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共食いの博物誌 動物から人間まで
 [自然科学]

共食いの博物誌——動物から人間まで (ヒストリカル・スタディーズ20)  
ビル・シャット/著 藤井美佐子/訳
出版社名:太田出版(ヒストリカル・スタディーズ 20)
出版年月:2017年12月
ISBNコード:978-4-7783-1606-8
税込価格:3,132円
頁数・縦:366, 21p・19cm
 
 
 動物学の専門家でもある作家が書いた、カニバリズム博物誌。
 
【目次】
第1部 動物
 アニマルはカニバル―共食いする動物たち
 お子さまランチを召し上がれ
 性的共食い―大きさがものを言う
 ひとりにして
 ホッキョクグマはつらいよ
  ほか
第2部 ヒト
 ネアンデルタール人とそのほかの谷の住人たち
 コロンブス、カリブ族、カニバリズム
 いさかいのもと
 カニバリズムと聖書
 史上最悪の隊
  ほか
 
【著者】
シャット,ビル (Schutt, Bill)
 ニューヨーク州立大学で生物学修士号、コーネル大学で動物学博士号を取得。ロングアイランド大学ポスト校生物学教授およびアメリカ自然史博物館研究員。北米コウモリ学会(NASBR)理事。脊椎動物研究を専門とする動物学者のかたわら、2008年に吸血動物をテーマにしたノンフィクションDark Banquet: Blood and the Curious Lives of Blood-Feeding Creaturesで作家デビューを果たす。ニューヨーク州ロングアイランド在住。
 
藤井 美佐子 (フジイ ミサコ)
 翻訳家。横浜市立大学文理学部卒。
 
【抜書】
●エド・ゲイン(p8)
 エドワード・ゲイン(Gein。正しい発音はギーン)。アルフレッド・ヒッチコック監督作品「サイコ」に登場する主人公ノーマン・ベイツのモデル。脚本の元になったのは、ロバート・ブロックの小説。小説では、母親への異常な執着に焦点が絞られた。
 実在の人物で、ウィスコンシン州生まれの殺人者、墓泥棒、死体愛好家、食人者。
 1906年生まれ。支配的な母親のもとで孤独で抑圧された生活を送っていた。プレインフィールドという町から10キロほど離れた場所に65ヘクタールの農場を持っていたが、1944年に兄が死ぬと荒廃した。1945年に母親も死に、世捨て人になり、「変人エディー」と呼ばれるようなった。母屋は「幽霊屋敷」と呼ばれた。
 地元の金物店の女主人バーニス・ウォーデンが失踪。1957年11月17日夜、ゲインの屋敷に警察の捜索が入った。裏手の小屋で、警官が梁からぶら下がった鹿と思しき肉塊を発見。実は、頭部を切断されたウォーデン夫人のものだった。
 別の部屋では、人間の頭蓋骨でできたスープボウル、窓の引き紐に取り付けられた上下の唇、乳首をつないで作られたベルト、コンロの上のフライパンに入れられたウォーデン夫人の心臓、冷蔵庫に保管された人間の臓器、などが発見された。
 
●スキアシガエル(p22)
 オタマジャクシのうち、一部が急激な成長を遂げ、大きくなり、力強い尾と鋭いくちばしができる。
 モルフ……同一種内の変異型。
 雑食性の小さなオタマジャクシを食べ始める。共食い。
 
●ポリスの一般法則(p28)
 ゲイリー・ポリス、1980年に動物界のカニバリズムの一般法則をリスト化。
 (1) 未成熟な動物は成熟した動物よりも食べられる頻度が高い。
 (2) 無脊椎動物をはじめとする多くの動物は、卵や未成熟な段階にある同種の個体を認識できず、食糧源としかみなさない。
 (3) メスはオスよりも共食いする頻度が高い。
 (4) 共食いは飢えとともに増加し、代替となる栄養源があれば減少する。
 (5) 共食いは集団における過密度と直接関係がある場合が多い。
 
●ガケジグモ(p47)
 卵が孵ると、母グモは栄養卵を生み、子グモたちに分配する。
 3日後、最初の脱皮を追え、栄養卵を食べ終えてしまうと、母グモは子グモたちを呼び寄せ、自らを餌として差し出す。
 
●シロワニ(p55)
 オオワニザメ科。
 外に卵を産まず、子宮内で胎児に孵化して成長する。「組織栄養性胎生」。
 子宮内で、自分の卵黄を食べつくすと、子宮内の卵、兄弟を食べて成長する。最終的に生き残るのは、二つある子宮に1匹ずつの2匹。
 アデルフォファジー=兄弟間の共食い。
 
●ダーマトファジー(p115)
 母親が自身の表皮を子供に食べさせること。
 卵生種のアシナシイモリ。子を抱えたメスの皮膚は角質層が厚くなり、脂肪を分泌する細胞がたっぷり詰まっている。
 母親の体重は、子が孵化して1週間で14%も減少する。
 なお、胎生種のアシナシイモリの胎児は、母親の胎内で卵管内壁の脂肪分に富む分泌物と細胞物質を食べている。
 
●ネアンデルタール人の絶滅(p133)
 イアン・タッターソル。
 「ネアンデルタール人と現生人類[ホモ・サピエンス]は、非常に長いあいだ、中近東で分かれて生息していた。現生人類が今日のような行動をしていなかった頃のことだ。彼らは象徴的な記録[行動や信念の描写]を残さなかった。現生人類が象徴的な記録を残しはじめるとすぐに、ネアンデルタール人はいなくなった」。
 「ヨーロッパにおけるネアンデルタール人の生息地を侵略する頃には、現生人類は現代と同じように振る舞うようになっており、どうしても勝てない競争相手になっていたのだと思う」。
 
●カリブ族(p139)
 カリブ族(CaribesまたはCaribs)は、食人者と思われていた。
 カリブ族は、「カニブ族(Canibs)」と呼ばれるようになった。発音を間違えた? カリブ族が犬のような顔をしていたため?
 やがて、canibはcannibal(カニバル)の語根となり、食人者を指すために使われていた古代ギリシャ語由来のanthropophagi(アンスロポファジャイ)に取って代わった。
 
●儀式的カニバリズム(p149)
 人類学者によると、儀式的カニバリズムは「エクソカニバリズム(族外食人)」と「エンドカニバリズム(族内食人)」の二つに分類できる。
 エクソカニバリズム……死んだ敵から力や勇気など好ましい特徴を自分に移す方法だと信じられていた。
 
●クック船長(p223)
 イギリスの航海探検家ジェームズ・クック。
 1779年2月14日、度重なる誤解がもとで、航海先のハワイ島の島民に撲殺された。
 島民は、クックの遺体を焼いて骨を取り去ってから地元の族長たちに分配した。クックを神格化し、地元の貴族階級に組み込むため。
 黒焦げになった遺体の一部が、副官のジェームズ・キングに戻された。
 キングは、島民たちに遺体の残りの部分は食べてしまったのかと訊いた。
 キングによれば「島民たちはそう訊かれただけですぐに、ヨーロッパ人と同じく激しい嫌悪感を見せた。それからごく自然に、それはあなたがたのしきたりなのかと訊き返してきた」。
 島民は、クックを殺し、焼き、切り分けたが、食べなかった。
 しかし、この出来事が語られるとき、後半の部分はしばしば誤って伝えられている。
 
●最後の審判(p223)
 レイ・タナヒル『血と肉』(1975年)。
 キリスト教とユダヤ教では、「最後の審判の日に魂が肉体と再び結びつけるよう、人間は死後に肉体が必要だという信仰」がある。
 そのために、「カニバリズムに対する先例のない、病的と言っていいほどの恐怖」が芽生えた。
 
●毛沢東の大躍進(p253)
 毛沢東は、ソビエトの農学者トロフィム・ルイセンコの誤った農業計画の「改良版」を中国に導入する。
 集団農場化を強制的に進め、状況を分かっている人間を粛正したので、大躍進は破滅的な結末を迎える。
 農業生産高(大部分は穀物)が大幅に落ち込み、地方の役人は毛の機嫌を取ろうと実際の数字を大きく水増しした。
 水増し操作のせいで、政府からのノルマが引き上げられ、生産された作物のほとんどは即座に国に差し押さえられ、輸出までされてしまった。
 そのせいで、農民と地方に住む者は飢餓に苦しんだ。家畜が食べられ、次はペット、しまいに子供をはじめとする死者の遺体が食された。
 
●医薬的カニバリズム(p265)
 ヨーロッパでは、国王から庶民まで、ごく普通に血液、骨、皮膚、腸、体の一部を病気の治療用に摂取していた。
 パラケルスス(1493-1541)とその後継者たちは、自然治癒力として、頭蓋骨の粉末を含む薬など、人体の一部から作られた薬剤を処方していた。
 ムミア……ミイラを細かく砕いた粉末。飲み物などに混ぜて摂取したり、軟膏として塗布したり湿布したりして用いられた。発作、打撲傷、出血、胃のむかつきなどに効果があるとされた。ミイラの供給不足が生じると、「密造ミイラ」が作られるようになった。17世紀ごろ?
 「ムミア(mumia)」とは、アラブ人が接着剤や止血剤として用いていた、タールや瀝青などの石油由来物質。アラブ人が6世紀にエジプトを占領して発見したミイラを指す単語にもなった。
 アラブ人は、ミイラの保存処理の過程で瀝青が使用されたと、誤って思い込んだ。数世紀後、ムミアの薬効を聞きつけたヨーロッパ人が、瀝青のほうではなく、干からびた死体(ミイラ)のほうの「ムミア」を買いだめした。その結果、ミイラの粉末は1908年まで、ドイツのダルムシュタットのメルク製薬で販売されることとなった。目録に「ムミア・ヴェラ・エジプティカ」という名称で記載されており、1kgあたり17.50マルク。
 
●胎盤食(p281)
 出産したばかりの母ラットは、胎盤を食べることで、体内で作られる天然の鎮痛物質(オピオイドペプチド)の効果が高まる。
 また、中枢神経系や下垂体、消化管などが、エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィンなどの痛みを抑えるペプチドを分泌する。
 つまり、鎮痛効果がある。 
 
●フォレ族(p303)
 20世紀半ば、人口は約3万6,000人。ニューギニア島の山間の谷にある170ほどの村に住む。三つの方言を話した。
 数千年も前から続く焼き畑式の農業で生活。
 死者を敬う方法として、食人行為が行われていた。そのために、クール―病が発生。
 20世紀になる頃初めてクール―の症例が発生、1957年と1960年がピーク、死者は1,000人に及んだ。
 
(2018/7/12)KG
 
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絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか
 [自然科学]

絶滅の人類史―なぜ「私たち」が生き延びたのか (NHK出版新書)
 
更科功/著
出版社名:NHK出版(NHK出版新書 541)
出版年月:2018年1月
ISBNコード:978-4-14-088541-3
税込価格:886円
頁数・縦:249p・18cm
 
 
 最近の研究によって、放射性炭素による年代測定法の精度が向上し、試料の前処理の検討が行われ、人類の化石や遺跡の年代が大幅に修正された。その成果をもとに、人類進化の足跡を概観する。なぜ、現生人類(ホモ・サピエンス)の1種のみが生き残ったのかを考察する。
 
【目次】
序章 私たちは本当に特別な存在なのか
第1部 人類進化の謎に迫る
 第1章 欠点だらけの進化
 第2章 初期人類たちは何を語るか
 第3章 人類は平和な生物
 第4章 森林から追い出されてどう生き延びたか
 第5章 こうして人類は誕生した
第2部 絶滅していった人類たち
 第6章 食べられても産めばいい
 第7章 人類に起きた奇跡とは
 第8章 ホモ属は仕方なく世界に広がった
 第9章 なぜ脳は大きくなり続けたのか
第3部 ホモ・サピエンスはどこに行くのか
 第10章 ネアンデルタール人の繁栄
 第11章 ホモ・サピエンスの出現
 第12章 認知能力に差はあったのか
 第13章 ネアンデルタール人との別れ
 第14章 最近まで生きていた人類
終章 人類最後の1種
 
【著者】
更科 功 (サラシナ イサオ)
 1961年、東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。東京大学総合研究博物館研究事業協力者。専門は分子古生物学。著書に『化石の分子生物学』(講談社現代新書、講談社科学出版賞受賞)など。
 
【抜書】
●二足歩行と犬歯(p24)
 チンパンジーと人類が分かれたのは、最近の研究によると約700年前。
 人類の系統において、最初に進化した特徴は「二足歩行」と「犬歯の縮小」。
 犬歯の縮小は、平和のしるし。チンパンジーは、オス同士の争いと威力誇示のために犬歯を用いる。
 
●アルディピテクス・ラミダス(p39)
 エチオピアの約440万年前の地層から、多くの化石が見つかっている。
《4つの特徴》
 (1)土踏まずがない。 ⇒ 長距離を歩けない
 (2)足の親指を大きく広げることが出来る。 ⇒ 樹上生活に適用
 (3)脚対腕の長さの比は100:90。 ⇒ ヒトは腕70、チンパンジーは106、ゴリラは113。腕が長いほうが、樹上生活に便利。
 (4)骨盤の形……腸骨はヒトのように幅が広く上下に短い。座骨はチンパンジーのように上下に長い。
 直立二足歩行をしていたが、ヒトより歩くのが苦手で、樹上生活もしていた。しかし、木登りはチンパンジーより下手。
 疎林に住んでいたが、森林や草原も活動範囲。森林の食物を主に食べていたが雑食性。
 
●一夫一婦制(p69)
 霊長類の中にも、テナガザルのように一夫一婦的なペアを作る種もある。しかし、集団生活はしていない。森林の中なのでやって行ける。
 複数のオスやメスのいる集団のなかで一夫一婦的なペアを作るのは珍しい。ヒトくらいである。
 
●ホモ・エレクトス(p132)
 190万年前頃に出現。おそらく、ホモ・エレクトスが、初めて走った人類。
 (1)足の指が短い。長いと、走るときに邪魔になる。
 (2)大臀筋(お尻の筋肉)が大きくなった。
 (3)三半規管が大きい。
 走ることによって、手に入る肉の量が増え、脳も大きくなった。
 体温調節のために、体毛がなくなった。
 遺伝的な研究から、肌の色が黒くなったのは約120万年前と推定される。体毛がなくなったのも、この時期か?
 
●ホモ・フローレシエンシス(p223)
 約5万年前まで、インドネシアのフローレス島に住んでいた。かつては1万数千年前に絶滅したと言われていたが、その年代は修正された。
 身長110cm。脳容量400ccで、チンパンジー並み。
 フローレス島では、約100万年前からの石器が出土するので、おそらくその子孫と考えられる。
 ジャワ原人(ホモ・エレクトス、約160万年前~約10万年前)は、身長165cm、脳容量約850~1200cc。
 フローレス島で、約70万年前の人類化石(歯や顎)が発見される。ジャワ原人とホモ・フローレシエンシスとの中間。ジャワ原人は、フローレシエンシスの祖先かもしれない。
 
(2018/7/7)KG
 
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たいへんな生きもの 問題を解決するとてつもない進化
 [自然科学]

たいへんな生きもの: 問題を解決するとてつもない進化
 
マット・サイモン/著 松井信彦/訳
出版社名:インターシフト
出版年月:2017年10月
ISBNコード:978-4-7726-9557-2
税込価格:1,944円
頁数・縦:325p・19cm
 
 
 奇妙な生きものたちのワールド。
 
【目次】
1章 何がなんでもセックスしなくちゃ
 やりまくる・・・途方もなく!……アンテキヌス
 オスがメスの体に融けていく……チョウチンアンコウ
 ペニスのフェンシングで決闘だ……扁形動物
 尖ったヒゲを伸ばし恋敵と戦う……ヒゲガエル
 気が狂いそうな音で歌いまくる……ガマアンコウ
2章 ベビーシッターが見つからないから
 アリの頭をベビーベッドに……アリ断頭バエ
 幼虫のボディーガードに仕立てる……グリプタパンテレス属のハチ
 トゲまたトゲまたトゲの毒針で刺す……アスプキャタピラー
 ハッピーエンドの皆殺し……マンボウ
 コオリギみたいに鳴く、子供が迷わないように……シマテンレック
 皮膚の下でわが子を育てる……ピパピパ
3章 寝場所が要るのはわかるけど
 尻から体に入って、宿主を不妊にしてしまう……カクレウオ
 絶景でまかない付きの貸間へ……ウオノエ
 カイメンの内で女王と取り巻きや軍隊が暮らす……テッポウエビ
 世界最大の鳥の巣は監視も厳しい……シャカイハタオリ
 巣の入り口は不思議な耳……ヒーローアリ
4章 これはまたずいぶんなところに
 真空の宇宙に飛び出たって生きていける……クマムシ
 クモですが生涯、水中にいます……ミズグモ
 熱帯雨林のスナイパー通り……ゾンビアリ
 砂漠の優れもの、甲羅ラジエーター……ヒメアルマジロ
 穴の中、ゆるゆるの皮膚が強みです……ハダカデバネズミ
5章 えさにされては生きてけず
 鼻水だって武器になる……ヌタウナギ
 切られた脚の再生法……アホロートル
 身を守る驚異の光のショー……コウイカ
 これぞ完璧なカモフラージュ!……エダハヘラオヤモリ
 ライオンでも突き破れない生ける装甲車……センザンコウ
 猛毒を体毛に塗り込む……タテガミネズミ
6章 えさがなくても生きてけず
 コンクリートまでかじるカタツムリ……アフリカマイマイ
 曲げた針金のような指で……アイアイ
 5000度の爆発的閃光を放つ……シャコ
 クジラの骨を海底で食べつくす……ホネクイハナムシ
 走るのが速すぎて、目が見えなくなる……ハンミョウ
7章 そう簡単には逃がさない
 先っぽが粘つくナゲナワを振り回す……ナゲナワグモ
 散弾のように噴射する粘液砲……カギムシ
 魚を薬漬けにしてから口に入れる……アンボイナガイ
 血を吸い、肉を食べる侵入種……ヤツメウナギ
 食後の死骸を背にしょって……サシガメ
 
【著者】
サイモン,マット (Simon, Matt)
 サイエンスライター。『たいへんな生きもの―問題を解決するとてつもない進化』で全米図書館協会「ALEX賞」を受賞。
 
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実は猫よりすごく賢い鳥の頭脳
 [自然科学]

実は猫よりすごく賢い鳥の頭脳  
ネイサン・エメリー/著 渡辺智/訳
出版社名:エクスナレッジ
出版年月:2018年2月
ISBNコード:978-4-7678-2397-3
税込価格:3,024円
頁数・縦:191p・26cm
 
 
 鳥頭(トリアタマ、bird brain)と言えば、バカの代名詞のように扱われているが、実は、鳥は哺乳類並みに知能が高い、という話。
 空間を飛ぶためには、精密な視覚と、障害物をよける瞬時の判断が必要となる。そのために、鳥は視覚が発達している。それが脳の発達を促したのかもしれない。
 しかし、哺乳類と鳥類は、進化の過程で3億年前、有羊膜類の時代に枝分かれしてる。つまり、哺乳類とは系統を異にしており、独自に知能を発達させてきたことになる。その証拠として、鳥と哺乳類は脳の構造が微妙に違うらしい。
 
【目次】
第1章 羽を持った類人猿
第2章 方向感覚と記憶力
第3章 伝える能力
第4章 敵と味方と
第5章 道具の使用と作成
第6章 己を知り、他者を知る
第7章 「トリアタマ」が死語になる日
 
【著者】
エメリー,ネイサン (Emery, Nathan)
 ロンドン大学上級講師(認知生物学)。動物の心理、特にカラス、霊長類、オウムにおける洞察や想像力などの研究を専門とする。ロンドン塔で飼われているカラスの研究を進めている。これまでに科学雑誌に80以上の論文を発表し、その研究成果は国際的に注目され、メディアにも数多く取り上げられている。
 
渡辺 智 (ワタナベ サトシ)
 1974年山口県生まれ。広島大学大学院文学研究科博士課程前期修了(英語学英文学)。中学、高校で英語を教えるかたわら、翻訳を手掛ける。
 
【抜書】
●スズメ目(p15)
 約1万種いる鳥類のうち、半数以上はスズメ目(鳴禽類)。
 スズメ、ツグミ、アトリ、シジュウカラ、コマドリ、カラス、など。
 それぞれの種に特有の鳴き方をする。そうした鳴き方をする特別な回路が、進化によって脳内にできた。この能力は、人間が言語を操るのと共通した性質を持っている。
 スズメ目の他に賢いとされる種は、キツツキの仲間、サイチョウの仲間、ハヤブサの仲間。
 ※オウム目も賢いと思われるが?
 
●NCL(p26)
 哺乳類の前頭前皮質(PFC)にあたると考えられているのが、鳥の巣外套尾外側部(NCL=Neuronal Ceroid Lipofuscinosis)。脳の後部にある。脳におけるオーケストラの指揮者の役割。
 NCLは、PFCと同様に脳内回路が、知覚に関わる部分、情動にかかわる部分、記憶にかかわる部分、線条体につながっている。
 
●核構造(p30)
 鳥の脳は、「核構造」となっている。例えるとパウンドケーキ。ニューロンが脳のなかに点在する。細胞核(細胞の塊)が機能の似たものどうし近くで連携をとっている。
 哺乳類の脳は6層の層構造。例えるとショートケーキ。ほとんどのニューロンが脳の表面に集中し、六つの層をなしており、灰白質と呼ばれ、ニューロンどうしを接続する。皮質の下にあるニューロンとも接続され、この接続線網を白質と言う。
 鳥には白質がなく、長い接続線がほとんどない。空を飛ぶために体重を減らし、脳をコンパクトに保つための進化?
 
●羽を持った類人猿(p38)
 2004年、カラス科の数種に大型の類人猿と同等の認知能力があることが分かった。
 脳の相対量が似通っている。
 
●神経新生(p52)
 海馬は記憶を司る。動物にとって、空間認識に非常に重要な役割を果たす。
 鳥では、海馬で頻繁に神経新生(新しいニューロンの発生)が起きている。
 少●しでも体を軽くするために、必要な時に必要なニューロンを生成する?
 
●ハイイロホシガラス(p54)
 ハイイロホシガラスは、秋の間に最大で3万3,000個の松の種を、最大で3,000か所に隠す。
 寒さが厳しい冬の高地では、最長で9か月、覚えておかなければならない。
 
●マイコドリ(p70)
 マイコドリのオスは、ダンスチームに入って7年以上も踊りの修行をする。オス全員でいろいろなダンスを披露する。しかし、メスを得るのはリーダーのみ。
 弟子たちが繁殖できるようになるのは、リーダーの引退後、自分のチームを持つようになってから。
 
●さえずり回路(p82)
 さえずりの知覚、記憶、模倣、生成には、三つの神経回路がかかわっている。
 さえずりをするのは繁殖期のオスなので、メスよりも大きな回路を持っている。高次歌中枢(HVC)の大きさは、カナリアで3倍、キンカチョウで8倍。夏の終わりより春のほうが回路が大きい。
 
●アレックス(p86)
 アレックス……I・ペッパーバーグが、実験のためにシカゴのペットショップで適当に選ばれたオウム。2007年に死亡。
 まず、人間の言葉を覚えさせる。
 トレーニングの結果、50の物体、7つの色、5つの形(何角形か)、8つまでの数、物体の持つ三つの特徴(色、形、材質)、簡単な文について、言葉の意味に正しく反応できるようになった。
 覚えた簡単な文……「ダメ」「おいで」「Xへ行きたい」「Yが欲しい」
 「青くて四角いものは何?」「青いものはいくつ?」といった質問にも答えられるようになった。
 
●ネオフォビア(p170)
 ネオフォビア=新規恐怖。鳥は、見たことがないものを本能的に避けようとする。
 集団の中で地位の低いものは、新しい食べ物はないかと、常に探し回っている。怖いものを避けていては、餌にありつけない。
 冒険心が知能の発達を促した?
 
●フォン・エコノモ・ニューロン(p178)
 フォン・エコノモ(von Economo)が発見。紡錘形をした細胞。紡錘細胞。
 知能の高い哺乳類の脳内にのみ存在する。類人猿、イルカ、クジラ、ゾウ。
 一般的な皮質ニューロン(錐体細胞)は、上下に伸びた樹状突起が1本ついているのみ。
 フォン・エコノモ・ニューロンは、長い樹状突起があり、細胞本体から上に向かって放射状に枝分かれして伸びている。
 前帯状皮質と前島皮質の中にのみ見られるので、社会的認知に関わっているという説が有力。
 前帯状皮質と前島皮質は、他者との関係性と、それにまつわる感情に関わる部位。
 
(2018/6/23)KG
 
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生きものは円柱形
 [自然科学]

生きものは円柱形 (NHK出版新書 540)  
本川達雄/著
出版社名:NHK出版(NHK出版新書 540)
出版年月:2018年1月
ISBNコード:978-4-14-088540-6
税込価格:972円
頁数・縦:296p・18cm
 
 
 生物の仕組みを、円、球、筒といった、まるい形状から解き明かす。また、恒温動物(哺乳類、鳥類)に共通する「時間」の長さについて、心臓1拍を基礎的な時間として解説。
 
【目次】
第1章 生きものは円柱形
第2章 生きものは水みずしい
第3章 生きものはやわらかい
第4章 生きものの建築法
第5章 動物は動く
第6章 サイズと動き
第7章 時間のデザイン
 
【著者】
本川 達雄 (モトカワ タツオ)
 1948年、宮城県生まれ。東京工業大学名誉教授。専門は動物生理学。東京大学理学部生物学科(動物学)卒業。同大助手、琉球大学助教授、東京工業大学大学院生命理工学研究科教授などを歴任。
 
【抜書】
●対数螺旋(p127)
 貝殻の渦巻きは、どれも対数螺旋になっている。
 螺旋の巻き数が増えるとき、すぐ内側の螺旋との距離が一定の比率で増加する。螺旋の巻き数が増えて大きくなっても、全体の形が変わらない。
 
●座屈(p136)
 細長い棒の両端を持って押すと、ほんのちょっと力を加えただけで棒は急にぺコンと曲がってしまう。これを「座屈」という。
 長い棒ほど座屈が起きやすく、長さの二乗に反比例して小さい力で座屈が起きる。座屈を防ぐには棒を太くする必要がある。
 
●交差螺旋(p142)
 円筒形の管を補強するには、繊維を円筒に巻き付ける。この際、交差螺旋を用いる。
 水撒き用のホースの、斜めに交差した螺旋の角度は54.44度。
 
●静水系(p192)
 動物は基本的には膜に包まれた水。
 膜でできた袋の中に水が詰まっているものを「静水系」と呼ぶ。膜には水の圧力で張力がかかり、水には、膜によって圧力がかかっている。
 静水骨格……ミミズなど、内部に水の詰まった広い体腔をもった動物は、「静水骨格」と呼ぶ。膜で包まれた水が骨がわり。円筒を取り巻く環状筋と縦走筋によって、部分的に体の太さを替えながら移動する。
 筋静水系……ゾウの鼻、イカの触手、カメレオンの舌などは、環状筋や縦走筋の仕組みを使って伸び縮みする。
 
●1/4乗(p243)
 動物の「時間」は、体重の1/4乗に比例する。
 心周期、呼吸の周期、寿命、懐胎期間など、様々な「時間」に当てはまる。
 
●15億回(p248)
 寿命を心周期で割ると、およそ15億になる。動物(哺乳類と鳥類)はみな、心臓が15億回打つと死を迎えることになる。
 心臓時計……肺の周期(呼吸)は心臓4.5拍、腸の蠕動11拍、血液の一巡84拍、懐胎期間2,300万拍、成獣になるまでの時間1億5,000万拍、寿命15億拍。
 
●30億ジュール(p256)
 恒温動物のエネルギー消費量は、体重の1/4に「反」比例。
 恒温動物の時間は、体重の1/4に「正」比例。
 つまり、時間とエネルギー消費量とは互いに反比例する。「時間の速度」(時間の逆数)がエネルギー消費量に正比例する。
 1kgあたりの心臓1拍のエネルギー消費量は1ジュール。基礎代謝は、生涯15億ジュール。
 普通の恒温動物は、基礎代謝の2倍のエネルギーを使うので、体重1kg当たり30億ジュールのエネルギーを生涯に消費する。
 
(2018/6/9)KG
 
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闇に魅入られた科学者たち 人体実験は何を生んだのか
 [自然科学]

闇に魅入られた科学者たち―人体実験は何を生んだのか  
NHK「フランケンシュタインの誘惑」制作班/著
出版社名:NHK出版
出版年月:2018年3月
ISBNコード:978-4-14-081735-3
税込価格:1,620円
頁数・縦:235p・19cm
 
 
 NHK BSプレミアムで放送された「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」の中から、「人体実験」扱った番組を書籍化。
 
【目次】
第1章 切り裂きハンター―死のコレクション……ジョン・ハンター(1728-1793)、2016/8/25放送
 本当は怖い「ドリトル先生」
 動物や虫の生態に居場所を見つけた少年
  ほか
第2章 “いのち”の優劣―ナチス 知られざる科学者……オトマール・フォン・フェアシュアー(1896-1969)、2017/1/26放送
 ホロコーストの道具となった“科学”
 敗戦下のドイツと優生学
  ほか
第3章 脳を切る―悪魔の手術ロボトミー……ウォルター・フリーマン(1895-1972)、2017/2/23放送
 アメリカ初の「精神外科」手術
 祖父への憧れから精神医学の道へ
  ほか
第4章 汚れた金メダル―国家ドーピング計画……マンフレッド・ヒョップナー(1934-)、2016/6/30放送
 国家ドーピング計画を首謀した男
 ベルリンオリンピック後の激動のなかで
  ほか
第5章 人が悪魔に変わる時―史上最悪の心理学実験……フィリップ・ジンバルドー(1933-)、2016/7/28放送
 事の発端―ある仮説の誕生
 スラム育ちの心理学者
  ほか
 
【抜書】
●ドリトル先生(p14)
 ジョン・ハンター……外科医で解剖学者。近代外科学の父。動物と話をすることができる「ドリトル先生」(ヒュー・ロフティング作。アメリカの作家)のモデル。ロンドン西部のアールズコートにあった別邸に、シカや水牛、キリン、ヒョウ、ライオンを飼育していた。
 また、ロバート・ルイス・スティーヴンソン『ジキル博士とハイド氏』のモデルになったとも言われている。
 
●ハンテリアン博物館(p27)
 イギリス王立外科医師会の建物の中に、「ハンテリアン博物館」がある。18世紀末にハンターが公開した収蔵品を継承。ハンターが解剖した動物や人間の様々な骨格標本やホルマリン漬けの臓器などが保存・展示されている。
 
●アダムとイヴ(p43)
 「私は解剖を通じて確信しました。最初の人間がアダムとイブだというのなら、それはアフリカ人だったはずです」。
 自身の博物館にて、サル、黒人、白人の頭蓋骨の前でこのように解説。ダーウィンの進化説の先取り。
 
●20万人(p52)
 ホロコーストでは、600万人のユダヤ人とともに、20万人以上の障害者たちも殺害された。
 人類遺伝学者オトマール・フォン・フェアシュアーは、優生学の立場から、断種法の制定やホロコーストなど、ナチスの人種差別的な政策に「科学的」根拠を与え、協力した。
 
●断種法(p63)
 1933年、ヒトラーが政権を取ると断種法が成立、1945年までの間に40万人が強制的に断種された。当時のドイツ国民の200人に一人。
 
●ユダヤ人とは?(p70)
 ナチスは、ユダヤ人を明確に定義する方法を持っていなかった。ユダヤ人とドイツ人の外見は、たいして差がない。
 フェアシュアーは、ユダヤ人を科学的に特定する方法の研究を依頼される。『ユダヤ人の人種生物学』(1938年)にまとめる。
 「ユダヤ人男性の身長は161~164センチメートルである」「ユダヤ人の鼻はカギ鼻である」「ユダヤ人は特有の体臭がある」「糖尿病などの発病、聾や難聴などの障害が起こる頻度が高い」等々。
 
●ピマインディアン(p88)
 ピマインディアンは、アメリカ大陸の非常に乏しい食糧環境の中で何千年も生き抜いてきた遺伝子を持っている。現代のアメリカの食生活で、彼らの多くが重度の肥満になり、糖尿病に悩まされている。
 ある一つの遺伝子の型が良いのか悪いのか、様々な環境条件の変化によって容易に逆転する。現代の人間のその場限りの浅知恵で書き換えてしまうと、子孫に禍根を残す可能性もある。(人類遺伝学者の松原洋一談)
 
●スタンフォード監獄実験(p186)
 ジンバルドーは、被験者募集に応募してきた約100名の学生に心理テストを行い、性格や気質の傾向がすべて標準的な24名(控えの員数を含む)を抽出。無作為に二つのグループに分け、看守役と囚人役に仕立てる。
 もともと同じような性格の被験者たちは、監獄の場においてそれぞれの役割を与えられた結果、どう変わっていくのかを調べた。
 実験中の被験者の様子は、隠しカメラや盗聴マイクで記録された。
 
●監獄長(p202)
 ジンバルドーの「スタンフォード監獄実験」は、見学に来た彼の恋人の非難に遭い、2週間の予定を6日間で打ち切った。
 彼自身も、科学者という立場を離れ、「監獄長」として振舞うようになっていた。自分もまた、「状況」に飲み込まれていた。
 
(2018/5/27)KG
 
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意識の進化的起源 カンブリア爆発で心は生まれた
 [自然科学]

意識の進化的起源: カンブリア爆発で心は生まれた  
トッド・E・ファインバーグ/著 ジョン・M・マラット/著 鈴木大地/訳
出版社名:勁草書房
出版年月:2017年8月
ISBNコード:978-4-326-10263-1
税込価格:4,320円
頁数・縦:356p・22cm
 
 
 カンブリア紀に動物の目が進化し、その後、聴覚や嗅覚、味覚などの感覚も発達し、それが生物に意識を発生させたと説く。
 ちなみに、確実に意識を持つ動物は脊椎動物で、〔節足動物と、軟体動物のうちの頭足類は、無脊椎動物のなかで意識をもつ有力な候補〕となっている(p210)。
 
【目次】
第1章 主観性の謎
第2章 一般的な生物学的特性と特殊な神経生物学的特性
第3章 脳の誕生
第4章 カンブリア爆発
第5章 意識の発端
第6章 脊椎動物の感覚意識の二段階的進化
第7章 感性の探求
第8章 感性の解明
第9章 意識に背骨は必要か
第10章 神経生物学的自然主義―知の統合
 
【著者】
ファインバーグ,トッド・E. (Feinberg, Todd E.)
 M.D.(医師)、マウント・サイナイ医科大学。マウント・サイナイ医科大学教授。専門は意識科学、特に自我の精神医学。
 
マラット,ジョン・M. (Mallatt, Jon M.)
 Ph.D. in Anatomy(解剖学博士)、シカゴ大学。ワシントン大学とワシントン州立大学の准教授を兼任。専門は分子系統学や形態学、特に脊椎動物の解剖学。
 
鈴木 大地 (スズキ ダイチ)
 博士(理学)、筑波大学。学術振興会海外特別研究員(カロリンスカ研究所)。博士号取得後、学術振興会特別研究員(筑波大学)を経て現職。専門は進化発生学や神経科学、特に初期脊椎動物の神経系の進化。生物学の哲学や心の哲学にも関心があり、気鋭の哲学者との研究会や共同研究を行っている。
 
【抜書】
●ハード・プロブレム(p3)
 哲学者デイヴィッド・チャ―マーズの命名。
 血と肉でできた脳がいかにして主観的経験を生み出すのか?
 経験の主観的側面を客観的に説明することは困難。
 
●ゲノム4倍化(p77)
 脊椎動物の黎明期に、ゲノム全体が重複(倍化)した。
 そしてすぐにもう一度重複した。
 ナメクジウオや他の無脊椎動物と比べて、どの現生脊椎動物も非常に多くの遺伝子を有している。
 「ゲノム4倍化」が、遺伝的な新奇性をもたらし、進化的革新を可能にした。初期の脊椎動物は遺伝的メカニズムによって、身体構造、身体機能、神経系の面でそれまでの地球上でもっとも複雑な動物となり、それが今日まで続いている。
 ゲノム重複は、無脊椎動物の中で最大の身体と脳を持つ軟体動物でも起こっていない。ただし、独立にゲノム重複した無脊椎動物の系統は存在する。(p260、原注)
 
(2018/5/11)KG
 
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歴史のなかの科学
 [自然科学]

歴史のなかの科学  
佐藤文隆/著
出版社名:青土社
出版年月:2017年5月
ISBNコード:978-4-7917-6983-4
税込価格:2,160円
頁数・縦:201p・20cm
 
 
 『現代思想』に連載中の「科学者の散歩道」第25回~36回(2016年1月~翌年4月)の文章に加筆して単行本化。
 ちなみに第1回~12回は『科学者には世界はこう見える』、第13~24回は『科学者、あたりまえを疑う』として青土社から出版されている。
 
【目次】
第1章 ニュートリノ「スーパーポジション」
第2章 工部大学校―後進国の先進性
第3章 重力波検出実験の社会科―久しぶりの米国
第4章 大戦のストレステスト―「理研百年」、高木貞治
第5章 「昭和反動」下の“科学”と“科学的”
第6章 占領下異物としての学術会議
第7章 アカデミックな職場の変容―大学院生事情の今昔
第8章 超新星爆発とSSC中止の間
第9章 アインシュタイン生誕一〇〇年と「改革開放」初期―周陪源と方励之
第10章 学校教育界と学問研究界―デューイからトランプまで
第11章 ソ連物理学の光芒―ランダウ-リフシッツ
第12章 「国民国家」と科学―世界遺産・ニホニウム・単位名
 
【著者】
佐藤 文隆 (サトウ フミタカ)
 1938年山形県鮎貝村(現白鷹町)生まれ。60年京都大理学部卒。京都大学基礎物理学研究所長、京都大学理学部長、日本物理学会会長、日本学術会議会員、湯川記念財団理事長などを歴任。1973年にブラックホールの解明につながるアインシュタイン方程式におけるトミマツ・サトウ解を発見し、仁科記念賞受賞。1999年に紫綬褒章、2013年に瑞宝中綬章を受けた。京都大学名誉教授。元甲南大学教授。
 
【抜書】
●工部大学校(p36)
 1794年、パリのエコル・ポリテクニク創設。数学と理化学に基礎を置く技術教育の嚆矢。
 1815年、ウィーンに理工科学校設立。
 1825年、カールスルーヘに理工科学校設立。
 1831年、ハノーヴァーに理工科学校設立。
 1855年、チューリッヒETH設立。
 1826年、イギリスのアンダーソン・カレッジ設立。
 1829年、フランスのエコル・サントラル設立。
 1865年、MIT設立。
 1873年、工部大学校創設。
 総合大学の中に工学部を置いたのは、日本の東京大学が世界初。その後の世界の潮流になる。
 伝統のしがらみにとらわれない後進国の先進性?
 
●理化学研究所創設(p54)
 1917年6月、理化学研究所設立。
 第一次世界大戦で、日本は日英同盟のおかげで戦勝国となり、ドイツが持っていた中国や太平洋海域での帝国主義的権益を漁夫の利で手に入れた。
 しかし、大戦の影響で科学技術先進国からの輸入が途絶え、日本の工業界は深刻な影響を受けた。 ⇒ 工業国として完全には自立していないことを実感。
 高度な化学薬品等、特殊な鉄鋼、光学機器などの基幹的技術での依存性を悟らされた。
 この大戦で登場した航空や通信への対応にも迫られた。
 敗れたとはいえ、4年半もの間、列強と戦争を継続できたのはドイツの科学技術力の先進性によるものであったという認識が世界に広まった。国家主導でカイザーウィルヘルム協会という科学研究機構を1910年に発足させていた。
 理研設立には、以上のような時代背景があった。
 
●科学主義工業(p57)
 理研の三代目所長である大河内正敏は、「科学者の自由な楽園」を現出させた。
 「資本主義工業は科学を理解せず」として、「科学主義工業」を提唱。
 資本主義工業の要請を受けた研究ではなく、科学主義の純正研究で生み出される成果を工業化する。
 
●週3回(p66)
 日本では、大学の授業は90分週1回が一般的だが、大学発祥の欧米先進国では今でも1科目の授業は1時間週3回である。
 特に低学年の基礎科目では徹底している。
 
●士族出身の学者(p151)
 第二次世界大戦前までに有給のポストに就いた大学教授や官庁・大企業の技術専門職の大半は、濃密な姻戚関係でつながっていた。
 明治維新で廃業となった士族の子弟の多くが、新職業としてこの道に入ったため。武家社会は崩壊しても、しばらくは長年の世襲、家同士の婚姻、養子・婿入りなどの慣行が続いていた。
 こうした家同士のネットワークが相互に就職を保障しあい、早期に学者への道を選択することを保障した。
 専門家の育成には早期の職業の保障が必要。
 
●ジャクソン大統領(p156)
 米国第7代大統領ジャクソンは、「無学問」を売り物に当選。
 初代からそれまでの大統領は、欧州文化のジェントルマンたちだった。欧州をモデルとした国民教育や専門家教育の制度建設に乗り出した。
 インディアンと戦って居住地を広げている段階の多くの国民は、階級社会の再来を予感して反発した。それがジャクソン大統領登場につながった。
 米国は、伝統社会を抹殺して、移民で始まった国。
 トランプ現象も、「ジャクソニアン・デモクラシー」マグマの表出?
 ホワイトハウス入りしたトランプは、早速、執務室にジャクソンの肖像を飾ったという。
 
(2018/4/22)KG
 
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物理学はいかに創られたか 初期の観念から相対性理論及び量子論への思想の発展 改版
 [自然科学]

物理学はいかに創られたか(上) (岩波新書)
アインシュタイン/著 インフェルト/著 石原純/訳
出版社名:岩波書店(岩波新書 赤版 50)
 
(上)
出版年月:1991年
ISBNコード:978-4-00-400014-3
税込価格:778円
頁数・縦:177p・18cm
 
物理学はいかに創られたか(下) (岩波新書)
 
 
(下)
出版年月:1991年
ISBNコード:978-4-00-400015-0
税込価格:799円
頁数・縦:194, 5p・18cm
 
 
 相対性理論が生まれるまでの物理学の歴史を概観する。科学者たちがどのようなことに疑問を持ち、どのような理屈で現象をとらえていったか、その思考の跡をたどる。
 上巻は、1988年4月第60刷(1939年10月初版、1963年9月第30刷改版)で読んだ。下巻は、1984年8月第51刷(1940年1月初版、1963年10月第27刷改版)。とにかく、超ロングセラーの新書である。ちなみに、定価は上巻480円、下巻430円。もちろん、どちらも消費税なし!
 さらに面白いことに、奥付には訳者の名前のみで、著者の名前も経歴もない。アインシュタインは知ってるけど、インフェルトって??
 
【目次】
《上》
Ⅰ 力学的自然観の勃興
 大きな謎物語
 最初の手がかり
 ベクトル
 運動の謎
 残る一つの手がかかり
 熱は物質であるか
 スウィッチバック
 換算の割合
 哲学的背景
 物体の運動学的理論
Ⅱ 力学的自然観の凋落
 二つの電気流体
 磁気流体
 最初の重大困難
 光の速さ
 実体としての光
 色の謎
 波動とは何か
 光の波動説
 光は縦波か横波か
 エーテルと力学的自然観
Ⅲ 場・相対性(一)
 表示方法としての場
 場の理論の二つの柱石
 場の実在性
 場とエーテル
《下》
Ⅲ 場・相対性(二)
 力学的足場
 エーテルと運動
 時間、距離、相対性
 相対性と力学
 時空連続体
 一般相対性
 昇降機の内と外
 幾何学と実験
 一般相対性とその検証
 場と物体
Ⅳ 量子
 連続、不連続
 物質と電気との素量子
 光の量子
 光のスペクトル
 物質の波
 確率波
 物理学の実在
 
【著者】
石原 純 (イシハラ ジュン)
 1881年、東京に生まれる。1906年、東京帝国大学理科大学理論物理学科卒業。1914年、東北帝国大学理科大学教授。1932年、岩波書店「科学」編集主任。1947年没。
 
(2018/4/20)KG
 
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抗生物質と人間 マイクロバイオームの危機
 [自然科学]

抗生物質と人間――マイクロバイオームの危機 (岩波新書)  
山本太郎/著
出版社名:岩波書店(岩波新書 新赤版 1679)
出版年月:2017年9月
ISBNコード:978-4-00-431679-4
税込価格:821円
頁数・縦:170, 7p・18cm
 
 
 ペニシリンは、1928年、アレクサンダー・フレミングによって発見された。その後、実用化されるまでには紆余曲折があったが、抗生物質は数え切れないほどの人の命を救ってきた。
 しかし、その抗生物質の乱用が、私たちの体内に100兆個存在する常在細菌に攪乱を引き起こしているという。もしかすると、ヒトと共生細菌叢との歴史において、3回目の大革命が起きようとしているのかもしれない。
 そんな視点から、抗生物質の光と影を概観し、人類にとって望ましい抗生物質との付き合い方を提言する。
 
【目次】
プロローグ―抗生物質がなくて亡くなった祖父母、抗生物質耐性菌のために亡くなった祖母
第1章 抗生物質の光と影
第2章 微生物の惑星
第3章 マイクロバイオームの世界
第4章 抗生物質が体内の生態系に引き起こすこと
第5章 腸内細菌の伝達と帝王切開
第6章 未来の医療
エピローグ―世界の腸内細菌を探しに
 
【著者】
山本 太郎 (ヤマモト タロウ)
 1964年生まれ。1990年長崎大学医学部卒業。京都大学医学研究科助教授、外務省国際協力局勤務などを経て、長崎大学熱帯医学研究所教授、医師。専攻は国際保健学、熱帯感染症学、感染症対策。
 
【抜書】
●尿(p15)
 1942年3月12日木曜日、米国コネティカット州ニューヘブンにあるイェール大学病院にて、33歳の看護師アン・ミラーにペニシリンが投与された。彼女は産褥熱に侵されていた。
 月曜日の朝には、ミラーの体温は平熱に下がり、旺盛な食欲を示すまでに回復した。
 当時、ペニシリンは希少だったので、ミラーの尿は集められ、ニュージャージーにある製薬会社メルクに送り返され、そこで抽出されて再精製された。ペニシリンの95%はそのままの状態で尿から排出される。
 
●抗生物質の選択毒性(p23)
 抗生物質の選択毒性が働く4種類の機序。
 (1)細菌の細胞壁合成を阻害する。ヒト細胞は細胞壁を待たない。ペニシリン、セフェム系の機序。
 (2)細胞膜機能を阻害する。細胞膜は、細菌の生命維持に必要な物質の透過性を制御している。コリスチン、ポリミキシンB。
 (3)核酸(DNAやRNA)の合成を阻害する。結果として細胞のたんぱく質合成が停止する。細菌とヒト細胞の増殖速度の違いを利用して選択毒性を発揮する。ニューキノロン系。
 (4)リボソームに作用し、たんぱく質の合成を阻害する。ヒトと細菌のリボソームの種類が違うことで選択毒性を発揮する。ストレプトマイシン、クロラムフェニコール。
 
●共生細菌叢の変化(p41)
 人類史上、共生細菌叢の大きな変化は、少なくとも3回あった。
 (1)火の利用により、加熱調理を始めた時。12万5000年前?
 (2)農耕の開始。動物たんぱく質中心の食事から穀物中心のものへと変えた。約1万年前。
 (3)抗生物質の使用の開始。共生細菌叢の攪乱が始まった。約70年前。
 
●ドメイン(p56)
 米国の微生物学者のカール・リチャード・ウーズ。リボソームRNAによって生物分類を行った。遺伝子情報に基づく生物分類の先駆者。
 リボソームRNAは、リボソームを構成するリボ核酸。そのため、すべての生物に存在し、大きな機能的制約を受ける。それを比較すれば、生物の新たな分類体系できると考えた(Woose, C. R., 1990)。
 それまでの生物分類は、「界」を最上位に置き、動物界、植物界、菌界となっていた。
 ウーズの分類では、「界」の上に三つのドメインを設けた。真正細菌、古細菌(アーキア)、真核生物。
 動物、植物、粘菌やアメーバ、菌類、コケ類、藻類は、真核生物ドメインに分類される。
 
●マイクロバイオーム(p72)
 かつて、細菌は植物(植物相)に含まれる下位概念として認識されていた。そのため、「叢(=フローラ)」という言葉が用いられた。細菌叢。
 しかし、現在では、細菌は独立した相を構成すると考えられるようになった。微生物相(マイクロバイオータ)。
 マイクロバイオータ……微生物の実態そのものを指す。細菌叢とほぼ同様の意味。
 マイクロバイオーム……微生物とそれが発現する遺伝子群、および微生物と宿主の相互作用までを含む広い概念として用いられる。「オーム」は、ギリシャ語で「すべて」を意味する。
 ヒト・マイクロバイオータとは、ヒトに常在する細菌そのものの総称。ヒト・マイクロバイオームは、そうした常在細菌が行う生命活動全体をも包括した概念。宿主とであるヒトとの代謝産物を介した対話なども含む。
 
●パプアニューギニア高地人(p78)
 パプアニューギニアの高地に住む人々は、サツマイモを主食にしており、動物性たんぱく質の摂取機会が極まて少ない。
 ヒトの窒素最低必要量は、体重1kgあたり1日約105mgとされている。つまり、70kgの人は7.35g以上必要となる。1970年の調査では、彼らは50~75mgだった。
 たんぱく質摂取量の不足は、筋肉の減少や免疫力の低下を引き起こすが、彼には見られず、筋肉質な体格を持ち、健康な生活をしている。
 調査の結果、彼らの便から排泄される窒素量(たんぱく質の代理指標)は、摂取量より1日平均2gも多かった。体重70kgの人が、毎日4gの窒素を摂取し、6gを排泄している計算となる。たんぱく質に換算すると、12.5gを過剰に排泄していることになる。
 ヒトは、窒素固定細菌を腸内に宿している。ニューギニア高地人も日本人も同様。前者の細菌は、後者よりも多いのかもしれない?
 窒素固定……大気の80%は窒素だが、植物は大気中の窒素を直接利用できない。たとえばマメ科植物の根粒菌は、宿主であるマメ科の植物との共同作業として大気中の窒素を固定する。
 
●家畜(p99)
 野生動物の家畜化は、ヒトと動物の物理的距離を縮めた。農耕の開始により、人口増加が起こり、感染症の受け皿となった。
 麻疹はイヌ、天然痘はウシ、百日咳はブタあるいはイヌにその起源をもつ。
 
●一万分の一(p137)
 1954年、ボンホッフらの研究。
 抗生物質の投与が感染に必要な最小限の細菌の個数を大幅に減少させる。
 マウスの約半数が感染するサルモネラの量は約10万個。ストレプトマイシンを1日投与したマウスでは、その量が一万分の一にまで減少した。3個で感染したマウスもいた。
 
(2018/4/6)KG
 
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