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腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方
 [医学]

腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方

ジャスティン・ソネンバーグ/著 エリカ・ソネンバーグ/著 鍛原多惠子/訳
出版社名: 早川書房
出版年月: 2016年11月
ISBNコード: 978-4-15-209653-1(4-15-209653-5)
税込価格: 2,052円
頁数・縦: 339p・19cm

 ヒトの大腸には100兆個の細菌(マイクロバイオータ)が棲息し、ヒトの身体や精神の状態をも左右している。これらの細菌の遺伝子は250万個にも及び、ヒトの遺伝子の100倍近い数となる。ヒトは、体内の細菌と共生して存在しているのであり、細菌と人体とはひとつのエコシステムを形成している……。

【目次】
第1章 マイクロバイオータとは?なぜ重要?
第2章 マイクロバイオータの形成―妊娠、出産、離乳期
第3章 免疫系を調整する
第4章 毎日、体外に出ていく細菌たち
第5章 一〇〇兆個の細菌が餓えている
第6章 「なんとなく」は腸からの知らせ?
第7章 「クソ」を食らってでも生きよ
第8章 老化するマイクロバイオータ
第9章 では、どうすればいいのか?

【著者】
ソネンバーグ,ジャスティン (Sonnenburg, Justin)
 スタンフォード大学スクール・オブ・メディスン微生物学・免疫学部准教授。2009年、アメリカ国立衛生研究所(NIH)による新しいイノベーターのための所長賞を受賞。

ソネンバーグ,エリカ (Sonnenburg, Erica)
 スタンフォード大学スクール・オブ・メディスン微生物学・免疫学部上級科学研究員。食生活と腸内細菌の関係を研究している。

鍛原 多惠子 (カジハラ タエコ)
 翻訳家。米国フロリダ州ニューカレッジ卒(哲学・人類学専攻)。

【抜書】
●マイクロバイオータ(p15)
 マイクロバイオータ……ヒトの体内に住む細菌類の総称。胃や小腸にもいるが、大半は大腸内におり、100兆個以上。平均的なアメリカ人の場合、約1,200種。ベネズエラのアマゾネス州に住む平均的なアメリカインディアンは約1,600種。

●ヒトミルクオリゴ糖(p64)
 母乳に含まれる複合炭水化物。ヒトミルクオリゴ糖は、母乳に脂肪と乳糖の次に多く含まれている。
 化学構造がきわめて複雑で、ヒトには消化できない。マイクロバイオータの食べ物となる。
 マイクロバイオータは2,500万個(250万個?)の遺伝子を持ち、ヒトミルクオリゴ糖を消化してエネルギーを抽出する能力を持つ。特に、植物組織を食べるバクテロイデス属菌の好物で、この細菌の定着を促す。

●免疫系(p86)
〔 免疫系は、共通の資源(人体)をとおして共生菌とたえず交渉している。免疫系としては、ヒト細胞と細菌細胞のあいだに安全な距離を保ちたい。だが細菌は棲息地(ヒトの腸)を確保したいので、そこから追い出されたくはない。〕

●Tレグ細胞(p98)
 免疫反応が起きると、B細胞とT細胞が抗体を作って炎症を促し、赤味、腫れ、発熱、化膿が起きる。
 この反応の後、Tレグ細胞(制御性T細胞)が関わり、これらの症状が消えていく。
 Tレグ細胞が少ないと免疫反応が強くなり、自己免疫、炎症性腸疾患、癌などに発展することもある。
 マイクロバイオータの一部の菌には、腸内のTレグ細胞を増やす働きがある。理科学研究所消化管恒常性研究チームの本田賢也の発見。

●イヌリン(p128)
 腸内細菌は、イヌリンを発酵させて短鎖脂肪酸を作る。短鎖脂肪酸は、エネルギーとして吸収され、腸を炎症から守る。
 イヌリン……最大で60個の果糖分子が直鎖状につながった重合体。一般的な市販のプレバイオティクス(有用な食品成分)の一つ。

●シンバイオティクス(p129)
 シンバイオティクス……プロバイオティクス(有用菌)とプレバイオティクスを組み合わせたもの。医薬品ではない。プレバイオティクスがプロバイオティクスの食べ物となり、体内に取り込んだ細菌が大腸で増える。

●マック(p141)
 腸内の微生物は、主に食物繊維を含む複合炭水化物を食べる。でんぷん質の多い食品や炭酸飲料に入っている単純炭水化物はヒトの小腸で吸収されてしまい、大腸にいる微生物には届かない。
 マイクロバイオータが食べる食物繊維(複合炭水化物)を、マック(MAC: microbiota accessible carbohydrates)と呼ぶ。

●短鎖脂肪酸(p145)
 マイクロバイオータは、ヒトには消化できない植物由来の炭水化物を発酵し、短鎖脂肪酸を作る。しかし、腸内には酸素がないので、短鎖脂肪酸から熱量を抽出することができない。ヒトは、短鎖脂肪酸を酸素のある組織内に吸収し、熱量を取り出す。
 つまり、ヒトは、マイクロバイオータのお陰で、本来は消化できない繊維質から熱量を得ることができる。

●ポルフィラナーゼ(p158)
 海苔に含まれる多糖類を分解する酵素。日本人のマイクロバイオーム(体内細菌の遺伝子群)にはこの遺伝子が含まれるが、北アメリカの住民には見られない。

●脳腸軸(p172)
 ヒトの脳と腸は、大規模なニューロン網と、化学物質とホルモンの連絡路とでつながっている。どれほど空腹か、ストレスを感じているか、病原性の微生物を食べたかなどに関わる情報を、絶えず相互にフィードバックしている。この情報通信網を脳腸軸と呼ぶ。
 腸の神経系は、第二の脳。
 腸神経系は極めて大規模で、食道から肛門までの消化管全体に目を配っている。中枢神経系からの入力がなくとも独立して働くが、両者はつねに情報を交換し合っている。
 腸内のニューロン網は、脊髄内のそれと同等に密集していて複雑。
 中枢神経系は、腸神経系の働きを統制する。自律神経系を介して、腸と連絡を取り合う。
 ニューロン、ホルモン、化学伝達物質の回路は、腸の状態に関するメッセージを脳に送る一方で、脳が腸環境に影響を与えるように計らってもいる。食べ物が通過する速度と腸内壁を覆う粘液の量など。

(2017/2/10)KG

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脊柱管狭窄症は自分で治せる! “腰の激痛”“足のしびれ”がみるみる改善
 [医学]

脊柱管狭窄症は自分で治せる!
酒井慎太郎/著
出版社名 : 学研プラス
出版年月 : 2016年3月
ISBNコード : 978-4-05-800595-8
税込価格 : 1,188円
頁数・縦 : 174p・18cm


 脊柱管狭窄症と診断される人が増えているが、脊柱管狭窄症は、ほとんどの場合、腰の痛みの最終段階である。その前に、「前かがみになったときに痛むタイプ」(A)の筋・筋膜性腰痛、椎間板症、椎間板ヘルニアや、「体を後ろに反らすと痛むタイプ」(B)の腰椎分離症、すべり症になっていることが多い。特に、AとBを両方患っている人も多く、脊柱管狭窄症の治療法だけを実行していても効果は薄い。自分の症状に合わせて、ミックスタイプの治療法がお薦めである。……という趣旨で、腰痛の原因と日常生活で留意すべき点を解説し、腰に効く9種類のストレッチを紹介する。

【目次】
第1章 あなたの痛みのタイプがすぐわかる「腰痛セルフチェック
第2章 脊柱管狭窄症を自分で治す!新常識
第3章 なぜ、簡単ストレッチで痛みが消えるのか
第4章 脊柱管狭窄症を見事克服した患者さんの実例集
第5章 腰痛知らずで一生過ごすための日常生活の知恵
第6章 脊柱管狭窄症が治れば、人生が変わる!
第7章 正しく知って、痛みを撃退!腰痛対策Q&A

【著者】
酒井 慎太郎 (サカイ シンタロウ)
 さかいクリニックグループ代表。千葉ロッテマリーンズオフィシャルメディカルアドバイザー。中央医療学園特別講師。柔道整復師。整形外科や腰痛専門病院などのスタッフとしての経験を生かし、腰痛やスポーツ障害の疾患を得意とする。

(2016/7/28)KG

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セラピスト
 [医学]

セラピスト
 
 
著作者: 最相葉月/著
出版社: 新潮社
発行年月: 2014年7月
ファイル容量: 2.1MB
税込価格:1,555円
 

 取材とインタビューをとおして、精神科医、臨床心理士(カウンセラー)など「セラピスト」たちの現場と現状をレポート。9割を占める薬物療法や「三分診療」が常態化する現状に対して、一定の理解を示しながらも問題点として指摘する。また、箱庭療法や絵画療法、風景構成法など、現在ではあまり行われなくなった治療法も、一部実際の体験を描写しつつ具体的に紹介する。
 
【目次】
逐語録(上)
第1章 少年と箱庭
第2章 カウンセラーをつくる
第3章 日本人をカウンセリングせよ
第4章 「私」の箱庭
第5章 ボーン・セラピスト
逐語録(中)
第6章 砂と画用紙
第7章 黒船の到来
逐語録(下)
第8章 悩めない病
第9章 回復のかなしみ

【著者】
最相 葉月 (サイショウ ハズキ)
 1963年生まれ。兵庫県神戸市出身。関西学院大学法学部卒業。著書に『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)、『星新一―一〇〇一話をつくった人』(講談社ノンフィクション賞、大佛次郎賞、日本推理作家協会賞、日本SF大賞、星雲賞)などがある。

【抜書】
●精神療法、心理療法
 精神療法……医師の治療計画のものと、医療行為として行われる心理的援助。現在は、認知行動療法のように医科学的なエビデンス(根拠・証拠)が確認されたため、医療保険の対象になっているものもある。
 心理療法……病気とは呼べないため精神科医が治療の対象としない「心の不調」を、心理学を土台とした心理的援助を 行う。主にカウンセラーが扱い、医療行為ではない。人間関係の悩みや不登校など。

●統合失調症
 非妄想型……破瓜型統合失調症。思春期から青年期にかけて発症し、感情表現の欠落が主な症状。
 妄想型……成人してから発症し、幻覚や妄想が主症状。
 統合失調症は、認知機能の低下によるもの。かつて教えられていたような、「人格水準の低下に陥る人格の病」ではない。

●認知行動療法
 2010年前後から広がりを見せている。
 物事の受け取り方や考え方の癖、歪みを自覚、それによって引き起こされた行動を訓練によって修正していく心理療法。
 うつ病やパニック障害のほか、怒りや不安のコントロールにも適応できる。
 今現在の感情に焦点を当てることが特徴。〔あるきっかによって引き起こされる自動思考と呼ばれる反応、たとえば、自分はダメだ、先生は私を愚かだと思っているに違いない、といった捉え方を、本当にそうなのかと意識したり練習したりすることによって修正していく。〕

●発達障害
 発達障害は、昔からあった。現在、目立つようになったのは、サービス産業の多様化や、情報化社会におけるコミュニケーション形態の変化など、社会の第三次産業化に応じて不適応者としてはじき出され、可視化されてきたため。
 河合敏雄の考え。

●双極性障害
 双極性障害Ⅱ型とうまく付き合う方法。「気分屋的生き方をすると気分が安定する」(双極性障害の名医でもある神田橋條治医師の言葉 )。行き当たりばったり生きることを楽しむとよい。

(2016/5/21)EB

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意識と脳 思考はいかにコード化されるか
 [医学]

意識と脳――思考はいかにコード化されるか

スタニスラス・ドゥアンヌ/〔著〕 高橋洋/訳
出版社名 : 紀伊國屋書店
出版年月 : 2015年9月
ISBNコード : 978-4-314-01131-0
税込価格 : 2,916円
頁数・縦 : 469p・20cm


【目次】
序 思考の材料
第1章 意識の実験
第2章 無意識の深さを測る
第3章 意識は何のためにあるのか?
第4章 意識的思考のしるし
第5章 意識を理論化する
第6章 究極のテスト
第7章 意識の未来

【著者】
ドゥアンヌ,スタニスラス (Dehaene, Stanislas)
 1965年生まれの認知神経科学者。コレージュ・ド・フランス教授。数学、心理学を専攻したのち、脳における言語と数の処理の研究へと進み、若くして認知神経科学の世界的な研究者の一人となる。2011年にフランスの最高勲章であるレジオンドヌール勲章(シュヴァリエ)を受章。2014年度のBrain Prizeほか、脳生理学関係の受賞歴多数。フランス国立保健医学研究機構(INSERM)認知神経画像解析研究ユニットのディレクター、フランス科学アカデミーならびにローマ教皇庁科学アカデミーの会員でもある。

高橋 洋 (タカハシ ヒロシ)
 翻訳家。同志社大学文学部文化学科卒(哲学及び倫理学専攻)。

【抜書】
●意識(p20)
 現代の意識の科学では、最低でも三つの概念を区別する。
 (1)覚醒状態(vigilance)。眠っているときと目覚めているときで変化する覚醒の度合いを示す。
 (2)注意(attention)。心的な資源を特定の情報に集中投下する。
 (3)コンシャスアクセス。注意を向けられた情報のいくつかが、やがて気づかれ、他者に伝達可能になる。
 純粋な意識とみなせるのは、コンシャスアクセスのみ。

●グローバル・ニューロナル・ワークスペース理論(p27)
 〔意識は、皮質内で伝達される広域的(グローバル)な情報であり、脳全体で必要な情報を共有するための神経回路網から生じる〕。

●コンシャスアクセス(p39)
 目覚めた状態、覚醒状態、注意は、コンシャスアクセスを可能にする条件である。ただし、特定の情報に対する気づきの必要条件ではあっても、常に十分条件であるとは限らない。
 例えば、視覚皮質に小規模な卒中を起こし、色盲になった場合、色に関する情報にアクセスする能力を失う。しかし、目覚めており、注意力も十分にある。

●両眼視野闘争(p47)
 左右の目に、建物と顔といった、それぞれ無関係な絵を見せる。2枚の絵は融合せず、視覚は一方から他方へ、数秒おきに切り替わる。
 二つの競合するイメージが、意識的知覚を求めて争っている状態。

●非注意性盲目(p55)
 意識が一つのことに集中すると、他のことに気づかない。
 熱心な読書家、チェスプレイヤー、数学者は、知的作業に没頭することで、環境に対するあらゆる気づきを失った心的隔離の状態を長期にわたって生じる。「見えないゴリラ」も非注意性盲目の好例。

●50ミリ秒(p61)
 多くの実験で、40ミリ秒間しか表示されないイメージはまったく見えず、60ミリ秒になるとラクに見えるようになる。50ミリ秒あたりが、可視と不可視の境界。

●空間無視(p81)
 右半球、特に下頭頂葉のあたりの損傷により、左側の空間に注意を向けられなくなる現象。風景や物体の左側全体を頻繁に見落とす。例えば、食事の量に文句をつけたある患者は、皿の右側の料理だけを食べ、左側にはまったく手をつけていなかった。
 網膜と初期段階の視覚皮質は完全に機能しているが、高次の脳領域の損傷のため、左の視野の情報に注意を向け、それを意識のレベルに伝えることができない。無意識のレベルでは、視野の左側の情報を処理している。
 2軒の家の絵を見せる実験。片方は、左側が燃えている。空間無視の患者は、どちらも同じ家だと主張したが、燃えている家に住みたいとは言わなかった。

●N400(p105)
 At breakfast, I like my coffee with cream and socks.のようなおかしな文を読むと、N400という特殊な脳波を生む。N400は、ある単語がどの程度文脈に適合しているかを評価する。語句がマスキングや非注意性盲目によって不可視化されていても、発生する。
 N400……Nは、頭頂部に出現する陰性電位の脳波。400は、単語出現から約400ミリ秒後を意味する。
 ただし、無意識の処理が行われている間は、脳の活動は、意味を処理する言語ネットワークの主要な場たる左側頭葉に留まる。
 意識される語句は、前頭葉に広がるはるかに大規模な脳のネットワークを占めるようになる。

●衝動買い(p118)
 無意識の行動が、より良い結果を生む?
 最大で12の特徴が異なる4種類の車から、1台を選択する問題。
 被験者の半分には、問題を読んでから4分間の熟考時間が与えられる。残り半分は、4分間、アナグラム問題を解かされ、注意をそらされる。
 ベストの車を選んだ確率は、22%対60%。意識的な熟考は、逆効果となっている。

●睡眠学習(p121)
 動物実験によると、海馬と皮質のニューロンは、睡眠中でも活動している。その際の発火パターンは、睡眠に先立つ覚醒期間に生じた活動と同じシーケンスを「早送りモードで再生」している。時には逆順に活性化されることもある。
 〔睡眠が、記憶の強化とひらめきを促進する無意識の活動が沸騰する期間であることは明らかだ。〕

●スパンドレル(p130)
 スティーブン・ジェイ・グールドの造語。
 生物の構造の必然的な副産物として生じ、のちに別の役割のために徴用された(exapted)と考えられる特徴。例えば、オスの乳首。メスでは有利に機能する乳房を構築するための生物の建築設計の、些末ではあるが必然的な結果として生まれた。

●意識のしるし(p224)
 意識的な知覚表象を経験したか否かを示す生理的な4つの標識。
 (1)意識される刺激は、頭頂葉、および前頭前野の神経回路の突然の点火に至る激しいニューロンの活動を引き起こす。自己増幅する神経活動のなだれ。
 (2)コンシャスアクセスは、刺激が与えられてから三分の一秒が経過してから生じる、P3波と呼ばれる遅い脳波をともなう。
 (3)意識の点火はさらに、高周波振動(ガンマ帯域:30ヘルツ~)の遅れての突発を引き起こす。
 (4)互いに遠く隔たった多数の皮質領域が、双方向の同期したメッセージ交換に参加し、広域的な脳のウェブを形成する。

●オプシン(p225)
 電流ではなく光によってニューロンを刺激する技術、光遺伝学が急速に発展している。
 光に敏感な「オプシン」と呼ばれる分子が、光子を電気信号に変換する。
 オプシン遺伝子をもつウイルスを動物の脳に注入し、その発現を特定のニューロン群に限定する。そこにレーザー光線を当てると、突然、ミリ秒単位の正確さでニューロンのスパイクの洪水を引き起こすことができる。
 視床下部を刺激し、眠っているマウスを目覚めさせる実験に成功している。

●心のルーター(p229)
 意識の存在理由……心のルーター。
 〔特定の情報の断片に気づいていると私たちが報告するとき、それはその情報が特殊な保管領域に蓄積され、それを通じて他の脳領域にも利用可能になったことを意味する。気づかぬところで脳内を恒常的によぎる無数の心的表象のうち、現在の目標に合致したものが選択され、意識はそれを高次の意思決定システムが利用できるよう広域化する。私たちは、適切な情報を抽出し転送する、いわば心のルーターを備えているのだ。〕
 心理学者バーナード・バースは、「グローバル・ワークスペース」と呼ぶ。私的な心のイメージを自由に喚起し、無数の特化した心のプロセッサーに伝達することを可能にする、外界から切り離された内的システム。
 意識は、脳全体の情報共有。〔私たちは、何かを意識するときはつねに、対応する外部刺激が途絶えたあとでも、それを長く心に留めておける。なぜなら、脳は情報をワークスペースに持ち込み、最初に知覚した時間と空間とは無関係に保持できるからだ。その結果、私たちはその情報を好きな方法で利用できる。たとえば、言語プロセッサーに送って、それに名前をつけられる。だから、誰かに何らかの情報を報告する能力は、意識の主要な特徴の一つをなす。また長期記憶に蓄えたり、未来の計画に用いたりすることもできる。情報の柔軟な伝播は、意識の主要な特質の一つなのだ。〕

●前意識(p266)
 前意識……待機中の意識。情報はすでに発火するニューロンの集合によってコード化され、注意の対象になりさえすればいつでも意識され得る。しかし、まだ意識されていない状態。
 意識的な表象は、二番目の刺激が入ってこないよう、周囲に抑制の壁を築く。しかし、低次の感覚野は、通常のレベルで機能する。この壁によって、前意識の状態が生まれる。
 前意識の情報は、グローバル・ワークスペースの外部に存在する、一時的記憶領域に蓄えられる。注意を向けないとゆっくりと朽ちていく。短期間なら、前意識の情報は回復して意識にのぼらせることができる。その場合、私たちは過去の事象を振り返って経験する。

●切り離されたパターン(p270)
 前意識、識閾下の状態に次ぐ、無意識の作用の三番目のカテゴリー。
 たとえば、呼吸をコントロールする発火パターンは脳幹に限定され、前頭前皮質や頭頂皮質のグローバル・ワークスペース・システムからは切り離されている。

●文法(p275)
 言語を理解、生成する文法は、左上側側頭葉と下前頭回を結ぶ接続の束によって実装され、したがって、背外側前頭前皮質にある、心的努力を必要とする意識的な処理のネットワークを動員しない。麻酔下でも、言語を司る側頭皮質の大部分は、気づきの働きなしに自律的に言語を処理し続ける。

●アルファ波(p284)
 昏睡中の患者は、巨大なアルファ波のリズムが皮質をおおっており、意識が生じる可能性が排除されている。
 アルファ波は、ワイパーに例えられる(神経学者アンドレアス・クラインシュミットによる)。音に集中する際に視覚領域を閉鎖するなど、特定の領域を締め出すために用いられている。

●入れ子の進化(p351)
 〔人間の意識は、入れ子になった二つの進化による独自の成果物と見なせる。すべての霊長類において、意識は当初、コミュニケーション装置として進化した。前頭前皮質と、それに関連する長距離神経回路が局所的な回路のモジュール性を破り、脳全体にわたって情報を一斉に伝達するようになったのだ。しかし人類においてのみ、このコミュニケーション装置は、のちに第二の進化によって新たな高みに押し上げられる。すなわち、高度な信念の形成と、他者との共有を可能にする「思考の言語」が出現したのである。〕

(2016/5/8)KG

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脳はすごい ある人工知能研究者の脳損傷体験記
 [医学]

脳はすごい -ある人工知能研究者の脳損傷体験記-

クラーク・エリオット/著 高橋洋/訳
出版社名 : 青土社
出版年月 : 2015年10月
ISBNコード : 978-4-7917-6885-1
税込価格 : 2,592円
頁数・縦 : 328p・20cm


 著者クラーク・エリオットは、人工知能を研究する、デポール大学の教授である。本書は、交通事故で脳震盪症になった著者による手記である。
 科学者そして大学教授だけあって、非常に優れた観察と、科学的な知識に基づく記述となっている。それでいて、前半部の事故の経緯とその後の生活について語る部分は、まるで文学作品である。「意識の流れ」小説を読むような味わいがある。

【目次】
第1部 脳震盪
 深夜
 問題の大きさ:偉大なる人間の脳
  ほか
第2部 認知の構成要素
 背景
 壊れた人間機械
  ほか
第3部 戻ってきた私の影
 ドット博士との出会い
 脳メガネ
  ほか
第4部 脳の可塑性の科学
 ドナリー・マーカスと強い心の設計
 デボラ・ゼリンスキーとマインドアイ・コネクション

【著者】
高橋 洋 (タカハシ ヒロシ)
 翻訳家。同志社大学文学部文化学科卒(哲学及び倫理学専攻)。

【抜書】
●非イメージ形成網膜経路(p11)
 中心視覚……対象物を「見る」ことを可能にする。もっとも速度の遅い視覚経路を構成し、最後に活性化。
 周辺視覚……対象物のための文脈を脳に提供する。
 非イメージ形成網膜経路……感覚能力や代謝をコントロールする内部システムを外界に結びつける。識閾下で網膜から身体へと情報を伝達し、バランス、姿勢、ホルモン、神経伝達物質、概日リズムなどに関する重要なシステムに影響を及ぼす。あらゆる非イメージ形成信号経路の作用は、周辺視覚、さらにはそれを通して中心視覚の能率を調整する。

●認知バッテリー(p72)
 著者のたとえ。脳震盪症者は、認知の崩壊→回復を繰り返しているが、それを「認知バッテリー」と表現。
 バッテリーA……ワーキングセット。すぐに利用でき、充電も数時間以内に速やかになされる。
 バッテリーB……第一レベルのバックアップ。Aが使い果たされると利用可能になる。しかし、充電には数日を要する場合もある。
 バッテリーC……深層のバックアップ。Bが枯渇し、緊急にエネルギーが必要になったとき、最終手段として利用できる。充電速度が非常に遅く、最大で2週間かかる。

●感覚フィルター(p198)
 脳と身体は高度に統合され、脳への情報の出入りは、すべて身体という媒体を通して行われる。=感覚フィルター
 感覚フィルターの主要な機能……①目下の文脈に無関係な入力情報をふるい落とす。②残った情報を集めて意味を形成する。
 脳震盪症では、認知的なストレスがかかると、感覚フィルターが変質する。

●認知再構成法(p222)
 認知再構成法……〔違った方法で世界を見、思考することができるように脳を配線し直す治療法〕。
 ドナリー・マーカス博士は、認知再構成法の治療に、思考の低次の構成要素を変える独自の視覚パズルを開発。

●ニューロオプトメトリック・リハビリテーション(p229)
 デボラ・ゼリンスキー博士は、目の不自由な人、自閉症患者、発達障害を持つ人、脳に外傷を受けた人、学習障害を持つ子供などを対象に治療。
 網膜を通る光を調節することで、脳にアクセスする手法を用いる。視覚システムと脳の機能の相互作用、人間を人間たらしめている高次の脳の処理と視空間機能の統合に焦点を置いて治療。
 クラーク・エリオットの治療においては、特殊なメガネ(脳メガネ)をかけることで、脳の認知機能を改善していく。メガネは、段階的に換えていく。

●視覚システム(p262)
 視覚信号は分散され、視放線と呼ばれる多数の経路に沿って、脳の後部の視覚皮質に伝達される。
 まず、周辺視野からの情報に基づいて動き、位置、大きさ、形状(そして一部、色も)が処理される。
 次に、中心視野からの情報に基づいて色や細部が処理される。

(2016/2/20)KG

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記憶力の脳科学
 [医学]

記憶力の脳科学

柿木隆介/著
出版社名 : 大和書房
出版年月 : 2015年11月
ISBNコード : 978-4-479-79501-8
税込価格 : 1,512円
頁数・縦 : 230p・19cm


 臨床医と研究職のどちらも経験した医師が、記憶の仕組みや記憶術の原理など、最新の研究成果に基づいた記憶の科学を分かりやすく解説。

【目次】
第1章 記憶力のしくみ
第2章 記憶力を高める方法
第3章 記憶術を科学する
第4章 脳指紋が「うそ」をあばく!
第5章 脳は「顔」に驚く
第6章 なぜ記憶は消えていくのか
第7章 脳科学者に聞く!記憶の疑問

【著者】
柿木 隆介 (カキギ リュウスケ)
 自然科学研究機構生理学研究所教授、順天堂大学医学部客員教授、国立大学法人総合研究大学院大学教授、医学博士。1978年九州大学医学部卒業、1981年佐賀医科大学内科(神経内科)助手。1983-1985年ロンドン大学医学部研究員。1993年岡崎国立共同研究機構生理学研究所教授などを経て2004年より現職。日本内科学会認定医、日本神経学会専門医。専門は神経科学、特に人間を対象とした研究。日本生体磁気学会前会長、国際臨床神経生理学会アジア・オセアニア地区プレジデントなど多くの学会の理事、監事を務める。

【抜書】
●シモニデス(p85)
 「記憶術」は、英語でmnemonics、ニマーニクス。ギリシャ神話の女神ムネーモシュネーが語源。ミューズ(学問や芸術の女神9人)の母親で、記憶を司る女神。
 記憶術に関する最古の記述は、詩人シモニデス(BC5~6世紀)。キケロ(BC1~2世紀)が『弁論家について』で紹介。
 シモニデス、詩人としてある貴族の邸宅の宴会に招待された。宴もたけなわのとき、「二人の男が外で待っている」との伝言を受け、外に出たが誰もいない。その直後、邸宅が突然崩れ、出席者たちはみんな亡くなった。
 瓦礫の下から見つかった遺体が誰なのか全くわからず。シモニデスは、全員の席順を覚えていた。彼の記憶を元に、確認作業を行い、すべての遺体を埋葬することができた。
 シモニデスの記憶術は、「場所(座)の方法」といった表現で呼ばれていた。
 ①その宴会場のいろいろな場所を選び、覚えておく。つまり、各座席のテーブル、椅子、座席の後ろにある柱、調度品、絵画、彫刻といったもの。
 ②記憶したい物事のイメージを描く。別に何でもかまわないが、そのときに各座席に座っていた人たちの記憶が役に立った。
 ③それぞれの場所に関連付けていく。

●脳指紋(p112)
 P300……P=Positive(陽性)、300=300ミリ秒(0.3秒)。特殊な方法を用いて聴覚刺激や視覚刺激、触覚刺激が与えられると、その後、約300ミリ秒後に大きな反応が出現する。この反応がP300。
 P300は、まれに生じる現象や予想外の現象、あるいはめったに経験しない現象が起きたときに出現しやすい。
 たとえば、2秒おきに低音(低周波数音)を聞かせる。まれに高音(高周波数音)を聞かせると、このまれな音(変わり者、オドボール)を聞いたときだけP300が出現する。
 P300は、加齢とともに400ミリ秒後、500ミリ秒後と、出現が遅くなる。
 脳指紋……Brain fingerprinting。P300検査で、犯人を特定する方法。

●相貌失認(p132)
 相貌失認……顔中枢の部分だけが、脳卒中や脳腫瘍で傷害されると、「顔だけがわからない」という症状を示す。失顔症。
 先天性相貌失認という病態がある。「他人の顔を覚えられない」など。ブラッド・ピッドが告白。症状は、後天性のものに比べて軽い。

●見当識(p173)
 見当識……時間、場所などの理解のこと。

アルツハイマー病(p178)
 アミロイドβタンパク……老人斑を形成。
 タウタンパク……神経原線維変化を形成。
 いずれも、アルツハイマー病患者の大脳皮質に見られる物質。
 
(2016/2/6)KG

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食べない人たち ビヨンド 不食実践家3人の「その後」
 [医学]

食べない人たち ビヨンド (不食実践家3人の「その後」)

秋山佳胤/共著 森美智代/共著 山田鷹夫/共著
出版社名 :マキノ出版
出版年月 :2015年7月
ISBNコード :978-4-8376-7223-4
税込価格 :1,404円
頁数・縦 :178p・19cm


 『食べない人たち』(マキノ出版、2014年)の続編。こちらを読まないと判然としない面もあるが、「不食」で果たして人は生命を維持していけるのか? 「プラーナ」という神秘主義でごまかしているが、科学的に証明できるのだろうか? 
 飽食がはびこる現代社会および先進国。「小食」「超小食」「不食」、気になるところではある。

【目次】
第1章 「不食の極意」が世界を変える
 なぜかのんきな地獄の暮らし
 不食の極意をつかむきっかけとは
 気がついたら、そこは地獄
  ほか
第2章 夢が次々にかなう不食の世界
 ニューヨークからやって来た魔法使い
 「初めまして、甲田です」
 少食から超少食、さらに不食へ
  ほか
第3章 夢か、はたまた幻か―不食の島へ流されて
 奇想天外の始まり
 パンツを脱いで自由になれ!
 「慣れの法則」を悟るまで
  ほか

【著者】
秋山 佳胤 (アキヤマ ヨシタネ)
 1969年、東京都生まれ。95年、東京工業大学理学部卒業。96年、司法研究所入所(50期)。98年、弁護士登録(東京弁護士会)。松本・美勢法律特許事務所に入所し、松本重敏・美勢克彦両先生に師事する。99年、東京弁護士会知的財産権法部事務局次長。2004年、東京弁護士会知的財産権法部事務局長。05年、新職務発明制度及び先使用権制度相談事業委員に就任。08年、ロータス法律特許事務所を設立。12年、医学博士(代替医療)取得。弁護士、医学博士、JPHMA認定ホメオパス。

森 美智代 (モリ ミチヨ)
 1962年、東京都生まれ。短大卒業後、養護教諭として小学校勤務をしていた84年に難病の脊髄小脳変性症に罹患。以来、西式・甲田療法に専念し、病気を克服する。その後、鍼灸師の資格を取得し、大阪府八尾市で鍼灸院を開業。現在、森鍼灸院院長。鍼灸治療のほか、講演などでも活躍中。

山田 鷹夫 (ヤマダ タカオ)
 1951年生まれ。不食研究所代表。2004年に『不食』『断眠』『超愛』(いずれも三五館)を出版。無農薬、無肥料の魚沼こしひかり(不食米)の耕作者。

(2015/11/19)KG

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シャンプーをやめると、髪が増える 抜け毛、薄毛、パサつきは“洗いすぎ”が原因だった!
 [医学]

シャンプーをやめると、髪が増える  抜け毛、薄毛、パサつきは“洗いすぎ

宇津木龍一/著
出版社名 :角川書店
出版年月 :2013年8月
ISBNコード :978-4-04-110527-6
税込価格 :1,404円
頁数・縦 :174p・19cm


 人間、何事も自然が一番。髪をシャンプーで洗うことも、自然に反することをしているのではないだろうか?
 最近、シャンプーを使わない、回数を減らしている、という話をいろいろな人から聞くようになった。本当にシャンプーは望ましくないのか、知りたくなり、本書をひもとく。

【目次】
第1章 脱・シャンプーで髪が増えた―私たちの場合
 赤い発疹から始まつた
 気がついたら、ノン・シャンプー歴7年
  ほか
第2章 シャンプーで禿げる理由
 シャンプーをつかうほど、皮脂量が増える
 新陳代謝の衰えにより、皮膚が薄くなる
  ほか
第3章 美髪をとりもどす実践宇津木流・水洗髪
 脱・シャンプー、髪への6つのご利益
 髪以外にも2つのご利益
  ほか
第4章 からだこそ、「水洗い」が基本です
 脱・せっけんで肌がすべすべに
 老人性乾皮症は「水洗い」で治る
  ほか

【著者】
宇津木 龍一 (ウツギ リュウイチ)
 北里大学医学部卒業。日本で最初のアイチエイジング専門施設・北里研究所病院美容医学センターを創設。センター長を務める。日本では数少ないアンチエイジング治療専門の美容形成外科医。現在はクリニック宇津木流の院長として、シミ・しわ・たるみなど老化の予防と治療に従事している。

【抜書】
●皮膚は排泄器官(p55)
〔 そもそも、毛穴を有する皮膚は汗や皮脂などを対外へ出す「排泄器官」です。からだの中のものを外へ出すために存在する穴であり、外から何かを入れるためのものではありません。何かを受け入れるようにはできていませんから、口や胃のように自浄作用をそなえていないわけです。〕

●人体は奇跡の集合体(p65)
〔 人体は奇跡の集合体、ほぼ完璧につくられているから、へたに手を加えるとかえって完璧さが損なわれる――。このことを基本的な考え方に据えれば、髪も頭皮も、シャンプーやリンスやヘアクリームやムースなどで下手にいじくらないほうがいいという答えが、おのずから導きだせるでしょう。
 人間も動物の一種であり、基本的に他の動物となんら変わりがない――。この視点も自分で判断するときの助けになります。〕

●脱・シャンプー(p70)
 脱・シャンプーのご利益。
 (1) 皮脂腺が縮むため、髪へ十分な栄養がいく
  シャンプーが皮膚表面の皮脂を根こそぎ取り去るので、体は不足した分を補おうと、大量の皮脂を分泌する。そのため皮脂腺が膨張、他の栄養素を疎外する。
 (2) 毛髪をつくる大本、「毛根幹細胞」が元気になる
  防腐剤や界面活性剤は、頭皮や毛穴にしみ込み、毛根幹細胞に直接ダメージを与える細胞毒性をもたらす。
 (3) 頭皮が厚くなるので、毛が根を深く張れる
  界面活性剤の強力な洗浄力は、表皮のバリア機能を破壊。頭皮を乾燥させ、皮膚の細胞分裂を止めてします。
 (4) 常在菌が増えるため、頭皮が「健康&清潔」になる
  パラベンなどの強力な防腐剤が、有益な頭皮の常在菌を殺してしまう。
 (5) 皮質が髪に残って、「整髪力」がつく
  適量な皮脂は、「天然の整髪剤」。
 (6)ベタつきとニオイが解消する
  皮脂が酸化してできる過酸化脂質の量が減る。

●バイオフィルム(p155)
 細菌の大きさは、1mmの1,000分の1~100分の1ほど。流水の水圧で、ほとんどが流されてしまう。
 多少、残存しても大丈夫。
 菌が増殖するためには、自分たちの「根城」(医学的にはバイオフィルムという)をつくらなければならない。
 根城を作るのに、一般的には10万個以上の菌が必要。それ以下では、マクロファージやガンマグロブリンといった免疫細胞にやられてしまい、感染することは不可能。

●汗腺(p158)
 汗腺……汗を作る。エクリン腺とアポクリン腺がある。
 エクリン腺……全身に分布、サラサラの汗を出し、主に体温調整を行う。「汗臭さ」の原因。
 アポクリン腺……脇の下、乳首、陰部、耳の中などに分布、脂質やタンパク質などを多く含む粘り気のある汗を分泌。わきがは、アポクリン腺から出る汗を菌が分解して、独特のにおいを発生させたもの。
 どちらの汗も、においの成分も、水だけで落とせる。

(2015/11/15)KG

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オープンダイアローグとは何か
 [医学]

オープンダイアローグとは何か
斎藤環/著+訳
出版社名 :医学書院
出版年月 :2015年7月
ISBNコード :978-4-260-02403-7
税込価格 :1,944円
頁数・縦 :205p・21cm


 オープンダイアローグとは、フィンランドの西ラップランド・トルニオ市にある精神科病院ケロプダス病院で、ユバスキュラ大学教授のヤーコ・セイックラ博士を中心に行われている、統合失調症の治療法である。その理論と実践、効果などを、博士の論文を中心に紹介する。

【目次】
オープンダイアローグとは何か(斎藤)
精神病急性期へのオープンダイアローグによるアプローチ(Jaakko Seikkula)
精神病的な危機においてオープンダイアローグの成否を分けるもの(Jaakko Seikkula)
治療的な会話においては、何が癒やす要素となるのだろうか

【著者】
斎藤 環 (サイトウ タマキ)
 1961年岩手県生まれ。岩手県出身。筑波大学医学研究科博士課程修了。医学博士。爽風会佐々木病院・診療部長を経て、筑波大学社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理学、「ひきこもり」問題の治療・支援ならびに啓蒙。漫画・映画・サブカルチャー全般に通じ、新書から本格的な文芸・美術評論まで幅広く執筆。

【抜書】
●統合失調症(p13)
 統合失調症を一言でいえば、「自分と他者の境界があいまいになる病気」。
 自分の考えたことが”だだ漏れ”になったり(思考伝播、サトラレ)、他人の考えがどんどん入り込んでくる(思考吹入、幻聴)ような感覚を訴える。

●応答(p37)
 あらゆる発話は、応答を求めている。
 バフチン「言語にとって(すなわち人間にとって)応答の欠如ほど恐ろしいものはない」。
 私達は、モノローグ(独白)を脱してダイアログ(対話)を志向する存在である。

●包帯(p52)
〔 オープンダイアローグもまた、言葉を道具として用います。ただ、用いる方向性が精神分析とは真逆なのです。精神分析が言葉をメスとして用いるというのなら、オープンダイアローグは言葉を包帯として用いるのです。
 私が連想したのは「因幡の白ウサギ」の物語です。ワニザメを騙して怒らせてしまい赤裸に剥かれたウサギを癒してくれたのは、大国主神が勧めたガマの穂でした。比喩的に言うなら、むき出しになった患者の心に、無数の言葉でガマの穂のようにまとわせることで、「心の表皮」が回復するのです。〕

●浦河べてるの家(p61)
 1984年、北海道浦河町に設立された精神障害当事者の地域活動拠点。
 生活共同体であり、ケアの共同体であり、職場でもある。病気を単に治療するという視点からとらえず、あるがままを受け入れて暮らす。
 三度の飯よりミーティング……ことあるごとにメンバー同士で集まり、病気や生活についてミーティングを開く。ダイアローグと類似。
 幻覚&妄想大会……毎年開催される「べてるまつり」で行われる。

(2015/10/29)KG

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人類五〇万年の闘い マラリア全史
 [医学]

人類五〇万年の闘い マラリア全史 (ヒストリカル・スタディーズ)

ソニア・シャー/著 夏野徹也/訳
出版社名 :太田出版(ヒストリカル・スタディーズ13)
出版年月 :2015年3月
ISBNコード :978-4-7783-1438-5
税込価格 :2,592円
頁数・縦 :378p, 44p・19cm


 マラリアと人類の壮絶な闘いの歴史を綴る。
 結局、人類は、50万年も前に出現したマラリアとの闘いに完全な勝利を収めてはいない。人間が免疫を発達させたり、薬剤を創り出したりして、一時的にマラリアを減少させたとしても、効果は長続きしない。それを上回る戦略を、巧妙な生命体であるマラリア側も編み出すからだ。特に薬剤は、不適切に用いられたり、乱用されたりすることで耐性のある新種を生み出し、さらなる蔓延を引き起こすこともありうる。
 では、どうすればよいのか? 本書ではその答えを明確には示していない。50万年も抗争を繰り返してきた難敵なのである。この先も50万年、付き合わなければならないということか?

【目次】
1 戸口にせまるマラリア
2 殺人鬼の誕生
3 激流の真っ只中へ
4 マラリアの生態学
5 薬物療法のつまずき
6 マラリアは宿命
7 科学的解決法
8 消えたマラリア―西洋からいなくなったわけ
9 スプレーガン戦争
10 新時代の闘い

【著者】
シャー,ソニア (Shah, Sonia)
 1969年、インド系移民の子としてニューヨーク市に生まれる。合衆国東北部と、親族が住むインドとの間を行き来しているうちに、両者間ならびにそれぞれの国家内に存在する不平等に対して強い関心を持つことになる。科学、人権、国際政治に関する著書はいずれも好評を博し、多国語に翻訳されているものもいくつかある。多くの大学で講演をするかたわら、テレビ番組にも多数出演。

夏野 徹也 (ナツノ テツヤ)
 1944年富山県生まれ。金沢大学理学部卒業。金沢大学、群馬大学、オレゴン州立大学、日本歯科大学などで、動物発生学、細胞生物学、微生物学などの研究に従事。医学博士、理学修士。2009年に定年退職。

【抜書】
●50万年(p22)
 マラリアは、アフリカでおよそ50万年にわたって人間を苦しめ続けてきた。人類が火を発見したと思われる頃。
 マラリアはそれ以前から存在、鳥、チンパンジー、樹幹に棲むサル類などを宿主としていた。
 未だに毎年少なくとも3億人に感染し、およそ100万人が死亡している。
 〔大変な古代の遺物だというのに、基本的には野生を保ち、手なずけられないままである。〕

●ハマダラカ(p27)
 マラリアを媒介するのは、3200種いる世界中の蚊のうち、ハマダラカ属のみ。しかも、ハマダラカ属430種のうち、70種ほど。
 ハマダラカ属は、ポリネシアのバヌアツ東部を除く地球上の隅々に分布。

●四日熱マラリア(p33)
 四日熱マラリア原虫=プラスモジウム・マラリイ(Plasmodium malariae)。
 数十万年前に出現。
 一種の活動中止状態で70年もの長い間、体内に残存することができる。
 ヒトの体内(および蚊の体内)でゆっくり発育する。感染したヒトが再び蚊に刺され、ヒトに感染するスポロゾイト(胞子小体)を生み出すのに1ヶ月以上かかる。それまでには蚊はとっくに死んでいる。
 つまり、蚊⇒ヒト⇒蚊⇒ヒト……という感染サイクルを確立するのが困難であり、あまり蔓延しなかった。

●三日熱マラリア(p35)
 三日熱マラリア原虫=プラスモジウム・ヴィヴァックス。
 四日熱マラリア原虫より、人体の中で速く増殖することができる。
 〔三日熱マラリア原虫は宿主のヒト体内で生活環を完遂することができる―― 寄生体による軍隊を繁殖させ、ヘモグロビンを食べまくり、蚊に感染可能な様態である配偶子を産生する――が、これをなんと三日でやってしまう。〕

●ダフィー抗原欠失者(p36)
 ダフィー抗原……赤血球から突き出たタンパク質。三日熱マラリア原虫は、ここに取り付いて赤血球に侵入する。
 アフリカで、突然変異によりダフィー抗原を欠いた娘が生まれ、マラリア感染を免れた。
 5000年前までに、アフリカ人のすべてがその娘の末裔(もしくは同様のダフィー抗原欠失者の末裔)となった。彼らはアラビア半島や中央アジア周縁部にまで到達。
 この時期には、三日熱マラリア原虫も四日熱マラリア原虫も、全アジア、中東、ヨーロッパに広がっていた。
 ダフィー遺伝子の出現によって、何千年もの間、マラリアの脅威は軽減された。

●熱帯熱マラリア(p41)
 約2500年前、サハラ砂漠が形成され、バンツー語族がアフリカ大陸の赤道地方の雨林を切り開き、ヤム芋やプランテーンを育てるための畑を作る。
 人間に特化した ハマダラカ属の新種、アノフェレス・ガンビイが出現。
 熱帯熱マラリア原虫=プラスモジウム・ファルシパールム。多様な侵入戦略を持ち、犠牲者の赤血球の80%に感染することができる(三日熱マラリア原虫は2%ほど。幼弱な赤血球と老化した赤血球)。A・ガンビイに取り付く。

●鎌状赤血球(p45)
 1個の点突然変異によって、しなやかな赤血球が硬くこわばった三日月型の鎌状赤血球に変わる。
 鎌状細胞遺伝子を二つ持つ赤ん坊は成人前に死亡したが、ヘテロ接合体で生まれた子は、生き延びることができる。鎌状赤血球は、熱帯熱マラリア原虫に殺されるリスクを90%削減できる。
 〔鎌状細胞遺伝子は今日までに五大陸全体に広がり、アフリカ、南アジア、中東など各地の四〇%の人々の体内に潜んでいる〕。

●狩猟採集民(p58)
 農耕民であるバンツー族は、熱帯熱マラリアに対する免疫を発達させていた。
 熱帯熱マラリア感染の経験のない狩猟採集民たちは、バンツー族に接触することでマラリアに罹患、集団内で猛威を振るう。
 〔こういう遭遇の積み重ねによって、コイサン族、ピグミー族、クシ語族、あるいはマンデ諸語や大西洋諸語を話す、かつてはアフリカの広い範囲に生活圏を持っていた部族たちが激減し、尾羽打ち枯らした生き残りたちは、今日彼らがいる大陸の周辺部へと押しやられた。熱帯熱マラリア原虫がバンツー族の周りに作り上げた免疫学的防壁は、まるで正規軍のように外部からの襲撃をうまく撃退した。バンツー族の村人は放浪民を撃退するのに、体が大きくなったり強くなったりする必要はなかった。村の蚊が侵入者を二、三回刺すことで目的を達成してくれた。〕

●アーテミシニン剤(p178)
 1999年、ノバルティス社が、アーテミシニン剤と、ルミファントリンという別の抗マラリア剤との併用薬剤の販売を開始。
 併用薬剤……別の破壊方法を持った2種類の薬剤の攻撃を受けると、原虫が双方に対してともに耐性を発達させるのが非常に困難になる。
 アーテミシニンは高価だったので、併用剤と切り離して売られたり、投薬期間を短縮して投与されたりした。
 その結果、アーテミシニンに対するマラリア原虫の耐性を高めることになった。

●プラスモジウム・ノウレシ(p370)
 プラスモジウム・ノウレシ……マラリア原虫の第5の種?
 2008年、マレーシアの1000人の患者から得た試料の四分の一以上で発見される。タイと中国でもすでに見つかっている。
 もともと、サルだけに寄生すると考えられていた。好景気で、ヒトが樹木伐採のためにサルの生息域へ侵入し、感染したと考えられる。
 P・ノウレシは、マラリア全種の中でもっとも生活環が短く、驚くべき数の原虫をあっという間に放出する。

(2015/10/23)KG

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