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アクティブラーニング 学校教育の理想と現実
 [教育・学参]

アクティブラーニング 学校教育の理想と現実 (講談社現代新書)  
小針誠/著
出版社名:講談社(講談社現代新書 2471)
出版年月:2018年3月
ISBNコード:978-4-06-288471-6
税込価格:950円
頁数・縦:268p・18cm
 
 
 学校教育の分野で、ちょっと前から話題に上り始めた「アクティブ・ラーニング」。2020年から施行される学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」として登場する。要は、教師が一方的に講義するのではなく、生徒が積極的・主体的に活動する授業を指す。
 しかしながら、生徒が主体的にかかわる授業が登場したのは最近のことではない。大正期の新教育、戦時下の新教育でも、一部でそのような授業は行われていた。
 本書では、近代以降、日本の学校で行われていた「アクティブ・ラーニング」の歴史をたどり、今後、行われようとしている「主体的・対話的で深い学び」の問題点を探る。
 「アクティブ・ラーニング」が、必ずしも生徒の深い学びを導くものでも、全体の学力を上げるものでもないという指摘がある。現実はその通りなのかもしれない。
 
【目次】
第1章 アクティブラーニング/主体的・対話的で深い学びとは何か
 授業が変わる 学びが変わる
 大学の授業改革―第一期
  ほか
第2章 近代教育史の“アクティブラーニング”―大正新教育・戦時下新教育
 近代学校の矛盾と「教育改造」
 成城小学校の自学自習―ドルトン・プラン
  ほか
第3章 戦後教育史の“アクティブラーニング”―戦後新教育・民間教育研究運動
 戦後教育改革
 戦後新教育の展開―カリキュラムの自主編成
  ほか
第4章 平成教育史の“アクティブラーニング”―新しい学力観・総合的な学習の時間
 平成教育史を描く
 「ゆとり」の登場
  ほか
第5章 未来のアクティブラーニングに向けて
 歴史から何を学ぶか
 実践上の課題―教室で実践できるのか
  ほか
 
【著者】
小針 誠 (コバリ マコト)
 1973年、福島県生まれ、栃木県育ち。慶應義塾大学文学部卒業、東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。専門は教育社会学・教育社会史。同志社女子大学現代社会学部准教授などを経て、青山学院大学教育人間科学部准教授。
 
【抜書】
●質的転換答申(p23)
 「アクティブ・ラーニング」の語が中央教育審議会の議論のなかで初めて現れたのは、2008年3月。大学分科会制度・教育部会の「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」。初等中等教育よりも先行して提案された。
 しかし、同年12月の本答申では「アクティブ・ラーニング」の語は削除された。
 「アクティブ・ラーニング」が再登場するのは、2012年8月の答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」にて。「質的転換答申」とも言われる。
 中央教育審議会の本答申に書かれたことで、「アクティブ・ラーニング」が文部科学省(国)のお墨付きを得る。
 
●学力の三要素(p35)
 ① 個別の知識・技能……何を教わったのか、学んだのか。習得と定着の度合。
 ② 思考力・判断力・表現力……知ったこと、できることをどう使うか。活用レベル。
 ③ 主体的な学習意欲・関心・態度
 2007年6月の学校教育法改正時に、第30条で新しく設けられた条項。
 
●PISAショック(p38)
 PISA……Programme for International Student Assessment。OECDに加盟している国や地域を中心に、15歳の生徒の読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーを測定する国際学習到達度調査。2000年以降、3年に1度実施。
 日本では2002年に「ゆとり教育」が本格的に導入。2003年と2006年に得点と順位が大きく低下した。
      2000 2003 2006
  読解力  8位 14位 15位
  数 学  1位  6位 10位
  科 学  2位  1位  5位
 
●グループワークとPISAの相関関係(p40)
 2012年の試験で、PISAでは、「数学の授業で、問題解決のためのグループワークをどれほど行っているか」を生徒に尋ねた。日本でアクティブ・ラーニング・ブームが起こる前。
 「まったく/めったにない」(Never or Hardly Ever)の割合は、日本71.7%(得点は7位)で最高。フランス57.9%、英国44.1%(26位)、ドイツ31.4%(16位)、米国17.7%(36位)。
 「アクティブ・ラーニング(グループワーク)」を積極的に取り入れている国ほど、数学の点数は低かった。
 
●国民学校(p106)
 1941年、私立を除く、全国の小学校は「国民学校」と名を変え、児童も年少の国民を意味する「少国民」と呼ばれるようになった。
 教育の目的は、少国民を鍛えあがる「錬成」となり、少国民を「皇国ノ道ニ帰一セシメ」る教育または「皇国ノ道ヲ修練セシメ」る教育が目指されることになった。
 
●音楽(p116)
 国民学校の発足に伴い、従来の「唱歌」は「音楽」になり、芸能科の1科目に置かれるようになった。唱歌のみならず、鑑賞や楽器が導入された。
 しかし、「鋭敏ナル聴覚ノ育成」を目的とする「聴音の練習」は、敵機の音を判別するための国防または軍事訓練の手段として構想された。
 
●大正新教育と戦時下教育体制の継続性(p120)
 〔大正新教育以来の主体性や自発性の理念は、国民学校や戦時化教育体制に矛盾することなく取り込まれていきました。その主体性、自発性、自主性は、当時の教師や少国民のあるべき精神として高く評価されました(高橋浩「15年戦争における『日本教育学』研究Ⅲ」『鹿児島女子大学研究紀要』一五-一)。〕
〔 これからの学校教育で本格的に実施されるアクティブラーニングも、戦時下新教育のように、国家や政府の目指す政治・経済体制に、自発的または能動的に奉仕、奉公することを子どもに求める教育になっていくのではないかという懸念を禁じえません。〕
 
●単元学習(p132)
 子どもの興味や関心に合わせて学習内容をまとめ、そのテーマについて学習する形態。
 
●振り子(p153)
 戦後日本のカリキュラム改革は、「振り子」のように、「教師主導・知識重視の本質主義または系統主義の教育」と「子ども中心で、学習に臨む態度や考える力を重視する経験主義の教育」の両者の間を行ったり来たりした。
 
●集団主義教育(p160)
 1959年1月、日本教職員組合の第八次教育研究大阪集会に参加した有志を中心とした全国生活指導研究協議会のもとで展開された。
 「班・核・討議づくり」と呼ばれる方法で、学級集団作りを目指した。
 学級内に男女混合4~5名程度の「班」を構成し、その中の核(リーダー)のもと、討議を通じて、集団成員の一人ひとりが集団に対してもつ力、集団のさまざまな力を自覚させ、それを表現する能力、それを遂行する方法やスタイルの習得が教育目標とされた。
 しかし、班同士の競争をあおり、最下位になった班を「ボロ班」「ビリ班」と呼ぶなど、歪みが現れた。
 問題やトラブルがあれば、班全体で連帯責任が問われたりした。
 「助け合いと民主的競争」の名のもと、班全員が一定以上の点数を取るまで放課後の居残り学習が求められることもあった。
 
(2018/5/24)KG
  
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世界が称賛する日本の教育
 [教育・学参]

世界が称賛する 日本の教育
 
伊勢雅臣/著
出版社名:育鵬社
出版年月:2017年8月
ISBNコード:978-4-594-07776-1
税込価格:1,620円
頁数・縦:228p・19cm
 
 
 日本の教育で良い(と著者が考える)点について、論じている。ただし、「世界が称賛している」かどうかは、説得力のあるデータを提示していないので不明である。
 
【目次】
第1章 世界が称賛する日本の教育
 「子は国の宝」の経済学
 「日本人という生き方」(上)―ウガンダの高校生を変えた日本の躾
  ほか
第2章 蘇る日本の教育
 学力・体力トップクラス―福井県の子育てに学ぶ
 親学のすすめ(上)―母の愛を待つ胎児・新生児
  ほか
第3章 日本の教育の地下水脈
 江戸日本はボランティア教育大国
 小林虎三郎―人づくりは国づくり
  ほか
第4章 国語・古典という根っこ
 子供を伸ばす漢字教育
 生きる力を引き出す授業(上)―伝説の国語教師・橋本武
  ほか
 
【著者】
伊勢 雅臣 (イセ マサオミ)
 創刊20年となる殿堂入りメールマガジン『国際派日本人養成講座』編集長。昭和28(1953)年東京生まれ。東京工業大学社会工学科卒。製造企業に就職。社員留学制度によりアメリカのカリフォルニア大学バークレー校に留学。工学修士、経営学修士(MBA)、経営学博士(Ph.D.)となる。社業のかたわら、日本国内の私立大学の商学部・工学部で非常勤講師として「産業界の偉人伝」を講義し人気を呼ぶ。平成22(2010)年、海外子会社の社長としてヨーロッパ赴任。
 
【抜書】
●昭憲皇太后基金(p60)
 明治45年(1912年)、日本政府は赤十字世界大会で、美人(はるこ)皇后(昭憲皇太后)の下賜金10万円(現在価値で3億5千万円)をもとに、基金設立を提案、満場の拍手で認められた。戦時の戦傷者救護ではなく、災害や疫病などの被災者を救う平時救護を行うための基金。
 その後、現在でも「昭憲皇太后基金(Empress Shoken Fund)」がジュネーブの国際赤十字委員会によって運営されている。歴代の皇室から、たびたび下賜金が加えられている。
 アジアやアフリカでは、「The Empress Shoken Fund」と書かれた救急車やミニバスが活躍している。
 
●寺子屋(p115)
 幕末、全国に1万6千もの塾(寺子屋)があった。僧侶や神官、武家、農民などが運営。
 ほとんどがボランティア。寺子屋・塾の教師をやると、身分は町人でも人別帳に「手跡指南」など、知的職業人として登録された。生徒には「お師匠さま」と尊称で呼ばれ、地域では知識人、有徳者として尊敬された。
 
●幼児の漢字学習(p172)
 石井勲『0歳から始める脳内開発』蔵書房。
 自分の子どもが2歳で「教」「育」という漢字を読んだのに驚き、1953年から15年間、小学校で早期漢字教育を実践。1年生で700字を覚えるまでに至る。当時、1年生の習得目標は30字程度だった。
 1968年からは、幼稚園児に漢字を教えてみる。幼児の漢字学習能力がさらに高いことを発見。教えるコツは、遊び感覚で幼児の興味を引き出す形で行うこと。読み方だけを覚えさせ、書かせないこと。
 漢字学習を始めてから、幼児の知能指数は130にまでなった。
 漢字には、幼児の能力や知能を大きく伸ばす力がある、と考えるようになる。
 
(2017/10/14)KG
 
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国語教師
 [教育・学参]

国語教師.png
 
中原素男/著
出版社名 :日本文学館
出版年月 :2013年6月
ISBNコード :978-4-7765-3545-4
税込価格 :864円
頁数・縦 :99p・19cm
 
 
 引退して5年、元公立中学校の国語教師によるエッセー集。「脱! 教科書」では、遊びと競争を取り入れた具体的な授業の手法を示す。それは工夫に満ちた内容で、楽しそうな生徒たちの姿が目に浮かぶようだ。現役の教師には参考になるのではないだろうか。単に教科の詰め込みだけでなく、情操を育てる授業という点で、重要なやり方だと思う。生徒たちには、毎日通うのが楽しくなるような学校であってほしいものだ。

【目次】
脱! 教科書
「いじめ問題」考察
女神はいるか
流行歌よ、甦れ

【著者】
中原素男 (なかはら もとお)
 1948年生まれ。1972年早稲田大学第一文学部卒業。同年より37年間、東京都公立中学校国語教諭を務める。

(2015/10/3)

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ルポMOOC革命 無料オンライン授業の衝撃
 [教育・学参]

ルポ MOOC革命――無料オンライン授業の衝撃

金成隆一/著
出版社名 : 岩波書店
出版年月 : 2013年12月
ISBNコード : 978-4-00-002230-9
税込価格 : 1,944円
頁数・縦 : 267, 9p 19cm


 MOOC(Assive Open Online Courses:大規模公開オンライン講座)の誕生から発展、現状、将来について、取材を元に解説。

【目次】
第1章 MOOC誕生/大歓迎する利用者の熱狂
第2章 MOOCを提供するシリコンバレー企業
第3章 MOOCを提供する大学
第4章 利用する教育機関
第5章 教育の形を変えた男―サルマン・カーン
第6章 教室をひっくり返せ―自宅で講義、教室で宿題
第7章 どうする日本の大学
第8章 日本のオープンエデュケーション
第9章 グーグルのムーク参戦、2014年へ

【著者】
金成 隆一 (カナリ リュウイチ)
 1976年生まれ。2000年慶応大学法学部政治学科卒業後、朝日新聞入社。神戸支局、静岡支局、大阪社会部、米ハーバード大学日米関係プログラム研究員、国際報道部を経て、2011年秋から2年間、大阪社会部教育担当。

【抜書】
●ユダシティー(第2章)
 ユダシティー(Udacity)、スタンフォード大学人工知能研究所(Stanford Artificial Intelligence Laboratory)の所属研究員セバスチャン・スランが起業。
 講義を厳選し、自前で作っている。コースの総数は30弱、コンピュータサイエンスや人工知能学などを著名な学者や研究者が講義、全世界からのべ100万人以上の受講生。
 収入源は、人材紹介サービス。受講生は自分の履歴書や受講履歴を企業側に公開し、企業は優秀な人材をリクルートする。ユダシティーは、紹介料をもらう。
 企業は、提供講座の制作料を負担し、求める人材が集まりそうな講座を開講。

●コーセラ(第2章)
 コーセラ(Coursera)、スタンフォード大学人工知能研究所教授のダフニー・コラーとアンドリュー・ングが創業。
 提携する107の高等機関(大半が大学)がコースを作る。東京大学も参加。
 収入源:コーセラで開発した教科書や、講座そのものを他大学に販売。州立大学などで、コーセラのムーク講座を授業で利用できる。コーセラのプラットフォームでムークの配信も可能。
 修了証を有料化。Signature Track制度。一つの講座につき29~100ドルを払うと、本人認証をしてくれる。①タイピング・パターン、②ウェブカメラでの本人証明写真、③運転免許証などをウェブカメラで撮影、④個人情報の入力、⑤クレジットカード情報の入力。

●エデックス(第3章)
 エデックス(edx)、MITとハーバード大学が2012年5月に設立。
 学習ビッグデータを使った「学びについての研究」が目的のひとつ。
 優秀な学生の発掘。モンゴルの15歳の少年パトゥーシグが『電子回路』で満点の成績、MITに入学。
 前身は、オープンコースウェア(OCW)。2001年、「すべての大学講座の教材をウェブ上で無料公開する」とMIT学長が発表。
 世界の27大学が提携。日本では京都大学。
 ブレンドモデル……エデックスとサンノゼ州立大学が提携、ムークと対面講義をブレンドして授業を進める。

●完全習得学習(p144)
 どんな学習も一つひとつの積み上げが大切で、きちんと理解してから次に進もう、という考え方。実際の一斉授業では、生徒による理解度の偏りがあるので実現不可能。

(2014/4/13)KG

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大学教授という仕事 増補新版
 [教育・学参]

大学教授という仕事 増補新版

杉原厚吉/著
出版社名 : 水曜社
出版年月 : 2012年11月
ISBNコード : 978-4-88065-301-3
税込価格 : 1,680円
頁数・縦 : 190p・21cm


 名古屋大学で助教授5年、東京大学で助教授10年、教授18年、合わせて33年間、大学教員を務めてきた「先生」による、大学教員にまつわるエッセーである。「大学教授とはどんな生き物なのかを覗いてみたいという好奇心の旺盛な」読者に向けて書かれた。いかにして大学に職を得て、どのように講義の準備をし、自身の研究を推進し、学部の経営に携わっていくのか。そのへんの様子が詳細に、ユーモア溢れる筆致で描かれている。
 この先生、本職は計数工学、情報工学である。つまり、広く捉えれば応用数学である。コンピュータなんかを駆使して、ものを作るときのいろいろな計算を行うらしい。理系の先生なので、文科系、社会科系の大学教員とは異なることもあるかもしれない。だが、研究、教育、マネジメントに楽しみながら取り組んでいる姿が本書から浮かび上がってくる。
 大学教員としての資質とは、実はそんな前向きで積極的な姿勢にあるのかもしれない。

【目次】
ストレスの少ない職業
講義の担当
研究と学生指導
研究資金の獲得
論文の生産
管理運営の仕事
入学試験
学会活動
国際会議活動
審査
他大学の非常勤講師
著作活動
研究成果の社会還元
専門知識の社会還元
大学教授のセルフマネージメント

【著者】
杉原 厚吉 (スギハラ コウキチ)
 1948年生まれ。名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻助教授、東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻教授などを経て、2009年より明治大学大学院先端数理科学研究科特任教授。

【抜書】
●役得(p36)
 〔大学教員にとって講義の負担は重いが、見方を変えれば、給料をもらって勉強しているようなものである。
 ひょっとすると、負担どころか、給料をもらいながら勉強をさせてもらっているという役得なのかもしれないという気もしないではない。〕

●論文を書く工夫(p78)
〔 私自身が見つけて気に入っている工夫は、「流行作家になってエンターティメント小説でも書くような気分で、審査委員を楽しませることを最優先して論文を書こう」というものである。ふざけていると思われるかもしれないが、私はこれを真面目にやっている。そして、その効果に、長年手応えを感じている。だから、論文を書くことは楽しい。〕

(2013/3/22)KG

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看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混交
 [教育・学参]

看板学部と看板倒れ学部 - 大学教育は玉石混交 (中公新書ラクレ)

倉部史記/著
出版社名 : 中央公論新社(中公新書ラクレ 422)
出版年月 : 2012年7月
ISBNコード : 978-4-12-150422-7
税込価格 : 819円
頁数・縦 : 230p・18cm


 著者の意図としては、大学教育の現状に対する批判も込めて書かれたものだと思うが、その点はスルーして(もちろん、こちらも重要で示唆に富む内容である)、さまざまな大学の歴史と個性ある学部の紹介の部分が面白かったので、以下にまとめた。

【目次】
第1章 間違いだらけの学部選び
第2章 なぜここが「看板学部」なのか(1)伝統の看板
第3章 なぜここが「看板学部」なのか(2)期待の看板
第4章 「看板倒れ」はこうして生まれる
第5章 看板に映る時代の変化
第6章 これからの学部選びを考えよう

【著者】
倉部 史記 (クラベ シキ)
 大学プロデューサー、および高校生への進路選択アドバイザー。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。その後も桜美林大学大学院・大学アドミニストレーション専攻(科目等履修生)等、さまざまな大学で学び続ける。ウェブプロダクションにてパナソニックやコクヨ等の広報企画・プロデュースを手がけた後、私立大学に転職し、職員として大学運営業務に従事。2005年に「マイスター」のハンドルネームで開設したブログ「大学プロデューサーズ・ノート」が多くの大学関係者の支持を集める。早稲田塾SOHKEN(総合研究所)主任研究員を経て現在フリー。

【抜書】
●大学数、学部数(p5)
 1990年507大学⇒2001年669大学⇒2011年780大学。短大の4年制化も進行。
 学部の種類……2001年254種類⇒2011年514種類。
 うち、1校だけに存在する名前284学部。

●学士(p33)
 1956年、大学設置基準では、「学士」の称号は29種類に限定されていた。
 文学士、教育学士、神学士、社会学士、教養学士、学芸学士、社会科学士、法学士、政治学士、経済学士、商学士、経営学士、理学士、医学士、歯学士、薬学士、看護学士、保健衛生学士、鍼灸学士、栄養学士、工学士、芸術工学士、商船学士、農学士、獣医学士、水産学士、家政学士、芸術学士、体育学士
 1991年に「大学設置基準の大綱化」。大学それぞれが独自性を発揮し、特色ある教育研究を行えるよう、細かな規則・制限を撤廃。
 学士も、称号から学位へ。「学士(文学)」「学士(工学)」。専攻の表記も大学が自由に決められる。
 学士の種類は670以上。6割が「オンリーワン学位」。

●東京六大学の設立年(p55)
 東京大学、1877年……法学部、理学部、文学部、医学部
 慶應義塾大学、1858年、慶應義塾
 立教大学、1874年、聖公会立教学校
 法政大学、1880年、東京法学社(和仏法律学校)
 明治大学、1881年、明治法律学校
 早稲田大学、1882年、東京専門学校
 早稲田が最も新しい!

●五大法律学校(p57)
 明治法律学校(明治大)、東京法学社(法政大)……フランス法
 専修学校(1880、専修大)、英吉利法律学校(1885、中央大)……英米法
 東京専門学校(早稲田大)
 東京府から特別の許認可を受けたり、連合会を結成して討論会を実施したり、教育水準の高い法学系私学として知られていた。

●皇典講究所(p58)
 1882年、神道の研究・教育機関として、皇典講究所が設立される。
 國學院……学生の教育のために設置。現・國學院大學。
 日本法律学校……外国の法理論を参考にしつつ、日本の法律を中心に研究するために設立。現・日本大学。

●個性的な大学(p59)
 二松学舎……漢学者で大審院判事なども務めた三島中洲が、日本固有の儒教道徳の確立を目指して設立した漢学塾。夏目漱石も学ぶ。司法官や軍官も多く在籍、それぞれの学校の試験に、当時、漢文が用いられた。
 哲学館……現・東洋大学。東京大学哲学科を卒業した井上円了が「諸学の基礎は哲学にあり」を建学の理念に掲げて設立した、非宗教系の、哲学専修の専門学校。
 東京物理学校……現・東京理科大学。東大理学部で、3年で廃止になった「仏語物理学科」で学んだ学生たちが、物理学普及を掲げて設立。

●旧帝国大学(p62)
 北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学
 台北帝国大学(現・台湾大学)、京城帝国大学(現・ソウル大学)

●旧官立11大学(p62)
〈教育〉
 東京文理科大学(1929、現・筑波大)、広島文理科大学(1929、現・広島大)
〈商業〉
 東京商科大学(1920、現・一橋大)、神戸商業大学(1929、現・神戸大)
〈工業技術〉
 東京工業大学(1929)
〈医学〉旧6医科大学
 新潟医科大学(1922、現・新潟大)、岡山医科大学(1922、現・岡山大)、千葉医科大学(1923、現・千葉大)、金沢医科大学(1923、現・金沢大)、長崎医科大学(1923、現・長崎大)、熊本医科大学(1929、現・熊本大)
 各分野の教育研究の中心として機能させるべく設立された。

●新8医科大学(p62)
 弘前大学、群馬大学、東京医科歯科大学、信州大学、鳥取大学、広島大学、徳島大学、鹿児島大学
 戦前は「旧制・官立医学専門学校」で、戦後、大学に昇格。

●千葉大学(p71)
 医学部……関東では難易度で東大に次ぐ。
 園芸学部……国立大学唯一。学生一人一人に栽培実習用の土地が提供される。
 看護学部……国立大学で学部として独立させているのは、千葉大だけ。
 工学部……戦前より工業デザインについて教育を行っていた東京高等工藝学校が母体。デザイン学科、画像科学科、情報画像学科などがある。
 理学部……全国に先駆け、「飛び入学」を導入。高校2年を終えて大学に入学する制度。

●信州大学繊維学部(p72)
 国公私立含め一つしか現存しない「繊維学部」。かつては、東京農工大学、京都工芸繊維大学の2校にも繊維学部があった。3校とも旧制の繊維専門学校が発祥、「3繊維大学」と総称された。

●歯学部(p142)
 歯学部……他大学にありながら東京大学に存在しない学部のひとつ。
 戦前の旧制専門学校時代から歯学教育を展開していた大学……東京歯科大学、日本歯科大学、日本大学歯学部、大阪歯科大学、九州歯科大学(戦後に公立に)、東京医科歯科大学(国立)。6校が私学。
 1960年以降、虫歯が社会問題になり、歯科医師養成大学の新設を推進。日本大と、日本歯科大は、二つの歯学部を持つ。

●航空・宇宙系学科(p153)
 東海大学……もともとは、航空科学専門学校。2006年、全日空と協力し、パイロット養成のための「航空宇宙学科 航空操縦学専攻」を開設。団塊世代の定年に伴う深刻なパイロット不足が設立の背景。米連邦航空局および日本の国交省航空局が認定する事業用パイロットの資格を取得できる。ノースダコタ大学に15ヶ月間留学。
 日本大学理工学部……キャンパスに巨大な滑走路。
 桜美林大学……ビジネスマネジメント学群 アビエーションマネジメント学類 フライト・オペレーションコースでパイロット養成。4年間の全寮制。2年間のニュージーランド留学で訓練。
 法政大学……パイロット養成課程を新設。神戸空港を訓練拠点とし、国内で資格取得。
 帝京大学 航空宇宙工学科……ヘリパイロットコース。4年間でヘリコプターの事業用操縦免許取得を目指す。ドクターヘリのニーズが拡大。

●慶應義塾大学薬学部(p175)
 2006年11月、慶応大と共立薬科大学が合併を発表、慶応大薬学部に。4年制から6年制に移行したばかりで、他大学では受験生が減少傾向にあったが、同校では前年の2倍に。東京理科大学薬学部を抜いて私立大薬学部の最難関に。

(2012/12/8)KG

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一生モノの勉強法 京大理系人気教授の戦略とノウハウ
 [教育・学参]

一生モノの勉強法.jpg
鎌田浩毅/著
出版社名 : 東洋経済新報社
出版年月 : 2009年4月
ISBNコード : 978-4-492-55637-5
税込価格 : 1,575円
頁数・縦 : 222P・19cm

【目次】
第1章 面白くてためになる「戦略的」な勉強法とは
第2章 勉強の時間を作り出すテクニック
第3章 効率的に勉強するための情報整理術
第4章 すべての基本「読む力」をつける方法
第5章 理系的試験突破の技術
第6章 人から上手に教わると学びが加速する

【著者】
鎌田 浩毅 (カマタ ヒロキ)
 1955年、東京生まれ。東京大学理学部卒業。通産省を経て97年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。理学博士。専門は火山学・科学コミュニケーション。テレビ・ラジオ・雑誌で科学を分かりやすく解説する。火山研究のほか啓発と教育に熱心な「科学の伝道師」。

(2011/3/12)KG

<この本の詳細>
bk1: http://www.bk1.jp/product/03100032
e-hon: http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032229280
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大学教授の資格
 [教育・学参]

大学教授の資格.jpg
松野弘/著
出版社名 NTT出版(NTT出版ライブラリーレゾナント 062)
出版年月 2010年8月
ISBNコード 978-4-7571-4250-3
税込価格 1,890円
頁数・縦 273p・19cm

●社会人教授は是か非か?
 海外の例を参照しながら、日本の大学教授の資格について論じている。
 まず、海外(といっても欧米、特に英・米・仏・独のことしか触れていないが)では、大学教授になるには最低限、博士号が必要である。その上に、例えばフランスやドイツでは、公的機関による資格制度もある。アメリカでは、教授の採用は各大学が独自に行っているものの、終身のテニュアの資格を得るには、研究上の実績と、教育上の実績に関する客観的な評価を避けて通ることはできない。つまり、大学教授という職に就くには、長期間に及ぶ専門的な訓練が必要で、それなりの権威が保たれているのである。
 しかるに日本では、博士号の保持は絶対的な条件ではなく、公的機関による資格制度もない(大学設置基準第四章、p46)。そのため私立大学(特に文系)では、博士号保持率50%未満というのも当たり前の状況になっている。大学院等で専門分野の研究を行うという訓練を受けずに大学の教員となる社会人教授が幅を利かせているのである。そのためかどうか、日本の大学の教育レベルは概して高くない。
 これでいいのか、ニッポンの大学。

【目次】
序章 大学の大衆化と大学教授の地位低下
第1章 大学教授とは何か―誕生の背景と意味
第2章 大学教授の要件―能力と基準
第3章 大学教授の「資格」―西欧と日本の比較考察
第4章 大学の大衆化と大学教授の変容
第5章 大学教授の「質」の低下と社会人教授の参入
第6章 アカデミック教授と社会人教授の差異
第7章 社会人教授の実態分析―社会人教授は大学活性化の担い手たり得るのか
第8章 大学のグローバル化と大学教授の「グローバル・スタンダード」の要件
終章 世界に通用する大学教授の「資格」とは何か

【雑記】
●大学の起源(pp19-23)
 大学の起源は、12~13世紀の中世ヨーロッパ。教会で聖職者養成のための教育組織として誕生。
 ウニヴェルシタス(ラテン語)=組合。教師と学生の自律的な共同体、という意味合い(天野郁夫『大学の誕生(上)』中公新書、2009)。つまり、大学の原型は、ヨーロッパ的ギルドとして誕生。
 中世半ば、ヨーロッパ各地の領域君主が行政官僚育成のための大学を設立。(例)フリードリヒ2世など。科学的な真理の追究が行われるようになる。

●大学教授の資格(p23)
 (ドイツ)博士号取得、「大学教授資格試験」合格。
 (フランス)大学教授=大統領によって任命される終身職の国家公務員。全国大学審議会による資格審査に合格後、「教授職有資格者リスト」へ登録。各大学や学部は、公募して「リスト」登録者の中から選ぶ。

●マーチン=トロウの理論(p108)
 高等教育機関への進学率。
 エリート段階……15%以下
 マス段階……15~50%
 ユニバーサル段階……50%以上

(2010/10/22)KG

<この本の詳細>
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デジタル教育は日本を滅ぼす――緊急提言! 便利なことが人間を豊かにすることではない!
 [教育・学参]

デジタル教育は日本を滅.jpg
田原総一朗/著
出版社名 ポプラ社
出版年月 2010年8月
ISBNコード 978-4-591-12068-2
税込価格 1,470円
頁数・縦 203p・22cm

●デジタル教科書の定義は?
 田原総一朗の熱き教育論。
 教育の基本とはコミュニケーションである、ということはよく分かる。ただ、デジタル教科書とは何か、ということをきちんと定義していないので、肝心のテーマがぼやけてしまっている。まさか、電子メールとかインターネットを指しているのではないだろう。
 そもそもデジタル教科書とはどんなものなのであろうか。デジタル教科書を教育の現場に導入することについて、どこで議論されているのか、いつ導入されようとしているか。そのへんが全くわからないのである。それゆえデジタル教科書、そしてそれを利用したデジタル教育について批判されてもピンとこないのである。
 「デジタル教育」ということを抜きにして、現代教育論として読む分にはまっとうな内容である。「正解を出すという作業が自己完結してしまう」(p47)ような教え方は、本来の教育ではない、という点は、その通りだと思う。そもそも常に「正解を言わなければならない」と思い込ませるような教育は間違っている。世の中に出れば、正解の分かっていない問題を解かなければならず、そのための訓練にならないからだ。現在の教育に必要なのは、クイズのような問題を出して正解、不正解を教えることではなく、忍耐強く思考し続ける力を身に着けさせることだ。
 だから、タイトルから「デジタル」を抜いてしまってもいいのでは?

【目次】
1章 教育の現場からの警告、デジタル教育時代の危機
 1.悩みが何なのかわからない
 2.教育の基本はコミュニケーション
 3.教科書デジタル化
 4.便利だから危険性も当然ある?
 5.メールによるいじめの深刻さ
 6.個人譲歩の流出の極限は、「炎上」!
 7.ネットでなければ、コミュニケーションできない日本人が増殖
 8.若手報道記者の政治家取材も携帯で! の時代
 9.電子教科書がもたらすものは・・・・・・ 
 10.学校へ行く意味は、「刺激」を得るため
 11.「正解」と「間違い」だけを教えるのなら、学校はいらない
2章 学校とは何なのか! 教育とは何なのか!
 1.勉強ばかりさせて、本当の教育をしない親たち
 2.祖母から受けた教えの意味が40歳頃にわかる
 3.藤原和弘の「よのなか科」
 4.学校の中で「地域」を作った
 5.学力最下位に等しい、大阪府の成績向上の取り組み
 6.「よのなか科」は本物の、ゆとり教育だった
 7.文科省「ゆとり教育」失費の理由
 8.絵に描いたもちからリアリズムへ
 9.「陰山方式」の成果
 10.教育に使う”カネ”がない
 11.「教育」とは何なのか
 12.戦争は終わった
 13.180度変わった価値観
 14.「疑う気持ち」が植えつけられた
 15.社会主義に絶望した
3章 迷走した戦後の教育改革
4章 見直される教育改革――21世紀型新時代への教育へ
最終章 先端的なデジタル教科書が日本を滅ぼすその理由
あとがき 本気で日本の教育を考える

【雑記】
●河合塾、人気の秘密
 「名古屋大学のある教授に、全共闘運動が終わって考え込んでしまっているやつらが、研究室にたくさんいる。あれほど元気だった人間が、運動が終わったら動きが取れなくなっている。予備校で面倒見てくれないかと言われて使ってみたら、これが当たりだったんです」(河合塾 文化教育研究所主任研究員・丹羽健夫)。彼らが、生徒たちに、人生を語りながら、面白く各教科の「本質」を教えている。それが予備校教師の「つかみ」。(pp150-156)

●コミュニティ・スクール
 地域の代表が学校の運営に参加する「地域学校協議会」を設置するよう、2004年に制度化された(学校運営協議会制度)。(pp169-173)

●実証された技術のみで新幹線開発
 島秀雄、国鉄の技師長。D51の設計にも貢献。新幹線の開発にあたって、全国から集まった優秀な技術者たちに言った言葉。
「新幹線は実証されている技術だけで作る。つまり、新しい技術の開発はいらない。」
「なぜならこれは、始まりであるから。ここからどんどんチャレンジする。初めはすでに実証されている技術だけを使う。ここからチャレンジしていくのです。」(p185)

(2010/10/21)KG

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天使のピアノ 石井筆子の生涯
 [教育・学参]

天使のピアノ.jpg
真杉章/文
出版社名 ネット武蔵野
出版年月 2000年12月
ISBNコード 978-4-944237-02-9
税込価格 1,200円
頁数・縦 39p・27cm

●筆子という女性
 国立市谷保、自然あふれる小川の流れが残る矢川に遊びに行ったとき、ふと脇を通りかかった滝乃川学園が気になっていた。鬱蒼とした木立に囲まれ、修道院のような雰囲気をもつ場所だった。知的障害者の施設であるという。道すがら、おそらく学園の生徒と教師であろう一団ともすれ違った。
 この学園には、石井筆子という人が鹿鳴館時代に作られたピアノを残したという。その「天使のピアノ」にまつわる物語は、本書をきっかけに、2006年、『筆子とその愛―天使のピアノ―』(監督:山田火砂子、主演:常盤貴子)、『無明の人~石井筆子の生涯~』(監督:宮崎信恵、朗読:吉永小百合)という2本の映画を生んだ。
 筆子は、幕末の1861年(文久1年)、倒幕派の志士として活躍した肥前大村藩士、渡辺清の子として生まれた。維新後、父は高級官僚としての道を歩み、筆子も上流階級の子女としての教育を受ける。女学校時代には勝海舟の屋敷内でクララ・ホイットニーから英語を習い、19歳になると皇后の命を受けてフランス、オランダに留学する。そのため、鹿鳴館でも「英語・フランス語・オランダ語を自由に話し、しかも自分というものをきちんともっていて」「魅力ある女性の一人」だったという(ベルツ博士評、p8)。
 1884年(明治17年)には、大村藩出身の優秀な技術官僚と結婚し、3人の娘をもうけたが、いずれも知的障害児、虚弱児であった。夫と死別後、筆子は3人の娘を滝乃川学園に預け、子女教育と女性運動に専念するが、その後、学園の創立者で園長の石井亮一と再婚する。「天使のピアノ」は、その時に学園に持ち込まれたものだという。半世紀近く、学園の一室に打ち捨てられていたが、1998年、有志の尽力でよみがえったのである。

●ネット武蔵野という出版社
 という物語をルビ付きの文章と豊富な写真で綴る書籍であるが、私が興味を持ったのは、本書の版元であるネット武蔵野である。当社は小金井市に事務所を構える出版社で、『天使のピアノ』が第1作であるという。幸い、映画化などの影響もあり、増刷を重ねている。
 創業者は、関連会社も含めて光村図書に71歳まで勤めていたが、教科書作りに嫌気がさし、自分の好きな本を作りたいと、10年前に一念発起して当社を興した(と本人が語っていた)。目録を見ると、絵本や写真集、多摩・小金井に関連した書籍などを50点近く発行している。
 東京の郊外にも、志ある出版社が存在するのであった。

【目次】
滝乃川学園と古いピアノ
市民が注目、復元へ
石井筆子の生い立ちとフランス留学
結婚・長女誕生
苦悩の訪れ
打ち続く不幸
石井亮一と滝乃川学園
静修女学校と万国婦人国際会議
筆子、滝乃川学園へ
筆子、石井亮一と再婚
「鳩、足を止める処なければ」――亡き娘三人の墓碑
愛と祈りと
苦難を越え、理想郷を求めて
夫・石井亮一の死と筆子の2代目学園長就任
晩年の筆子――戦時下の日本
石井筆子逝く
よみがえった「筆子のピアノ」
学園に光あふれて
石井筆子関係略年譜
あとがき 執筆者紹介 参考文献

(2010/10/13)KG

<この本の詳細>
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e-hon: http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000030782547
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