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クレモナのヴァイオリン工房 北イタリアの産業クラスターにおける技術継承とイノベーション
 [経済・ビジネス]

クレモナのヴァイオリン工房―北イタリアの産業クラスターにおける技術継承とイノベーション
 
大木裕子/著
出版社名:文真堂
出版年月:2009年2月
ISBNコード:978-4-8309-4631-8
税込価格:5,832円
頁数・縦:256p・22cm
 
 
 クレモナのヴァイオリン産業をテーマとした、産業クラスタ研究の論文。日本学術振興会平成18年度科学研究費補助金の成果である。
 
【目次】
序章 本書の課題と分析視角
第1章 イタリア・ヴァイオリン製作の歴史
第2章 クレモナのヴァイオリン製作の現状と課題
第3章 クレモナのヴァイオリン製作の特徴―製作者の視点から
第4章 クレモナのヴァイオリン製作者へのアンケート調査の結果と分析
第5章 クレモナの産業クラスターの特徴
 
【著者】
大木 裕子 (オオキ ユウコ)
 博士(学術)。京都産業大学経営学部・同大学院マネジメント研究科准教授。東京藝術大学器楽科卒業後、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ヴィオラ奏者、昭和音楽大学専任講師、京都産業大学経営学部専任講師を経て現職。専門はアートマネジメント。
 
【抜書】
●クレモナ派、ブレッシア派(p7)
 弓で音を出す弦楽器は、8世紀頃、ムーア人によってスペインに伝えられた。ヴァイオリンは16世紀初頭に突如として出現し、1550年頃に音楽家たちに普及した。ヴィオラ・ダ・ブラッチョ(viola da braccio)あるいはリラ・ダ・ブラッチョ(lira da braccio)から派生した。初期段階では、北イタリアにおいてクレモナ派とブレッシア派の2種類のヴァイオリンが存在、演奏者は、曲に合わせてこの2種類を使い分けた。
 クレモナ派……アンドレア・アマティ(Amati, Andrea、ca.1505-ca.1577)による、繊細に美しく仕上げられたヴァイオリン。
 ブレッシア派……ガスパロ・ダ・サロ(通称Gasparo da Salò)とその弟子マジーニ(Maggini, Giovanni Paolo, 1580-1630)による頑丈なヴァイオリン。
 1632年、マジーニが他界、ブレッシアは急激に衰退、クレモナの独擅場に。ニコロ・アマティ(Amati, Nicolo、1597-1684)とドイツのヤコブ・シュタイナー(Steiner, Jacob、1617-1683)の二人が主導するようになる。
 
●オールド・イタリアン(p9)
 年代により、3つに区分される。
 オールド・イタリアン・ヴァイオリン……1550年頃~1820年頃。ヴァイオリンの誕生からプレッセンダの出現まで。アマティ、ストラディヴァリ、グァルネリ、ガリアーノ、ロジェリ、ルジェリ、ベルゴンツィ、グァダニーニなどの各ファミリーが大きなギルド、工房を構成していた。1660年頃から1770年ごろがルネッサンス期で、「シルバートーン」を持つ個性に富んだ多くの名器が製作された。「クレモナの栄光」と呼ばれた黄金期には、ベルゴンツィ、グァダニーニ、グァルネリ、ストラディヴァリ(Stradivari, Antonio、1644-1737) などが活躍、1万本程度の楽器が製作された。
 ベルゴンツィの死後、クレモナは空白期を迎える。空白期、パリのヴァイオリン製作が盛んになる。イタリアは、オールド・ヴァイオリンの修理や調整が主となる。
 
●モダン・イタリアン(p10)
 モダン・イタリアン・ヴァイオリン……ストリオーニの弟子プレッセンダ(Pressenda, Giovanni Francesco、1777-1854) がトリノで独立した後、1831年以降、北イタリアで彼の作品が認められるようになってから、第二次世界大戦期まで。音量のあるブレッシア・モデルが製法に導入される。1890~1940年が隆盛期。約250人の名匠が製作した楽器は、コンサート・ヴァイオリンとして高く評価されている。皆で切磋琢磨し、個性豊かなヴァイオリンが製作された。ドイツのミッテンヴァルト、フランスのミルクールなどで大量生産方式が盛んになる中、イタリアでは伝統的な手工業を継承した。
 
●コンテンポラリー(p11)
 コンテンポラリー・ヴァイオリン……職人の個性を重視するというより、ストラディヴァリ、デル・ジェス(Guarneri, Giuseppe Ⅱ《Del Gesu》、1698-1744)をコピーするといった、作風の標準化が進められている。ヴァイオリン製作が途絶えていたクレモナでは、サッコーニ(Sacconi, Simone Fernado、1895-1973、イタリア系アメリカ人)が、内枠式あるいはクレモナ式と言われる製作方法を取り戻すことに尽力した。サッコーニの提唱により、1937年にストラディヴァリ生誕(没後?)200年祭が行われ、1938年に国際ヴァイオリン製作学校が設立された。世界各国からのヴァイオリン製作者を養成、130以上のヴァイオリン工房が集積し、ヴァイオリン製作のメッカとなる。
 
●4つのパターン(p13)
 ヴァイオリンの4つのパターン。
 (1)ストラディバリ・パターン
 (2)デル・ジェス・パターン
 (3)アマティ・パターン
 (4)シュタイナー・パターン
 
●ニコロ・アマティ(p15)
 アンドレア・アマティの孫。それまで「親族のものでない見習いを工房に置かない」というアマティ一族の慣習を破り、アンドレア・グァルネリ(Guarneri, Andrea、1626-1698)、ストラディヴァリ、ロジェリ、ルジェリ、グランチーノなど、最高の技術を持つ弟子を育て上げた。彼らは、アマティやシュタイナーの胴体の盛り上がったモデルではなく、ブレッシア派のフラットなヴァイオリンの設計を基として進化させていった。
 
●クレモナ(p21)
 ポー(Po)、アッダ(Adda)、オーリオ(Oglio)の3つの川に挟まれた肥沃な土地。
 BC218年、ローマの植民地が造られた。第2次ポエニ戦争後は、文化・芸術面で高いレベルを誇っていた。
 1098年、コネーム(自治都市)となる。川を利用した交易で街は栄える。1107年には大聖堂が建設される。
 12世紀から14世紀初頭までは神聖ローマ帝国に属する。
 1334年、ミラノのヴィスコンティ家に征服され、ミラノ公国の一部になる。
 1499年、ヴェネツィアの支配下となり、多くのユダヤ人が移住してきた。
 1535~1701年、スペインの支配下となる。修道会の保護を受け、ヴァイオリン製作の最盛期を迎える。
 
●モンテヴェルディ(p23)
 クラウディオ・モンテヴェルディ(Mnteverdi, Claudio、1567-1643)、クレモナ出身。オペラの作者。「オルフェオ」(1607)は、どの場面でどの楽器を用いるかを作曲者が楽譜によって示した初めてのケースとなった。38の楽器からなるオーケストラと、数多くの合唱曲とレチタティーボによって生き生きとしたドラマとなっている。
 オペラは、1600ごろ、イタリアに興った多声音楽。
 
●クレモナの工房(p34)
 クレモナのヴァイオリン製作……ヴァイオリン工房130。学生100~200人、未登録の製作者100~200人。これらを合わせると500~600人の製作者がいる。
 
●鈴木バイオリン(p39)
 フランスのミルクールのヴァイオリン産業を震撼させた新規参入のヴァイオリン・メーカー。
 三味線作りを家業としてた鈴木政吉がヴァイオリンに魅せられ、1898年に大量生産を目指してヴァイオリン製作工場を設立した。ピーク時には年間15~16万本を生産した(1921年)。
 鈴木バイオリン・メソッド……創業者三男の鈴木慎一が、演奏者教育法の確立と普及を行った。
 ヤマハが、ヴァイオリン製作に参入しなかったことも鈴木バイオリンの隆盛に大きく影響。鈴木がオルガン製作を行わないことを条件に、ヤマハ(日本楽器)は準備を進めていたバイオリン製作から手を引いた。
 
●Cremona Liuteria(p41)
 コンソルツィオ……Consorzio liutai e archettai "A Stradivari" Cremona。1996年、クレモナ製品の独自性を宣揚するために設立された商業団体。2003年に商工会議所の一機関と位置づけられる製作者協会となる。60人の製作者が所属。
 ヴァイオリン製作の品質保証のために、「Cremona Liuteria」という商標を考案。「クレモナにおけるプロフェッショナルなヴァイオリン製作者によるもの」を公認する制度。会員には年間15本まで、証明書を発行。完全な手作りであることが条件。手作りの証明として、削った木材の残りを数年間保存する必要アリ。
 
●ヴァイオリンの市場(p43)
 ヴァイオリンの市場規模は、世界で年間50万本。アメリカ20万本、日本6万本。
 
●国際ヴァイオリン製作学校(p45)
 Scuola Internazionale di Liuteria。
 1938年、ストラディヴァリ没後200周年の記念事業の一環として設立された。
 1960年、イタリア唯一の国立製作学校I.P.I.A.L.L.(Istituto Professionale Internazionale Artigianato Liutario e del Lagno)の一部となった。I.P.I.A.L.L.は、デザイナー、装飾家、家具職人などに「ディプロマ」を与える機関。
 第一課程の3年。卒業すると「ヴァイオリン職人(TECNICO DI LIUTERIA)の資格が与えられる。
 さらに2年間の課程を修了すると、「ヴァイオリン製作者(PROFESSIONALIZZANTE)の資格が与えられる。
 学生は、年間1台の製作を目標としている。通常、5年間、同じマエストロにつく。
 4・5年次には、モダン楽器の加え、ピチカート弦楽器、バロック楽器、修理、弓のコースも併設。
 
(2017/8/5)
 
〈この本の詳細〉


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