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壁を超える
 [スポーツ]

壁を超える (角川新書)
 
川口能活/〔著〕
出版社名:KADOKAWA(角川新書 K-165)
出版年月:2017年10月
ISBNコード:978-4-04-082166-5
税込価格:864円
頁数・縦:212p・18cm
 
 
 42歳にして、J3で現役を続けるサッカー元日本代表のゴールキーパー、川口能活のエッセー。
 「サッカーもそうだけど、人生をもっと楽しんだらどうなんだ」という、デンマークのFCノアシュラン時代のGKコーチから言われた言葉で始まり、「やれることを一〇〇%の力でやっていく。とにかくいまはそれだけだ。」で終わる。
 「ストイックと評価されることがすごく嫌だった」(p.196)と本人は述べているが、たぶん、川口にとって、サッカーに打ち込み、一生懸命練習に励むことは、「ストイック」とは次元の異なることだったのだろう。好きだからこそやっている。単にそういうことなんだろうと思う。「人生を楽しむ」うんぬんより、好きなことを100%の力を出して実行している。それが彼の人生観であり、楽しみなのだろう。Jリーグのカテゴリーを下げても平常心でサッカーを続けられる理由なのかもしれない。そんな川口のまじめさが伝わってくる1冊である。
 それだけ打ち込めなければ、スポーツの世界で一流になることは難しい。
 
【目次】
第1章 苦境のおしえ
 どこかで風向きは変わる。自分に流れがくることは絶対にあると信じて、いつもやってきた
 イングランドのポーツマスFCに移籍して三か月も経たないうちに会長に言われた。「もう、日本に帰ったほうがいいのではないか」
  ほか
第2章 人を育てるということ、組織(チーム)を率いるということ
 子どもの頃、火事で家が全焼した。そのとき父は「一年でまた建てる」と言い、それを現実にする姿を見せてくれた
 「お前は私立に行け」岐路に立ったときには兄が道を示してくれ、譲ってもくれた
  ほか
第3章 リーダーの肖像―指揮官たちに教わったこと
 「お前で行くぞ」高二でワールドユース予選のゴールを任されたことで人生が変わった
 四年間の想いが結実した「シャーアラムの死闘」と「マイアミの奇跡」
  ほか
第4章 厳しかった日々と家族の存在
 二度の大ケガをして心が折れそうになったこともある。それでも、あきらめはしなかった
 「これが現実なのか…」契約更新がないという通知によってそこから先が白紙の状態になってしまった
  ほか
第5章 「現役」であること、「引退」に思うこと
 自分を取り巻く周りの状況が変わっても自分を変えずそれまで以上のことをやっていく
 二十歳ほど若い選手たちとポジションを争う。自分が上にいるのではなく同じ土俵に立って競争している
  ほか
 
【著者】
川口 能活 (カワグチ ヨシカツ)  
 1975年8月15日静岡県富士市生まれ。東海大学第一中学校から91年に清水市立商業高等学校入学。3年時に第72回全国高校サッカー選手権大会で優勝。94年横浜マリノス(現横浜F・マリノス)に加入。翌年にはJリーグ初出場を果たし、同年Jリーグ新人王を獲得。2001年、イングランドのポーツマスFCに移籍。03年にデンマークのFCノアシェラン加入。05年の帰国後、ジュビロ磐田、FC岐阜を経て、16年よりSC相模原所属。
 
【抜書】
●眺めのいい場所(p25)
〔 一度眺めのいい場所に行けたからといって、ずっとそこにいられる人ばかりではないはずだ。そこから降りてきたあとにも人生は続く。
 だとすれば、その場所で戦っていくのが自然なことだと僕は思う。〕
 
●試合をサボる(p62)
 小学生で地元の天間小サッカー少年団に入る。サッカーを始めて間もない小学4年生の時、練習にはちゃんと行くが、試合だけサボるようになっていた。
 とにかく練習が好きだった。
 試合も好きだったが、この頃は5~6年生が中心のトップチームでGKを務めていた。年上の子ばかりで、やりづらさを感じていた。
 3回試合をサボった翌日、「試合にも来なかったんだから、練習に来なくていい」と先生に言われ、1週間ほど、グラウンドに行っても練習に参加させてもらえなかった。母親が先生と話してくれて、練習に戻ることができた。
 
(2017/11/27)KG
 
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アジア主義 西郷隆盛から石原莞爾へ
 [社会・政治・時事]

  アジア主義 西郷隆盛から石原莞爾へ (潮文庫)
中島岳志/著
出版社名:潮出版社(潮文庫 な-1)
出版年月:2017年7月
ISBNコード:978-4-267-02088-9
税込価格:1,188円
頁数・縦:603p・16cm
 
 
 月刊誌『潮』2010年8月号から2011年12月号までに連載された「アジア主義を考える」に大幅加筆してまとめたものであるという。2014年7月に潮出版より発行された単行本の文庫化。
 日本で、清を打倒するための4つの革命団体ができたが、地域ごとのまとまりであった。広東派の「興中会」、湖南派の「華興会」、浙江派の「光復会」、湖北派の「科学補習所」である。後に孫文を総理とする「中国同盟会」に統一する(1905年8月)。彼らの目的は、満族支配を打破して漢族の支配する中国を作ることであった。(p.342)
 「滅満興漢」、「光復革命論」。満族を満州に追いやって、漢族中心の中国を作るというのが、彼ら革命派の共通の志であった。
 中国では、なぜ、民族にこだわるのだろうか。特に漢族の優越という思想が常に興ってくる。もっと、他民族、他者を受け入れる度量はないものだろうか。
 一方、清朝エリートたちは、列強の支配から逃れるべく、民族の枠組みを超えた中国ナショナリズムを志向し始めていたという。もしそれが「華夷秩序」ではなく、「万国公法」に基づく国の再建であったなら。そうなれば、今と違った中国ができていたかもしれない。
 
【目次】
序章 なぜ今、アジア主義なのか
第1章 竹内好はアジア主義に何を見たのか
第2章 西郷隆盛と征韓論
第3章 なぜ自由民権運動から右翼の源流・玄洋社が生まれたのか
第4章 金玉均という存在
第5章 頭山満、動き出す
第6章 来島恒喜のテロと樽井藤吉の『大東合邦論』
第7章 天佑侠と日清戦争
第8章 閔妃暗殺
第9章 孫文の登場―宮崎滔天・内田良平・南方熊楠
第10章 岡倉天心「アジアは一つ」の真意
第11章 黒龍会と一進会
第12章 韓国併合という悲劇
第13章 中国ナショナリズムへのまなざし―辛亥革命と二十一カ条要求
第14章 孫文の大アジア主義演説
第15章 来日アジア人の期待と失望
第16章 大川周明の理想
第17章 田中智学から石原莞爾へ―「八紘一宇」の奈落
第18章 アジア主義の辺境―ユダヤ、エチオピア、タタール
第19章 戦闘の只中で―日中戦争と大東亜戦争
終章 未完のアジア主義―いまアジア主義者として生きること
 
【著者】
中島 岳志 (ナカジマ タケシ)
 1975年大阪府生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。大阪外国語大学(ヒンディー語専攻)卒業。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。京大人文科学研究所研修員、日本学術振興会特別研究員、北海道大学大学院法学研究科准教授を経て、現職。専門は南アジア地域研究、近代思想史。著書に『中村屋のボース』(大佛次郎論壇賞)など多数。
 
【抜書】
●玄洋社(p42)
 1881年、頭山満らが、福岡にて玄洋社を設立。
 「日本の右翼の源流」と言われているが、活動の原点は自由民権運動にあった。右翼であり、ナショナリストであり、自由民権論者。
 朝鮮の民主化運動を支援したことからアジア主義に傾斜し、日清戦争前には「天祐侠」という秘密組織を結成して朝鮮に送り込む。天祐侠には、内田良平や武田範之(はんし)といった人物が参加。東学グループに接近し、農民蜂起を援助しようとする。
 
●互市(p63)
 華夷思想の外交関係三つのパターン。川島真「近代東アジア国際政治の形成」『東アジア国際政治史』(名古屋大学出版、2007年)による。
 (1) 冊封
 (2) 朝貢
 (3) 互市(ごし)……中国との政治的な上下関係を伴わない交易。近世の日中はこの関係にあった。
 日本は、7世紀に「天皇」の文字を使用して以来、足利義満の時代を除いて朝貢をしたことがない。
 
●万国公法(p66)
 東アジアの国々は西洋諸国に植民地化され、華夷秩序は、徐々に「万国公法」による新秩序に組み替えられていった。
 万国公法の代表が日本。中国と朝鮮のみが、旧秩序の冊封・朝貢関係を維持し、日本と対立するという構図が出来上がった。
 
●王道、覇道(p82)
 西南戦争について、頭山満をはじめとするアジア主義者は、西郷隆盛の思想と行動の中に「東洋的王道」の精神を見出した。王道インタナショナリズム。
 パワーポリティクスの論理に傾斜する政府主流派を「西洋的覇道」とみなした。
 アジア主義者たちは、ナショナリズムを世界に開き、他民族と連帯しながら世界全体が「東洋的王道」に回帰するというインターナショナリズムを理想とした。
 
●ナショナリズム(p92)
 ベネディクト・アンダーソン(『想像の共同体』)は、「ナショナリズムは古代から続く一貫した国民意識」という通説を覆す。
 フランス革命により、「国家は国王のものである」(王権神授説)という考え方から、「国家は国民のものである」という原則に転換する。「封建的な王政国家」から「主権在民に基づく国民国家」へのレジームチェンジ。
 フランス革命こそが、「国民は平等な主権者である」という政治的なナショナリズムの嚆矢。
 
●金玉均(p108)
 金玉均(キム・オッキュン)……1851年生まれ。1872年、科挙に合格、官僚となる。明治日本をモデルに朝鮮の近代化を進めようとした「改革派」のリーダー。甲申事変というクーデター事件を起こして失敗し、日本に亡命。
 通算4回、日本に滞在し、日本の思想家・活動家と交流。頭山満は、金との出会いによってアジア主義に目覚める。樽井藤吉は、金に感化され、日韓の対等合邦を構想する『大東合邦論』を書く。
 
●岡倉天心(p272)
 岡倉天心はインドでヴィヴェーカーナンダと意気投合し、「アドヴァイティズム」に感銘を受ける。「不二一元論」(=アドヴァイティズム)を説くようになる。
 『Ideals of the East, with special reference to the art of Japan(東洋の理想)』にて、「アジアは一つである」と宣言。
 
●黒龍会(p286)
 1901年、内田良平が黒龍会を結成。
 「黒龍会創立趣意」の中で、西洋諸国が「東洋の地を蹂躙」していることを批判。清朝や韓国は「拱手閉目」しているので、日本がロシアと対峙する必要性を強調。
 
●中国ナショナリズム(p345)
 清朝末期、清朝エリートは、列強による版図の分割という危機にさらされる過程で、民族を超えた「中国ナショナリズム」を形成し始めていた。
 孫文ら革命家たちの多くは、漢族ナショナリズムを志向していた。滅満興漢。満族を「同胞」から除外。万里の長城の北、満蒙は日本に与えてもいいという考えにつながる。
 しかし、清朝打倒が達成されると、輿論に迎合する形で、「中国ナショナリズム」にかじを切っていった。
 
●東遊運動(p404)
 ベトナム人のファン・ボイ・チャウ。近代ベトナムを代表する独立運動の志士。
日本から軍事的支援を受けようと、1905年に来日。国内の人材育成と組織の拡大が先決であると、期待した支援は受けられなかった。
 東遊運動……日本留学運動。人材育成のために、優秀な若者に対して日本への留学を奨める。日露戦争後、ベトナムで大きな潮流となっていった。 
 チャウは、日本で「越南維新会」という独立のための結社を創設。ベトナムと日本の連帯を目指す。日本とベトナムは「同文同種同州」。
 しかし、日本が1907年に日仏協約を締結し、チャウの目論見は挫折する。
 
●トゥーラン主義(p496)
 「ウラル・アルタイ語族」といわれる諸民族の連帯を目指すイデオロギー。フィンランド、ハンガリー、トルコ、中央アジア、モンゴル、満州、朝鮮、日本。
 トゥーラン主義は、ハンガリーが起源。バラートシ・バロク・ベネディクトという民族学者が中心となって主張。ハンガリーにとって宿敵だったロシアを日本人が撃破したことで、急速に支持者が増加した。
 バラートシは、3度にわたって来日、各地で民族学的調査を繰り返した。通訳を務めた今岡十一郎と、1920年代初頭、一致団結してトゥーラン主義の拡大を目指す。
 今岡は、10年間、ハンガリーで日本文化の普及に努め、ブダペスト大学に日本語講座を開設した。
 しかし、ウラル・アルタイ語族というのは、仮説にすぎず、まだ学術的には確立されていない。
 
●黒田雅子(p501)
 子爵黒田廣志(華族)の次女。エチオピアの皇族アラヤ・アベバ殿下のもとに嫁ぐ予定だった。1934年1月に発表される。
 しかし、日本の皇族とエチオピアの皇太子の結婚と誤解したムッソリーニの横やりで破談となる。破談報道から8か月後の1934年12月、イタリア領ソマリランドとエチオピアの国境地帯で軍事衝突が起こる。ワルワル事件。
 
●文明の衝突(p578)
 ハンチントンは、『文明の衝突』で、「儒教ーイスラームコネクション」が欧米と敵対するという構図を示した。
〔 しかし、この議論には大きな欠点があります。それは、宗教は必然的に異教徒との衝突を生み出すという前提です。ここでは、宗教間の共生を論じる思想や歴史の叡智は脇に追いやられ、宗教復興は必ず文明の衝突をもたらすことになってしまいます。
 文明の衝突を乗り越えるには、やはり「単一論」から「多一論」へのパラダイムの転換が必要です。今日こそ、「バラバラでいっしょ」の「多一論」を基礎とした思想的アジア主義の可能性を追求する必要があります。「文明の衝突」論を超えるアジア的共生のあり方を、思想的に模索すべきです。〕
 
(2017/11/27)KG
 
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12歳の少年が書いた量子力学の教科書
 [自然科学]

12歳の少年が書いた 量子力学の教科書  
近藤龍一/著
出版社名:ベレ出版
出版年月:2017年7月
ISBNコード:978-4-86064-513-7
税込価格:1,728円
頁数・縦:319p・21cm
 
 
 恐るべき少年がいたものだ。幼年時代から大量に本を読み漁り、9歳で量子力学を志す。そして、中学受験の2日後(つまり12歳の時)に本書の執筆を開始した……。
 まったく、子どもの脳は恐ろしい。平凡な大人には想像もつかない能力を発揮する。たとえば、石井勲という人は、小学校の教員だったのだが、授業で1年生に700語の漢字を覚えさせることに成功したとか。教育漢字1,006字の7割に当たる。ことほど左様に子どもの能力(脳力?)は底知れないものがあり、本書の著者もその秀逸な見本である。本人が意欲をもち、楽しみながら取り組むことで、子どもは大人顔負けの力を発揮するのである。平凡な大人である私には、量子力学の「中間書」である本書の内容は全く理解できなかった……。
 中間書。そう、著者は本書のことをそう表現する。「入門書で大筋をつかんだ上で、専門書に移行するための足掛かり」となるのが“中間書”とのことである(p.3)。
 理論物理学の本は、入門書と専門書との差が激しい、それを埋めるための「中間書」が必要であるとの認識が執筆の動機である。この発想こそが、12歳の少年として恐ろしいと思うのだ。「専門書より中間書の方が『創意を要する』にも関わらず『ほとんど評価されない』」ので、専門家は書かない。だから自分が書く、という決意は並大抵のことではない。しかも、楽しみながら書かれた様子がうかがわれ、そこに「創意」の発露が見える。
 
【目次】
第0章 量子力学とは何か―最も基本的な事柄
第1章 万物の根源―量子力学の誕生
第2章 前期量子論―古典力学の破綻
第3章 数学的定式化―量子論から量子力学へ
第4章 内在的矛盾と解釈問題―量子力学は正しいか?
第5章 量子力学の先へ―範囲拡大
第6章 近未来的応用への道―量子力学の利用
 
【著者】
近藤 龍一 (コンドウ リュウイチ)
 2001年生まれ。12歳のとき、『12歳の少年が書いた量子力学の教科書』の執筆を開始し、完成させる。その後は場の量子論の研究を始める。現在、都内の中高一貫校に通う高校1年生。
 
(2017/11/22)KG
 
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黒田博樹 人を導く言葉 エースの背中を追い続けた15年
 [スポーツ]

黒田博樹 人を導く言葉 - エースの背中を追い続けた15年 - (ヨシモトブックス)
 
森拓磨/著
出版社名:ヨシモトブックス
出版年月:2017年10月
ISBNコード:978-4-8470-9606-8
税込価格:1,296円
頁数・縦:214p・19cm
 
 
 テレビ局のアナウンサーによる「黒田博樹」論。「男気」黒田の人柄がよく伝わってくるエピソード満載である。
 映像と書かれたものを通して触れる黒田は、真面目で一本気な性格を思わせるが、結構、大阪人気質ともいうべき笑いとおちゃめを発揮することもあるらしい。身近に接した者しか知らない、本邦初公開の「黒田さん」を存分に見せてくれる。やっぱり、いい人だったんだな。
 「絶対に打たれない(バットに当たらない)球を投げる」という考えを捨て、「100球で完投する」という思考に切り替えたところが素晴らしいと思う。チームのため、エースとしての誇りのため、「完投」精神は捨てられない。しかし、先発100球という決めがある以上、その中で初志を貫く。そのための打たせて取る省エネ・ピッチングを心がける。
 つまるところ、それが長く現役を続けられた秘訣かもしない。また、魅せる試合の演出方法でもあったかもしれない。
 
【目次】
第1章 黒田さんとの出会い 2002~2003年
第2章 試練に立ち向かう姿 2004年
第3章 黒田さんに聞かれた本気 2005年
第4章 88勝目のウイニングボール 2006年
第5章 海を渡る日 2007年
第6章 メジャーリーグ 2008~2014年
第7章 最高の引き際2015~2016年
 
【著者】
森 拓磨 (モリ タクマ)
 1978年、福岡県生まれ。2002年にアナウンサーとして広島テレビ入社。入社1年目からプロ野球中継に携わり、2007年からは広島テレビのスポーツ番組「進め!スポーツ元気丸」でMCを担当する。2008年度、日本テレビ系列「第30回NNSアナウンス大賞・優秀賞」受賞。2011年からは広島テレビの夕方ワイド情報番組「テレビ派」のMCを務める。
 
(2017/11/17)KG
 
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人類一万年の文明論 環境考古学からの警鐘
 [歴史・地理・民俗]

人類一万年の文明論―環境考古学からの警鐘
 
安田喜憲/著
出版社名:東洋経済新報社
出版年月:2017年10月
ISBNコード:978-4-492-22379-6
税込価格:2,592円
頁数・縦:337, 15p/20cm
 
 
 「電気新聞」ウェーブ欄に2004年から2017年にわたって連載されたエッセーをもとに構成。畑作牧畜民(現代の西欧人)の生み出した物質エネルギー文明の限界と、稲作漁撈民(すなわち日本人)の文明の優位を説く。
 おおむね首肯できる内容ではあるが、畑作牧畜民および一神教に対する嫌悪感丸出しの主張はいかがなものか。「他者」に対する嫌悪が内在するのであれば、結局、稲作漁撈文明が将来の社会を導くことになっても、西欧文明同様、他の民族・宗教を排除する思想が萌芽してしまうのではないだろうか。
 
【目次】
第1章 環境考古学
第2章 環太平洋文明
第3章 災害と文明
第4章 富士山と地球環境史ミュージアム
第5章 生命文明の時代
第6章 未来に向けて
 
【著者】
安田 喜憲 (ヤスダ ヨシノリ)
 1946年三重県生まれ。東北大学大学院理学研究科修了。理学博士。広島大学助手、国際日本文化センター教授、東北大学大学院教授などをへて、現在、ふじのくに地球環境史ミュージアム館長、立命館大学環太平洋文明研究センター長。スウェーデン王立科学アカデミー会員、紫綬褒章受章。
 
【抜書】
●地球温暖化(p15)
 1万5000年前、年平均気温が一気に4~6度も上昇する地球温暖化の時代が訪れた。気候の湿潤化も伴う。
 シベリア北部ではスゲ科や地衣類の湿性ツンドラが拡大し、カバノキ属やヤナギ属の森林が覆う。南部では針葉樹の暗い森が拡大。ケナガマンモスの好物のイネ科やヨモギ類の生息するマンモスステップが姿を消した。
 
●最終氷期最寒冷期(p18)
 3万3000年前、最終氷期最寒冷期(過去10万年で最も寒冷で乾燥)の開始期、ホモ・サピエンスは寒冷乾燥気候に適応して生き残った。ネアンデルタール人は絶滅。
 ホモ・サピエンスの誕生した20万~15万年前は、リス氷期末期の地球環境激動の時代だった。
 
●年縞(p35)
 年縞(ねんこう)……湖の底に積み重なったバーコード状の縞模様。福井県の水月湖、鳥取県の東郷池、秋田県の目潟などの湖底ボーリングによって発見。
 春から夏に珪藻が繁殖して白い層を、秋から冬にかけて粘土鉱物が静かに湖底に堆積して黒い層を形成。地球の遺伝子(ジェオ・ゲノム)と名付ける。
 
●五つの掟(p36)
 稲作漁撈民が守ってきた五つの掟。これにより、持続的にこの地球で生き続ける文明システムを発展させてきた。
 ① 自然を信じ、人間を信じ、森や山そして川や海に祈る心を持つこと。
 ② 命の源の水の循環系を守ること。
 ③ 自然の豊かさを、生命の連鎖を守るためには、時には自らの命を捨てても構わないという気概を持つこと。
 ④ 自然の資源を使い尽くさないで循環的に利用すること。
 ⑤ 自然を守るためには自らの欲望をコントロールすること。
 
●長江文明崩壊(p68)
 4200~4000年前は、著しい気候悪化期。寒冷化した。
 気候悪化により、北方から金属製の武器を持った畑作牧畜民が南下し、長江文明を滅ぼした。現在の漢民族のルーツ。
 石家河文化末期には、北方の黄河文明の要素が顕著に出現するようになる。
 稲作漁撈民は、雲南省や貴州省の山岳地帯、チベット高原、東南アジアへと逃れ、海岸部に暮らした人々は日本列島や台湾に逃れた。
 ミトコンドリアDNAの分析によると、漢民族にだけはM8aハプロタイプという特異な遺伝子が存在するが、周辺の少数民族や日本人にはM8aハプロタイプを持つ人の比率は少ない(篠田謙一『日本人になった祖先たち』NHKブックス、2007年)。
 Y染色体の分析では、漢民族はO3eという特異な系統、雲南省や貴州省、チベット高原、東南アジアの人たちはO2a系統、日本列島はO2b系統(崎谷満『DNAでたどる日本人10万年の旅』昭和堂、2008年)。
 
●文明の歯車(p120)
〔 危機が忍びよっているにもかかわらず、人々は文明がカタストロフに崩壊する直前まで、巨大なモアイをつくり続け、しかもモアイは、文明の末期になればなるほど巨大化していった。
 人々は、森の消滅によってひたひたと押し寄せる危機を、まったく無視するかのように、より大きなモアイ、より巨大なモアイをつくり続けたのである。
 私たち現代人は、このイースター島のモアイの文明の崩壊から、文明の暴走の恐怖を学ばなければならないのである。
 文明の歯車は、いったん回り出したら、後戻りすることはおろか、立ち止まることさえむずかしいのである。文明の暴走は巨大化を生む、という事実を直視しなければならないのである。〕
 
●島国根性(p122)
 森を守る「島国根性」。
 ① 山を崇拝する。島に恵みの雨と水をもたらしてくれる高い山を聖山としてあがめる。
 ② 自然の再生と循環は、魚を食べることによって守られる。
 ③ 女性の力を大切にした。女性が頑張る社会は、自然の豊かさが守られ、持続型文明社会を構築できた。
 
●日本の漂流(p168)
 第一の危機……明治維新。一神教を背景とした近代欧米文明を受け入れやすくするために、神仏習合と修験道を排除しようとした。
 第二の危機……第二次世界大戦敗戦。マッカーサーは、日本を共産主義に対決するキリスト教の理想郷にすべく、神道と仏教から魂を抜いた。神官は自然崇拝の哲学を語ることなく、仏教は葬式仏教に堕落していった。一方で、一神教に基礎を置くマルクス史観に対しては寛容だった。
 第三の危機……現在の危機。グローバル化と市場原理主義によって引き起こされた。
 市場原理主義は美しい完結した経済理論であるが、歴史と伝統文化を無視した個人の欲望を中心にした経済理論である。将来世代への責任を無視した、現在の欲望のみに立脚した個の欲望。
 
●大陸根性(p178)
 大陸型の畑作牧畜民の文明は、環境や自然が悪化すると、その場を捨てて簡単に移動する。〔大陸根性とは、移動し破壊する心でもある。〕
 
●大仏温暖期(p193)
 最澄と空海が生きた時代は、万葉寒冷期から大仏温暖期へと移行する、地球温暖化の時代であった。干ばつや洪水などの気象災害と地震が多発する時代。
 最澄……自己否定の後、「草木(そうもく)国土悉皆成仏」の思想に至る。
 空海……『三教指帰(さんごうしいき)』の仮名乞児(かめいこつじ)は、自己否定に陥った自身の青春時代の姿。
 
●新嘗祭(p294)
 11月23日の勤労感謝の日は、もともと新嘗祭。稲作漁撈民にとって、最も重要な豊穣の儀礼の祝日。
 豊かな収穫に感謝し、新米を神々にささげ、翌年の豊作を祈る。
 
●森林破壊(p324)
 12世紀以降の大開墾によって、アルプス以北のヨーロッパ平原の大森林(ヨーロッパブナやナラ類)は、17世紀までのあいだに完璧に破壊された。
 イギリスやスイスでは90%、ドイツでは70%の森が失われた。
 
(2017/11/17)KG
 
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