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デジタル・ジャーナリズムは稼げるか メディアの未来戦略
 [ 読書・出版・書店]

デジタル・ジャーナリズムは稼げるか―メディアの未来戦略
ジェフ・ジャービス/著 夏目大/訳 茂木崇/監修・解説
出版社名:東洋経済新報社
出版年月:2016年6月
ISBNコード:978-4-492-76225-7
税込価格:2,376円
ファイル容量:2.0MB


 紙媒体でのジャーナリズムが厳しさを増すネット社会において、ジャーナリストはいかに「稼ぐべきか」、ニュースサイトはどうあるべきかを論じる。

【目次】
第Ⅰ部 関係
 第1章 『マス』は存在しない
 第2章 コンテンツ対サービス
 第3章 プラットフォームとしてのニュース
 第4章 エコシステムとネットワーク
 第5章 報道機関とコミュニティとの関係
 第6章 ジャーナリストの役割

第Ⅱ部 形式の問題
 第7章 記事は死んだ、記事万歳
 第8章 ニュースにいかに価値を付加するか
 第9章 キュレーション
 第10章 ニュースとデータ
 第11章 モバイル時代のニュース
 第12章 テレビニュースの再発見
 第13章 意外な技術の応用

第Ⅲ部 ビジネスモデル
 第14章 ここまでのまとめ
 第15章 デジタル・ファーストの先
 第16章 効率化:何を削り、何を残すか
 第17章 今後のニュース・ビジネスのあり方
 第18章 ニュース・エコシステム
 第19章 マスメディア神話の崩壊
 第20章 ネイティブ広告は敵か味方か
 第21章 有料の壁
 第22章 パトロンの是非
 第23章 情報の価格設定のパラドックス
 第24章 リンク・エコノミーとクレジット権
 第25章 価値の評価基準
 第26章 未来への投資

【著者】
ジャービス,ジェフ (Jarvis, Jeff)
 ニューヨーク市立大学大学院ジャーナリズム学科教授。同大学院では、起業ジャーナリズム・タウ・ナイト・センターを率いてもいる。メディア事業、ジャーナリズムの未来に関する論客として注目を集めており、ジャーナリズム、ニュース配信の最新の形態や、メディアとコミュニティとの新たな関係などについて頻繁に発言をしている。スタートアップの企業や旧来メディア、公的組織などに助言をする機会も多い。2007年から2014年までの間は、ダボスで開催される世界経済フォーラムにおいて、「世界のメディア・リーダー100人」のうちの一人に連続して選出されている。

夏目 大 (ナツメ ダイ)
 1966年、大阪府生まれ。同志社大学文学部卒業。大手メーカーにSEとして勤務したあと、翻訳家に。現在、翻訳学校フェロー・アカデミーの講師も務める。

茂木 崇 (モギ タカシ)
 東京工芸大学専任講師。東京大学大学院博士課程修了。専門はマス・コミュニケーション論、アーツ・マネジメント論。研究テーマはニューヨークのメディア・エンタテインメント産業。特に、メディア産業の経営戦略、『ニューヨーク・タイムズ』の歴史、イマーシブ・シアターの演出について研究。メディア企業のコンサルティングにも従事。

【抜書】
●人間関係ビジネス
 〔私は、ジャーナリズムが今後、「人間関係ビジネス」になっていくべきであるということを主張する。そうなることが、新時代のビジネス戦略の基礎となると考えている。〕

●重要な情報
〔 ジャーナリストには、どの情報が重要なのか、何を信じればいいのかを知らせる役目もある。真偽のわからない噂が流れた時に、詳しい調査をして事実は果たしてどうなのかを確かめる、というのも大事な仕事だ。物語や図表やイラスト、映像などを駆使して、難しい情報を理解しやすいものに変えることもジャーナリストならできる。〕

●主唱者
〔 私はジャーナリストは何かの主唱者であるべきだと考えている。主唱者にならないのなら、それはもはやジャーナリズムではないとまで言いたい。何かの原理を代表して、あるいは民衆を代表して主張すること、それが真のジャーナリズムではないだろうか。ジャーナリストには、何をどう報道するかの判断が必ず求められる。つまり、「民衆が何を知るべきか」を決める必要がある、ということだ。これはまさに主唱者のすることではないだろうか。ジャーナリストの多くは、民衆の利益になると信じてこうした判断をしているだろう。〕

●新聞の普及率
 1950年……125%
 2013年……37%

(2017/8/25)EB

〈この本の詳細〉
honto: https://honto.jp/ebook/pd_27888162.html
e-hon: http://www.de-hon.ne.jp/digital/bin/product.asp?psku=20000033447388

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Suicaが世界を制覇する アップルが日本の技術を選んだ理由
 [経済・ビジネス]

Suicaが世界を制覇する アップルが日本の技術を選んだ理由 (朝日新書)
 
岩田昭男/著
出版社名:朝日新聞出版(朝日新書 616)
出版年月:2017年5月
ISBNコード:978-4-02-273716-8
税込価格:778円
頁数・縦:203p・18cm
 
 
 2016年9月16日に発売されたiPhone7/7Plusにおいて、アップルペイ(Apple Pay)に日本が加わり、Suicaが使えるようになった。iPhoneにフェリカを採用したのである。それはフェリカの国際標準化を見据えた取り組みであった。
 読み取り速度も速く、優れた機能を有するものの、ガラパゴス化と揶揄されたSuica、そしてフェリカが世界を席巻するかもしれない。その舞台裏に迫る。
 
【目次】
プロローグ iPhoneにSuicaが載った日
第1章 日本初のIC乗車券Suica誕生
第2章 Suica躍進 エキナカ戦略と相互利用の拡大
第3章 翳りゆくSuica ガラパゴスという汚名
第4章 起死回生!アップルペイ上陸
第5章 黒船襲来に揺れるクレジットカード業界
第6章 確立されるアップル幕藩体制
第7章 電子決済三国志 グーグルとVISAの逆襲
エピローグ 世界に広がる「Suica経済圏」
 
【著者】
岩田 昭男 (イワタ アキオ)
 1952年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、同大学院修士課程修了。月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活躍するジャーナリスト。セミナー講師も数多く務める。
 
【抜書】
●Suica(p28)
 Suica=Super Urban Intelligent Card。「スイスイ行けるICカード」という意味が込められている。
 ぺんぎんのきゃらくたーとともに2011年11月に登場。
 自動改札が日本で初めて導入されたのは、1967年。阪急電鉄が北千里駅に設置。
 JR東日本が首都圏の各駅に自動改札機を設置し始めたのは1990年。JRと私鉄各線との相互連絡や直通運転が多いため、乗車券の情報をやり取りするシステムの開発に時間がかかった。
 
●手数料(p54)
 クレジットカードの手数料……決済額が小さいコンビニ、ファーストフード店などは1~2%程度。回収不能となる可能性が高い居酒屋、キャバクラやスナックなどでは5~7%。
 Suicaショッピングは、少額決済の店が多いので、2~3%程度が中心?
 
●PiTaPa(p62)
 PiTaPa=Postpay IC for "Touch and Pay"。大阪市交通局、阪急電鉄、阪神電車、能勢電鉄、北大阪急行電鉄等で構成された「スルッとKANSAI」協議会が運営している。
 フェリカが使われているが、ポストペイ(後払い)方式を採用。そのため、Suicaなどとの全国相互利用への参加は、2013年と遅れた。
 後払いの理由は、意思表示がはっきりしている関西人の特殊事情による。残高不足で下車時に扉が閉まったりすると、たちまちクレームとなる。残高不足と説明しても納得してもらえない。10円から改札に入れるようにして、料金は後日引き落としとした。
 後払いのため、クレジットカードと同様に入会審査が必要となる。それが敬遠され、なかなか利用者が増えなかった。結果的に関西のICカード文化の発展を阻害する要因の一つとなった?
 
●サイバネ規格(p65)
 磁気方式の切符や改札機は、1963年設立の日本鉄道サイバネティクス協議会によって規格が定められていた。サイバネ規格。
 JR東日本がSuicaを開発する際、同協議会の元で全国の鉄道事業者が集まり、技術やサービス内容をすり合わせて規格を決めていった。2000年3月にICカードに関するサイバネ規格を策定。
 各社がすべてこの規格に準拠していたので、ICカードの相互利用が可能になった。
 2004年、相互利用の開始に伴い、事業者間の運賃の精算を行う株式会社ICカード相互利用センターが設立された。
 
●NFC(p74)
 NFC=Near Field Communication:近距離無線通信技術。
 非接触型ICカードの国際標準規格として認定を受けているのは、「タイプA」「タイプB」(ISO/IEC14443,15693)。
 タイプA……フィリップス社などが開発したマイフェアという技術がもとになっている。CPUを搭載せず、メモリだけを持ったカード。低コストで大量生産可能。使い捨てテレホンカードや各会員カードに使用。「タスポ」にも採用。
 タイプB……モトローラ社などによって開発され、CPUとメモリを装備。アメリカをはじめとして広く使われ、日本では運転免許証やマイナンバーカードなど、行政部門での導入が進んでいる。
 タイプA/タイプBを指してNFCと呼ぶことも多い。
 フェリカも国際規格としての標準化を目指していたが、見送られた。2003年、通信規格の部分のみISO標準として認められた。
 
●iD、クイックペイ(p127)
 電子マネー決済の草創期から始まったサービスで、後払い方式のサービス。2005年に携帯電話(ガラケー)のおサイフケータイ上でサービスが始まり、2011年にはAndroidのスマートフォンにも対応。アップルペイでも採用された。
 iD……NTTドコモと三井住友カード。発行枚数2,259万枚(本書発行時。以下同様)。
 QUICPay(クイックペイ)……JCBとトヨタファイナンス。467万枚。
 Suica(5,704万枚)、楽天Edy(1億枚超)、WAON(6,140万枚)などに比べると少ない。
 
●クレジットカード(p134)
 国際ブランド……世界中で使えるクレジットカードの決済ネットワークを運営する会社。VISA、マスターカード、アメリカン・エキスプレス、ダイナース・クラブ、JCB、ディスカバー(米国)、中国銀聯の7社。
 クレジットカードの発行や、加盟店の管理・開拓は、国際ブランドと契約したクレジットカード会社(三井住友カード、三菱UFJニコス、など)や銀行(海外では銀行が主となる)が行う。
 イシュア―……カード発行を行うクレジットカード会社。
 アクワイアラー……加盟店業務を行うクレジットカード会社。
 日本では、通常イシュアーがアクワイアラーを兼ねている。JCBは、国際ブランドも含めた三者すべてを兼ねている。
 
●市場(p141)
 2017年3月31日、日本銀行が発表した「決済動向(2017年2月)」。
 Suica、SUGOCA、ICOCA、Kitaca、PASMOの交通系電子マネーと、楽天Edy、nanaco、WAONを合わせた8つの電子マネーの決算金額(2016年)が、5兆1436億円となった。前年比10.8%増。決算件数51億9200万件も前年比11%増。
 クレジットカードの年間利用額は約50兆円。
 少額決済は電子マネー。1000円以下の金額なら電子マネーで決済する人はクレジットカードで決済する人の2倍以上。電子マネーの1件当たりの決済金額は991円。
 
●アップルの専制(p147)
 アップルペイをめぐり、「あまりのアップルの専制ぶりには呆れてものが言えなかった。これでは、まるで植民地ではないか」という声が上がっている。秘密主義や権威主義が目に付く。
 アップルペイに参加する日本のクレジットカード会社にテレビCMを作るよう求めた。制作費はカード会社持ち、内容には厳しく介入。
 
●アップルペイの幕藩体制(p152)
 幕府の天領……JR東日本、ビューカード(JR東日本の完全子会社)。Suica。
 親藩大名……NTTドコモ、au、ソフトバンク。携帯電話の三大キャリア。
 老中、大老……iD(NTTドコモ、三井住友カード)、クイックペイ(JCB、トヨタファイナンス)。iPhoneでクレジットカードを使うときに必要になる。
 譜代大名(関が原以前からの恩顧の大名)……オリコ、イオン、クレディセゾン。サービス開始時にアップルペイ対応に選ばれたカード会社。
 外様大名……ジャックス、ライフカード、など。アップルペイ開始以降に選ばれた中堅規模のカード会社。今後増える見込み。
 自社のクレジットカードとアップルペイのコラボCMを打つことが許されているのは、いまのところ譜代大名以上。
 
●ペイウェーブ(p176)
 VISAが開発したNFC対応の電子マネー。欧米など、日本以外の国では決済ツールとして定着している。
 2016年12月、GoogleとVISAが提携してアンドロイドペイがスタート 。参加したカード会社から手数料を取らない。その代わり、利用者の消費行動に関するデータを収集・分析し、ユーザーに提供する情報と広告の精度をさらに高めるために利用。
 アップルペイは、カード会社から手数料を取るが、消費行動のデータを収集しない。
 
(2017/8/24)KG
 
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栄西 日本人のこころの言葉
 [哲学・心理・宗教]

日本人のこころの言葉 栄西
 
中尾良信/著 瀧瀬尚純/著
出版社名:創元社
出版年月:2017年6月
ISBNコード:978-4-422-80071-4
税込価格:1,296円
頁数・縦:206p・18cm
 
 
 臨済宗の開祖、栄西の残した言葉と事跡をたどる。
 
【目次】
言葉編
 伝統を受け継ぐ
 新しい教えを伝える
 戒律によって身を慎む
 心身を養う
生涯編
 略年譜
 栄西の生涯
 
【著者】
中尾 良信 (ナカオ リョウシン)
 1952年、兵庫県生まれ。駒澤大学仏教学部卒業、同大学院仏教学専攻博士後期課程満期退学。曹洞宗宗学研究所を経て、花園大学文学部仏教学科教授。専門は日本中世禅宗史。
 
瀧瀬 尚純 (タキセ ショウジュン)
 1975年、大阪府生まれ。花園大学文学部仏教学科卒業後、同大学院仏教学専攻博士後期課程単位取得満期退学。現在、花園大学国際禅学研究所研究員、東洋大学東洋学研究所客員研究員。
 
【抜書】
●即身是仏(p16)
 黄檗希運、唐代の禅僧。弟子から「仏とはどういうものでしょうか」と問われ、「心そのものが仏である(即身是仏)」と答えた。
 黄檗希運……臨済義玄の師。福州高安県に黄檗山を開創(『日本大百科全書』より)。
 
●道璿(p19)
 日本の禅の嚆矢。736年(天平8年)、唐僧の道璿(どうせん)がインド層の菩提僊那(ぼだいせんな)とともに来朝し、奈良の大安寺に僧院を設けた。
 行表(ぎょうひょう)和尚がここで禅を授けられえた。
 行表は、最澄の出家の師。唯識と同時に禅も学んだ。最澄はその後、唐に留学し、「円・戒・禅・密」の四宗(ししゅう)の教えや法を受け継いで帰国。
 
●虚庵(p40)
 2度目の入宋の時、インド行きを諦めた栄西は、天台山万年寺で虚庵懐敞(きあんえしょう)に師事し、禅を学ぶ。
 
●不立文字(p64)
 禅宗において達磨の教えとされる四字四句。禅の法門。
 不立文字(ふりゅうもんじ)……文字によらず。
 直指人心(じきしにんしん)……じかに人々の持つ仏心を指し示す。
 見性成仏(けんしょうじょうぶつ)……本来の自己・自分が釈尊と同じ存在であることに気づくことで、覚者・仏となる。見性=仏の本性を見ること。
 教外別伝(きょうげべつでん)……経典に説かれた教えを文字だけで理解するのではなく、その真意を直接とらえなければならない。
 
●能忍(p73)
 大日房能忍……生没年不詳。栄西と同時期に活動。天台宗の僧でありながら、自ら禅修行を行い、ひとりで悟りに達したと確信を得る。摂津に三法寺を開創、達磨宗と呼ばれる禅の教団を展開する。中国の育王山に住する拙庵徳光(せったんとっこう)のもとに弟子を派遣し、自らの悟りの境地を確認させた。
 1194年(建久3年)7月5日、能忍および栄西は、比叡山の訴えにより朝廷から布教活動の停止を命じられた。
 
●歯磨き(p145)
 栄西は、『出家大綱』にて、義浄三蔵『南海寄帰内法伝』を引用し、口中を清潔にすることの重要性を力説する。
 歯ブラシの作り方も示す。指十二本を並べた長さの楊枝を、片方の端を刀のような形に削り、もう一方の端はよく噛んで筆のようにする、と説明。刀のようにするのは、舌の汚れを掻き落すため。
 道元も、口中清浄に言及している。『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』の「洗面」巻に、「刮舌の方法は栄西僧正が伝えている」とある。また、入宋の際の見聞として、当時の中国で楊枝を用いて口を清潔にすることが忘れられていると嘆く。「出家者にしても在家者にしても、口臭がはなはだしいことは、二、三尺離れていても臭くて耐えがたい。ずいぶん偉いと言われている僧でも、口をすすいだり舌をこすりけずったり、楊枝を噛んで口を清潔にする方法が、きちんと定められていることを知らない」と書いている。
 
●一日一食(p154)
 栄西の定めた規則では、1日1食となっていた。釈尊以来の仏教の伝統。
 釈尊の時代、出家者は午前中、在家信者宅などを回って托鉢し、集めたものを正午ごろに食べ、午後からは瞑想などの修行に集中した。
 ただし、禅院では朝に粥を食べ、昼頃に食事をとるようになっていく。粥は、正式な食事ではなく、簡素な「虫押さえ」として捉えられていた。『興禅護国論』「第八、建立の支目の門」にも、「明け方に粥を食し、正午に飯を取る」とある。
 
●脊振山系(p163)
 栄西は、宋から茶樹を持ち帰り、脊振(せふり)山系(福岡県と佐賀県の県境)に植えたと伝えられている。
 『喫茶養生記』では、喫茶に関する医学的な知識だけでなく、摘み取りから精製・保存にいたるまで、詳細に語っている。
 
(2017/8/24)KG
 
〈この本の詳細〉


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心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで
 [自然科学]

心を操る寄生生物 :  感情から文化・社会まで
キャスリン・マコーリフ/著 西田美緒子/訳
出版社名:インターシフト
出版年月:2017年4月
ISBNコード:978-4-7726-9555-8
税込価格:2,484円
頁数・縦:323p・20cm


 近年、研究が進む寄生生物。単に宿主から栄養を窃取するだけではなく、宿主の脳神経に影響を及ぼして行動を操る姿を紹介する。
 人間の文化の発展も、寄生生物と無縁ではなかった?

【目次】
第1章 寄生生物が注目されるまで
第2章 宿主の習慣や外見を変える
第3章 ゾンビ化して協力させる
第4章 ネコとの危険な情事
第5章 人の心や認知能力を操る
第6章 腸内細菌と脳のつながり
第7章 空腹感と体重をコントロールする
第8章 治癒をもたらす本能
第9章 嫌悪と進化
第10章 偏見と行動免疫システム
第11章 道徳や宗教・政治への影響
第12章 文化・社会の違いを生み出す

【著者】
マコーリフ,キャスリン (McAuliffe, Kathleen)
 サイエンスライター。『ディスカバー』誌の寄稿編集者。多くのメディアに科学記事を執筆し、数々の賞を受賞。年間の最も優れた科学記事を掲載するアンソロジー『ベスト・アメリカン・サイエンス・ライティング』にも選ばれている。

西田 美緒子 (ニシダ ミオコ)
 翻訳家。

【抜書】
●神経寄生生物学(p11)
 神経寄生生物学(neuroparasitology)。寄生生物が宿主に与える影響を研究する。神経科学者、寄生生物学者が中心だが、心理学、免疫学、人類学、宗教研究、政治学といった多彩な分野からの研修参入が増えている。

●ハリガネムシ(p40)
 ハリガネムシは、主にコオロギに(そして、バッタやカミキリムシにも) 寄生。コオロギの体内で成虫になる。内臓を食い尽くしたところで、 コオロギの視覚を操作し、光を好むように仕向け、夜中、水に飛び込ませる。
 ハリガネムシはコオロギの体から抜け出し、水中で交尾。メスが卵を産み、孵化して幼虫になる。幼虫は、蚊の幼虫に遭遇し、微小なシスト(嚢子)となってその体内に隠れる。
 蚊が成虫になって陸上に上がり、コオロギに食べられる。すると、休眠中だったシストがコオロギの体内で活動を開始し、最終的には伸ばせばコオロギの3~4倍(7~8cm)の長さを持った成虫に成長する。

●トキソカラ(p123)
 イヌ回虫、ネコ回虫の二つの種がある。体長15cmほどになる。ネコ回虫は、まだあまり解明されていない。
 イヌ回虫の幼虫は、動きが速く、体内のさまざまな器官に侵入する。メスが妊娠すると、胎盤を横切ったり母乳に潜り込んだりして子どもに感染する。腸に進んだ回虫はそこで成虫に育ち、卵を産み、糞となって体外に放出される。
 ヒトに感染したトキソカラは、幼虫のままで、成虫になることはない。しかし、腸から肝臓、肺、目、脳などに侵入する。感染しても、失明や発作などの神経症状が起きることは稀である。
 しかし、最近の研究で、トキソカラは、認知障害を引き起こす可能性が指摘されている。学業成績、多動性、散漫性、など。

●プロバイオティクス(p139)
 ヨーグルトなどに含まれている有用菌。

●動物たちの害虫駆除(p168)
 ネズミの仲間……目が覚めている時間の三分の一を毛づくろいに費やす。毛づくろいを禁じられたマウスには、60倍ものシラミがたかる。
 アオサギ……足元を飛び回る蚊を、1時間に3,000回もつついている。80%、蚊の被害を減らすことができる。
 アジアゾウ……木の枝を折り、余分な葉を取り除いて鞭の形にし、ハエたたきとして使う。
 ガゼル、インパラ……自分の歯を櫛のように使って毛からダニをこすり落とす。1日に2,000回。ダニの数は二十分の一に減る。
 「プログラムされた毛づくろい」。ガゼルとインパラは、1時間に何回か、体にダニがいなくても毛づくろいをする。ダニは、動物が触ろうと思っても触れない頭や尻に移動するために、同じ場所を通るので、規則正しくダニの通り道をこすってきれいにする。
 害虫を駆除しないと……。アブは、馬の血を1日に約500ccも吸い取ることができる。ガゼルやインパラは、血をいっぱい吸って膨らんだダニがたった5、6匹とりついただけで逃げ足が鈍り、捕食者の餌食になる。ウシバエは、ウシの1年あたりの体重増加を20~70kgも減らす可能性がある。

●予防接種、2%のリスク(p175)
 1匹のアリが命にかかわる菌類に感染すると、コロニーの仲間が駆けつけてその体を舐め、ごく少量の病原体を取り込む。自然の予防接種。菌のため、それらのアリの2%は死んでしまうが、他は、免疫力を高めることができる。
 アフリカ北部の人々は、天然痘にかかった人のかさぶたをとって、健康な人の皮膚につけた小さな傷に刷り込む。それが原因で2%は命を失ったが、天然痘による死亡率を25%引き下げた。

●睡眠(p186)
 新しい理論によると、睡眠は、普段目を覚まして活動を維持するために使っている資源を、免疫系に切り替えるために進化したとされる。
 免疫細胞は猛烈な速度で栄養分を費やす。顆粒球は細胞を2、3日ごとに入れ替える。
 哺乳動物26の種で睡眠習慣を調査。1日の睡眠時間は、ヒツジ3.8時間~ハリネズミ17.6時間。睡眠時間が長い種ほど免疫機能も高く、血液中を循環している免疫細胞の数が多い。寄生生物の感染も少なかった。

●行動免疫システム(p224)
 自分が感染の危険にさらされていることに気づくと、自然に心に沸き上がり、なるべく病原体に触れないような方法で行動に駆り立てる思考と感情。感染から身を守るための嫌悪に基づいた幅広い反応も含まれる。また、人間だけでなく、動物の行動も含まれる。

●権威主義(p246)
 嫌悪は、見知らぬものと接触して寄生生物に感染することに対する恐怖の反応。
 すぐに嫌悪を感じてしまう性質を持つ人は、保守的な政治的見解を抱きやすく、犯罪に対して厳格で、権威主義的傾向を持っている。

●前島(p251)
 本能的な嫌悪(あふれたトイレを見た時、ゴキブリを食べることを想像した時、など)で現れる嘔吐反応は、脳の古い部分である前島が関連している。
 前島は、道徳的な嫌悪感(他者の残酷な扱いや不当な扱いを見て激怒する、など)によっても発火する。
 ただし、脳内で完全に重なり合っているわけではないが、かなりの程度まで同じ回路を使う。特に、最も重なり合っているのは偏桃体。
 そのため、本能的な嫌悪が道徳的な判断をゆがめてしまうことがある。
 一方で、寄生生物にさらされる危険を回避するために進化した神経回路が、健康を危険にさらす行動をとる人物を避けるようになった。

●道徳(p254)
 本能的な嫌悪と共通の神経回路を使うことによって、ヒトは、道徳的に反した行動をとる者を嫌悪するようになった。
 この発達のおかげで、ヒトは驚くほど社会的で協力的な種になり、一致団結して問題を解決し、新たな発明をし、前代未聞の効率で天然資源を利用し、やがて文明の基礎を築くことができた。

●農耕と宗教(p258)
 農耕が成功を収めるにつれて健康問題は悪化した。
 穀物貯蔵庫は病気を広める昆虫と害獣を引き寄せた。集落には人間の排泄物が大量にたまり、飲料水が糞便によって汚染された。家畜化した動物が新しい病原体をもたらした。
 初期の農民たちは、次々と病気の犠牲になっていったと考えられる。
 ヒトが危機的な岐路に立った時、宗教を信じる存在へと変化した。原初の宗教(例えばユダヤ教)には、生活の規範となる律法に健康を保つための生活習慣が多く含まれる。

●ヒトゲノム(p262)
 ヒトゲノムの適応変異は、農耕開始以降、それまでの100倍近い速さで累積してきている。特に免疫系と脳の機能を調整している部分。
 農耕開始期、人口の大部分が疫病と害虫によって死滅したことが原因と考えられる。
 〔自然選択は神を信じた者、あるいは少なくとも健康を守るために役立つ宗教の教義に従う誠実な者に強く味方してきたはずだ。最も重要な点は、自然選択が罰を重んじる人の生き残りを助けてきたことで、社会の規則を破る者を誰であれ頑固に罰する傾向をもつ人たちが生き延びる傾向があった。そして農業が工業に道を譲って農場から工場への人々の大移動が起き、無秩序に広がる雑多なスラムにこれまでになく大勢の人々が集まって、その圧力は強まる一方だった。〕

(2017/8/22)KG

〈この本の詳細〉
honto: https://honto.jp/netstore/pd-book_28371824.html
e-hon: http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033593852

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双極性障害のことがよくわかる本 新版
 [医学]

新版 双極性障害のことがよくわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)
 
野村総一郎/監修
出版社名:講談社(健康ライブラリー イラスト版)
出版年月:2017年6月
ISBNコード:978-4-06-259813-2
税込価格:1,404円
頁数・縦:98p・21cm
 
 
 双極性障害について、イラストや図表を使って分かりやすく解説。
 
【目次】
1 躁とうつが入れ替わりあらわれる
 ケース1 買い物が止められず、自己破産に
 ケース2 実現不可能な計画を次々と立ち上げる
  ほか
2 大きくみると二つのタイプがある
 診断1 初診では多くがうつ病と診断される
 診断2 双極性障害とうつ病の特徴を知る
  ほか
3 発病の原因やきっかけは、単純ではない
 原因 遺伝子、成育歴、脳…考えられること
 誘因 ストレスと睡眠不足が大きなきっかけ ほか
4 薬物療法と認知療法を中心に
 概要 うつ病より治療が困難になる二つの理由
 薬物療法 双極性のうつ状態は、うつ病とは薬が違う
  ほか
5 日常のなかで本人や周囲ができること
 本人1 見失っていた自分をとりもどす
 本人2 生活のリズムをととのえる
  ほか
 
【著者】
野村 総一郎 (ノムラ ソウイチロウ)
 六番町メンタルクリニック所長。1949年広島県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。藤田学園保健衛生大学精神科助教授、立川共済病院神経科部長、防衛医科大学校精神科教授、同大学校病院院長を経て、2015年より現職。1985~87年、米国テキサス大学医学部、メイヨー医科大学に留学。日本うつ病学会第1回総会会長。
 
【抜書】
●気分循環性(p38)
 双極性障害には、Ⅰ型、Ⅱ型、気分循環性がある。
 気分循環性……軽い躁状態と軽い鬱状態を繰り返すことが2年以上続き、そうした状態がない時期が2か月も続かない。いつも不安定。何とか社会生活を送ることができるが、結婚生活や恋愛関係が何度も破綻したり、アルコール依存や薬物乱用に至るケースもみられる。治療されないまま気分循環性の状態が長年続くと、双極Ⅰ型障害や双極Ⅱ型障害へと症状が悪化することもある。
 
●気分変調症(p39)
 鬱病の一つ。軽躁状態がないこと以外は、気分循環性と同じ。
 
●混合性(p39)
 鬱状態と躁状態の症状が同時期に現れる。双極性障害では、数時間または数日間で鬱状態と躁状態が入れ替わる。
 双極性障害は、思考、気分、意欲に変調が現れる病気だが、混合性の状態では、この3つのいずれかが躁になったり鬱になったりしている。つまり、思考、気分は躁状態だが意欲だけが鬱状態、など。
 
●急速交代型(p40)
 鬱状態と躁状態が頻繁に繰り返される状態。
 基本的な特徴は、過去12か月間に、4回以上、躁や軽躁、鬱、混合性などの状態が認められる場合。
 抗鬱薬の副作用が原因の一つと見られている。
 難治性で、治療期間が長期にわたる。寛解期(落ち着いているとき)が少ない。
 
●境界性パーソナリティ障害(p49)
 もともと、神経症と統合失調症との境界という意味。神経症をはるかに超えた症状が現れるが、統合失調症ほど重症ではない。
 症状……対人関係が不安定。はしゃいでいたかと思うと急に落ち込む。ほめちぎっていた相手を急にこき下ろし始める。過食やリストカット、過量服薬などを繰り返す。極端な感情の揺れがある。
 
●ステロイド、カテコラミン(p56)
 ストレスに対応するホルモン。
 ホルモン……脳から指令を受け、副腎皮質や甲状腺などで分泌される。
 ステロイド(コルチゾール)……副腎皮質から分泌される。血圧を上昇させ、膵臓のインシュリンの分泌を抑えて血糖値を高め、脳に糖を送って脳の回転をよくする。免疫機能が後回しにされるので、細菌に感染しやすくなる。
 ステロイドの分泌が一定量になると、海馬の脳細胞の新生が抑えられる。
 カテコラミン……交感神経と副腎髄質から分泌される。血管を収縮させて心拍数を増やし、血圧を上昇させる。けがをしても素早く出血を止められるように、血小板の凝集能を高め、胃の粘膜血流を低下させる。
 
(2017/8/18)KG
 
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情報と秩序 原子から経済までを動かす根本原理を求めて
 [経済・ビジネス]

情報と秩序:原子から経済までを動かす根本原理を求めて
 
セザー・ヒダルゴ/著 千葉敏生/訳
出版社名:早川書房
出版年月:2017年4月
ISBNコード:978-4-15-209683-8
税込価格:2,700円
頁数・縦:286p・20cm
 
 
 宇宙を構成する要素でありながら偏った存在の仕方をする「情報」から説き起こし、経済の複雑性にまで言及する統一理論(?)の構築を目指す……のかもしれないが、未消化な印象はぬぐえない。キーコンセプトとなる「情報」に関する説明が不十分で、そこから経済複雑性までもっていくのは、ちょっと飛躍しすぎであると感じた。
 
【目次】
パート1 原子のビット
 第1章 タイムトラベルの秘密
 第2章 無意味の実体
 第3章 永遠の異常
 
パート2 想像の結晶化
 第4章 脳に生まれて
 第5章 増幅エンジン
 
パート3 ノウハウの量子化
 第6章 個人の限界
 第7章 関係構築のコスト
 第8章 信頼の重要性
 
パート4 経済の複雑性
 第9章 経済の複雑性の進化
 第10章 第六の物質
 第11章 知識、ノウハウ、情報の密接な関係
 
パート5 エピローグ
 第12章 物理的秩序の進化―原子から経済まで
 
【著者】
ヒダルゴ,セザー (Hidalgo, César)
 1979年チリ生まれ。アメリカのノートルダム大学でアルバート=ラズロ・バラバシの指導のもと物理学の博士号を取得。現在はマサチューセッツ工科大学(MIT)准教授であり、MITメディアラボでcollective learning groupを主導する。ハーバード大学ケネディスクールのリカルド・ハウスマンとともに経済成長の予測手法として有用な「経済複雑性指標」(ECIを開発、複雑系経済学からデータビジュアライゼーションまで多彩な分野で活躍中。
 
千葉 敏生 (チバ トシオ)
 翻訳家。1979年横浜市生まれ。早稲田大学理工学部数理科学科卒業。
 
【抜書】
●想像の結晶化(p84)
 製品は、情報だけでなく、想像も具象化するものである。
 〔この情報は、私たちが脳内計算を通じて生み出し、頭のなかにあるイメージどおりのモノを作り出すことで体内から遊離させたものだ。りんごは、りんごの名前、りんごの値段、りんごの市場が生まれる前からこの世界に存在していた。概念としてのりんごは、単に人間の頭脳に取り込まれたものなのである。一方、iPhoneやiPadは、人間の頭脳に取り込まれたものではなく、人間の頭脳から書き出されたものだ。世界に存在する前に、私たちの脳内で生まれた製品だからだ。〕
 
●パーソンバイト(p120)
 一人の人間の神経系が蓄積できる知識やノウハウの最大量。
 1パーソンバイトを超える知識やノウハウを必要とする製品を作るには、チームが必要となる。複雑な製品を生産できるチームを作るには、ある程度調和のとれた社会的ネットワークのなかで知識やノウハウを蓄積する必要がある。
 
●企業バイト(p127)
 企業バイト(firmbyte)……企業のネットワークを形成する一つ一つのノード。パーソンバイトの集積により、一つの企業バイトが構成される。
 
●社会的ネットワーク(p155)
 社会的ネットワークは、三つの単純な概念に基づいて形成される。
 (1)共通の社会的中心(social foci)……クラスメート、仕事仲間、教会、など。
 (2)三者閉包(triadic closure)……共通の友人を持つ人々の間で関係が生まれやすい。
 (3)同類原理(homophily)……似たような関心や特徴を持つ人々の間に関係が生まれやすい。長続きする関係を構築する。
 
●高信頼社会(p156)
 フランシス・フクヤマ『「信」無くば立たず』(1995年)による。
 家族主義的社会では、小規模な事業がたくさん生まれやすく、一握りの一族がいくつかの複合企業を牛耳っている。南ヨーロッパやラテン・アメリカ。
 高信頼社会で発展し、プロフェッショナルに運営される事業は、小さなものから巨大なものまで、あらゆる規模のネットワークを生みやすい。
 
●情報(p225)
〔 宇宙は、エネルギー、物質、情報でできている。エネルギーと物質はもともと存在するが、情報は生じる道を探さなければならない。〕
 《情報を成長させる基本的な物理的メカニズム》
 (1)非平衡系における情報の自然な発生(渦がその例)
 (2)個体としての情報の蓄積(たんぱく質やDNA)
 (3)物質の持つ計算力
 
(2017/8/16)KG
 
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アメリカから〈自由〉が消える 増補版
 [社会・政治・時事]

増補版 アメリカから<自由>が消える (扶桑社新書)
 
堤未果/著
出版社名:扶桑社(扶桑社新書 245)
出版年月:2017年7月
ISBNコード:978-4-594-07740-2
税込価格:918円
頁数・縦:256p・18cm
 
 
 2010年4月に刊行した同名書の増補改訂版。内容的には、オバマ政権時代のことが中心で、9・11以降、じわじわと広がる自由の抑制の事例を列挙する。巻末に袋綴じを付し、スノーデン事件のことに言及している。
 日本も他人ごとではない。民主主義の終焉が訪れようとしているのだろうか?
 
【目次】
第1章 飛行機に乗れない!丸裸にされる!恐怖の空港
第2章 何もかも見られている
第3章 ある日突然人が消える!
第4章 口をふさがれる市民
第5章 危機に立つジャーナリストたち
第6章 それでも“希望”は存在する
袋綴じ
 
【著者】
堤 未果 (ツツミ ミカ)
 国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学、ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、アムネスティ・インターナショナルNY支局員、米国野村証券等を経て現職。日米を行き来しながら各種メディアで発言、執筆、講演を続けている。「ルポ貧困大国アメリカ」(3部作:岩波新書)で新書大賞2009・日本エッセイストクラブ賞、「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命」(海鳴社)で2006年度黒田清日本ジャーナリスト会議新人賞。夫は参議院議員の川田龍平氏。
 
(2017/8/16)KG
 
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世界文明史 人類の誕生から産業革命まで
 [歴史・地理・民俗]

世界文明史: 人類の誕生から産業革命まで
 
下田淳/著
出版社名:昭和堂
出版年月:2017年5月
ISBNコード:978-4-8122-1622-4
税込価格:2,592円
頁数・縦:288p・21cm
 
 
 著者による独自の人類文明史。「コア文明」という概念を梃子に、西欧中心の現代史観を是正しようという試みである。
 
【目次】
第Ⅰ部 文明の誕生と謎
 第1章 人類の誕生と拡散―「出アフリカ」から東西ユーラシア人へ
 第2章 文明成立の転換点―道具の飛躍的発展と農耕の発明
 第3章 古代最大の謎―シュメル人とは何者か
 
第Ⅱ部 文明の新たな定義「コア」
 第4章 ユーラシアの「コア文明」―中東・中国・インド
 第5章 アフリカとアメリカの「コア文明」―西アフリカ・メソアメリカ
 
第Ⅲ部 文明の媒介としての「移動民」
 第6章 ユーラシア・コア文明と騎馬遊牧民―陸上の道を制した東ユーラシア人
 第7章 インド洋交易とヨーロッパ―海上の道を制した西ユーラシア人
 
第Ⅳ部 文明と「高等宗教」
 第8章 中東コアの「高等宗教」―ユダヤ・キリスト教からイスラムへ
 第9章 インドコアの「高等宗教」―何でも呑み込むヒンドゥー教
 第10章 中国コアの「高等宗教」―儒教・道教・仏教が混淆した中国教
 
第Ⅴ部 新しい「コア文明」ヨーロッパ
 第11章 封建制社会とフランス革命―テクノロジーと資本主義の成立基盤
 第12章 産業革命と近現代文明―テクノロジーと資本主義の一体化へ
 
【著者】
下田 淳 (シモダ ジュン)
 1960年埼玉県生まれ。1983年青山学院大学文学部卒業。1990年ドイツ・トーリア大学歴史学科退学。現在、宇都宮大学教育学部教授。専門はドイツ宗教史、博士(歴史学)。
 
【抜書】
●道具の飛躍的発展(p34)
 文明の成立(約5千年前)以前に、4万~2万年前に道具の飛躍的発展があった。石器の多様化(細石器)、槍投器、骨角器、土器、など。
 4万年前からが、最終氷期で最も寒かった時期。特に2万1千~1万8千年前は、最も過酷な時期だった。この時期、ホモ・サピエンスは世界的規模で食糧不足に陥った。食料を効率的に捕え、調理するために道具を作る必要に迫られた。
 最終氷期末からの温暖化は、食料の増加をもたらした。その結果が、定住と戦争の出現。
 
●ヤンガー・ドリアス期(p35)
 約1万4500年前頃、最終氷期が終わった。
 1万2900年前に、「ヤンガー・ドリアス期」という亜氷期に逆戻り、1万1600年前頃、ようやく温暖化。1300年間、現在より、平均気温は7~8度低かった。
 ヤンガー・ドリアス期にムギ類と稲の栽培化が始まったとする説がある。
 最終氷期が終わり、技術革新と温暖化で食料が増えたので、人口が急増した。乱獲を生み、生態系を破壊。ヤンガー・ドリアスの亜氷期に食料が激減。これを乗り越えるために、農耕を始めざるを得なかった。
 シリア北西部の遺跡から、1万3000~1万2500年前の栽培化されたと見られるライ麦種子が見つかっている。
 温暖化して野生の食料が手に入るようになっても、面倒な農耕を継続させたのはなぜか? ムギ類や稲やイモ類などの「文明の基盤食」が美味しかったから。
 
●牧畜(p39)
 農耕とともに牧畜も始まった。
 最も早く家畜化されたのは犬。遺伝子の研究によると、遅くとも1万5千年前、中央アジア(中国より)と言われている。
 最初の牧畜がどこかは不明。鶏と豚は中国、牛はインド、山羊と羊は中東と考えられているが、先後は不明。
 
●四大文明(p58)
 最初に「古代四大文明」(メソポタミア、エジプト、インダス、黄河)を唱えたのは、中国の梁啓超(1873-1929)。当時中国は、列強の半植民地状態だった。
 1899年大晦日、渡米途上の太平洋上で創った「二十世紀太平洋歌」のなかで、古代文明の祖国は「四つ」であり、中国、インド、エジプト、安息(アルケサス朝パルティア=小アジア)とした。
 文明を三期に分け、第一期「河流文明時代」、第二期「内海文明時代」(地中海、ペルシア湾、アラビア海、インド洋、黄海、渤海)、第三期「大洋文明時代」(太平洋、大西洋)とした。
 
●アルファベットの誕生(p66)
 シュメルの絵文字は「表語文字・音節文字」、ヒエログリフは「表語文字・アルファベット」だった。
 BC1500年頃、最古の「完全アルファベット」(音素のみからなる文字体系)が考案された。パレスチナの「原カナン文字」。ヒエログリフをもとに、カナン語をアルファベットだけで表記した。30字未満の子音字。
 少し遅れて、楔形文字でシリアのウガリット語を表記した「ウガリット文字」が登場。30字未満の子音字。
 原カナン文字 ⇒ フェニキア文字、アラム文字(ともに22子音字)
  フェニキア文字……ギリシャに伝わり、ヨーロッパのアルファベットの起源に。 ⇒ ギリシャ文字、ラテン文字、キリル文字
  アラム文字……中東コアで使用された。新バビロニア、アッシリア、ペルシア帝国の公用文字になる。旧約聖書もアラム文字で書かれた。 ⇒ ヘブライ文字、アラビア文字
 イエス・キリストは、アラム語で説教した。
 
●ザラスシュトラ(p73)
 ゾロアスター(ザラスシュトラ、ツァラトゥストラ)……BC12~BC9世紀の人物(研究者によって生没年が異なる)。ペルシア人が中央アジかイラン北部に留まっていたころ。古代ペルシア人の多神教信仰から独自の世界観を作り上げた。
 世界を善と悪の二つの原理の闘争の場と見た。
 善……光の神創造主アフラ・マズダー。ゾロアスター以前からペルシア人に信仰されていた。宇宙、人間、生命、秩序、正義、など。
 悪……大悪魔。暗黒の神アンラ・マンユ(アーリマン)。死、闇、邪悪、破壊、など。
 アフラ・マズラーは、天、水、大地、植物、人間、火などからなる世界を創造した。ここに悪魔が侵入し、世界を破壊した。こうして善悪の戦いが始まった。しかし、最後に救世主サオシュヤントが現れ、悪は滅ぼされる。
 人は、死後ハラ山の頂にかかる「チンワト橋」を通り、善人は天国へ行ける。悪人は、橋から落とされ地獄に行く。
 天国・地獄観は、ユダヤ教に影響を与え、キリスト教、イスラム教にも引き継がれる。
 
●マヤ諸語(p106)
 マヤ人の抵抗は、ヨーロッパによる植民地化後も続く。1697年マヤ最後の都市タヤサルが陥落したが、18・19世紀にもマヤ人の蜂起があった。メキシコ政府の統治を受け入れたのは20世紀後半。
 現在でも30のマヤ諸語が話されている。
 
●オアシスの道、草原の道(p125)
 中央アジには、北緯40度ラインの「オアシスの道」(シルクロード)と、北緯50度および支線の延びる60度ライン「草原の道」がある。各所で南北に連結。陸上の道。
 草原の道……東は現中国の北域・興安嶺から、西はハンガリー平原付近まで。
 
●ソグド人(p128)
 陸上の道の交易商人。ラクダを使ったキャラバン商人のイメージで捉えられているが、本来は騎馬遊牧民。サマルカンドを中心に、4~9世紀の陸上ユーラシア交易の担い手となった。中国とヨーロッパを結ぶ。
 安史の乱(755-763)の安禄山と史思明はソグド人。
 
●鮮卑卓抜部(p135)
 五胡(匈奴、鮮卑、羯、氐、羌)は、騎馬遊牧民族国家である。匈奴系騎馬遊牧民。
 五胡十六国時代(304-439年)は、鮮卑の一部である鮮卑卓抜部の北魏によって統一された。
 隋(581-618)、唐(618-907)も、鮮卑卓抜部出身の王朝。
 
●17世紀半ば(p161)
 17世紀半ばは、東ユーラシア系騎馬遊牧民国家が並び立っていた。すべて内陸国家。
 中国の清朝、インドのムガル朝、イランのサファヴィー朝、トルコのオスマン朝。
 ここに、海洋国家であるオランダとイギリスの東インド会社の入る隙ができた。17世紀後半から18世紀の時代に、伝統的インド洋交易構造が解体し、オランダとイギリスによる海上支配に切り替わった。18世紀末には、インド洋は完全にヨーロッパの海になった。しかし、ヨーロッパによるインド洋支配は、アメリカ大陸とは異なり、簡単に進んだわけではない。
 
●原初的宗教(p171)
 原初的宗教……シャーマニズム(降神術・降霊術)、アニミズム(万物に精霊・霊魂が宿るという信仰)、トーテミズム(ある氏族を特定の動植物に関係づける信仰)、自然の神々崇拝、祖先崇拝、など。
 高等宗教……死生観を体系的・論理的に説いている宗教。
 
●中国仏教(p214)
 中国仏教は、儒教の祖先崇拝と道教の祈祷を取り入れ、インド仏教とは違う代物となった。それが日本に伝わった。
 位牌……神主(しんしゅ)を祀る儒教の祖先崇拝(招魂再生儀式)を取り込んだ。
 盂蘭盆……盂蘭盆経という偽経。釈迦の弟子の目連(もくれん)という人物の母親が輪廻転生して「餓鬼」の世界で苦しむのを見た目連が、釈迦に問うたところ、今度の7月15日の高層の集いでご馳走を盂蘭盆(おそらく容器を指す)に載せ、供養すれば救われると言われ、そのようにしたら母親は救われた。ここから先祖を供養する「盂蘭盆」という仏教行事が行われるようになった。
 線香……寺院で線香を焚くのは、もともと魂を魄に取りつかせるための儒教儀式だった。葬儀も儒教から取り入れたもの。
 戒名……儒教の神主の文句に由来。
 墓……墓も墓参りも本来の仏教には不要。儒教の習慣。
 
●砲術師(p257)
 ヨーロッパでは、最初、大砲や火薬の製造法、砲弾の装填法などは、砲術ギルドによって堅く秘密とされていた。ギルドの成員である砲術師が雇われて戦場に駆り出されていた。砲術師は、民間の手工業者であり、特定の君主に属しているものではなかった。
 16世紀以降、砲術師に対する各君主からの需要は多く、火器市場は大きかった。
 砲兵隊が国家の正規軍となったのは、フランス革命後19世紀。
 
●近現代文明(p269)
〔 テクノロジーと資本主義がインターロックした近現代文明は、最後の文明なのだろうか? 地球の寿命はまだ続くであろう。「テクノロジー=資本主義インターロック文明」に終わりはあるのだろうか? どこに行くつくのだろうか? 私は、テクノロジーと資本主義が悪いといっているわけではない。際限なく続くレースに恐怖を覚えているだけである。この文明に終わりはないように思える。際限なくどこまでも続くような気がする。〕
 
(2017/8/13)KG
 
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中国政治からみた日中関係
 [ 読書・出版・書店]

中国政治からみた日中関係 (岩波現代全書)
 
国分良成/著
出版社名:岩波書店(岩波現代全書 101)
出版年月:2017年4月
ISBNコード:978-4-00-029201-6
税込価格:2,592円
頁数・縦:271p・19cm
 
 
 中国政治の本質は権力闘争である。友好か反日か。日本との関係も、権力闘争の結果だという。
 そんな日中関係の変遷を、中国共産党内の政治力学によって解き明かす。
 
【目次】
序章 地域研究としての中国政治
 
第Ⅰ部 中国の政治体制―迷走する正統性
 第1章 政治改革の展開と挫折―鄧小平・胡耀邦・趙紫陽時代
 第2章 天安門の経済成長―鄧小平・江沢民時代
 第3章 正統性としての経済成長ー鄧小平・江沢民時代
 第4章 党国体制の権威主義―江沢民・胡錦涛時代
 第5章 習近平体制と文化大革命―連続と非連続
 
第Ⅱ部 中国の対日政策―国内政治の延長
 第6章 「一九七二年体制」の成立とその限界―一九七〇‐九〇年代・冷戦から冷戦後へ
 第7章 「日中友好」の陰り―一九八〇年代・光華寮裁判と胡耀邦事件
 第8章 歴史問題の拡大―一九九〇年代・江沢民訪日
 第9章 戦略的互恵関係への道―二〇〇〇年代・暫定的修復
 第10章 試練の中の日中関係―二〇一〇年代・尖閣事案の顕在化
 
終章 中国政治と日中関係
 
【著者】
国分 良成 (コクブン リョウセイ)
 1953年生。1981年慶應義塾大学大学院博士課程修了後、同大学法学部専任講師、85年助教授、92年教授、99年から2007年まで同大学東アジア研究所長、07年から11年まで法学部長。法学博士。12年から現在まで防衛大学校長。この間、ハーバード大、ミシガン大、復旦大、北京大、台湾大の客員研究員を歴任。専門は中国政治・外交、東アジア国際関係。元日本国際政治学会理事長、元アジア政経学会理事長。
 
【抜書】
●外資依存(p100)
 GDPに占める中国の貿易依存度……1990年29.8%、2000年43.9%。
 輸出の50%以上は外資系企業が担っている。国家税収全体の20%近くが外資系企業からの徴税。
 
(2017/8/12)KG
 
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世界神話入門
 [歴史・地理・民俗]

世界神話入門
 
篠田知和基/著
出版社名:勉誠出版
出版年月:2017年5月
ISBNコード:978-4-585-22165-4
税込価格:2,592円
頁数・縦:273p・19cm
 
 
【目次】
1 世界神話
 世界神話へむけて
 地域的諸問題
 共通神話の形成
2 世界の構造
 卵と鳥
 樹木
 大地
3 女神と至高神
 女神
 愛の神話
 復活神とトリックスター
 裁きの神と太陽の旅
4 悪の原理
 罪と罰
 動物変身と獣祖
 鍛冶神と狼男
 
【著者】
篠田 知和基 (シノダ チワキ)
 名古屋大学教授をへてHSU特任教授。甲南大学人間科学研究所客員研究員。比較神話学研究組織主宰。専門は仏文学、神話学、文化造形論。
 
【抜書】
●イギリス、トルコ、サウジアラビア(p49)
 神話のない国……イギリス、トルコ、サウジアラビア
 トルコとサウジアラビアは、イスラム化の過程で、全イスラム時代の伝承は否定され、抹殺された。
 イギリスは、ウェールズやアイルランドにはケルト神話が存在した。しかし、「イギリス文化圏」の政治的中心であるイングランドは、ローマの支配を直接受けており、ローマ文化、ローマ神話を継承した。
 
●五大古典神話(p56)
 エジプト、ギリシャ、メソポタミア、インド、中国
 
(2017/8/6)KG
 
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