか、同じところに1時間とどまれと命じられた偵察機のパイロットが、ムカついて皮肉を込めて返した言葉の中で使われた。「本機はスカイフックに吊るされてなどいない」。
 哲学者のダニエル・デネットは、生物は知性ある設計者が存在する証拠だという主張の比喩に「スカイフック」という言葉を当てた。スカイフックの対極にあるのが「クレーン」。
 スカイフック……解決法、説明、計画を高いところからこの世界に押しつける。
 クレーン……解決、説明、パターンが地面から上に向かって出現するのを助ける。自然淘汰はクレーン。
 〔西洋思想の歴史は、世界を設計や計画の産物として説明するスカイフック装置であふれている。〕
 
●ルクレティウス(p20)
 エピクロス、BC341年生まれ。物理的世界、生物世界、人間社会、そして倫理も、すべて自然に起こった現象で、神の介入も温和な君主も過保護国家(訳注:いわゆる「福祉国家」の蔑称)もなしに説明できると考えた。エピクロスは、先人のギリシャ哲学者デモクリトスに倣い、世界は、霊や体液(フモール)などではなく、空虚と原子という2種類のものだけからなると考えた。原子は自然の法則に従う。あらゆる現象は、自然な原因の結果である。
 エピクロスの書いたものは失われたが、300年後、ローマの詩人ティトゥス・ルクレティウス・カルス(BC49年ごろに没)が、長大で未完の詩『物の本質について』のなかでエピクロスの思想をよみがえらせ、詳しく記した。
 ルクレティウスの詩は、魔術、神秘主義、迷信、宗教、そして神話のすべてを拒絶し、純粋な経験主義を貫く。
 
●ルクレティウス的逸脱(p29)
 ルクレティウスは、予測可能な運動しかしない原子からなる世界の中では、どう見ても人間には備わっていると思われる自由意志という能力について説明できなかった。これを説明するために、ご都合主義的に「原子たちは時折予想外に逸脱した(スワープ)振る舞いをするに違いない。なぜなら、そのようなことができるように神が原子を作られたから」と述べた。 ⇒ ルクレティウス的逸脱。
 〔ある思索家が、自分がどうにも理解できないことを説明するために、逸脱して行き当たりばったりにスカイフックを仮定する行為をすべて「逸脱(スワープ)」と呼ぶことにする。〕
 
●蝶の羽ばたき(p35)
 気象学者のエドワード・ローレンツが、初期条件に極めて敏感な系である気象系は予測不可能だと気づき、1972年の講演のタイトルで、「ブラジルの蝶の羽ばたきはテキサスに竜巻を起こすか?」と問いかけた。
 
●政治と商業(p50)
 人間社会で次第に暴力が減少し、上品になった理由。スティーヴン・ピンカー『暴力の人類史』で、ノルベルト・エリアスが1939年に発表した説に目を向ける。
 政治が次第に中央集権化し、各地の軍事指導者から国王と宮廷に政治の中心が移ると、人々は戦士よりは廷臣のように振る舞わざるを得なくなった。その結果、暴力が減り、みな上品になった。私的復讐によって正すべき不正行為とされていた殺人は、罰するべき犯罪として、国家に処理が委ねられた。
 商業が盛んになり、見ず知らずの人との間での金銭に基づくやり取りが増えるにつれ、人々は次第に周囲の人間を、餌食の候補ではなく取引のパートナーの候補と考えるようなってきた。店主を殺すことなど論外。共感や自制、道徳が第二の天性となった。
 
●エンペドクレス(p79)
 エンペドクレス、BC490年頃にシチリアに生まれた哲学者。自然淘汰に関する言及あり。ルクレティウスも、エンペドクレスからこの考えを受け継いだ。
 生き延びる動物が「自然発生的に適宜組織化されるのに対して、そうした適切なつくられ方をしなかった動物は消滅して二度と復活することがない」。
 しかし、あまり重要だと思わなかったのか、彼はこの考えをさらに追究することはなかった。
 
●単婚とキリスト教(p123)
 単婚の復活が、キリスト教の大きな柱だった。
 キリストは、結婚とは二つの魂が一つの「肉体」になる神聖な状態だと考えたとされる。
 古代末期に単婚が復活して喜んだのは、夫を独占できるようになった上層の女性、そしてセックスが可能になった大勢の下層の男性だった。初期キリスト教が広く普及したのは、これら底辺の男性の心を動かしたことが大きい。
 
●友愛組合(p156)
 イギリスで、19世紀末から20世紀初頭にかけて、友愛組合が普及した。1910までに、手工業労働者の四分の三が組合員になっていた。
 友愛組合……小規模な地域の労働者組合。組合員のために健康保険に入り、医者や病院による治療を取り決める。いい仕事をしない医者は外されるので、患者に直接責任を負っていた。医者同士の競争のおかげで給料は適度に抑えられたが、それでも高給取りだった。労働者にとっては、直接では手が出ないような高価な治療も利用できるので心強い。自発的かつ組織的に出現し、会員数は15年で倍増した。
 国家抜きの社会主義制度。
 コンバインと呼ばれる民間の保険会社で組織されたカルテルは、友愛組合を敵視した。
 医者の組合であるイギリス医師会も同様。高慢な医者たちは、価格競争を強いられたり、労働者組合の意のままになるのを嫌がった。
 友愛組合反対派が、財務大臣のデイヴィッド・ロイド・ジョージに働きかけ、「国民保険」制度を導入させることに成功した。ロイド・ジョージは、税収を使って医者の最低賃金を倍にし、富を貧しい労働者から裕福な医者に移転させた。
 診療費が高額になったため、友愛組合の制度が弱体化し始める。
 1948年には医療産業が国有化され、国家がすべての医療を提供するようになり、医療は無料で受けられるようになる。
 アダム・スミス「同業者が集まると、楽しみと気晴らしのための集まりであっても、最後にはまず確実に社会に対する陰謀、つまり価格を引き上げる策略の話になるものだ」。
 
●ムーアの法則(p166)
 1965年、コンピュータの専門家ゴードン・ムーアが発見した。
 〔一枚のシリコンチップの上の「組み込まれた機能ごとの部品数」が時間によってどう変化するかを表す小さなグラフを描いた。データ点はたった五つしかなかったが、彼はそこから、一枚のチップ上のトランジスタの数は十八カ月ごとに倍増しているようだと導き出した。〕
 アメリカの発明家で人工知能研究の第一人者レイ・カーツワイルは、「ムーアの法則」がシリコンチップが存在する以前から成り立っていることを発見。コンピュータの能力を、今とは異なる技術が使われていた20世紀初頭にまで外挿。100ポンドで買える計算能力は100年にわたって、二年ごとに倍増してきた。
 
●ハイパーリンク(p175)
 インターネットのハイパーリンクの数は、2010年までに脳のシナプスの数とほぼ同じになった。
 現在、インターネット内で行われている呟きのうちかなりの割合が、人間ではなくいろいろな装置から発せられている。
 インターネットを停止させることは、事実上不可能な状況になっている。
 
特許(p178)
 特許とは、もともと発明者に報酬として独占的な利益を与えるためのものではなく、彼らが発明を人々と共有するよう奨励するためのものだった。
 アイディアを共有するという目的と同じくらい、独占を擁護してライバルたちを抑止する目的を重視している。このことが、発明を阻止している。
 
●クルアーン(p342)
 ムハンマドの経歴については、630年代にキリスト教徒があるサラセン人預言者についてごく短く触れている以外、存命中には何も書かれていない。詳細な伝記はみな、死後200年が過ぎてから書かれた。
 クルアーンには、膨大な量のキリスト教とユダヤ教とゾロアスター教の伝承が含まれている。新約聖書よりも頻繁に、聖母マリアに言及している。死海文書に見られるいくつかの概念にも触れている。
 クルアーンの記述は、パレスチナの周辺やヨルダン川流域につながるものが多い。部族名、土地柄、アラビアの砂漠には見つからない家畜やオリーブ、その他の動植物など。
 クルアーンの舞台は、ローマ帝国の領域のすぐ外にあるアラビア北部。追放されたユダヤ教徒とキリスト教徒の異端説の温床で、ペルシアのゾロアスター教と混じり合ったものもいくつかあった。アラビア半島の中央に結び付くものは何もない。
〔 奇跡を受け入れない人間にとってはむしろ、クルアーンは七世紀の新しい文書ではなく、古い文書の編纂書であることがほぼ確実であるように思える。それは、多くの小川が流れ込む湖のようなもので、何世紀にもわたる一神教の融合と議論から現れ出てきた一つの芸術作品であり、古代ローマとササン朝ペルシアの勢力を押しのけ、拡大しつつある、新たに統合されたアラビア人の帝国で、一人の預言者の手によって最終的な形を取ったのだ。トム・ホランドの生々しい言葉を借りれば、古代の首を刎ねたギロチンではなく、むしろ古代の苗床から咲いた花、ということになる。クルアーンには、ローマ帝国のプロパガンダの断片や、キリスト教の聖人の物語、グノーシス派の福音書、古代ユダヤの書物の一部が含まれている。〕
 
●ドル化(p376)
 パナマ、エクアドル、エルサルバドルの三国は、自国の通貨に米ドルを使うことにした。経済を「ドル化」した。
 米連邦準備銀行がこの三か国の銀行を救済する可能性はないので、最後の貸し手がいないことになる。
 しかし、その結果は良好。モラルハザードがなくなり、ドル化した三か国の銀行は慎重に振る舞っているので、パナマの銀行は非常に安定しているとみなされるようなった。
 最後の貸し手がいないことが、「制度の回復と安定性に貢献している」と国際通貨基金(IMF)が明言している。
 
●Mペサ(p388)
 ケニアでは、携帯電話の通話時間ポイントを一種の通貨としてメールで互いに融通し合うようになった。 ⇒ Mペサ
 サファリコムやボーダフォンのような通信会社が、ユーザーに便利な仕組みにした。携帯電話に振り込んだり、代理店経由で引き出したり、携帯電話同士で送金したりすることができる。
 ケニア人の三分の二がMペサを通貨として使っている。GDPの40%以上が、この通貨で流れている。
 成功の主な要因は、規制機関が閉め出されていて、システムが進化するにまかされていること。
 
●ドルイド(p365)
 1787年、トマス・ウィリアムズは、ウェールズ北西部アングルシー島のパリス山にあった自分の採鉱所で銅貨を作り始める。 ⇒ ドルイド
 ドルイドは、ペニーと交換できる合法的な「代用貨幣(トークン)」。片面に頭巾をかぶって顎髭を生やしたドルイド(訳注:古代ケルト宗教の祭司、オークの賢者の意)の肖像をオークの葉の輪で囲んだ浅浮彫が施されていた。もう一方の面には、「PMC」(パリス・マイン・カンパニー) の文字と、周縁に「持参した人に1ペニーを支払うことを約束します」と銘が刻まれていた。盛り上がった縁の側面に「ロンドン、リヴァプール、またはアングルシーにて、要求に応じて」と記されていたので、この硬貨を偽造したり不正に削ったりするのが難しかった。
 工場主はドルイドで賃金を払うようになり、地元の店主もペニーの代わりに受け取った。完全な民間通貨の普及。
 1794年、64人の商人が初めて硬貨を発行。1797年、600トンを超えるトークンが流通していた。
 当時、イギリスではクローネやシリングの銀貨や、ペニーや半ペニーの銅貨が不足していた。王立造幣局は、18世紀のあいだ、貨幣の鋳造量を増やすことをこばんでいた。中国で銀の価値が高かったため、銀貨は溶かされて東方に出荷された。
 
(2017/7/4)KG
  
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