So-net無料ブログ作成
言語・語学 ブログトップ
前の10件 | -

なぜ、日本人は日本語を説明できないのか 日本語を教えてみたいと思ったときに読む本
 [言語・語学]

なぜ、日本人は日本語を説明できないのか 日本語を教えてみたいと思ったときに読む本
 
倉本幸彦/著
出版社名:文芸社
出版年月:2017年7月
ISBNコード:978-4-286-18451-7
税込価格:1,620円
頁数・縦:163p・21cm
 
 
 日本語教師による、「導入」「読解」「教案作成」に関する指導マニュアル。対象は、現役で新人・中堅の日本語教師かと思われる。
 
【目次】
序章 なぜ、日本人は日本語を説明できないのか
第1章 基本的な文法と解説
第2章 初めての「教案作成」
第3章 初めての「導入」
第4章 初めての「読解」
 
【著者】
倉本 幸彦 (クラモト ユキヒコ)
 長野県出身。早稲田大学大学院修士課程修了(修士)。同大学日本語研究センター日本語インストラクター、ヒューマンアカデミー日本語教師養成講座講師、フジ国際語学院日本語教師。
 
【抜書】
●ヴォイス(p30)
 voice、動詞の「態」。述べられる事態がどんな人間関係で行われるのか、ということを表す文法形式。
 受け身、自発、使役、使役受身、授受表現、など。
 
●テンス、アスペクト(p31)
 tense、時制。日本語の場合、現在と未来を表す形が同じなので、テンスは、過去か、非過去かを表す。
 aspect、相。ある事態が、現在(基準時)との関わりで語ったものがアスペクト。現在完了形、現在進行形、過去完了形、過去進行形、など。
 
●モダリティー(p32)
 modality。日本語では文の最後に用いられ、その文の真実度や、話し手がその事柄をどう捉えているのか、そしてそれをどう伝えようとしているのかという、主に文の述べられ方を表す。話し手の主観が表現される。
 ~ようだ、~そうだ、~と思います、~はずがない、~に違いない、~よ、~ね、~んです、など。
 モダリティ1……事実の捉え方に関するもの。内向きのモダリティ、事態把握のモダリティ、対事的モダリティ。
 モダリティ2……伝え方に関するもの。外向きのモダリティ、伝達のモダリティ、対人的モダリティ。
 
●出来文(p68)
 レル・ラレル。受身、可能、自発、尊敬。
 何かが「出来(しゅったい)する」文という意味。尾上圭介の説。
 自発形……何かの動作が自然に出てきてしまう、ということ。
 可能形……〈意識しないのに出て来てしまう〉行動(自発)→(その反対は)〈意識してもできない(出て来ない)〉動作(不可能) → (さらにその反対が)〈意識すればできる(出て来る)〉動作(可能)
 受身形……〈自分が意識しないのに、誰かがする行為が自分のところに出現してくる〉。「迷惑の受身」から発展。
 尊敬形……もともと尊敬の形は天皇に対してだけ使う表現だった。天皇=神。神様の行いはすべて自然に出て来るものだと考えられていた。神様の行為は、「自発」と同じように、〈考えなくてもできる〉行為。
 
●レタス言葉、さつき言葉(p69)
 レタス言葉……飲めれる、聞けれる、書けれる、などのように、可能形に「れ」を足す言い方。
 さつき言葉……やらさせる、買わさせる、などのように、使役形に「さ」をつける表現。従来、「せる」を使う五段活用動詞に、「させる」をつけて使う。使役を「させる」で統一する単純化? 
 
(2017/10/14)KG
 
〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

日本語を作った男 上田万年とその時代
 [言語・語学]

日本語を作った男 上田万年とその時代

山口謠司/著
出版社名 : 集英社インターナショナル
出版年月 : 2016年2月
ISBNコード : 978-4-7976-7261-9
税込価格 : 2,484円
頁数・縦 : 549p・20cm


 明治期、言文一致の日本語を作ることに執念を燃やした上田万年(かずとし)を中心に、この時期の日本語事情を論ずる大著。「研究、教育、政治という与えられた三つの術を使って、万年は、言文一致を行おうとして旗を振った。」(p.4)

【目次】
第1部 江戸から明治~混迷する日本語
 第1章 明治初期の日本語事情
 第2章 万年の同世代人と教育制度
 第3章 日本語をどう書くか
 第4章 万年、学びのとき
 第5章 本を、あまねく全国へ
 第6章 言語が国を作る
 第7章 落語と言文一致
第2部 万年の国語愛
 第8章 日本語改良への第一歩
 第9章 国語会議
 第10章 文人たちの大論争
 第11章 言文一致への道
 第12章 教科書国定の困難
 第13章 徴兵と日本語
 第14章 緑雨の死と漱石の新しい文学
 第15章 万年万歳 万年消沈
 第16章 唱歌の誕生
 第17章 万年のその後

【著者】
山口 謠司 (ヤマグチ ヨウジ)
 大東文化大学准教授、博士(中国学)。1963年、長崎県生まれ。大東文化大学文学部卒業後、同大学院、フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。専門は中国および日本の文献学。

【抜書】
●上田万年(p22)
〔 上田万年(一八六七~一九三七)、言語学者、国語学者、東京帝国大学国語研究室初代主任教授、国語調査委員会主事。東京帝国大学名誉教授。ドイツに官費留学し言語学を修める。バジル・ホール・チェンバレンの弟子。万年の弟子には新村出、橋本進吉。小説家・円地文子の父。著書に『国語のため』『国語のため2』(いずれも冨山房刊、現・平凡社東洋文庫所収)などがあり、墓地は谷中霊園にある。〕
 明治18年、東京大学(翌年、「帝国大学」に改称)に入学。漱石は、明治23年の入学。

●慶応3年生まれ(p25)
 慶応3年(1867)に生まれた人たち。
 上田万年、夏目漱石、斎藤緑雨、尾崎紅葉、正岡子規、幸田露伴、宮武外骨、南方熊楠。

●謡曲(p32)
 江戸時代、参勤交代で地方からやってきた大名たちには、謡曲(能楽)という共通の教養があった。それが彼らの共通語だった。
 謡(うたい)を謡うための発音の仕方を説明した本も出版されていた。謡の内容は中国古典と日本文学を元にしたもので、語彙も漢語から和歌に使われる洗練された大和言葉で占められ、「候文」で記されている。
 元和卯月本(げんなうづきぼん)と呼ばれる江戸元和6年(1620)に出版された百番の謡本は、大名家で必ず持っているものであった。

●教導職(p35)
 明治5年、神祇省を廃止し、神宮祭主近衛忠房、出雲大社大宮司千家尊福、東本願寺法主大谷光勝、西本願寺法主大谷光尊を「教正」として、その下に「教導職」を置いた。
 教導職……言葉を含め、生活の根底にある思想を、西洋列強に対抗できる「近代」的なものにするための機関。その思想は、キリスト教に匹敵する「一神教」でなければならない。
 教導職は、大衆に向かって、天皇を万世一系の神として崇めること、そして「国」というのがこれまでの「藩」ではなく、「日本」を表すこと、身を粉にして国と天皇に尽くすことを説教する役職だった。
 三条教則……敬神愛国、天理人道の明示、皇上奉戴と朝旨遵守。

●新島襄、内村鑑三(p51)
 新島襄(1843‐1890)や内村鑑三(1861‐1930)は、日本語を話すことはできても、日本語で書かれたものを読解することはほとんどできなかった。英訳本か、本を読んでもらうことでようやく耳から理解した。

●明六社(p52)
 明治6年、森有礼、西村茂樹を発起人とし、福沢諭吉、西周、仲村正直、加藤弘之、外山正一などが会員となり、明六社を興し、翌明治7年、『明六雑誌』を創刊した。わが国最初の学術雑誌。
 森有礼、西周らは、日本語ローマ字化論。外山正一は漢字廃止論。

●外山正一(p53、p79)
 万年より2歳年上。
 14歳の時に蕃書調所(のちの洋書調所、開成所)に入学し、英語を修める。午後3時に授業が終わると、湯島天神下にあった箕作貞一郎(麟祥)の塾に通って英書の講読を受け、さらに大岡芳之助という人を呼んで個別の指導を仰いだ。
 16歳で開成所の教員となり、慶応2年、イギリス公使パークス、勝海舟の推挙によって、中村正直らとともに幕府派遣留学生としてイギリスに留学。幕府瓦解によって慶応4年4月に帰国。
 明治3年、外務省弁務少記として渡米、辞職してミシガン大学に入学、哲学と化学を専攻。5年におよぶ学究によって、「社会学」という日本になかった新しい学問を身につけて帰国。「スペンサー輪読の番人」と呼ばれ、自由民権運動の思想的な支柱となる「社会進化論」「社会有機体説」などを我が国に紹介した。
 帰国後、官立東京開成学校で社会学を教える。明治10年、開成学校が東京大学に改編され、教授兼文学部長に。イギリスの言語学者チェンバレンを教師に迎える。万年の人事にも深く関わる。

●チェンバレン(p96)
 バジル・ホール・チェンバレン、1850‐1935。
 父は海軍将校。6歳の時に母が死に、パリに住む伯母のもとで育つ。フランス語、ドイツ語を覚える。17歳、1年間スペインで過ごし、スペイン語を身につける。
 オックスフォード大学に進学して古典学を学びたかったが、父の勧めでバーリングス銀行に就職。しかし間もなく、神経を病んだため退職。
 銀行を辞めた後、地中海沿岸を旅行し、ラテン語、ギリシャ語など、11か国語をマスターした。
 明治6年、22歳で、療養のために来日(日本を離れるのは60歳)、日本語を学ぶ。古典、方言、文字など、日本語に関してあらゆる方面から質の高い研究を行う。
 明治7年~15年、海軍兵学寮(のちの海軍兵学校)で英語を教える。
 明治16年(1883)、『古事記』の英訳。
 明治19年、35歳、帝国大学和漢文学科及び博言学科(新設)の教師に任命される。この年、アイヌ語の研究に着手する。三冊のアイヌ関連の文書の目録を作成。民話を採集し、『アイヌ民話』にまとめる(1888年)。
 万年は、チェンバレンの日本語の文法の講義に触発され、日本語研究を志すようになる。
 『朝鮮・琉球航海記』(岩波文庫)の著者バジル・ホールは母方の祖父。

●広文庫(p115)
 『広文庫』……物集高見が編纂した、明治以前の古典文献の串刺し検索、索引集。大正7年(1918)に完成。全20冊、1冊平均600ページ以上。
 息子の物集高量、明治39年(1906)、朝日新聞主催の第1回懸賞小説に「罪の命」を応募、第一席の当選となる。賞金500円(現在の1千万円相当)は、父の『広文庫』のために使われてしまった。しかし、この賞により、高量は大阪朝日新聞に入社し、夏目漱石の『虞美人草』連載の編集担当となる。

●東京書籍出版営業組合(p158)
 明治17年11月、政府は、各種産業の助成を行うため、「同業組合」の設立を奨励する「同業組合準則」を通達。
 明治20年11月、「東京書籍商組合」(明治13年12月設立)と「地本錦絵営業組合」(明治14年3月設立)が合併し、「東京書籍出版営業組合」創立。出版と販売、取次の三者が一体となった組合。

●速記(p220)
 日本の速記は、岩手出身、田鎖(源)綱紀(たくさり・みなもと・こうき、1854‐1938)が、明治5年ごろ、独力で発明。米国のグラハム式を日本語に応用したものであるとされる。明治15年10月28日、「日本傍聴筆記法講習会」を立ち上げた。第1回卒業生に、若林玵蔵(かんぞう)。
 若林、明治17年、初代三遊亭円朝の落語を速記で起こし、本にした。『怪談牡丹灯籠』。
 速記では、日本語の発音を「単音」「複音」に大別。方言も含め、日本語は、205音ですべて写し取ることができる。丸山平次郎『ことば乃写真法(一名筆記学楷梯)』大阪森玉林堂、1885年。

●『帝国文学』(p259)
 明治28年(1895)1月、『帝国文学』創刊。発起人並びに役員として、井上哲次郎、上田万年、三上参次、高津鍬三郎、芳賀矢一ら、帝国大学出身が名を連ねる。会員には、「高等師範学校講師大学院学生文学士 夏目金之助」も。
 明治24年10月創刊の『早稲田文学』に対し、官学風・高踏的立場から論説・詞藻・雑録・文学史料・雑評を載せる。
 大正9年(1920)1月に廃刊。

(2016/8/13)KG

〈この本の詳細〉


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

孤高 国語学者大野晋の生涯
 [言語・語学]

孤高 国語学者大野晋の生涯 (集英社文庫)

川村二郎/著
出版社名 : 集英社(集英社文庫 か73-1)
出版年月 : 2015年10月
ISBNコード : 978-4-08-745373-7
税込価格 : 799円
頁数・縦 : 366p・16cm


 歯に衣着せぬ鋭い舌鋒で「抜き身の刀」と呼ばれた国語学者、大野晋の伝記を、親交のあった元新聞記者が綴る。2009年9月に東京書籍より刊行された単行本の文庫版である。
 大野晋というと、「日本語タミル語起源説」や、『日本語練習帳』など、風変わりな学者という印象しかなかったが、真摯に学問研究に邁進した立派な学者だったということが分かった。
 国語教育に対しても一家言もっていた。小学校でもっと国語の時間を増やすべきだという主張はうなずける。優れた人間を育てるには、国語力の涵養が必要である。社会や理科という教科をなくして、その分野の良書を読ませればいいとも言う。これも一理ある。ただ、理科の実験や、動植物の育成・栽培などは行ってもいいと思うが……。社会も、地図の読み方くらいは勉強させたい。
 また、国語教育を充実させるのはいいが、読書感想文は書かせないほうがいい、とも。なぜなら、読書嫌いを増やす結果になるからである。それよりも、きちんと漢字や、文法、発音を教え、論理的な文章を書く訓練をさせるべきである。詩も、創作させるのでなく、優れた詩(歌)を徹底的に記憶させるほうがよい、と説く。確かに、そのほうが豊かな国語力を身につけることにつながるだろう。
 これまであまり深く考えたことはなかったが、「日本語の起源がタミル語である」という説を掘り下げてみる必要があるかもしれない。

【目次】
プロローグ 熱風
第1章 下町
第2章 山の手
第3章 戦争
第4章 敗戦
第5章 国語
第6章 タミル語
エピローグ 遺言

【著者】
川村 二郎 (カワムラ ジロウ)
 1941年、東京生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、朝日新聞社に入社。『週刊朝日』編集長、朝日新聞編集委員などを歴任。

【抜書】
●蛮カラ(p71)
 〔「蛮カラ」という言葉は、明治時代に西欧に傾倒した新しもの好きの人たちが好んだ、襟の高い洋服(ハイ・カラー)から生まれた「ハイカラ」に対抗する意味でつくられたものである。言葉の根底には、侮蔑や嫉妬や羨望が入り混じった感情がある。〕

●伊藤忠兵衛(p97)
 伊藤忠兵衛(2代目)……滋賀県に生まれ、八幡商業に学ぶが、父親の死で進学を断念し、18歳で家業の綿糸卸商を継ぐ。23歳でイギリスに留学。32歳で「伊藤忠商事」を設立する。大正9年(1920)に始まったカナモジ運動の推進者。
 大野晋は、第一高等学校2年から東京大学卒業まで、伊藤の奨学金給付を受けることになる。対象者は十数人。

●助動詞の寿命(p304)
 助動詞の寿命は、だいたい500年。500年たつと、姿を消してしまうか、元の形がわかりにくくなるほど変わってしまう。
 「つ、ぬ、たり、り、き、けり、けむ」は、口語では消えた。
 (室町時代)まいらする→まるする→まっする→まっす→ます(現代)
 「る・らる・す・さす」は、「られる、される」の形で残っている。

●大野晋の学者像(p323)
 〔大野の頭の中にある学者は、学問研究に誠実で、事実に対して謙虚で、メンツなどにはこだわらない、そういうものだったのだろう。〕

●日本語とタミル語の間にある共通点(p334)
 大野が20年間におよぶ研究から到達した結論。
 ①すべての音素にわたって音韻の対応がある。
 ②基礎語を中心に対応する単語が500語近くある。
 ③文法も構造も共通するところがある。
 ④助詞、助動詞が音韻でも用法でも対応し、係り結びの法則にも共通性がある。
 ⑤五七五七七という歌の韻律が共通している。

●日本を救った言葉(p343)
 東京書籍と時事通信社が共同で「日本語検定」を始めることになり、監修役を引き受ける。2007年2月27日、日本経団連会館で行われた記者会見にて。
〔 会見で大野は、言葉が日本を救った例を語った。ポツダム宣言の中の一節、「天皇はis subject to連合国最高司令官」の訳である。
 普通は「従属する」と訳すところを外務省事務次官の松本俊一は、「そんな訳にすれば、怒った軍部が焦土作戦に出る」と考えて、「制限の下に置かれる」と訳し、天皇のもとに届けた話である。
 松本にこういう訳ができたのは、彼に日本語の教養があったからである。日本を救ったのは、言葉の力であると、大野は諄々と説いた。そして、
「私は日本語をいくらか勉強したので、少しわかるようになりました」
といってから、
「日本語が話せて、日本語の読み書きができる。その程度で言葉がわかるとは思わないで下さい。もっと本気で、日本語に対して下さい」
 といって、会見を終えた。これが、公式の場で発した大野の最後の言葉となった。大野の著書を読んだことのある者は、「遺言」と聞いた。〕

(2016/1/16)KG

〈この本の詳細〉


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

誤解学
 [言語・語学]

誤解学 (新潮選書)
 
西成活裕/著
出版社名 : 新潮社(新潮選書)
出版年月 : 2014年5月
ISBNコード : 978-4-10-603746-7
税込価格 : 1,296円
頁数・縦 : 197p・20cm
 
 
【目次】
第1章 誤解とは何か
 9つの典型
 その1 世代間の会話
 その2 説明不足
 その3 聞き違い
 その4 記載ミス
 その5 異文化交流
 その6 男と女
 その7 インターネット
 その8 詐欺
 その9 健康に関する誤解
 誤解と笑い
 誤解が生み出す価値

第2章 誤解の理論
 ミニマムモデルを考える
 困難は分割せよ
  ほか

第3章 誤解の原因
 コミュニケーションの渋滞
 伝え手側の問題
  ほか

第4章 誤解の後で
 三つの分類
 収束型
  ほか

第5章 誤解と社会
 経済と平均値の誤解
 相関と因果の誤解
  ほか

【著者】
西成 活裕 (ニシナリ カツヒロ)
 1967(昭和42)年、東京生れ。東京大学先端科学技術研究センター教授。東京大学卒。修士及び博士課程は航空宇宙工学を修了、専門は非線形動力学、渋滞学。2007(平成19)年、『渋滞学』(新潮選書)で講談社科学出版賞と日経BP・BizTech図書賞を受賞。2013年に「科学技術への顕著な貢献2013(ナイスステップな研究者)」に選ばれる。

【抜書】
●IMV分析(p45)
・I→M→V
 I(intention)=真意・意図
 M(message)=情報
 V(view)=見解

・I→M→(U→)V
 U(understand)=理解

・送り手A、受け手B
 表面合意……MA=MB
 解釈合意……VA=VB
 真意合意……IA=IB

・K(こだわり)=頑固度
 頑固度が、Vに影響を与える。

・G=伝達度
 V=G×I

・IA1=KA×IA0+(1-KA)×GB×IB1
 IB1=KB×IB0+(1-KB)×GA×IA0

●チョン(p118)
 バカチョンの「チョン」は、朝鮮とは無関係。日本に昔からあった言葉。
 仮名垣魯文『西洋道中膝栗毛』に、「ばかだの、ちょんだの、野呂間だのと」と書かれている。
 頭の悪いさまを表す。

●あきらめる(p153)
 あきらめる=「明らかに現実を知る」という意味の仏教の大事な教え。浄土宗證願寺(しょうがんじ)の住職、春日了氏による。

●成長なき経済(p163)
〔 世の中の経済は常に成長し続けるのだろうか。経済学はこの仮定のもとで成り立っており、いろいろな経済理論が成長を前提として作られている。特に今はデフレ脱却ということがよく新聞やニュースに出てくるが、実は金融政策でデフレと戦うこと自体、誤解であると私は考えている。〕
 1972年、ローマクラブの報告書『成長の限界』……今後百年以内に人類の成長は限界に達して世界は危機に陥る。この破局を避けるためには、資源は無限にあるというような成長経済の考え方を見直す必要がある。
〔 お金の世界だけで考えれば、無限に増殖できるように思えるが、やはり経済の実体と離れてしまうと、無理が生じてダメになるのだ。〕
 成熟社会では、必ずしも経済成長が幸せを意味するものではない。思うような成長はもはや不可能になりつつある。
〔 したがって、この問題を先送りせずに、今こそ皆で経済システムのあり方を考え、成熟社会への大きな転換を図らないといけないのだ。そのためには、ブータンなどの国で模索しているように、経済成長以外の指標を取り入れる必要がある。例えば社会の中でどれだけ人どうしがつながっているコミュニティが発達しているか、またどれだけ自然とつながって生きているか、そして人々の精神の安定度合などが今後重要な指標になっていくと私は考えている。もちろんこれらは定量化しにくい指標であるが、例えばコミュニティに関しては、最近のネットワーク科学の進展により、つながりを定量化できる指標もいろいろと考案されつつあるのだ。こうした成果を経済学と融合していくことも科学者の重要な研究なのである。〕

●バケツリレー理論(p169)
 科学的ゆとり……〔はっきりと目的があり、その実現のためにはあえて今、マイナスをとる方が有利であり、それにより将来高い確率でプラスになるようにわざと短期的に損に見えるようなことをする、といういうものを私はゆとりと区別し、「科学的ゆとり」と名付けた。〕昼食後にあえて十数分の昼寝をすることで、その後の授業での集中力が増す、など。
 バケツリレーは、水をバケツ一杯入れると重くなって手渡しのスピードが遅くなる。水が少ないと軽いので早く運べるが、タンクに注ぐ水の量が少なくなる。
 最も早くタンクを一杯にできる効率的な量は、バケツの水約7割。

●深読みは2段まで(p181)
 0から100までの中から好きな数を皆がそれぞれひとつ選ぶ。
 それらの数の平均の三分の二に近い数を選んだ人が賞金をもらえる。
 皆がバラバラに選べば、平均値は50。33を選んだ人が賞金を得る。
 皆がそう考えたとしたら、平均は33に近くなり、22を選ぶのが良い。
 これをずっと繰り返していくと、0を選ぶのが合理的だということになる。
 世界kkk的規模の大実験では、平均はおよそ22になった。「人間の深読みは2段まで」。

●相自時妙(p185)
 ゴールドラット・コンサルティングの岸良裕司。意見対立を解消する術。
 相……相手の要望を満たす方法を考える。「自分が行動すると、なぜ相手の要望が満たされないと思いますか? 自分が行動しても相手の要望を満たす方法は?」
 自……相手の要望を満たしながら、自分の要望を満たす方法を考える。「相手が行動すると、なぜ自分の要望が満たされないと思いますか? 相手が行動しても自分の要望を満たす方法は?」
 時……時と場合によって両者の要望を使い分ける。「自分と相手の行動は、どういう時に対立しますか? 両立させる方法は?」
 妙……これまでにない第三の妙案を考え出す。「なぜ自分と相手の要望は両立できないと思っていますか? 本当にできないのですか?」

(2015/1/12)KG

〈この本の詳細〉


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

金田一家、日本語百年のひみつ
 [言語・語学]

金田一家、日本語百年のひみつ (朝日新書)

金田一秀穂/著
出版社名 : 朝日新聞出版(朝日新書 476)
出版年月 : 2014年8月
ISBNコード : 978-4-02-273576-8
税込価格 : 821円
頁数・縦 : 220p・18cm
 
 
 アイヌ語学者金田一京助、国語学者金田一春彦、そして日本語学者金田一秀穂。学者一家の3代目が、祖父について、父について、金田一について、そして日本語について、語る。

【目次】
第1部 今の日本語はどんな姿か
 平成のことばたち
 辞書はどうなるべきか
 IT時代の日本語
第2部 日本語三代
 初代の京助
 二代目の春彦
 親子ニホンゴ対話
 三代目・秀穂のでき上がり

【著者】
金田一 秀穂 (キンダイチ ヒデホ)
 1953年東京に生まれる。上智大学心理学科卒、東京外国語大学大学院修了。杏林大学外国語学部教授。中国大連外語学院、コロンビア大学などの講師、国際交流基金日本語国際センター客員講師、ハーバード大学客員研究員などを歴任。

【抜書】
●奈良田(p141)
 山梨県の山奥に奈良田(ならだ)という集落がある。〔南アルプスの山並みの作る谷の最奥に位置する。鳳凰三山と北岳のつくる谷の底のような場所である。〕
 アクセントが関西式に似ていて、高低が逆になる。
 「ち」→「てぃ」、「つ」→「とぅ」と発音する。
 隣の村(山を二つ三つ越えたところにある)の言葉とも異なり、古くから完全に隔絶された村。
 岩塩があったので、周囲と交流する必要がなかった? 明治になるまで、そこに人が住んでいるということが知られていなかった。

●語源(p207)
〔 父が、若い頃、その父である京助に、自分は国語学者になりたいと言った時、京助は大変喜んだのだが、春彦に、それにつけても決して研究してはいけない分野を三つ教えたそうだ。一つは日本語の起源、一つは詩的言語、そしてもう一つが語源。
 語源に関しては、当時、柳田國男という巨人がいた。恐ろしいほどの博覧強記であり、日本全国の暮らしやことばを知っていた。しかし、柳田の強みはそれだけではなく、その知識を現代のさまざまな事象に結び付けることの出来る天才的なひらめきがあった。そういう人であれば語源を調べても、説得力がある。京助は柳田に私淑していて、すぐそばでその凄さを見せ付けられていたのだろう。博覧強記だけなら勉強すれば何とかなるかもしれないが、知識を結び付けるひらめきを、春彦は持っていない。京助はそのように思ったのであろう。〕

(2014/10/13)KG

〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

漢字世界の地平 私たちにとって文字とは何か
 [言語・語学]

漢字世界の地平: 私たちにとって文字とは何か (新潮選書)

齋藤希史/著
出版社名 : 新潮社(新潮選書)
出版年月 : 2014年5月
ISBNコード : 978-4-10-603750-4
税込価格 : 1,296円
頁数・縦 : 223p・20cm


【目次】
第1章 漢字とは何か―文字が作る世界
第2章 言と文の距離―和語という仮構
第3章 文字を読み上げる―訓読の音声
第4章 眼と耳と文―頼山陽の新たな文体
第5章 新しい世界のことば―漢字文の近代
終章 文化論を超えて

【著者】
齋藤 希史 (サイトウ マレシ)
 1963年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退(中国語学中国文学)。京都大学人文科学研究所助手、奈良女子大学文学部助教授、国文学研究資料館文献資料部助教授を経て、東京大学大学院総合文化研究科教授(比較文学比較文化)。著書に『漢文脈の近代―清末=明治の文学圏』(名古屋大学出版会、サントリー学芸賞)、『漢文スタイル』(羽鳥書店、やまなし文学賞)など。

【抜書】
●甲骨文字(p15)
 1899年、清の国子監祭酒(教育行政長官)王懿栄(おういえい、1845-1900)が持病のマラリアを治すために、その薬となる竜骨(動物の骨の化石)を薬店から購入したところ、文字が刻まれているのを発見し、収集を始めたという逸話がある。実際は、骨董商が王のもとに持ち込んだのが始まり?
 王のもとに仮寓していた劉鶚(りゅうがく、1857-1909)が、1903年、収集した甲骨文字の資料集『鉄雲蔵亀』を出版。1899年に甲骨(劉は「亀板」とする)が河南省湯陰県で出土し、1902年までに五千片の甲骨が収集され、そこから千片あまりの拓本が収められた(自序による)。
 すでに、甲骨文字が殷代の卜占を記録した文字であることが明らかにされている。

●武士道(p46)
 日本で『論語』が好んで読まれた理由。貝塚茂樹『孔子・孟子』「世界の名著3」(中央公論社、1966、pp.37-38)による。
 「私は、根本的には、孔子が生まれた春秋末期の社会と、徳川時代の社会とが、かなり類似点をもっていたせいだと考える。」
 「孔子の学園は、新興の武士階級に属する子弟を収容し、彼らに君子を理想の人間像として、貴族的な武人の教養を身につけさせようとしたものだといえる。孔子の弟子の曾子になると、武士の一面をもつ君子の典型を、新興の武士階級をさす「士」におきかえた。曾子の学説が、のちの儒教の正統になったのであるから、儒教の中心には中国古代の武士道徳が強く流れている。
 徳川家康が『論語』の講義をきき、部下にも『論語』の読書を奨励したのは、儒教道徳のなかに「君子」「士」を理想の人間像とする武士的道徳が内在していて、これが徳川幕府の武士道を形成するのに非常に助けとなることを見ぬいたからである。」

●朝鮮通信使(p50)
〔 こうして、地域の独自性を色濃く保ちながら、漢字圏は東アジア全域に広がった。漢籍が流通し、情報がもたらされ、限定はあるものの、人が往来した。たとえば朝鮮通信使の来日は数少ない交流の機会であり、日本の儒者は通信使との面会を熱望した。漢字圏における「士」の交流を切望したのである。東アジア的知識人として、彼らは共通の基礎を有していた。彼らにとって、通信使と筆談を交わし、詩をやりとりするのは、自らが中華文明の「士」の世界にいることを確認できる得難い機会であったのだ。なお、筆談は彼らの正当な交際手段であって、ことばが通じないための補助手段なのではない。口舌の徒ではなく文章の士であるのだから、悠揚迫らず筆を執ることこそふさわしい。〕

●パスパ文字(p754)
 パスパ文字……元朝の国字として、世祖(クビライ)がチベット僧のパスパ(パクパ)に命じて作らせた表音文字。1268年に公布。それまではウイグル式モンゴル文字が使われていたが、元朝の支配領域が広がり、言語も様々だったので用に耐えなくなった。
 元朝(大元ウルス)で刊行された『蒙古字韻』序文による。
 『蒙古字韻』……パスパ文字を漢字の音韻に対照させた書物。

●寛政異学の禁(p132)
 寛政異学の禁……寛政2年(1787年)、昌平黌(しょうへいこう)の教学体制を建て直すために、陽明学や古学あるいは折衷派など、朱子学以外の儒学の講学を禁じた。寛政の改革の一部。
 科挙を参照した「学問吟味」と呼ばれる試験も行われるようになった。教育=登用システムとしての官学の強化。
 学問吟味……15歳以上の者に対し、経学、歴史、文章の試験を行う。習得した儒学の知識や思考を問う。
 素読吟味……10歳までの者に対して四書の素読を、15歳までの者に対して四書五経の素読を試験。漢籍の読み方を問う。素読が全国津々浦々で行われるようになった。
 頼山陽の父頼春水、広島藩に儒者として抱えられ、朱子学による藩学の統制を主張し、学問所を設立。松平定信が寛政異学の禁のモデルとした。

●明治以降の漢語漢文の形成(p173)
〔 井上(哲次郎)たちは、西洋の思想を西洋の思想として理解するために、等価となりうる訳語の選定に意を砕いた。それは日常語からではなく、抽象語である漢語から構成された。この方法は、第四章で述べた、漢文を漢文としてなるべく和語に直さずに読もうとした近世後期の漢文訓読の技法と共通する。英文読解の方法が漢文訓読の方法を真似ていることがよく指摘されるが、訓読の影響を言うのであれば、こうした思考法の継承にも意を払うべきであろう。新しい言語空間の構築こそ、井上たちの目指したものだったのである。〕
 〔漢語漢文の世界が西欧語との対照によって再編され、新しい漢語漢文の世界が形成された。伝統的な漢語の中に新しい漢語が導入されたのではなく、そもそも全体の配置が変わったのである。漢語漢文は基点を伝統的な漢籍から西欧の原書に移した。その言語空間は、西欧の言語空間と翻訳可能な空間として、新たに形成されたのである。そしてそれを基盤として、近代東アジアの思考と修辞は展開する。
 明治期の日本において、訓読体が普通文として流通した背景には、こうした言語空間の形成があった。かつて「仕癖ハ二番目ノ性質ナリ」と訳されていた文章は、「習慣ハ第二ノ天性」と訳されることになる。〕(p176)
〔 福澤(諭吉)自身にとっては、むしろ訓読体で書くほうが実用性は高かったということになる。しかしそれでは庶民には届かない。訓読体における実用性とは、近世における知的エリートにとっての実用性であって、特段の教育を受けずに日常の言語生活のなかで理解できるような実用性からは遠い。しかし、一定の教育を受ければ習得可能だという地点こそ、近代書記体としてふさわしいものであったとも言える。国民国家以前というリテラシーの格差が大きい社会にあっては、どこに実用の基準を定めるかが重要であり、また、それはつねに調整されつづけるものでもある。国民語には,国民語としての威信が必要とされ、俗に従えばよいというふうには認識されなかった。近代訓読体は、福澤の主張する俗文体も参照しつつ、一方で訓読体としての権威も保持させながら、成立したのであった。
 近世から近代へのことばの変容において、訓読文というしくみの果たした役割は大きい。定型化された訓読にもとづくことで文体の規範を提供すると同時に、文と音声とが「顚倒」せずに対応可能であることを示し、文の意味を直接あらわす「俗訳」の有効性を示す。言と文とのあいだにあって、その分離と交通をつかさどる弁のようにふるまっているのである。〕(p191)
 つまり、日常の文章が、候文から漢語漢文に転換した。

(2014/9/5)KG

〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

日本語とハングル
 [言語・語学]

日本語とハングル (文春新書)
野間秀樹/著
出版社名 : 文藝春秋(文春新書 973)
出版年月 : 2014年4月
ISBNコード : 978-4-16-660973-4
税込価格 : 832円
頁数・縦 : 237p・18㎝


 ハングルという「文字」と、日本語という「言語」を対照した言語学。日本語、そして韓国語の特徴を照らし出す。

【目次】
第1章 ハングルから照らすアングル―いい按配の構図
第2章 ハングルから日本語の音と文字を照らす―文字のガラパゴス列島を行く
第3章 ハングルから日本語の語彙を照らす―単語の饗宴・単語の迷宮
第4章 ハングルから日本語の文法を照らす―西欧語文法よ、さようなら
第5章 ハングルから日本語の“書かれたことば”を照らす―文体万華
第6章 ハングルから日本語の“話されたことば”を照らす―えっ、私、こう話してた?

【著者】
野間 秀樹 (ノマ ヒデキ)
 言語学者。国際教養大学客員教授。前東京外国語大学大学院教授。著書に『ハングルの誕生』(平凡社、第22回アジア・太平洋賞大賞)など。2005年大韓民国文化褒章、2012年周時経(チュ・シギョン)学術賞。リュブリアナ国際版画ビエンナーレ、ブラッドフォード国際版画ビエンナーレなど、美術家としての活動もある。

【抜書】
●倭館(p26)
 倭館……朝鮮にあった日本人街、日本人居留地。
 草梁(チョリャン)倭館……釜山に1678年に作られた。10万坪。出島4,000坪、唐人屋敷1万坪弱。
 草梁倭館には、雨森芳洲(1668-1755)が対馬藩から勉強しに来ていた。雨森、中国語や朝鮮語に通じた儒者。

●拗音(p49)
 拗音は、古い日本語にはなかった。漢字と漢字音が入ってくることで生まれた音。

●be動詞(p143)
 be動詞……互いに出処の異なる単語が、現在のようなパラダイムをなすようになった。
 be……ドイツ語の(Ich )binと同根。
 is……ist(ドイツ語)、est/esse(ラテン語)
 are……古英語の北部イングランドの方言形から。
 was……古いノルウェー語のveraと同語源。

●形態論、統辞論(p159)
 形態論……単語の形、働き、意味を扱う。単語の内部。
 統辞論……文の形、働き、意味を扱う。単語の外、単語と単語の関わり。

●リングア・フランカ(p181)
 lingua franca……もしくはリンガ・フランカ。イタリア語。「フランクの言語」の意味。間言語的な「共通語」「通商語」。

(2014/7/29)KG

〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

驚くべき日本語
 [言語・語学]

驚くべき日本語 (知のトレッキング叢書)

ロジャー・パルバース/著 早川敦子/訳
出版社名 : 集英社インターナショナル(知のトレッキング叢書)
出版年月 : 2014年1月
ISBNコード : 978-4-7976-7265-7
税込価格 : 1,080円
頁数・縦 : 185p・19cm

 
■日本語はリンガ・フランカになり得る
 英語を母語とし、20歳を過ぎてからロシア語、ポーランド語、日本語を学んだロジャー・パルバースによる、日本語讃歌。
 彼によれば、話し言葉としての日本語は、外国人にとって習得するのが簡単な言語であるという。「世界言語」(リンガ・フランカ)に最も向いているとまで論じる。それは、語彙(特に動詞)が少なく、動詞の変化や時制がシンプルだからだ。「てにをは」で格を表せるなど、膠着性も利点として挙げている。音素の少なさは指摘していないが、これは、日本語に特有ではないのか?
 まあ、その通りだとしても、問題は書き言葉としての日本語だろう。これは、日本人でさえてこずっている。

【目次】
第1章 言葉とは何
 言語は、一言語から新しい多言語へと分岐した
 言葉は「敵」と「味方」を区別する道具になっていった
  ほか
第2章 日本語は曖昧でもむずかしい言語でもない
 日本語は、「世界言語」に最も向いている言語の一つである
 日本語はむずかしいという神話はなぜ生まれたのか?
  ほか
第3章 日本語―驚くべき柔軟性をもった世界にもまれな言語
 日本語は「かな」を足すだけで、別のニュアンスを加えられる
 柔軟性のある日本語は他言語ほどの語彙を必要としない
  ほか
第4章 世界に誇る美しい響きの日本語とは
 言葉の「響き」とは何か
 言葉の響きと意味の結合から生まれるイメージが、美しさの基準となる
  ほか
第5章 「世界語」(リンガ・フランカ)としての日本語
 かつての植民地化時代、その可能性はあった
 もし日本語が植民地で国際語化していたら、日本語はどうなっていたか?
  ほか

【著者】
パルバース,ロジャー (Pulvers, Roger)
 1944年アメリカ生まれ。作家/劇作家/演出家。ハーバード大学大学院ロシア地域研究所で修士号を取得。ポーランド、フランスへの留学後、1967年よりほぼ半世紀を日本で過ごし、英・露・ポーランド・日本語の4カ国語をマスター。日本各地を旅し、日本と日本人の特質と独自性に驚嘆。大島渚監督作品『戦場のメリークリスマス』の助監督などを経て執筆活動を開始。宮沢賢治の作品の英語翻訳にも数多く携わり、その功績から第18回宮沢賢治賞(2008年)、第19回野間文芸翻訳賞(2013年)を受賞。

早川 敦子 (ハヤカワ アツコ)
 1960年生まれ。津田塾大学学芸学部英文学科教授。専門は20世紀から現代にいたる英語圏文学、翻訳論。

【抜書】
●白紙状態(p50)
 白紙状態(タブラ・ラサ)。外国語を習得するコツは、第一言語を忘れ、頭と心を白紙状態に戻すこと。ベラスケスの絵画「シビュラ」(1648年)を引用。
〔 日本語であれ他の言語であれ、世界のすべての人にとって外国語の習得を可能にするのは、生まれついての第一言語の論理を消し去る能力だということです(それさえできれば、ほとんどの外国人が日本語を完璧に習得することは可能です)。〕(p59)

●動詞(p78)
 動詞が少なく、語尾変化が比較的規則的で易しく、時制がシンプルなことが、日本語が覚えやすい理由の一つ。
 〔日本語という「車」は、世界中のだれにとっても非常に運転しやすい言語だといえます。その車には、日本語の動詞という、とてもスムーズで話し手の指示に規則的に対応する、信頼すべきアクセルがついているのです。〕

●なんとなく(p89)
 〔他のどの国よりも日本ではるかに長く暮らしたために、わたしは日本人のようになってきたと思っています。そして、他のどの国よりも、生まれ育ったアメリカよりも、現在市民権のあるオーストラリアよりも、日本こそが完璧にくつろげる居場所だと感じます。
 そんなわけで、「なぜ日本が好きなのですか?」と尋ねられるたびに、わたしはなぜかこんなふうに答えてしまいます。
「まあ、なんとなく……」〕

●ら抜き言葉(p122)
〔 「見られる」を「見れる」、「食べられる」を「食べれる」と表現する、比較的新しい「ら抜き」言葉の現象もまた、省略形の一種だとわたしは思います。実際、「見れる」や「食べれる」という表現のほうが、旧い使い方よりも、ずっと身近で「正しい」表現のように聞こえます。〕

●パプアニューギニア(p160)
 パプアニューギニア……面積は日本の約1.2倍。700万人の住民が、800の異なる言語を話している。
 異なる言語を話すことで、「彼ら」と「私たち」を区別している。

●リンガ・フランカ(p184)
 リンガ・フランカ=世界の共通言語。
 日本語は、二つの条件が満たされれば、リンガ・フランカになり得る。
〔 まず一つ目は、日本人が、日本語はある種の「特別な」暗号、日本民族の意思伝達にのみ有効な暗号だという誤った考えを捨てることです。言うまでもなく、日本語の真髄に行きつくためには、日本の歴史や文化の理解を通して、日本語の奥深さを知ることが大切ですが。
 しかし、言語というものは、長い時間をかけて、ある民族だけに植えつけられたDNAなどではありません。それは、日本人だけでなく、他の民族においても同じです。言語は、民族のDNAなどではなく、単に後天的に習得するものです。他の言語をあとから習得していくことには、何の障害もありません。
 二つ目は、日本人として、日本語の美しさの本質が、日本の詩人や作家が創造してきた奇跡のような描写、世界や人間の本質についての表現にあることに気づくことです。〕

(2014/6/28)KG

〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

じゃっで方言なおもしとか そうだったんだ!日本語
 [言語・語学]

じゃっで方言なおもしとか (そうだったんだ!日本語)

木部暢子/著
出版社名 : 岩波書店
出版年月 : 2013年12月
ISBNコード : 978-4-00-028629-9
税込価格 : 1,836円
頁数・縦 : 199p・19cm


【目次】
第1章 質問でも尻下がり?
 いまの質問?
 東京方言の質問文
 鹿児島方言の質問文
 そういえば北九州方言も…
 福岡方言の質問文
 質問文のタイプ分け
第2章 親族を表すことば
 「ちゃん」はどこへ行った?
 喜界島方言のお母さんとお父さん
 与那国方言のお兄さんとお姉さん
 奄美・沖縄方言の弟と妹
 東日本方言の弟と妹
第3章 さかさまことば
 あいさつことば
 「はい」と「いいえ」
 入間の「さかことば」
第4章 「わたし」と「あなた」の間
 「私たち」は誰を指すか
 「行く」と「来る」
 「やる」と「くれる」
第5章 方言の将来
 方言が消えていく
 方言を守るために
 方言の将来

【著者】
木部 暢子 (キベ ノブコ)
 国立国語研究所教授。1955年生まれ。九州大学大学院文学研究科修士課程(国語学国文学専攻)修了、博士(文学)。鹿児島大学助教授・教授等を経て2010年より現職。南九州をはじめとする日本各地の方言アクセント・音韻を研究するほか、方言の記録・保存にも取り組む。

【抜書】
●消滅危機言語(p147)
 2009年2月、ユネスコが消滅の危機に瀕した世界の言語(the listed endangered languages)と世界消滅危機言語地図(Atlas of the World’s Languages in Danger)を発表。
 消滅の危機の度合い……
  安泰(safe)
  脆弱(vulnerable)
  危険(definitely endangered)
  重大な危険(severely endangered)
  極めて危険(critically endangered)
  消滅(extinct)
 アイヌ語……極めて危険
 八重山語、与那国語……重大な危険
 沖縄語、国頭語、宮古語、奄美語、八丈語……危険

●言語と方言(p151)
 言語は、グラデーション的に少しずつ変化しながら分布している。青森の言葉を東京の人は理解できないが、隣同士で理解しあえる岩手の言葉、宮城の言葉、茨城の言葉、埼玉の言葉を通じて繋がっている。 → 方言:同一言語のバリエーションの関係。
 沖縄の言葉……奄美や鹿児島ともお互いに理解不可能 → 独立した言語
 言語学的な基準に従えば、沖縄語、宮古語、与那国語、八丈語はそれぞれ独立の言語。日本語の方言ではない。

(2014/4/5)KG

〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

言語学の教室 哲学者と学ぶ認知言語学
 [言語・語学]

言語学の教室 哲学者と学ぶ認知言語学 (中公新書)

西村義樹/著 野矢茂樹/著
出版社名 : 中央公論新社(中公新書 2220)
出版年月 : 2013年6月
ISBNコード : 978-4-12-102220-2
税込価格 : 882円
頁数・縦 : 233p・18cm


 言語学者と哲学者の対談による、認知言語学入門。

【目次】
第1回 「彼女に泣かれた」―認知言語学の誕生
第2回 「太郎が花子に話しかけてきた」―文法は意味と切り離せるか
第3回 典型的な鳥と変な鳥がいる―プロトタイプと百科事典的意味論
第4回 「死なれた」のか「死なせた」のか―使役構文の家族的類似性
第5回 「村上春樹を読んでいる」―メトニミーをどう捉えるか
第6回 「夜の底が白くなった」―メタファー、そして新しい言語観へ

【著者】
西村 義樹 (ニシムラ ヨシキ)
 1960(昭和35)年、山口県に生まれる。87年東京大学大学院修士課程修了。同大学教養学部助教授を経て、2007年同大学人文社会系研究科准教授。現在、同研究科教授。専攻は認知言語学。

野矢 茂樹 (ノヤ シゲキ)
 1954(昭和29)年、東京都に生まれる。85年東京大学大学院博士課程修了。現在、同大学大学院総合文化研究科教授。専攻は哲学。

【抜書】
●間接受身(p5)
 日本語に顕著に見られる受動態。直接対応する能動文をもたないタイプの受動態。迷惑受身。
  「太郎は雨に降られた」「彼女に泣かれた」
 受苦、諦念、他者性が間接受身を作る三つの条件。

●認知言語学(p4)
 1987年、『認知意味論』(Women, Fire, and Dangerous Things、ジョージ・レイコフ、池上嘉彦/河上誓作他訳)、『Foundation of Cognitive Grammar』(ロナルド・ラネカー)が出版される。初めての認知言語学の本。
 認知言語学……言葉の問題を言語だけに狭く閉じ込めないで、事柄に対する我々の見方や態度と結びつけて考える。
 解釈意味論……生成文法では、ある統語構造をもった文に統語的な規則とは別種の規則が適用されてその文の意味解釈が決まると考えた。統語部門、音韻部門とは別に、意味部門を取り込んだ。
 生成意味論……生成文法の枠組みの中で、生成文法を意味を出発点にする理論に転換しようとした。しかし、うまくいかず、生成文法の外に飛び出して新たな枠組みのもとで新たな理論を作ろうとした。 → 認知言語学。
 生成文法……統語論を中心に据える。統語論は意味論から独立していると考える。
 認知言語学……統語論と意味論が不可分に結びついている。

●語彙項目、文法項目(p33)
 語彙項目……まるごと記憶されている意味と形式(文字、音、手話の動作)の慣習的な組み合わせ。記号。イディオムも含まれる。
 文法項目……語彙項目を組み合わせるパターンとそうしたパターンの構成要素。
 認知言語学では、語彙項目と文法項目の二本立てで、我々が言語を使用できる仕組みを考える。

●カテゴリー化(p64)
 分類することが言葉の基本的な働き。
 古典的カテゴリー観……あるカテゴリーの成員には、そのすべてが共通にもち、その成員だけがもっている特性がある。カテゴリーというのは必要十分条件によって規定できる。

●プロトタイプ(p69)
 1970年代半ば、認知心理学では、「プロトタイプ」という観点からカテゴリーを考えるようになる。
 ウィトゲンシュタイン、家族的類似性……「遊び」の本質などありはしない。遊びには、複数でやるものも一人でやるものもある。ルールがあるものないもの、勝敗があるものないもの、などさまざま。いくつかの遊びに共通する特徴が部分的に重なりあいながら、「遊び」という一つの概念に撚り合わされている。父親と子供は部分的に同じような顔をしている。母親と子供も同様。父親と母親は特に似ていないけれど、子供との類似性を通して、ひとつの家族を形成している。
 同じカテゴリーに属していても、メンバー間に「らしさ」についての差が見られる。ペンギンやダチョウよりもスズメやツバメのほうが鳥らしい。
 認知言語学が提示する新たなカテゴリー観……カテゴリーの中心的な成員(プロトタイプ)と、類似性などによってプロトタイプと結び付けられた周辺的なメンバーによって構成されている。
 プロトタイプには、典型例、紋切り型(ステレオタイプ)、模範例(パラゴン)など、いくつかの種類がある。

●百科事典的意味論(p83)
 言葉の意味についての知識……国語辞典的な知識
 言葉の意味以外のもっと一般的な知識……百科事典的な知識
 認知言語学の立場……言語的な意味とは、百科事典的な知識があって初めて成立する。百科事典的意味論。

●使役(p99)
 言語学では、「太郎は花子に本を読ませた」も「太郎が窓を開けた」も使役として扱う。
 使役……何かに働きかけて何か結果を引き起こす。
 「太郎が窓を開ける」……太郎が窓に働きかけて(原因事象)、その結果窓が開く(結果事象)ので、その全体を「太郎が窓を開ける」と表現している。

●自他対応(p101)
 開(あ)く-開ける……自他対応。自動詞と他動詞が形式的にも意味的にも対応している。「沸く-沸かす」「焼ける-焼く」「こわれる-こわす」、など。「死ぬ-殺す」も自他対応。
 自他対応を持つ他動詞が、典型的な使役動詞。
 英語では、open、boilのように、自動詞と他動詞が同型のものが多い。この場合、他動詞が使役動詞になっている。日本語では、「開(ひら)く」「閉じる」など、少数。

●迂言的使役構文(p107)
 自他対応の使役動詞……語彙的使役動詞。語彙的使役動詞を用いた使役構文=語彙的使役構文。
 助動詞「せる」と組み合わせたもの……迂言的使役構文。「読む-読ませる」
 「読む」「食べる」「歩く」など、行為の主体性が強い場合、語彙的使役動詞が成立しにくい。

●メトニミー(p143)
 メトニミー……通常その言葉で指示される対象そのものではなくて、それと近接の関係にある対象を指す。換喩。「赤ずきんちゃん」「自転車をこぐ」「歯がしみる」。
 参照点理論……人間には参照点能力というものが備わっていて、メトニミーはその能力の現れ(ラネカー)。猫が大きな木の下にいる場合、木を指して「あそこに大きな木があり、その下に猫がいる」と言ったりする。まずとっかかりとして注目する対象(木)を参照点、それを利用して最終的に支持する対象(猫)を標的(ターゲット)と言う。「赤ずきん」が参照点、「少女」がターゲット。
 参照点理論は、所有表現の分析にも有効。「太郎の車」(所有)、「花子の母親」(親族関係)、「タマのしっぽ」(全体と部分)、「漱石の小説」(著者と作品)など。所有格の意味は「所有」ではなく、参照点を示すもの。

●概念メタファー(p191)
 我々の捉え方の枠組みとなる概念レベルのメタファー。「議論は戦争である」。

(2013/9/14)KG

〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
前の10件 | - 言語・語学 ブログトップ