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百年泥
 [文芸]

百年泥 第158回芥川賞受賞  
石井遊佳/著
出版社名:新潮社
出版年月:2018年1月
ISBNコード:978-4-10-351531-9
税込価格:1,296円
頁数・縦:125p・20cm
 
 
 2017年 第49回 新潮新人賞受賞。2017年 第158回 芥川賞受賞。
 チェンナイで百年に一度の洪水! アダイヤール川氾濫、市内ほぼ全域浸水か……。
 のっぴきならない事情により、チェンナイのIT企業で日本語教師を務めることになった女性が、橋の上で語る荒唐無稽なお話。
 
【著者】
石井 遊佳 (イシイ ユウカ)
 1963年11月大阪府枚方市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学。日本語教師。2017年『百年泥』で新潮新人賞、第一五八回芥川龍之介賞を受賞。インド、タミル・ナードゥ州チェンナイ市在住。
  
(2018/6/29)EB
 
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ストリップの帝王
 [文芸]

ストリップの帝王
 
八木澤高明/著
出版社名:KADOKAWA
出版年月:2017年12月
ISBNコード:978-4-04-105164-1
税込価格:1,836円
頁数・縦:314p・20cm
 
 
 「ストリップの帝王」と呼ばれた男、瀧口義弘の一代記である。
 実姉であり、当時、レズビアンショーで一世を風靡したストリッパーの桐かおるの鶴の一声で、34歳の時に福岡から木更津に移住し、彼女の経営するストリップ劇場の経営に携わることになる。1941年生まれの瀧口は、それまで、高校を卒業後に福岡相互銀行(現・西日本シティ銀行)に勤務する銀行員であった。
 その後、数々の劇場の経営と、ストリッパーの手配を行う「コース切り」に携わり、ストリップの栄枯盛衰を体現し、諏訪フランス座の「照明係」を最後に70歳で引退。その間には、警察の摘発により、全国指名手配となるが、7年間逃げ通して時効を勝ち取っている。とにかく型破りな人生である。
 同時に、ストリップという大衆芸能(?)の歴史もそれとなく綴る。
 
【目次】
第1章 芸界―銀行マン、ストリップ業界に入る
第2章 台頭―ダイナマイトを巻いて警察に乗り込む
第3章 家族―全国指名手配から逃げる
第4章 帝王―経営再建の名手となる
第5章 挫折―後継者育成に行き詰まる
第6章 劇場―最後の公演を見届ける
 
【著者】
八木澤 高明 (ヤギサワ タカアキ)
 1972年神奈川県横浜市生まれ。写真週刊誌フライデー専属カメラマンを経て、2004年よりフリーランス。01年から12年まで取材した「マオキッズ 毛沢東のこどもたちを巡る旅」が第19回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
 
【抜書】
●花電車(p19)
〔 花電車の呼称は、装飾された路面電車が花電車と呼ばれ、客を乗せないことから、芸者が性器を使うものの、男を乗せないことがそう呼ばれるようになった。戦前に中国などから大阪の飛田(とびた)遊郭に伝わり、芸妓たちが女性器を使って書道をしたり、吹き矢を飛ばしたことが日本における花電車の事始めである。飛田遊郭から、東京にも伝わり、当時一大色街であった玉ノ井などでも盛んに演じられたという。〕
 
(2018/6/8)KG
 
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届くなら、あの日見た空をもう一度。
 [文芸]

届くなら、あの日見た空をもう一度。 (スターツ出版文庫)  
武井ゆひ/著
出版社名:スターツ出版(スターツ出版文庫 Sた2-1)
出版年月:2018年2月
ISBNコード:978-4-8137-0411-9
税込価格:583円
頁数・縦:241p・15cm
 
 
 「第2回スターツ出版文庫大賞 特別賞」受賞作。
 作者の執筆モットーは「心に寄り添う作品づくり」とのこと。まさにそのとおり、傷ついた幼馴染の「なの姉」にけなげに寄り添う少年の心のなかを見事に描いている。
 
【著者】
武井 ゆひ (タケイ ユヒ)
 2017年、第2回スターツ出版文庫大賞において『届くなら、あの日見た空をもう一度。』が特別賞を受賞し、作家デビュー。
 
(2018/5/29)
 
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広辞苑はなぜ生まれたか 新村出の生きた軌跡
 [文芸]

広辞苑はなぜ生まれたか―新村出の生きた軌跡

新村恭/著
出版社名:世界思想社
出版年月:2017年8月
ISBNコード:978-4-7907-1703-4
税込価格:2,484円
頁数・縦:236p・20cm


 末孫による、新村出の伝記。特に、『広辞苑』編纂の顛末について1章を割く。
 
【目次】
1 新村出の生涯
 萩の乱のなかで生を享ける―父は山口県令
 親元離れて漢学修業―小学校は卒業してない
 静岡は第一のふるさと
 文学へのめざめ、そして言語学の高みへ―高・東大時代
 荒川豊子との恋愛、結婚
 転機、欧州留学
 水に合った京都大学―言語学講座、図書館長、南蛮吉利支丹
 戦争のなかでの想念
 京都での暮らし―晩年・最晩年
 新村出が京都に残したもの
2 真説『広辞苑』物語
 『辞苑』の刊行と改訂作業
 岩波書店から『広辞苑』刊行へ
 『広辞苑』刊行のあとに
3 交友録
 徳川慶喜の八女国子―初恋の人
 高峰秀子
 佐佐木信綱
 川田順
 そのほかの人びと
 
【著者】
新村 恭 (シンムラ ヤスシ)
 1947年、京都市の祖父新村出の家で生まれる。名古屋で育ち、1965年、東京都立大学人文学部入学。1973年、同大学院史学専攻修士課程修了。岩波書店、人間文化研究機構で本づくりのしごとに携わる。現在、フリーエディター、新村出記念財団嘱託。
 
【抜書】
●静岡(p24)
 明治に徳川家と幕臣が家康ゆかりの駿府の地に、江戸から移された。同地にあった諸藩は、安房国と上総国に移された。
 徳川家は新しい藩を作り、家達が藩主となった。府中藩。
 しかし、府中藩はすでに他所にあったので、明治政府から改名案提出を求められる。
 賎機山(しずはたやま)の麓に藩庁があったので、「静」「静城(しずき)」「静岡」の三つの案を出し、「静岡」に決まった。
 
●日本語教師(p50)
 新村出は、大学院時代から数年間、多数来日していた清国の留学生を対象に日本語を教授した。
 明治32年(1899年)9月、東京帝国大学大学院入学、国語学専攻。明治33年10月、東京帝国大学文科大学助手。
 
●図書館長(p80)
 明治44年(1911年)、欧州留学からの帰朝2年後、京都大学の図書館長に任命される。3代目、教授(帰朝直後に就任)との兼任。
 昭和11年(1936年)10月の定年退職まで図書館長を務める。丸25年、教授兼任で図書館長。
 
●三然主義(p126)
 晩年、自らについて「三然主義者」とかたる。
 自然を愛し、偶然を楽しみ、悠然と生きる。自然・偶然・悠然をモットーとする。
 
●美意延年(p136)
〔 いずれにしても、最晩年の出は、父母、家族・親類の恩、多くの社会の人びとの恩、国主(出は徳川家を旧主、天皇を新主としていた)の恩、自然への恵みとそれへの恩、さらに師恩に感謝しながら、決して無理をせず、「美意延年」、意(こころ)を美(たの)しましめて年を延べる生き方をした。〕
 新村家応接間には「美意延年」の扁額があった。
 原典は荀子。
 
●溝江八男太(p159)
 溝江八男太(やおた)、『辞苑』(博文館)の実質的な編者・執筆者。
 岡書院社長の岡茂雄からの辞書編纂の申し出の条件として、溝江の協力を挙げた。出の東京高等師範の教え子で、京都府立舞鶴女学校の教頭を退いて福井に隠棲中だった。
 東京高等師範では、『大日本国語辞典』(冨山房、大正4-8年)の編者松井簡治にも教わっていた。
 
●新村猛(p171)
 『辞苑』(博文館)改訂版では、次男の猛が詳細に手を加え、進行が遅れた。
 〔もし猛が参画しなかったら、昭和一六年に『辞苑』改訂版が刊行された可能性が高い。そうだとすれば、戦後、『辞苑』の改訂新版としての『広辞苑』が生まれていなかったかもしれない。治安維持法違反の廉で収監(禍)→辞書改訂、制作の新しい力が新村家に生じる(福)→猛の参画によって改訂版刊行できず(禍)→出との関係がよくなかった博文館から岩波書店に移ることができた(福)。戦後のなかで生じたことであるが、真に「禍福はあざなえる縄のごとし」のことわざどおりであった。〕
 
●新村出編の国語辞典(p173)
 『言林』全国書房、昭和24年3月
 『小言林』全国書房、昭和24年9月
 『ポケット言林』全国書房、昭和30年4月
 (『言林』は、のちに小学館からの刊行となる)
 『国語博辞典』甲鳥書林、昭和27年4月
 『新辞林』清文堂、昭和28年10月
 『新辞泉』清文堂、昭和29年10月
 『新国語辞典』東京書院、昭和31年2月
 すべて、溝江が主任的な位置にあって制作。やや小型の「学習用」辞典。
 
●新辞苑
 『広辞苑』は当初、「新辞苑」の書名で出そうとしていたが、博文館の後継社の博友社で登録してあったので、『広辞苑』となった。
 
●小学館(p179)
 昭和28年9月20日、小学館の人が出を訪問。「小学校児童向きの美しき絵本雑誌教科書など合わせて二十冊持参。かくて『辞苑』の刊行を求む。経過実情を陳して拒否す」(日記より)。
 『言林』の序文と、「辞書に苦楽す」(『図書新聞』昭和25年1月10日号)にて、『辞苑』の改訂と刊行未遂の件を明らかにしていた。
 
(2017/10/28)KG
 
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窓がない部屋のミス・マーシュ
 [文芸]

窓がない部屋のミス・マーシュ 占いユニットで謎解きを (角川文庫)
 
斎藤千輪/〔著〕
出版社名:KADOKAWA
出版年月:2017年4月
ISBNコード:978-4-04-105260-0
税込価格:605円
頁数・縦:282p・15cm
 
 
 「マーシュ」とは、欧州原産オミナエシ科の1年草のことらしい。日本名「ノヂシャ」、ドイツ語名「rapunzel(ラプンツェル)」。すなわち、『塔の上のラプンツェル』ならぬ、「窓がない部屋に閉じ込められた」ラプンツェルである。
 いや、「閉じ込められた」というのは正確ではない。このミステリーの主人公の17歳の少女は、「引きこもり」なのである。17歳にしては驚異的な知識と推理力を持つ神秘的な少女と、29歳の元OL「占い師さん」が繰り広げる、一風変わった推理小説である。
 推理小説といっても殺人事件などが起こるわけではないが、ホームズばりの推理と少女のキャラクターが魅力的なエンターテインメントに仕上がっている。
 神秘的な少女の謎解きも終わったところで、続編からは本格的な占い推理を期待したい。
 
【著者】
斎藤 千輪 (サイトウ チワ)
 東京都出身。映像制作会社を経て、現在放送作家・ライター。2016年に「窓がない部屋のミス・マーシュ」で第2回角川文庫キャラクター小説大賞・優秀賞を受賞してデビュー。
 
(2017/5/13)
 
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洞窟ばか すきあらば、前人未踏の洞窟探検
 [文芸]

洞窟ばか

出版社名:扶桑社
吉田勝次/著
出版年月:2017年1月
ISBNコード:978-4-594-07625-2
税込価格:1,512円
頁数・縦:239p、図版16p・19cm


 普通の旅行ではなく、なぜ、洞窟なのか? 「未知の場所への欲望がまずありきで、その欲望を実現できる場所が洞窟なのである。洞窟は、『究極の旅』のひとつというわけだ」。
 つまり、「洞窟が好き」なのではなく、「未知なる場所の探検が好き」ということらしい。
 これまでに潜った洞窟は、国内外1,000超(正確に数えたことはないらしいが……)。洞窟病重症患者の「洞窟ばか」が、洞窟愛を縦横に語る1冊である。

【目次】
第1章 洞窟病、重症化する
 なぜ洞窟を探検するのか?
 いきなり冬山で登山デビュー―洞窟以前の紆余曲折
  ほか
第2章 計画性はゼロ?出たトコ勝負で突っ走る!
 “危機一髪ばなし”にはこと欠かない
 教えてほしけりゃ、俺から引き出せ!異色のガイド講習
  ほか
第3章 いかにして洞窟を探検するか?―吉田流洞窟探検術
 動きたいときに動き、休みたいときに休む!
 悩ましい「装備」と「寝場所」の問題
  ほか
第4章 洞窟探検の愉快な仲間たち
 「JET」のきっかけは英会話学校!?
 唯一無二の個性派揃いのガイド集団「CiaO!」
  ほか
第5章 オレは生涯、洞窟探検家
 「冒険」と「探検」は似て非なるもの
 洞窟からすべてを与えられた
  ほか

【著者】
吉田 勝次 (ヨシダ カツジ)
 1966年、大阪府生まれ。洞窟探検家。(有)勝建代表取締役、(社)日本ケイビング連盟会長。洞窟のプロガイドとして、テレビ番組での洞窟撮影、学術調査、研究機関からのサンプリング依頼、洞窟ガイド育成など、洞窟に関わることならすべて請け負う。洞窟をガイドする事業「地球探検社」、洞窟探検チーム「JET」、洞窟探検プロガイドチーム「CiaO!」主宰。

【抜書】
●ソンドン洞窟(p99)
 ベトナムにある世界最大級の洞窟。1990年代初頭に地元民によって発見され、2009年にイギリスの調査隊が本格的な調査を行う。
 もっとも広いところで100~180m、天井の高さは最大240m。40階建てのビルがすっぽり入る。そんな空間が8kmくらい続く。
 洞窟の入り口は4つ、そのうち二つが陥没ドリーネ。その巨大な穴の底はジャングルになっており、サルまで住み着いている。

(2017/4/7)KG

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武蔵野夫人
 [文芸]

武蔵野夫人 (新潮文庫)
大岡昇平/著
出版社名 : 新潮社(新潮文庫 お-6-2)
出版年月 : 2013年7月(改版)
ISBNコード : 978-4-10-106502-1
税込価格 : 529円
頁数・縦 : 281p・16cm


 武蔵野の「はけ」を舞台に、2組の仮面夫婦と、その係累である24歳の復員青年の恋愛と破局を描く。登場人物は、秋山忠雄・道子、大野英治・富子、宮地勉、ほか。

【著者】
大岡 昇平 (オオオカ ショウヘイ)
 明治42年(1909)東京牛込に生まれる。成城高校を経て京大文学部仏文科に入学。成城時代、東大生の小林秀雄にフランス語の個人指導を受け、中原中也、河上徹太郎らを知る。昭和7年京大卒業後、スタンダールの翻訳、文芸批評を試みる。昭和19年3月召集の後、フィリピン、ミンドロ島に派遣され、20年1月米軍の俘虜となり、12月復員。昭和23年『俘虜記』を「文学界」に発表。以後『野火』(読売文学賞)『花影』(新潮社文学賞)『中原中也』(野間文芸賞)『事件』(日本推理作家協会賞)等を発表、この間、昭和47年『レイテ戦記』により毎日芸術賞を受賞した。昭和63年(1988)死去。

(2016/9/9)

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ごてやん 私を支えた母の教え
 [文芸]

ごてやん: 私を支えた母の教え

稲盛和夫/著
出版社名 : 小学館
出版年月 : 2015年11月
ISBNコード : 978-4-09-388399-3
税込価格 : 1,620円
頁数・縦 : 190p・20cm


 稲盛和夫の自伝、人生訓。両親、とりわけ母親の深い愛情によって育まれた崇高な魂が、稀代の名経営者を作ったのである。
 日本の経営者が稲盛さんのような人ばかりだったら、日本はどれほどの一流国になっていただろうか。世界の為政者が、すべて稲盛さんのような考え方をする人たちであったら……。
 それにしても、わがままで泣き虫の「ごてんやん」(ごねる人)が、よくぞ立派な大人に、それも日本一の経営者になったものだ。人の一生とは、子供時代の姿だけでは全く予想できない。人は、いろいろなことを経験し、思い、成長していくんですね。

【目次】
序章 ぜんざいの湯気の向こうに、今も
第1章 泣き虫がガキ大将に
 内弁慶な次男坊
 ごてやんの「三時間泣き」
  ほか
第2章 両親から受け継いだもの
 バランスのとれた夫婦
 士族に木刀の心意気
  ほか
第3章 「人として正しいこと」の基盤
 判断基準のもの
 心のありようが現実を決める
  ほか
第4章 京都大和の家
 心に傷を負った子どもたちのために
 職員の幸せに
第5章 子どもたちに伝えるべきこと
 思いは実現する
 いかにして思いを実現するか
終章 お母さんは神様と同義語

【著者】
稲盛 和夫 (イナモリ カズオ)
 1932年、鹿児島市に生まれる。鹿児島大学工学部卒業。59年、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年から名誉会長。また84年に第二電電(現KDDI)を設立し、会長に就任。01年に最高顧問。10年に日本航空会長に就任。代表取締役会長を経て、15年に名誉顧問。84年には私財を投じて稲盛財団を設立し、理事長に就任。同時に国際賞「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績があった方々を顕彰している。

【抜書】
●一升買い(p81)
 「醤油を5升買えば安くします」と言われれば、ついつい買ってしまう。
 使い切れないからわざわざ多めに使ってみたり、たくさんあるという油断から、乱暴に使ってこぼしてしまったりする。
 しかし、今使う分だけ買うようにすれば、それを大事に、無駄なく使うようになる。
 だから、いま必要なのが1升なら、1升しか買ってはならない。
 これを「1升買い」と呼び、京セラの経営においても原則としてきた。

●『陰騭録(いんしつろく)』(p120)
 今から400年ほど前、明代の袁了凡の書。
 了凡が、学海と呼ばれていた幼いころ、「雲南で易を究めた」というほおひげの立派な老人が少年の家を訪ねてきた。
 「この国にいる袁学海という少年に、私が究めた易の神髄を伝えよという天命が下った。そこで、遠いところからお前さんを訪ねて、わざわざここまで来たのだよ」と言った。
 母親に少年の未来について話し始めた。「この子は医者にはなりません。科挙の試験を受けて、立派な高級官僚として出世をしていきます」。袁家は医者の家系。若くして死んだ父親も医者だった。
 少年の将来を予言。科挙の試験に何番で合格し、云々。「若くして地方の長官となります。結婚はしますが、残念ながら子どもには恵まれず、五十三歳でこの世を去る」。
 その通りになる。ある日、南京に赴き、禅寺の雲谷禅師に教えを請う。座禅に誘われる。禅師は、学海の雑念妄念が一点もない澄み切った姿に姿に舌を巻く。
 学海は、運命通りに生きてきた、それまでのいきさつを語る。
 聞き終えると、ご老師の表情が突然変わり、学海を激しく叱った。
 「若くして素晴らしい境地に達した賢人かと思ったが、あなたはそんな大バカ者だったのか」。
 「たしかにその老人が話した通り、我々にはそれぞれ運命というものが備わっています。しかし、その運命のままに生きるバカがいますか。運命というのは、変えられるのです。人生には、『因果の法則』というものがあり、運命にしたがって生きていく途中で、善いことを思い、善いことを実行すれば、運命はよい方向へと変わっていきます。また逆に悪いことを思い、悪いことを実行すれば、運命は悪い方向へと変わっていくのです。この『因果の法則』というものが、我々の人生にはみな厳然と備わっているのです」。
 妻とともに善きことを実践。その後、子供もでき、70歳過ぎまで生きた。

●人生の目的(p129)
〔 善きことを思い実行することは、運命を好転させるばかりではない。
 実は、善きことを思い、善きことにつとめることを通じて自分の心を磨き、美しくすることは、人生の目的そのものではないかと私は考えている。
 一般的には、人生の目的というと、財産や地位、名誉を築くことのように考えられている。しかしそのようなものは、いくら持っていたとしてもどれ一つとしてあの世へ持っていくことはできない。
 そのような中で、たった一つだけ滅びないものがあるとすれば、それは我々の持つ心、「魂」というものではないかと私は思う。
 死を迎えるときには、現世で作りあげた地位も名誉も財産もすべて捨てていかなければならない。ただ「心」だけを携え、新しく旅立っていくのではないだろうか。
 そのように考えれば、私たちが生きる人生は、善きことを思い、善きことを行うことで、魂を磨き上げるために与えられた時間なのかもしれない。
 生まれてきたときにこの世に持ってきた自分の心を、現世の荒波の中で洗い、磨き、少しでも濁りのない美しいものへと変えていく――
 そのために「人生という名の道場」があるのではないだろうか。〕

(2016/6/24)KG

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潜水服は蝶の夢を見る
 [文芸]

潜水服は蝶の夢を見る

ジャン=ドミニック・ボービー/著 河野万里子/訳
出版社名 : 講談社
出版年月 : 1998年3月
ISBNコード : 978-4-06-208867-1
税込価格 : 1,728円
頁数・縦 : 166p・20cm


 脳出血によって脳幹をやられ、ロックトイン・シンドローム(閉じ込め症候群)に陥ったフランス人の手記。罹患前は、ファッション誌『ELLE』の名編集長だっただけあって、軽妙でユーモアに富んだ筆致は、読む者を惹きつける。閉じ込め症候群はごく稀な難病であるわけだが、この人の手によって一般の人もに認知されるようになったのではないだろうか。

【目次】
プロローグ
車椅子
祈り
バスタイム
アルファベット
皇妃
チネチッタ
旅行者たち
ソーセージ
守護天使
写真
〔ほか〕

【著者】
ボービー,ジャン=ドミニック ()
 1952年生まれ。ジャーナリストとして数紙を渡り歩いた後、世界的なファッション誌、『ELLE』の編集長に就任。名編集長として名を馳せた。しかし、1995年12月8日、突然脳出血で倒れ、ロックトイン・シンドロームと呼ばれる、身体的自由をすべて奪われた状態に陥ってしまう。当時はまだ働き盛りの43歳だった。病床にありながらも、唯一自由に動かせる左目の瞬きだけで本書を「執筆」した。本書は大きな話題を呼び、フランスで大ベストセラーになっただけでなく、世界28ヵ国で出版される世界的なベストセラーとなった。しかし、1997年の3月9日、突然死去。本書がフランスで出版されたわずか2日後のことだった。

河野 万里子 (コウノ マリコ)
 1959年生まれ。上智大学外国語学部フランス語学科卒業。

【抜書】
●最後の一撃(p33)
 〔ある午後、僕が彼女(注:ナポレオン3世の妃、ウジェニー。海軍病院の命名者)の胸像に苦しみを打ち明けていた時のことだった。いつの間にか、彼女と僕の間には、見知らぬ影が割り込んでいた。ショーケースのガラスに、ダイオキシンの樽にでもつかっていたかのような男の顔が、映っていたのだ。口はゆがみ、鼻はでこぼこ、髪も乱れて、恐怖に凍りついたまなざしの男。おまけに一方の目は縫い閉じられ、もう一方の目は、弟アベルを殺したカインの目さながらに、見開かれている。
 しばらく僕は、その瞳孔の開いた目を、じっと、見据えた。それが自分自身の姿であることに、まったく気づかないまま。
 それからゆっくりと、目がくらみそうなほどの奇妙な絶頂感がやってきた。
 僕は社会から隔離され、麻痺し、口がきけず耳も半ば聞こえず、あらゆる喜びを奪われたクラゲのような存在になり果てたというだけでなく、見るもおぞましい醜い姿に、変わってしまっていたのである。
 僕の中に、引きつるような大笑いがこみ上げてきた。災難に次ぐ災難の、最後の一撃をくらって、もう何もかもが冗談なのだと考えるしかなかった。
 いかにも陽気そうにあえぐ僕を見て、ウジェニーは初め、とまどっていた。が、ほどなく、つられて笑い始めた。僕たちは笑った。笑いに笑った。涙があふれ出すまで。〕

●思い出(p44)
〔 楽しみのためには、匂いや味についての、鮮烈な記憶をよみがえらせてみる。それは決して汲み尽くしてしまうことのない、人間の感覚の貯水池だ。残り物をうまく料理するコツがあるように、僕は今、思い出をじっくり煮込むコツに、磨きをかけている。
 さて、その思い出の世界では、僕は今や、何を遠慮することもなく、何時にでも、食卓につくことができるわけだ。レストランに出かけるにしても、もう予約の必要はない。そして自分で料理をすれば、いつでも大成功。牛肉の赤ワイン煮はほっくりとやわらかいし、ゼリー寄せは透明で目にも美しく、アプリコット・タルトからはさわやかな甘酸っぱさが香り立つ。気分によっては、エスカルゴを十二個と、シュークルートとソーセージ、それにいわゆる遅摘みの、金色がかったアルザス・ワイン「ゲヴュルツトラミネール」を奮発してもいい。
 あるいはごくシンプルに、バターを塗ってこんがり焼いた薄いパンを、半熟卵に添えて味わうのもいい。ああ、なんというごちそう! 色あざやかな黄身が口いっぱいにとろりと広がり、ほのかにあたたかく喉を下りてゆく。消化のことも、ここでは気にする必要はない。〕

●ノワルティエ・ド・ヴィルフォール(p55)
 アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』の登場人物。〔文学に登場した最初の、そしてこれまでのところ唯一の、ロックトイン・シンドローム患者ではあるまいか。〕
 鋭い目をした生ける屍。最も重大な秘密を握っているが、口がきけず、何かを伝えるときは、瞬きだけが言葉の代わり。一度なら「はい」、二度なら「いいえ」。

(2016/5/27)KG

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図書館大戦争
 [文芸]

図書館大戦争

ミハイル・エリザーロフ/著 北川和美/訳
出版社名 : 河出書房新社
出版年月 : 2015年11月
ISBNコード : 978-4-309-20692-9
税込価格 : 3,024円
頁数・縦 : 384p・20cm


 ウクライナ生まれの新進作家による前衛小説(?)。
 原題は「司書」という意味だそうだ。 有川浩『図書館戦争』にあやかったネーミングか。どちらも奇想天外で、本を守る戦いがテーマではある。

【目次】
第1部 本
第2部 シローニン読書室
第3部 祖国の守護者

【著者】
エリザーロフ,ミハイル (Elizarov, Mikhail)
 1973年ウクライナ生まれ。大学卒業後カメラマンなどを経て、2001年、中短篇集『爪』で注目を集める。表題作「爪」でアンドレイ・ベールイ賞候補に。2008年には『図書館大戦争』でロシア・ブッカー賞受賞。暗い想像力と前衛的な文学性をもつ新世代の作家として高く評価される。

北川 和美 (キタガワ カズミ)
 ロシア語通訳・翻訳者。東京大学大学院修了。専攻は現代ロシア文学。

【抜書】
●キーワード
 グロモフ(界)、ネヴェルビノの戦い、ゴルン、モホヴァ、マルガリータ、マクシム叔父、記憶の書、憤怒の書、忍耐の書、権力の書、図書館、シローニン読書室

(2016/5/19)KG

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