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進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来
 [自然科学]

進化は万能である:人類・テクノロジー・宇宙の未来

マット・リドレー/著 大田直子/訳 鍛原多惠子/訳 柴田裕之/訳 吉田三知世/訳
出版社名:早川書房
出版年月:2016年9月
ISBNコード:978-4-15-209637-1
税込価格:2,916円
頁数・縦:454p・20cm
 
 進化論は、人間の、いや生物の、宇宙のすべての現象を説明することができる原理である、という説の立証。
 
【目次】
プロローグ 一般進化理論
第1章 宇宙の進化
第2章 道徳の進化
第3章 生物の進化
第4章 遺伝子の進化
第5章 文化の進化
第6章 経済の進化
第7章 テクノロジーの進化
第8章 心の進化
第9章 人格の進化
第10章 教育の進化
第11章 人口の進化
第12章 リーダーシップの進化
第13章 政府の進化
第14章 宗教の進化
第15章 通貨の進化
第16章 インターネットの進化
エピローグ 未来の進化
 
【著者】
リドレー,マット (Ridley, Matt)
 サイエンス・ライター。1958年、英国ノーサンバーランド生まれ。オックスフォード大学モードリン・カレッジを首席で卒業後、同大で博士号(動物学)を取得。その後“エコノミスト”誌の科学記者を経て、英国国際生命センター所長、コールド・スプリング・ハーバー研究所客員教授を歴任。英国王立文芸協会フェロー、オックスフォード大学モードリン・カレッジ名誉フェロー。
 
大田 直子 (オオタ ナオコ)
 翻訳家。東京大学文学部社会心理学科卒。
 
鍛原 多惠子 (カジハラ タエコ)
 翻訳家。米国フロリダ州ニューカレッジ卒業(哲学・人類学専攻)。
 
柴田 裕之 (シバタ ヤスシ)
 翻訳家。1959年生。早稲田大学・Earlham College卒業。
 
吉田 三知世 (ヨシダ ミチヨ)
 英日・日英の翻訳業。京都大学理学部物理系卒業。
 
【抜書】
●ソヴィエト=ハーヴァード幻想(p14)
 (訳注)科学的知識を適用できる範囲を過大に見積もる、往々にしてトップダウン的思考法のこと。
 ナシーム・タレブ……この幻想は、鳥に対して飛翔の講義を行い、その講義のおかげで鳥が空を飛ぶ技能を獲得したと考えること。
 
●スカイフック(p19)
 空から物体を吊るしているという、架空の装置。
 第一次世界大戦のさなか、同じところに1時間とどまれと命じられた偵察機のパイロットが、ムカついて皮肉を込めて返した言葉の中で使われた。「本機はスカイフックに吊るされてなどいない」。
 哲学者のダニエル・デネットは、生物は知性ある設計者が存在する証拠だという主張の比喩に「スカイフック」という言葉を当てた。スカイフックの対極にあるのが「クレーン」。
 スカイフック……解決法、説明、計画を高いところからこの世界に押しつける。
 クレーン……解決、説明、パターンが地面から上に向かって出現するのを助ける。自然淘汰はクレーン。
 〔西洋思想の歴史は、世界を設計や計画の産物として説明するスカイフック装置であふれている。〕
 
●ルクレティウス(p20)
 エピクロス、BC341年生まれ。物理的世界、生物世界、人間社会、そして倫理も、すべて自然に起こった現象で、神の介入も温和な君主も過保護国家(訳注:いわゆる「福祉国家」の蔑称)もなしに説明できると考えた。エピクロスは、先人のギリシャ哲学者デモクリトスに倣い、世界は、霊や体液(フモール)などではなく、空虚と原子という2種類のものだけからなると考えた。原子は自然の法則に従う。あらゆる現象は、自然な原因の結果である。
 エピクロスの書いたものは失われたが、300年後、ローマの詩人ティトゥス・ルクレティウス・カルス(BC49年ごろに没)が、長大で未完の詩『物の本質について』のなかでエピクロスの思想をよみがえらせ、詳しく記した。
 ルクレティウスの詩は、魔術、神秘主義、迷信、宗教、そして神話のすべてを拒絶し、純粋な経験主義を貫く。
 
●ルクレティウス的逸脱(p29)
 ルクレティウスは、予測可能な運動しかしない原子からなる世界の中では、どう見ても人間には備わっていると思われる自由意志という能力について説明できなかった。これを説明するために、ご都合主義的に「原子たちは時折予想外に逸脱した(スワープ)振る舞いをするに違いない。なぜなら、そのようなことができるように神が原子を作られたから」と述べた。 ⇒ ルクレティウス的逸脱。
 〔ある思索家が、自分がどうにも理解できないことを説明するために、逸脱して行き当たりばったりにスカイフックを仮定する行為をすべて「逸脱(スワープ)」と呼ぶことにする。〕
 
●蝶の羽ばたき(p35)
 気象学者のエドワード・ローレンツが、初期条件に極めて敏感な系である気象系は予測不可能だと気づき、1972年の講演のタイトルで、「ブラジルの蝶の羽ばたきはテキサスに竜巻を起こすか?」と問いかけた。
 
●政治と商業(p50)
 人間社会で次第に暴力が減少し、上品になった理由。スティーヴン・ピンカー『暴力の人類史』で、ノルベルト・エリアスが1939年に発表した説に目を向ける。
 政治が次第に中央集権化し、各地の軍事指導者から国王と宮廷に政治の中心が移ると、人々は戦士よりは廷臣のように振る舞わざるを得なくなった。その結果、暴力が減り、みな上品になった。私的復讐によって正すべき不正行為とされていた殺人は、罰するべき犯罪として、国家に処理が委ねられた。
 商業が盛んになり、見ず知らずの人との間での金銭に基づくやり取りが増えるにつれ、人々は次第に周囲の人間を、餌食の候補ではなく取引のパートナーの候補と考えるようなってきた。店主を殺すことなど論外。共感や自制、道徳が第二の天性となった。
 
●エンペドクレス(p79)
 エンペドクレス、BC490年頃にシチリアに生まれた哲学者。自然淘汰に関する言及あり。ルクレティウスも、エンペドクレスからこの考えを受け継いだ。
 生き延びる動物が「自然発生的に適宜組織化されるのに対して、そうした適切なつくられ方をしなかった動物は消滅して二度と復活することがない」。
 しかし、あまり重要だと思わなかったのか、彼はこの考えをさらに追究することはなかった。
 
●単婚とキリスト教(p123)
 単婚の復活が、キリスト教の大きな柱だった。
 キリストは、結婚とは二つの魂が一つの「肉体」になる神聖な状態だと考えたとされる。
 古代末期に単婚が復活して喜んだのは、夫を独占できるようになった上層の女性、そしてセックスが可能になった大勢の下層の男性だった。初期キリスト教が広く普及したのは、これら底辺の男性の心を動かしたことが大きい。
 
●友愛組合(p156)
 イギリスで、19世紀末から20世紀初頭にかけて、友愛組合が普及した。1910までに、手工業労働者の四分の三が組合員になっていた。
 友愛組合……小規模な地域の労働者組合。組合員のために健康保険に入り、医者や病院による治療を取り決める。いい仕事をしない医者は外されるので、患者に直接責任を負っていた。医者同士の競争のおかげで給料は適度に抑えられたが、それでも高給取りだった。労働者にとっては、直接では手が出ないような高価な治療も利用できるので心強い。自発的かつ組織的に出現し、会員数は15年で倍増した。
 国家抜きの社会主義制度。
 コンバインと呼ばれる民間の保険会社で組織されたカルテルは、友愛組合を敵視した。
 医者の組合であるイギリス医師会も同様。高慢な医者たちは、価格競争を強いられたり、労働者組合の意のままになるのを嫌がった。
 友愛組合反対派が、財務大臣のデイヴィッド・ロイド・ジョージに働きかけ、「国民保険」制度を導入させることに成功した。ロイド・ジョージは、税収を使って医者の最低賃金を倍にし、富を貧しい労働者から裕福な医者に移転させた。
 診療費が高額になったため、友愛組合の制度が弱体化し始める。
 1948年には医療産業が国有化され、国家がすべての医療を提供するようになり、医療は無料で受けられるようになる。
 アダム・スミス「同業者が集まると、楽しみと気晴らしのための集まりであっても、最後にはまず確実に社会に対する陰謀、つまり価格を引き上げる策略の話になるものだ」。
 
●ムーアの法則(p166)
 1965年、コンピュータの専門家ゴードン・ムーアが発見した。
 〔一枚のシリコンチップの上の「組み込まれた機能ごとの部品数」が時間によってどう変化するかを表す小さなグラフを描いた。データ点はたった五つしかなかったが、彼はそこから、一枚のチップ上のトランジスタの数は十八カ月ごとに倍増しているようだと導き出した。〕
 アメリカの発明家で人工知能研究の第一人者レイ・カーツワイルは、「ムーアの法則」がシリコンチップが存在する以前から成り立っていることを発見。コンピュータの能力を、今とは異なる技術が使われていた20世紀初頭にまで外挿。100ポンドで買える計算能力は100年にわたって、二年ごとに倍増してきた。
 
●ハイパーリンク(p175)
 インターネットのハイパーリンクの数は、2010年までに脳のシナプスの数とほぼ同じになった。
 現在、インターネット内で行われている呟きのうちかなりの割合が、人間ではなくいろいろな装置から発せられている。
 インターネットを停止させることは、事実上不可能な状況になっている。
 
特許(p178)
 特許とは、もともと発明者に報酬として独占的な利益を与えるためのものではなく、彼らが発明を人々と共有するよう奨励するためのものだった。
 アイディアを共有するという目的と同じくらい、独占を擁護してライバルたちを抑止する目的を重視している。このことが、発明を阻止している。
 
●クルアーン(p342)
 ムハンマドの経歴については、630年代にキリスト教徒があるサラセン人預言者についてごく短く触れている以外、存命中には何も書かれていない。詳細な伝記はみな、死後200年が過ぎてから書かれた。
 クルアーンには、膨大な量のキリスト教とユダヤ教とゾロアスター教の伝承が含まれている。新約聖書よりも頻繁に、聖母マリアに言及している。死海文書に見られるいくつかの概念にも触れている。
 クルアーンの記述は、パレスチナの周辺やヨルダン川流域につながるものが多い。部族名、土地柄、アラビアの砂漠には見つからない家畜やオリーブ、その他の動植物など。
 クルアーンの舞台は、ローマ帝国の領域のすぐ外にあるアラビア北部。追放されたユダヤ教徒とキリスト教徒の異端説の温床で、ペルシアのゾロアスター教と混じり合ったものもいくつかあった。アラビア半島の中央に結び付くものは何もない。
〔 奇跡を受け入れない人間にとってはむしろ、クルアーンは七世紀の新しい文書ではなく、古い文書の編纂書であることがほぼ確実であるように思える。それは、多くの小川が流れ込む湖のようなもので、何世紀にもわたる一神教の融合と議論から現れ出てきた一つの芸術作品であり、古代ローマとササン朝ペルシアの勢力を押しのけ、拡大しつつある、新たに統合されたアラビア人の帝国で、一人の預言者の手によって最終的な形を取ったのだ。トム・ホランドの生々しい言葉を借りれば、古代の首を刎ねたギロチンではなく、むしろ古代の苗床から咲いた花、ということになる。クルアーンには、ローマ帝国のプロパガンダの断片や、キリスト教の聖人の物語、グノーシス派の福音書、古代ユダヤの書物の一部が含まれている。〕
 
●ドル化(p376)
 パナマ、エクアドル、エルサルバドルの三国は、自国の通貨に米ドルを使うことにした。経済を「ドル化」した。
 米連邦準備銀行がこの三か国の銀行を救済する可能性はないので、最後の貸し手がいないことになる。
 しかし、その結果は良好。モラルハザードがなくなり、ドル化した三か国の銀行は慎重に振る舞っているので、パナマの銀行は非常に安定しているとみなされるようなった。
 最後の貸し手がいないことが、「制度の回復と安定性に貢献している」と国際通貨基金(IMF)が明言している。
 
●Mペサ(p388)
 ケニアでは、携帯電話の通話時間ポイントを一種の通貨としてメールで互いに融通し合うようになった。 ⇒ Mペサ
 サファリコムやボーダフォンのような通信会社が、ユーザーに便利な仕組みにした。携帯電話に振り込んだり、代理店経由で引き出したり、携帯電話同士で送金したりすることができる。
 ケニア人の三分の二がMペサを通貨として使っている。GDPの40%以上が、この通貨で流れている。
 成功の主な要因は、規制機関が閉め出されていて、システムが進化するにまかされていること。
 
●ドルイド(p365)
 1787年、トマス・ウィリアムズは、ウェールズ北西部アングルシー島のパリス山にあった自分の採鉱所で銅貨を作り始める。 ⇒ ドルイド
 ドルイドは、ペニーと交換できる合法的な「代用貨幣(トークン)」。片面に頭巾をかぶって顎髭を生やしたドルイド(訳注:古代ケルト宗教の祭司、オークの賢者の意)の肖像をオークの葉の輪で囲んだ浅浮彫が施されていた。もう一方の面には、「PMC」(パリス・マイン・カンパニー) の文字と、周縁に「持参した人に1ペニーを支払うことを約束します」と銘が刻まれていた。盛り上がった縁の側面に「ロンドン、リヴァプール、またはアングルシーにて、要求に応じて」と記されていたので、この硬貨を偽造したり不正に削ったりするのが難しかった。
 工場主はドルイドで賃金を払うようになり、地元の店主もペニーの代わりに受け取った。完全な民間通貨の普及。
 1794年、64人の商人が初めて硬貨を発行。1797年、600トンを超えるトークンが流通していた。
 当時、イギリスではクローネやシリングの銀貨や、ペニーや半ペニーの銅貨が不足していた。王立造幣局は、18世紀のあいだ、貨幣の鋳造量を増やすことをこばんでいた。中国で銀の価値が高かったため、銀貨は溶かされて東方に出荷された。
 
(2017/7/4)KG
  
〈この本の詳細〉


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