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武士の日本史
 [歴史・地理・民俗]

武士の日本史 (岩波新書)  
高橋昌明/著
出版社名:岩波書店(岩波新書 新赤版 1718)
出版年月:2018年5月
ISBNコード:978-4-00-431718-0
税込価格:950円
頁数・縦:280p・18cm
 
 
 武士の歴史を、武士とは何かを考察しつつ、通時的に論じる。
 
【目次】
序 時代劇の主役たち
第1章 武士とはなんだろうか―発生史的に
第2章 中世の武士と近世の武士
第3章 武器と戦闘
第4章 「武士道」をめぐって―武士の精神史
第5章 近代日本に生まれた「武士」―増殖する虚像
終章 日本は「武国」か
 
【著者】
髙橋 昌明 (タカハシ マサアキ)  
 1945年高知市に生まれる。1969年同志社大学大学院文学研究科修士課程修了。滋賀大学教育学部教授、神戸大学大学院人文学研究科教授を経て、神戸大学名誉教授。博士(文学、大阪大学、2002年)。専攻は日本中世史。
 
【抜書】
●月代(p3)
 月代の風習は、鎌倉時代前後に武士の間で広まった。
 「気の逆上」を防ぐために剃ったというのが有力な説。
 当時は、戦場で鎧をかぶった時にも烏帽子を着けていた。そのため、頭部は暑苦しく、蒸れた。頭に血が上ってのぼせるの防ぐため、額を剃り上げた。
 鉢巻は、兜の下の烏帽子がずれないよう、布でその縁を巻き付けて固定したのが始まり。烏帽子をかぶらなくなっても、汗が流れ落ちるのを止めるため、鉢巻をしめた。
 
●武士帰農論(p9)
 江戸時代、戦争の時代は終わり、経済の発展を軸に人々が豊かさを求めるようになると、収入に限りのある幕府や諸藩の財政が苦しくなる一方、城下町に居住する武士は泰平になずみ奢侈に流れ、士風を忘れ無力化するようになる。
 こうした事態を憂い、江戸前期の熊沢蕃山をはじめ多くの儒者が、武士帰農(土着)論を展開する。
 弱体化した幕藩の軍事力を補強するため、兵と農の分離を解消して武士を農村に土着させ、いったん事が起きた時には農民を率いて戦闘に加わらせる。
 帰農が、武士に統治者としての力量と質実剛健の美風を回復させる有効な措置だとされた。
 
●平安後期~鎌倉時代の身分(p16)
 この時代、三つの異なった系列の身分が存在した。
(1)職業の別……芸能(職業)が家の職能として固定し、身分の一類型が生まれた。
  ①文士・武士
  ②農人・浦人・山人など(第一次産業)
  ③道々の細工(手工業者)。
(2)出生の別……イエの社会的な格付け(家格の高下)。イエの代表者が代々帯びる官職と位階による。
  ①貴族以上:従五位下以上。
  ②侍:六位クラス。中央官庁の三等官クラス。
  ③百姓(凡下):位をもたない一般庶民。
  ④それ以外:イエを持たない者、老いて一人者、孤児、など、身分を持たない者。中世の被差別身分(非人)のもととなった。
(3)帰属……公私の人間支配によって生ずる上下の別。
  ①支配身分:天皇家の家政機関、権門勢家(けんもんせいか:摂関家・幕府・大寺社)、左右近衛府、などの長官。
  ②被支配身分:家人、供御人、寄人、神人、など。
 位階は正一位から少初位下(しょうしょいのげ)まで30階。貴族は、14番目(実質11番目)の従五位下以上。六位以下は、正六位上が貴族に進む直前のステップとして意味がある程度で、10世紀以降になると正六位下以下の15階は消滅。
 侍は、平安中期以降の史料にみえ、貴族と百姓の間に位置する社会の中間層。
 
●さぶらふ(p19)
 侍=さぶらひ。貴人や目上の人のそばでじっと見守り待機することを意味する「さぶらふ」の名詞形。
 侍は、奉仕の面から見れば、帰属身分でもある。
 職業身分の面では、多数の武士と少数の文士からなっていた。
 
●ウジとイエ(p29)
 ウジ……共通の始祖(人または神)を持つという信仰で結ばれた集団(中央豪族の組織)。
 イエ……父から子への継承を原理としている。
 
●六衛府(p36)
 左右近衛府、左右兵衛府、左右衛門府。
 近衛府……内裏(御所・皇居・禁裏・禁中)の内側の囲い(内郭)の内部を警固。
 兵衛府……内裏の外側の囲い(外郭)の内側を警固。
 衛門府……大内裏の内側を警固。大内裏は、内裏を中心に、その周囲に政務や儀式を行う八省院(朝堂院)、諸官庁などを配置した一郭。
 武官とは、衛府と諸国の軍団関係の官人。
 武官以外は武器の携帯を禁止されていた。自由兵仗(ひょうじょう)の禁止。
 
●武士史(p42)
(1)平安前期から11世紀後半まで
 天皇の安全と首都の平和の守り手。武官系武士は、数の面でも社会勢力の面でも限られた存在だった。
(2)白河院政開始から治承・寿永(源平)内乱開始まで
 天皇の安全と首都の平和の守り手。中央の有力武士が、地方社会に出現した武士を従者として組織するようになった。
(3)鎌倉幕府成立以後
 武士勢力の拡大。武士がほぼ在地領主層によって構成されるようになった。ただし、武士の首長が王権の守護者であるという建前は継承されている。
 
●幕府(p70)
 鎌倉・室町の両武家政権が存在していた時代、それを「幕府」と呼んだ例はない。
 江戸時代にも、寛政年間(1789-1801)以前の文書に「幕府」の語が現れるのは珍しい。「幕府」の語が一般化したのは、江戸後・末期の後期水戸学がきっかけ。藤田幽谷らは、徳川政権の正統性を、天皇から任命された「将軍」の政府であることに求め、その体制を再強化するために「幕府」の用語を使った。
 鎌倉幕府の同時代の呼称は「関東」「武家」。
 18世紀以前の江戸幕府を指す用語は「公儀」。この語は豊臣政権が最初。
 古代・中世では、幕府とは近衛府の中国風の呼び名。平安時代から使われていた。転じて近衛大将の執務の場、さらに左右大将その人を指した。
 
●六波羅幕府(p80)
 平清盛の政権も、「幕府」だったのではないか。鎌倉幕府との類似性。
 筆者による学界への問題提議。
 
●居館(p95)
 中世の武士の屋敷地。「居館」もしくは「方形館」。
 一般に、沖積地・扇状地など、水田耕作と関係の深い地点に設けられた。
 一辺1町弱(約109m)の方形、面積8,000㎡程度の規模が多い。
 四周に土塁を築き、その外側に水堀または空堀をめぐらす。
 堀ノ内(土居)には、母屋、厩舎、倉、櫓、鷹屋(たかのや)、持仏堂、墓所のなどが並び、若干の田畠も存在した。
 退避専用の砦は、背後の山地に設けられた。
 
●日本刀(p128)
 鎬造(しのぎづくり)、彎刀(わんとう)形式。
 
●鉄炮(p139)
 天文12年(1543年)、種子島に漂着したポルトガル人によってもたらされたという説は、『鉄炮記』によるが、伝来後60年後の著作なので、にわかには信じがたい。
 実際は、当時、東アジアの海域に活動した中国人倭寇の役割が大きい。
 鉄炮が日本各地に広まったのは、第12代将軍足利義晴が鉄炮を愛好し、贈答品として大名らに賜与したのと、職業的な砲術師が各地を渡り歩き、運用技術を教授して回ったことから。
 
●天下普請(p145)
 家康は、慶長8年(1603年)に幕府を開くと、江戸城に対して、大阪城などと同じく、天下普請によって近世城郭への大改築を始めた。
 その結果、石垣造りをはじめ城造りの最新ノウハウが全国に広まった。
 
●非戦闘員(p146)
 慶安2年(1649年)、軍学者で旗本の北条氏長が、三代将軍家光の命令で作成した軍役規定の案によると……。
 900石の旗本は、総人数19名を出す。侍5人、甲冑持2人、立弓持1人、鉄炮1人、鑓持2人、草履取1人、馬口取2人、沓箱持1人、鋏箱持2人、小荷駄2人。
 つまり、戦闘に直接参加するのは、総人数の内の三分の一程度。
 
●北条氏長(p174)
 北条氏康のひ孫、江戸初期の旗本。甲州流軍学を継承し、北条流軍を立てた。『慶元記』。
 軍配術を、「いくさの勝敗を予知する術であって、その法はすべて陰陽数理に基づいたものである」と批判的に総括。
 兵学を中世的・呪術的な戦争の技術学から解放した。
 
●『日本戦史』(p222)
 『日本戦史』全13巻。明治22年(1889)から大正13年(1924年)にかけて編纂。陸軍参謀本部の参謀次長川上操六が推進。
 編集・執筆の中心になったのは、横井忠直(1845-1916)。豊前の儒医の家に生まれ、漢学塾で学んだ。『関原役』『山崎役』など合計12巻を書いた。
〔 正確で具体性のある戦闘関係の史料がえられなかったため、『日本戦史』が、江戸時代の娯楽本位に書かれた軍記物・軍談に頼りながら、強引に架空戦史を書いた点は、国民の歴史認識をゆがめる結果になっており、おおいに問題である。第三章で述べたように、長篠の合戦で織田軍が大量の鉄炮を動員し、三段撃ちによって武田の騎馬隊を粉砕したという、歴史教科書にも載っていた「新戦術」、歴史の誤った常識を作ったのは、明治三六年(1903)刊の『日本戦史 長篠役』であった。このほか織田信長が桶狭間の奇襲攻撃で、今川義元の大軍を破ったという常識も、事実に反することが明らかにされている。〕
 
●『武士道』(p233)
 新渡戸稲造『武士道――日本の魂』(英語版1900年。日本版1908年、桜井鷗林訳)。
 ヨーロッパの歴史・文学から多くを引証しつつ、武士道を解明している。
〔 しかし、その徳目は士道に多少似てはいるものの、近世に存在した士道・武士道とはまったく別物である。そもそも彼は日本の歴史や文化に詳しくなかった。『葉隠』を読んだ形跡もない。第一『葉隠』はまだ世に知られていなかった。新渡戸の主張する武士道は、片々たる史実や習慣、倫理・道徳の断片をかき集め、脳裏にある「武士」像をふくらませて紡ぎだした一種の創作である。しかも、戦闘から離れた、もはや武士とは縁の薄い一般道徳化している。〕
 
●滝口(p256)
 天皇家の家政機関である蔵人所に所属。宮廷の警備兵というより、むしろ天皇個人の私的な護衛兵としての性格が強い。
 滝口の役割で特に重要なのが鳴弦(めいげん)。弓に矢をつがえず、張った弦を手で強く引いて鳴らすこと。弦打(つるうち)とも呼ばれる。邪霊を払い、眼に見えぬ精霊を退散させる。弦音によって妖怪変化や魔障のものを驚かし、邪気・ケガレを払う役割を担っていた。
 
(2018/7/16)KG
 
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共食いの博物誌 動物から人間まで
 [自然科学]

共食いの博物誌——動物から人間まで (ヒストリカル・スタディーズ20)  
ビル・シャット/著 藤井美佐子/訳
出版社名:太田出版(ヒストリカル・スタディーズ 20)
出版年月:2017年12月
ISBNコード:978-4-7783-1606-8
税込価格:3,132円
頁数・縦:366, 21p・19cm
 
 
 動物学の専門家でもある作家が書いた、カニバリズム博物誌。
 
【目次】
第1部 動物
 アニマルはカニバル―共食いする動物たち
 お子さまランチを召し上がれ
 性的共食い―大きさがものを言う
 ひとりにして
 ホッキョクグマはつらいよ
  ほか
第2部 ヒト
 ネアンデルタール人とそのほかの谷の住人たち
 コロンブス、カリブ族、カニバリズム
 いさかいのもと
 カニバリズムと聖書
 史上最悪の隊
  ほか
 
【著者】
シャット,ビル (Schutt, Bill)
 ニューヨーク州立大学で生物学修士号、コーネル大学で動物学博士号を取得。ロングアイランド大学ポスト校生物学教授およびアメリカ自然史博物館研究員。北米コウモリ学会(NASBR)理事。脊椎動物研究を専門とする動物学者のかたわら、2008年に吸血動物をテーマにしたノンフィクションDark Banquet: Blood and the Curious Lives of Blood-Feeding Creaturesで作家デビューを果たす。ニューヨーク州ロングアイランド在住。
 
藤井 美佐子 (フジイ ミサコ)
 翻訳家。横浜市立大学文理学部卒。
 
【抜書】
●エド・ゲイン(p8)
 エドワード・ゲイン(Gein。正しい発音はギーン)。アルフレッド・ヒッチコック監督作品「サイコ」に登場する主人公ノーマン・ベイツのモデル。脚本の元になったのは、ロバート・ブロックの小説。小説では、母親への異常な執着に焦点が絞られた。
 実在の人物で、ウィスコンシン州生まれの殺人者、墓泥棒、死体愛好家、食人者。
 1906年生まれ。支配的な母親のもとで孤独で抑圧された生活を送っていた。プレインフィールドという町から10キロほど離れた場所に65ヘクタールの農場を持っていたが、1944年に兄が死ぬと荒廃した。1945年に母親も死に、世捨て人になり、「変人エディー」と呼ばれるようなった。母屋は「幽霊屋敷」と呼ばれた。
 地元の金物店の女主人バーニス・ウォーデンが失踪。1957年11月17日夜、ゲインの屋敷に警察の捜索が入った。裏手の小屋で、警官が梁からぶら下がった鹿と思しき肉塊を発見。実は、頭部を切断されたウォーデン夫人のものだった。
 別の部屋では、人間の頭蓋骨でできたスープボウル、窓の引き紐に取り付けられた上下の唇、乳首をつないで作られたベルト、コンロの上のフライパンに入れられたウォーデン夫人の心臓、冷蔵庫に保管された人間の臓器、などが発見された。
 
●スキアシガエル(p22)
 オタマジャクシのうち、一部が急激な成長を遂げ、大きくなり、力強い尾と鋭いくちばしができる。
 モルフ……同一種内の変異型。
 雑食性の小さなオタマジャクシを食べ始める。共食い。
 
●ポリスの一般法則(p28)
 ゲイリー・ポリス、1980年に動物界のカニバリズムの一般法則をリスト化。
 (1) 未成熟な動物は成熟した動物よりも食べられる頻度が高い。
 (2) 無脊椎動物をはじめとする多くの動物は、卵や未成熟な段階にある同種の個体を認識できず、食糧源としかみなさない。
 (3) メスはオスよりも共食いする頻度が高い。
 (4) 共食いは飢えとともに増加し、代替となる栄養源があれば減少する。
 (5) 共食いは集団における過密度と直接関係がある場合が多い。
 
●ガケジグモ(p47)
 卵が孵ると、母グモは栄養卵を生み、子グモたちに分配する。
 3日後、最初の脱皮を追え、栄養卵を食べ終えてしまうと、母グモは子グモたちを呼び寄せ、自らを餌として差し出す。
 
●シロワニ(p55)
 オオワニザメ科。
 外に卵を産まず、子宮内で胎児に孵化して成長する。「組織栄養性胎生」。
 子宮内で、自分の卵黄を食べつくすと、子宮内の卵、兄弟を食べて成長する。最終的に生き残るのは、二つある子宮に1匹ずつの2匹。
 アデルフォファジー=兄弟間の共食い。
 
●ダーマトファジー(p115)
 母親が自身の表皮を子供に食べさせること。
 卵生種のアシナシイモリ。子を抱えたメスの皮膚は角質層が厚くなり、脂肪を分泌する細胞がたっぷり詰まっている。
 母親の体重は、子が孵化して1週間で14%も減少する。
 なお、胎生種のアシナシイモリの胎児は、母親の胎内で卵管内壁の脂肪分に富む分泌物と細胞物質を食べている。
 
●ネアンデルタール人の絶滅(p133)
 イアン・タッターソル。
 「ネアンデルタール人と現生人類[ホモ・サピエンス]は、非常に長いあいだ、中近東で分かれて生息していた。現生人類が今日のような行動をしていなかった頃のことだ。彼らは象徴的な記録[行動や信念の描写]を残さなかった。現生人類が象徴的な記録を残しはじめるとすぐに、ネアンデルタール人はいなくなった」。
 「ヨーロッパにおけるネアンデルタール人の生息地を侵略する頃には、現生人類は現代と同じように振る舞うようになっており、どうしても勝てない競争相手になっていたのだと思う」。
 
●カリブ族(p139)
 カリブ族(CaribesまたはCaribs)は、食人者と思われていた。
 カリブ族は、「カニブ族(Canibs)」と呼ばれるようになった。発音を間違えた? カリブ族が犬のような顔をしていたため?
 やがて、canibはcannibal(カニバル)の語根となり、食人者を指すために使われていた古代ギリシャ語由来のanthropophagi(アンスロポファジャイ)に取って代わった。
 
●儀式的カニバリズム(p149)
 人類学者によると、儀式的カニバリズムは「エクソカニバリズム(族外食人)」と「エンドカニバリズム(族内食人)」の二つに分類できる。
 エクソカニバリズム……死んだ敵から力や勇気など好ましい特徴を自分に移す方法だと信じられていた。
 
●クック船長(p223)
 イギリスの航海探検家ジェームズ・クック。
 1779年2月14日、度重なる誤解がもとで、航海先のハワイ島の島民に撲殺された。
 島民は、クックの遺体を焼いて骨を取り去ってから地元の族長たちに分配した。クックを神格化し、地元の貴族階級に組み込むため。
 黒焦げになった遺体の一部が、副官のジェームズ・キングに戻された。
 キングは、島民たちに遺体の残りの部分は食べてしまったのかと訊いた。
 キングによれば「島民たちはそう訊かれただけですぐに、ヨーロッパ人と同じく激しい嫌悪感を見せた。それからごく自然に、それはあなたがたのしきたりなのかと訊き返してきた」。
 島民は、クックを殺し、焼き、切り分けたが、食べなかった。
 しかし、この出来事が語られるとき、後半の部分はしばしば誤って伝えられている。
 
●最後の審判(p223)
 レイ・タナヒル『血と肉』(1975年)。
 キリスト教とユダヤ教では、「最後の審判の日に魂が肉体と再び結びつけるよう、人間は死後に肉体が必要だという信仰」がある。
 そのために、「カニバリズムに対する先例のない、病的と言っていいほどの恐怖」が芽生えた。
 
●毛沢東の大躍進(p253)
 毛沢東は、ソビエトの農学者トロフィム・ルイセンコの誤った農業計画の「改良版」を中国に導入する。
 集団農場化を強制的に進め、状況を分かっている人間を粛正したので、大躍進は破滅的な結末を迎える。
 農業生産高(大部分は穀物)が大幅に落ち込み、地方の役人は毛の機嫌を取ろうと実際の数字を大きく水増しした。
 水増し操作のせいで、政府からのノルマが引き上げられ、生産された作物のほとんどは即座に国に差し押さえられ、輸出までされてしまった。
 そのせいで、農民と地方に住む者は飢餓に苦しんだ。家畜が食べられ、次はペット、しまいに子供をはじめとする死者の遺体が食された。
 
●医薬的カニバリズム(p265)
 ヨーロッパでは、国王から庶民まで、ごく普通に血液、骨、皮膚、腸、体の一部を病気の治療用に摂取していた。
 パラケルスス(1493-1541)とその後継者たちは、自然治癒力として、頭蓋骨の粉末を含む薬など、人体の一部から作られた薬剤を処方していた。
 ムミア……ミイラを細かく砕いた粉末。飲み物などに混ぜて摂取したり、軟膏として塗布したり湿布したりして用いられた。発作、打撲傷、出血、胃のむかつきなどに効果があるとされた。ミイラの供給不足が生じると、「密造ミイラ」が作られるようになった。17世紀ごろ?
 「ムミア(mumia)」とは、アラブ人が接着剤や止血剤として用いていた、タールや瀝青などの石油由来物質。アラブ人が6世紀にエジプトを占領して発見したミイラを指す単語にもなった。
 アラブ人は、ミイラの保存処理の過程で瀝青が使用されたと、誤って思い込んだ。数世紀後、ムミアの薬効を聞きつけたヨーロッパ人が、瀝青のほうではなく、干からびた死体(ミイラ)のほうの「ムミア」を買いだめした。その結果、ミイラの粉末は1908年まで、ドイツのダルムシュタットのメルク製薬で販売されることとなった。目録に「ムミア・ヴェラ・エジプティカ」という名称で記載されており、1kgあたり17.50マルク。
 
●胎盤食(p281)
 出産したばかりの母ラットは、胎盤を食べることで、体内で作られる天然の鎮痛物質(オピオイドペプチド)の効果が高まる。
 また、中枢神経系や下垂体、消化管などが、エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィンなどの痛みを抑えるペプチドを分泌する。
 つまり、鎮痛効果がある。 
 
●フォレ族(p303)
 20世紀半ば、人口は約3万6,000人。ニューギニア島の山間の谷にある170ほどの村に住む。三つの方言を話した。
 数千年も前から続く焼き畑式の農業で生活。
 死者を敬う方法として、食人行為が行われていた。そのために、クール―病が発生。
 20世紀になる頃初めてクール―の症例が発生、1957年と1960年がピーク、死者は1,000人に及んだ。
 
(2018/7/12)KG
 
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16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ
 [医学]

16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える 「賢い子」に育てる究極のコツ  
瀧靖之/著
出版社名:文響社
出版年月:2016年4月
ISBNコード:978-4-905073-36-9
税込価格:1,426円
頁数・縦:223p・19cm
 
 
 16万人分におよぶ脳のMRIを見てきた著者による、脳科学的子育て論。
 16万人と言っても、子供だけでなく、様々な年齢の脳画像の解析から出た結論。
 
【目次】
第1章 「好きなこと」で頭がよくなる!「脳を育てる」子育て法
 難関大学生が子供の頃に皆、持っていた「ある本」とは?
 子供の“伸びしろ”は5歳までに決まる!?
  ほか
第2章 子供がぐんぐん賢くなる「3つの秘密道具」
 今日から実践!「好奇心たっぷり脳」に育てる工夫
 秘密道具その1:図鑑
 秘密道具その2:虫とり網……外で一緒に「本物に触れる」
 秘密道具その3:楽器……最初の習い事なら「音楽」がベスト
  ほか
第3章 芸術・語学・運動能力…才能とセンスは「始める時期」で決まる
 なぜ「取り組む時期」で「伸び方」がここまで違うのか
 0歳~:図鑑・絵本・音楽 「感覚」と「感性」は目と耳で磨かれる
  ほか
第4章 心も体も脳も!一生の健康をつくる「親の役割」
 成長期の子供に親がしてあげられる“一番大事なこと”
 ひとりっ子?兄弟姉妹?どちらもいい点・悪い点がある
  ほか
第5章 脳が勝手に成長スピードを上げる!おすすめ生活習慣
 「海馬が大きく健やかに育つ」生き方のすすめ
 知っていますか?「睡眠が足りないと脳が縮んでいく」事実
  ほか
 
【著者】
瀧 靖之 (タキ ヤスユキ)
 東北大学加齢医学研究所教授。医師。医学博士。1970年生まれ。東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。東北大学病院加齢核医学科長として画像診断に取り組むかたわら、東北大学加齢医学研究所及び東北メディカル・メガバンク機構で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIはこれまでに16万人に上る。「脳の発達と加齢に関する脳画像研究」「睡眠と海馬の関係に関する研究」「肥満と脳萎縮の関係に関する研究」など多くの論文を発表。脳を生涯健康に、若々しく保つ生活習慣は、新聞・テレビなどのマスコミでも数多く取り上げられ、そのノウハウをまとめた著書『生涯健康脳』(ソレイユ出版)は、10万部を突破するベストセラーとなっている。本書では、最新の脳研究と自身の子育ての経験をふまえた「科学的な子育て法」を提案。一個人の経験や主観に頼らない「脳の成長」に沿ったメソッドで、何歳からでも、子供の才能や能力を伸ばすことができる。
 
【抜書】
●脳の成長年齢(p110)
 脳の発達にとって最適の開始年齢。
 0歳~……図鑑・絵本、音楽。最初に目と耳が発達する。
 3~5歳……楽器・運動。巧緻運動(器用さ)は、この時期に身に付きやすい。
 8~10歳……語学。言語の発達のピーク。
 10歳~思春期……社会性・コミュニケーション能力。
 脳は後ろから作られる。後頭葉(第一次視覚野) ⇒ 側頭葉(聴覚、記憶) ⇒ 頭頂葉(感覚野) ⇒ 前頭前野(高次認知機能)
 
(2018/7/12)KG
 
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絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか
 [自然科学]

絶滅の人類史―なぜ「私たち」が生き延びたのか (NHK出版新書)
 
更科功/著
出版社名:NHK出版(NHK出版新書 541)
出版年月:2018年1月
ISBNコード:978-4-14-088541-3
税込価格:886円
頁数・縦:249p・18cm
 
 
 最近の研究によって、放射性炭素による年代測定法の精度が向上し、試料の前処理の検討が行われ、人類の化石や遺跡の年代が大幅に修正された。その成果をもとに、人類進化の足跡を概観する。なぜ、現生人類(ホモ・サピエンス)の1種のみが生き残ったのかを考察する。
 
【目次】
序章 私たちは本当に特別な存在なのか
第1部 人類進化の謎に迫る
 第1章 欠点だらけの進化
 第2章 初期人類たちは何を語るか
 第3章 人類は平和な生物
 第4章 森林から追い出されてどう生き延びたか
 第5章 こうして人類は誕生した
第2部 絶滅していった人類たち
 第6章 食べられても産めばいい
 第7章 人類に起きた奇跡とは
 第8章 ホモ属は仕方なく世界に広がった
 第9章 なぜ脳は大きくなり続けたのか
第3部 ホモ・サピエンスはどこに行くのか
 第10章 ネアンデルタール人の繁栄
 第11章 ホモ・サピエンスの出現
 第12章 認知能力に差はあったのか
 第13章 ネアンデルタール人との別れ
 第14章 最近まで生きていた人類
終章 人類最後の1種
 
【著者】
更科 功 (サラシナ イサオ)
 1961年、東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。東京大学総合研究博物館研究事業協力者。専門は分子古生物学。著書に『化石の分子生物学』(講談社現代新書、講談社科学出版賞受賞)など。
 
【抜書】
●二足歩行と犬歯(p24)
 チンパンジーと人類が分かれたのは、最近の研究によると約700年前。
 人類の系統において、最初に進化した特徴は「二足歩行」と「犬歯の縮小」。
 犬歯の縮小は、平和のしるし。チンパンジーは、オス同士の争いと威力誇示のために犬歯を用いる。
 
●アルディピテクス・ラミダス(p39)
 エチオピアの約440万年前の地層から、多くの化石が見つかっている。
《4つの特徴》
 (1)土踏まずがない。 ⇒ 長距離を歩けない
 (2)足の親指を大きく広げることが出来る。 ⇒ 樹上生活に適用
 (3)脚対腕の長さの比は100:90。 ⇒ ヒトは腕70、チンパンジーは106、ゴリラは113。腕が長いほうが、樹上生活に便利。
 (4)骨盤の形……腸骨はヒトのように幅が広く上下に短い。座骨はチンパンジーのように上下に長い。
 直立二足歩行をしていたが、ヒトより歩くのが苦手で、樹上生活もしていた。しかし、木登りはチンパンジーより下手。
 疎林に住んでいたが、森林や草原も活動範囲。森林の食物を主に食べていたが雑食性。
 
●一夫一婦制(p69)
 霊長類の中にも、テナガザルのように一夫一婦的なペアを作る種もある。しかし、集団生活はしていない。森林の中なのでやって行ける。
 複数のオスやメスのいる集団のなかで一夫一婦的なペアを作るのは珍しい。ヒトくらいである。
 
●ホモ・エレクトス(p132)
 190万年前頃に出現。おそらく、ホモ・エレクトスが、初めて走った人類。
 (1)足の指が短い。長いと、走るときに邪魔になる。
 (2)大臀筋(お尻の筋肉)が大きくなった。
 (3)三半規管が大きい。
 走ることによって、手に入る肉の量が増え、脳も大きくなった。
 体温調節のために、体毛がなくなった。
 遺伝的な研究から、肌の色が黒くなったのは約120万年前と推定される。体毛がなくなったのも、この時期か?
 
●ホモ・フローレシエンシス(p223)
 約5万年前まで、インドネシアのフローレス島に住んでいた。かつては1万数千年前に絶滅したと言われていたが、その年代は修正された。
 身長110cm。脳容量400ccで、チンパンジー並み。
 フローレス島では、約100万年前からの石器が出土するので、おそらくその子孫と考えられる。
 ジャワ原人(ホモ・エレクトス、約160万年前~約10万年前)は、身長165cm、脳容量約850~1200cc。
 フローレス島で、約70万年前の人類化石(歯や顎)が発見される。ジャワ原人とホモ・フローレシエンシスとの中間。ジャワ原人は、フローレシエンシスの祖先かもしれない。
 
(2018/7/7)KG
 
〈この本の詳細〉


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たいへんな生きもの 問題を解決するとてつもない進化
 [自然科学]

たいへんな生きもの: 問題を解決するとてつもない進化
 
マット・サイモン/著 松井信彦/訳
出版社名:インターシフト
出版年月:2017年10月
ISBNコード:978-4-7726-9557-2
税込価格:1,944円
頁数・縦:325p・19cm
 
 
 奇妙な生きものたちのワールド。
 
【目次】
1章 何がなんでもセックスしなくちゃ
 やりまくる・・・途方もなく!……アンテキヌス
 オスがメスの体に融けていく……チョウチンアンコウ
 ペニスのフェンシングで決闘だ……扁形動物
 尖ったヒゲを伸ばし恋敵と戦う……ヒゲガエル
 気が狂いそうな音で歌いまくる……ガマアンコウ
2章 ベビーシッターが見つからないから
 アリの頭をベビーベッドに……アリ断頭バエ
 幼虫のボディーガードに仕立てる……グリプタパンテレス属のハチ
 トゲまたトゲまたトゲの毒針で刺す……アスプキャタピラー
 ハッピーエンドの皆殺し……マンボウ
 コオリギみたいに鳴く、子供が迷わないように……シマテンレック
 皮膚の下でわが子を育てる……ピパピパ
3章 寝場所が要るのはわかるけど
 尻から体に入って、宿主を不妊にしてしまう……カクレウオ
 絶景でまかない付きの貸間へ……ウオノエ
 カイメンの内で女王と取り巻きや軍隊が暮らす……テッポウエビ
 世界最大の鳥の巣は監視も厳しい……シャカイハタオリ
 巣の入り口は不思議な耳……ヒーローアリ
4章 これはまたずいぶんなところに
 真空の宇宙に飛び出たって生きていける……クマムシ
 クモですが生涯、水中にいます……ミズグモ
 熱帯雨林のスナイパー通り……ゾンビアリ
 砂漠の優れもの、甲羅ラジエーター……ヒメアルマジロ
 穴の中、ゆるゆるの皮膚が強みです……ハダカデバネズミ
5章 えさにされては生きてけず
 鼻水だって武器になる……ヌタウナギ
 切られた脚の再生法……アホロートル
 身を守る驚異の光のショー……コウイカ
 これぞ完璧なカモフラージュ!……エダハヘラオヤモリ
 ライオンでも突き破れない生ける装甲車……センザンコウ
 猛毒を体毛に塗り込む……タテガミネズミ
6章 えさがなくても生きてけず
 コンクリートまでかじるカタツムリ……アフリカマイマイ
 曲げた針金のような指で……アイアイ
 5000度の爆発的閃光を放つ……シャコ
 クジラの骨を海底で食べつくす……ホネクイハナムシ
 走るのが速すぎて、目が見えなくなる……ハンミョウ
7章 そう簡単には逃がさない
 先っぽが粘つくナゲナワを振り回す……ナゲナワグモ
 散弾のように噴射する粘液砲……カギムシ
 魚を薬漬けにしてから口に入れる……アンボイナガイ
 血を吸い、肉を食べる侵入種……ヤツメウナギ
 食後の死骸を背にしょって……サシガメ
 
【著者】
サイモン,マット (Simon, Matt)
 サイエンスライター。『たいへんな生きもの―問題を解決するとてつもない進化』で全米図書館協会「ALEX賞」を受賞。
 
〈この本の詳細〉


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